2021/11/15 のログ
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」にノアさんが現れました。
■ノア > 「ジントニック――あー、いや。
悪い、やっぱモスコミュールを辛めで」
カウンター席にかけ、バーテンダーに向けてオーダー。
行き詰ったりすると何かにつけて、ここに来ていた。
目下情報を辿っているのは落第街と風紀の衝突、その影響で生まれた裏金融のうねり、そして先日遭遇した赤髪の歌姫。
1つ目は時期に終息に向かうだろうし、そうなれば2つ目の問題も自然と安定化されていくだろう。
だが、その安定化の中に含まれるには掛金を上げすぎている所もあり、そこが引っかかる。
――『雲雀』の動きだ。
「だいぶ肩入れしてんのよなぁ、彼も」
マネーゲームとして見物するにしては、あまりにも深く入れ込んでいるように見える。
実際今更引けるような領域では無いだろう。
頭取について幾度か探りを入れて知った過去を思えば、無理も無いのだろうが。
「――復讐、ね」
細目の男の過去と、自身。
重なるはずの無い物を重ねて、ひとりごちる。
カタンッ、と小さく音を立てて置かれたグラスの氷を揺らしている。
■ノア > 唇を濡らす程度に口を付け、小さく口に含む。
感じるのは炭酸の弾ける触感、次いでそこに乗ってジンジャーの辛みとウォッカの高い度数が鼻を抜けて行く。
「オールインするには、分が悪いと思うんだがね……」
理性的では、無いように見える。
それも敢えて、自分の退路を断つように。
乗りかかった船なら降りれば良い。
だが、嵐の中への船出を強行するかのような組織の動きに、悍ましい程の執着心のような物を感じる。
問い掛けるように呟いても、バーテンダーは応えない。
分かりかねますの1点張りで、グラスを磨く手を止めない。
小さく添えられたライムのスライスを軽く絞り、氷の上に雫を落とす。
爽やかな柑橘の香りがグラスの上を舞い、溶けていく。
彼は止まるのだろうか。はたまた誰かに止められる?
それともギアのぶっ壊れた車のように、焼き切れて息絶えるまで走り続けるのだろうか。
「ま、本人にしか分かんねぇわな……」
グラスを傾け、わざと一息に大きく喉を鳴らす。
一瞬のライムの風味の後、汗が噴き出るようなアルコールの感覚が全身を襲う。
■ノア > 実際の所、本人にすら分からないのかも知れない。
怒りも、絶望も、振り回している内に矛先がブレる事はままある。
だからこそ、知りたかった。
もはや仕事の範疇ですら無い、純粋な興味。
(……我ながら下世話なモンだとは思うけどな)
妹を攫われた身として、一方的に感じているシンパシー。
道を見失いつつある自身の前を歩く者の末路が光にあるのか、闇にあるのか。
吐く息は熱く、吸う息は冷や水のように口内をくすぐる。
その感覚がどこか心地よくて、もう一度。
今度はグラスが空になるまで傾けて、グラスの中を氷が転がる音を聴いていた。
■ノア > 「……マティーニ」
空になったグラスを押しやり、言う。
ぶっきらぼうに述べようと、カウンターの奥のバーテンダーは顔色一つ変える事も無い。
ただ、押しやったグラスと交換とでも言うかのように、ただ無色透明の水を滑らせてくる。
言外に良くない飲み方をしていると、言いたげなバーテンダーの眼に、苦虫を嚙み潰したような顔で答えて水に口を付ける。
特別なにかカルキ抜きをしているけでも、買ってきたような天然水のそれの味でも無い。
ただ、文字通り冷や水をかけるような冷え切った水の温度に、火照りは鳴りを潜める。
「……分ぁってんよ、余計な事ァしねぇって」
いじけるように水を飲み下した目の前に置かれたのは真っ赤なカクテル。
ブラッディ・マリーだ。
頼んだ物とは些か異なる物だが、隣の席に誰かが居るという物でも無い。
これでも飲んでろ、という事だろう。
「まぁ、なるようにしかなんねぇモンにヘタに首突っ込む気はねぇよ。
悪いようになった姿を見てぇってわけじゃねぇし。
――酸っぺぇ」
ドロリとしたトマトジュースの舌触り。
柑橘の爽やかさとジンジャーの刺すような辛みが、押し流されるように消えていく。
火照りが消え、知らぬ間に上がっていた心拍数が、徐々に落ち着きを取り戻していく。
