2021/02/27 のログ
ご案内:「落第街大通り」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
先の戦闘から数日が経過し、違反部活・風紀委員会共に活動を再開し始めた頃。
それでも、何時もよりは幾分の平和を保っていた落第街に――住民達にとっては、最早聞き慣れた災厄の足音。
大慌てで露天を片付ける者。近くのバラックへ身を寄せる娼婦。
いざという時に備えて、物陰で武器を構える違反部活生達。

そんな住民達の敵意を涼し気な表情で受け止めつつ、多脚の異形の背に、宛ら玉座に腰掛けるかの様に座る少年の姿があった。
砲身が複雑に絡み合った歪な玉座から大通りを睥睨し、従える無数の異形が列を成し、砲を構える。
風紀委員会――特務広報部の武力の象徴を、まざまざと見せつけるパレード。

「……数日ぶりだが、相変わらず何も変わっていない。
汚物を煮詰めた様な街並だな。安心したよ」

穏やかな声色で紡がれる言葉は、誰に向けられたものなのか。
煙草を咥え、甘ったるい紫煙を吐き出しながら…薄っすらと、微笑んだ。

神代理央 >  
まあ此方も未だ怪我人。
それを隠す為に今日は痛み止めをふんだんに服用して包帯を外してはいるが、左腕が少々心許ない。
しかし、負傷した身で此処を訪れても侮られるだけ。
であれば、多少無理をしてでも、こうして姿を晒して。
違反部活への睨みを、聞かせておかねばならない。

(…折れたのが右腕じゃなくて良かったよ、本当に…)

利き腕であれば、日常生活にも負担がかかるところだった。
その場合は、再生異能と治療魔術と最新医療を財力に任せてふんだんに使用する事になったのだろうが。
こうして、普通の怪我人でいる事はなんだか珍しいな、と。
ぷかぷか紫煙を燻らせながら、小さく苦笑い。

ご案内:「落第街大通り」に山本 英治さんが現れました。
山本 英治 >  
「どうも、神代先輩」

後方から歩いてくる、少し頬の痩けた男。
長身。筋肉が落ちてもなお、恵体の風紀委員。
カンフーファイター。山本。山本、英治。

「今日もお元気そうで何よりだ」

鎮座する王に声をかけるにはあまりにも軽薄な言葉。

「腕、大丈夫すか。そんな時くらい休んでもいいと……俺は思うけどな…」

神代理央 >  
此の街で、風紀委員の制服を纏う己に声をかける相手は早々居ない。
大体は違反部活生。次に同僚。後は迷い込んだ生徒や此の街の住民等々。
そして今回は――同僚でもあり、風紀委員の中でも数少ない背中を預けられる男。仲間、と陳腐な表現をしても良いだろう。

そう、年上の後輩でもあり全裸アフロ……ではなく、強力な異能の使い手。山本英治の姿が、其処にはあった。

「それは此方の台詞だ…と言いたいところだが、お前は余り元気そうには見えないな。自慢の髪型も何だか萎びていないか?」

幾分痩せた様にも見える彼を"玉座"に腰掛けた儘見下ろす。
別に彼を見下していたりとか、侮っている訳ではない。
何時もこんな感じである。尊大さと傲慢さの滲む態度は、彼にも見慣れたものだろうか。

「此れでも十分休んださ。とはいえ、私の休暇に犯罪者共が合わせてくれる訳でも無い。
……そういうお前こそ、元気が無い様に見えるが。体調が万全で無いのなら、こんな場所に来るべきではないと思うのだがね」

フン、と偉そうで。尊大な言葉。
しかしその声色と視線は――彼を気遣う様に、僅かに眉尻が下がっているのだろう。

山本 英治 >  
「マジすか、髪型に気を使う気力だけは残しておかないとダメだな」

口の端を持ち上げて笑う。
去年、戦闘の末に異能者を殺害。
その今際の際の異能発動により呪われ。

今は死んだはずの親友が血塗れの姿で自分を罵る幻影を見る。

力は衰え、精神は萎え、異能の発動機会は減った。
それでも。

風に舞う枯れ葉が目の前に来た瞬間、托槍式に構える。
八極拳、六肘頭。
左掌を円を描くようにゆっくりと動かせば。

風の流れが変わり、空中に枯れ葉が静止した。

「俺の正義、肉体……共に恥じるものなし」

崩拳一打、目を見張る程速くはない。
しかし空を舞う一葉を捉え、空中に粉砕四散させる。

「理合を握れば、俺もまだ戦えますよ先輩」

立つのも億劫そうな、疲労の色の濃さ。
しかしそれを感じさせない動きで彼の隣に立つ。

 
「おっと、先輩を止めに来たわけじゃあない。そこだけは誤解なきよう」

周囲の視線が険しい。穏健派とタカ派が組んで潰しに来た、と思われてもおかしくはないか。