■ノア > ドクン、ドクンと。脳に血が巡る。
まだ中に水の残るグラスを額に当てて一つ息をつくと、
頭をよぎるのは赤い髪の少女の姿。
はたして本当に少女なのかどうかすら定かでは無いが、見た目通りであればというのはこの街では今更の話だ。
ロングコートを纏った、歌劇の登場人物を想起させるような、整った顔の赤髪の女。
歓楽街の隅で歌を稼ぎに、という本人から聴かされた話の裏は概ね取れていた。
しかし、風紀の取り調べを受けた二級学生の事を掘り下げて調べると、妙な話も耳に聞こえて来る。
「ただの綺麗な歌姫さんってわけにはいかねぇよなぁ……」
寝床を見繕い、島の滞在証明を用意しておきながら、依頼人を探る。
今まさに納品の連絡を受けた所だが、実際に手元に届くのは朝方になるだろう。
余計な詮索をしない事を探偵としての美学として語る物がいるのなら、そんな物はクソくらえだ。
美学で飯は食えない。理想が叶うほど甘い世界でも無い。
「はてさて、明日の晩大人しく待っててくれてるもんかね……」
言いつつ、グラスの中の赤を眺め、口に含む。
濁りの無い綺麗な色こそすれど、血のような色のそれ。
口にすれば酸っぱく、それでいてどこか喉の奥に甘さを感じる。
ウォッカの割合の問題か、グラスの中の物は恐ろしい程に飲みやすい。
音を鳴らして飲んでも、潜んだ酒気が頬を赤くする事も無いまま、グラスを空にする。
「なぁ。これさ……」
残滓こそ残せどハッキリとした頭でグラスを指差しバーテンダーに向けて滑らせる。
このカクテルに正しい比率等は定められておりませんゆえ――
バーテンダーは目もくれずそう言い、氷を削る。
その言葉に苦笑すると数枚の札を置いて席を立ち、日も落ち切った落第街の境の風を受ける。
■ノア > 「『汝等ここに入るもの一切の望みを棄てよ』……ね」
閉じた扉に刻まれる文字に背を向ける。
数歩その通りを歩けば、落第街と称される区域からは外れてくる。
暗黙の了解で隔てられたその線を跨ぐ前に、何の気も無しに振り返る。
地獄の門は今日も適度に騒がしく、絶対の不文律に護られた異質さを保っていた。
「門を超えたら地獄の衆愚の仲間入り、
外の法を求めるな。内の無法を持ち出すな……ってね」
厄払いでも無いが、どこか埃っぽい店内の空気をパンパンと払い、歓楽街の内側へと足を向ける。
この島では悩みの種は尽きない、仕事の種もまた同様に。
冬の冷たい風の中、緑のロングコートが揺れていた。
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」からノアさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」にメアさんが現れました。
■メア > 「ほら、カレーだよ―!皆食べていってね―!」
カン、カン、と大きい鍋をお玉で叩きながら、喧伝する。
いわゆる、炊き出し。歓楽街で懇意にしている人数人と、落第街で難を逃れた内の協力者数十名によるもの。
相手は、勿論戦火に巻き込まれた落第街の住人。
始めてから数分と経たずに行列が出来た。
「はーい、そこちゃんと並んでね―!ご飯はいっぱいあるからね―!」
歓楽街の飲食店からお借りした大釜と鍋を複数使って、調理のローテーションを行いながら、絶え間なくカレーの配給を行っている。
材料は、トラックによって持ち込まれ、なくなればまた配送に来る、という算段であった。
■メア > 「はい、どうぞ!いっぱい食べて元気になってね!」
ご飯とカレーをよそい、笑顔で渡すメア。
作るのは協力者に任せて、自分は得意の笑顔で癒やす係。
深く感謝する人もいれば、涙を流して食べる者もいる。
でも睨んでくる人も、罵詈雑言を放ってくる人もいる。
皆が皆、感謝してくれるわけではない。戦争に介入せず、安全な所で手を出さずにいたのだから。
「助けてあげられなくて、ごめんね」
戦争の最中、親しい人が餓死したであろう人物にも、声を掛ける。
原因はメアではないのに。それでも、助けてあげられなかったのは事実で。
「その人の分まで、いっぱい生きようね」
メアは、手の届く範囲しか助けられない。多くの人を助けようとする手前、自ら危険へと飛び込む事が出来ない。
配給を受ける人達の中には、違反部活員も居る。トラブルは起こり得る。
列整列を買って出た数人が、緊張した面持ちで仕事に当たっていた。
■メア > 「手伝ってくれるの?ありがとう!あ、お医者さんなの?じゃあ、怪我してる人を助けてあげてほしいかな?物資についてはトラックのお兄さんに頼めばもってきてくれるはずだから!」
炊き出しの配給が進むにつれ、協力者が増えていく。
最初はご飯の炊き出しだけであったが、免許を持たない闇医者による仮説診療所、風雨を凌ぐためのバラックの敷設。
唯の炊き出しが、規模がどんどん大きくなっていく。
■メア > 規模が大きくなっていく。
善意の元、人が集まってくる。
笑顔が、増えていく。
「はい、次の人、どうぞ!」
根本的解決には、ならない。
でも、今を生きる気力が生まれれば。人間は、強いから。
明日を生きるための、出来ることを。やっていけるようになるのだろう。
「焦らなくても皆の分はあるからねー!おかわりが欲しかったらまた並んでね―!」
ご案内:「落第街大通り」に柊さんが現れました。
■柊 > 落第街 その大通りが騒がしい そう部下から連絡を受け
スーツ姿の屈強な部下二人を連れやっては来てみたのだが
「なんですかねぇ これ」
随分と笑顔が溢れている
この街でこんな笑顔の人間が多くいることは知らない男は面食らった
「炊き出しか」
随分と規模の大きい炊き出しだ
炊き出しをやっている この行列の先を確かめるため
行列を回り込むように無視して 配給トラックに近づいていく
■メア > 配給トラックに近付けば、カレーのいい匂いが漂ってくるだろう。
そして配給トラックはちょうど新しい物資を補充する為に出るところであり…柊から離れていくだろう。
「はーい、ちゃんと並んでね―!」
行列の先には、落第街には似つかわしくない、桃髪の、ドレスを纏った、トランジスタグラマーな少女が笑顔で配膳を行っている。
片手間で他の人とも話しながらする様を見るに、この者が炊き出しの中心人物だろう。
■柊 >
香ったのはカレーの匂い 久しぶりに嗅いだ匂い
最近はカレーなんて食べていなかった そうも思い出す
配給トラックが離れていく、それを見送り 行列を回り込んで避け
中心人物であろう小さな少女を発見する
更に近づいていき、人好きのする笑みを浮かべ
「やぁどうも ご精が出ますね」
少女が此方を見たのなら手を振って、男二人を伴ってそう言おう
■メア > 「こんばんは!ご飯が欲しいなら並んで下さいね―!」
笑顔で振り向きながら、カレーを配膳している。
「それとも、お手伝いさんかなー?」
鍋の底を浚いながら、聞く。次の鍋が持ってこられる。
行列を整理する数人と、トラブルを起こさないよう警邏している数人が、柊の事を睨んでいるだろう。
■柊 >
「ああ、ご飯ではありませんよ」
毒気のない笑顔に 肩を竦め
「お手伝いさんですよ」
折角笑顔が見られているのだ
問題を起こす気はない、主張するように両手を上げ
睨み返していた部下を宥め
「あなた達は列整列のお手伝いに向かいなさい」
指示を出した ならば此方は
「私はどうすればいいでしょう? お嬢さん」
■メア > 「あら、それはありがとう!」
新しい鍋のフタを開け、中身をかき混ぜながら、礼を言う。
「んー、えーと。何が出来るのかしら?」
配膳を行いながら、聞く。
仮説されている診療所には闇医者が居る。
料理している者達は歓楽街の者と落第街の者が混じっている。
中にはみすぼらしい人が芋を洗ったりしているだろう。
■柊 >
「いいえ、此方こそありがとうございます」
新しい鍋の蓋を開け 中身をかき混ぜる様子 それを眺め
何ができる その問いかけに悩んだ
周りでは色々な人が協力し 笑顔を作り上げていく
それに対して此方は? 刃物の扱いが上手いくらいだ
「配膳って足りてます? 足りているのならば野菜でも切りましょう」
こうして思えば何も出来ないな と考えながら指示を待つ。
■メア > 「んー………」
少し、考える。
落第街にしては珍しい、整った身なりの人だ。
恐らくは何かしら能力に長けてはいるとは思うのだけれど…
そういえば、さっきお付きの人?に指示を出していた気がする。人の上に立つ人なのかな?
「んー…なら、指示出しお願いしていい?私達寄せ集めだから、結構みんなバラバラに動いちゃってるのよ。頼める?」
よく見てみれば、料理に関してもローテーションは組めているものの手が空いている人が数人居る。警邏に関しても計画が無いため配置や経路がぐちゃぐちゃになってしまっている。
手の入れられる所は、沢山あるだろう。
■柊 >
こんな可愛らしい少女が笑顔の中心とは 恐れ入る
嫌味もなく、そう考え 喉奥で笑った
「あー それならば何とかできそうですね」
指示を出すのはどちらかと言えば得意分野で
もう一度辺りを見渡し どこが悪いのかを頭に入れ
まずは警邏が重要だろう そう考えた
「ちょっと注目してくださーい」
警邏をしている人たちの所へと赴き 手を叩く
注目させたなら まずは大まかに指示を出し 経路に入り
警邏をしている人たちへ細かく指示を出していく
そうすれば、ぐちゃぐちゃだった配置や経路も綺麗になっていっただろう
「お次は……」
料理に関しても暫く眺めたら 空いている人間に指示を出し
できるだけ手すきの無いように改善されるはず
■メア > 「おー…」
手際に、感心する。
彼が指示するだけで人が動き、改善され、人が浮く。
浮いた人員は別の事が出来、メア一人だった配膳も、二人、三人と増えていく。
結果として、配膳スピードが増し、行列の流れも良くなる。起こり得るトラブルも減るだろう。
「やっぱり出来る人は違うなぁ」
配膳に追加された人の提言を受けて、休憩に入る。
今日一日は休憩するつもりはなかったんだけどなぁ。
■柊 >
「はいそこ、喧嘩しない」
どちらが先に入っていたか 口論している二人へと注意
睨みを効かせてきたが 警邏の人員も睨んだので問題ないだろう
だいたい指示は終わっただろうか 改善できる場所を把握し
口を出しては違う場所へと赴き 大体の問題が改善された頃
少女のもとへと 戻って
「こんな所でどうでしょう」
全体の動きが良くなって満足そうだ
休憩に入ったのだろう 相手を見下ろし
「お疲れさまです 小さいのによく働きますね」
嫌味のない言葉だったが どう感じただろうか
■メア > 「流石の手際、ってところかしら。人を侍らせてるだけはあるわ」
ペットボトルに入った水を飲み下していく。
するとそこに配送のトラックが戻ってくる。
効率が上がったお陰で食料品が不足していたようで、すぐに荷物が分配されていく。
「やらないといけないなー、って思ってたし。戦争じゃ見てることしか出来なかったから」
彼女はよく落第街に出入りはするが、落第街の住人ではない。
慰安でよく訪れている為、落第街ではちょっとした有名人であり…これだけの人数が集まったのも、その面目躍如だろう。
「なんにせよ、無事で何よりね。此処にいる人達だけでも」
戦火に巻き込まれた人数は数知れす、此処に居る面々は生活を潰された者達が殆どだ。無事とは、言い難い。
それでもメアが無事と言うのは、生きていればなんとかなる、と信じているからだ。
■柊 >
「まぁ、そうですかね」
言葉をもらい、肩を竦め またやってきたトラックへ目を向け
分配されていく荷物を目で追っていく
「ははは、私もですよ 見てることしか出来ませんでした
ちょっとした仲間ですね」
歯がゆいですねぇ
そう告げた後、笑みを浮かべながら視線を相手へと
「……無事、ねぇ」
相手からの言葉 此方は肩を竦めるだけにとどめた
ある意味では此方にとってはかきいれ時 のはずだが そんな気分にも慣れなかった
「信じてるんですか? ここの人たちのことを」
無事、というからにはなにかを信じているのだろう
そう 考えた
■メア > 「そりゃぁ、勿論」
笑顔で、応えてみせる。
「此処の人たちはね。私が連れてきた数人以外は…皆、落第街の人たちなの。戦火に巻き込まれた、今を生きるのに必死な人たち」
簡易バラックに目を向ける。
身を寄せ、カレーを掻き込む人々。水も食料も無く彷徨っていた所に降って湧いた善意。
そして、その善意は伝播していく。
簡易バラックの敷設や、警邏への手伝いを申し出る者。同じ境遇の者を気遣うもの。
自らの知識を生かして怪我人を診る者。付き添う者。
落第街の常識では、見られない光景。
「美味しいものを食べて、生きる気力が湧いてくれば…人間、何でも出来るものなのよ」
■柊 >
「……」
勿論と 断言し笑顔で応えられ
言葉が出なかった なぜそこまで言えるのか それが分からなくて
「それは、すごいですね そんな酔狂な人達もいるんですねぇ」
此方も、バラックへと目を向けよう
そこには、幸せそうにカレーを掻き込み 笑顔で笑い 雑談している人々
此方はここがどこだか一瞬わからなくなって 可笑しそうに 笑った
手伝いを申し出るもの 気遣うもの 高額な医療費を求めるはずの闇医者までも 加わっている
本当に、ここはどこだろう
「対立や憎悪をも超えて、ですか?」
たしかにこの光景は 裏では見られないものだ
まるで表にいるような そんな錯覚すら覚える
「貴女は凄いですねぇ」
心からの 感心の言葉を言おう