2021/11/16 のログ
メア > 「悪意や憎悪は、伝播するわ」
柊の言葉を否定しない。
確かに禍根はある。今此処に風紀の人間が現れれば、トラブルが起きない、とは言い切れない。
事実、彼らに奪われたモノは、多い。

「この中で風紀に対する憎悪を燃やしてる人も、少なくはないわ」
配膳で、落第街の者達と対面しているからこそ、わかる。

憎悪の火は、消えていない。

「でもね。その対立や憎悪、絶望に。たった一匙。それだけの希望でいいの。それさえ、あれば。」
そう。カレー一つで、笑顔になれる人々であれば。

「前を向いていけるって、私は思うの」

>  
「そうですね、簡単に広がっていく」

相手の言 否定する気もない 善意を伝播させることは難しい
それよりも 悪意や憎悪などは、火のように簡単に広がっていく

「そりゃあそうでしょう ここまでしたんですから 今や憎悪まみれ」

此方も 憎悪に身を焦がすものであった 
しかし最近は揺れに揺れている
そうして、こんな光景を見てしまえば 天秤は激しく揺れ動く

「……そんな考えになれたら、素晴らしいでしょうね」

一匙の希望 それはある出会いによって此方にも向けられたものだ 
この間の化け物との問いでも希望を見つけられたような気がした

「希望を入れてもらって それでも迷っている人はどうするんです?
 もしくは、前を向けず後ばかりを見る人」

メア > 「…………大丈夫。迷う人もいる。前を向けない人もいる。

なら、その少しの希望で、前を向いて、『誰かを助けようとする人』もでてくるわ。今、此処で、手伝ってくれてる人達…そう、貴方も、その一人だと思ってるわ?」

悪戯っぽく、笑って見せて。

「一人ひとり、皆違う。出来ることも、感じることも、全部違う。
だから一つの手段で助けられる人もいれば、助けられない人もいる。でも。

私一人が、全部救う必要はないの。
私が救った人が、誰かの救いになればいい。助け合いの輪を広げていけばいい。
そうしたら、救いの手から零れ落ちる人も、減っていくと、私は思うの」

炊き出しの方へ、目を向ける。

「荷物を運んでくれる人がいなければ、料理することすら出来なかった。
料理する人がいなければ、炊き出しすることも出来なかった。
列を正す人がいなければ、トラブルが起こっていた。
警邏を申し出てくれる人がいなければ、トラブルを収められなかった。
診察を申し出る人がいなければ、怪我人を放置しなければならなかった。
力のある人がいなければ、風雨を凌ぐ場所すらなかった。

人が、善意の元集まって。それに伝播されてくれる人が、協力して。助け合って。
そうして、皆が前へ向けるようになるのよ」

>  
誰かを助けようとしている一人? 此方が?
最初は何をしているのか 興味本位だった 手伝ったのだって 興味本位

「助け合いの輪、ね」

紡がれていく言葉は ハッとさせられるようなことばかり
誰かの救いになればいい なんて思ってもいなかった
いつだって自分のことばかりで

此方も、炊き出しの方に目を向けて

「ははっ 確かにそれができれば世界は平和でしょう
 落第街も平和になるでしょう それが、できれば」

興味本位だったのに 笑顔を見ることが出来て 嬉しいという気持ちになった
もっと見たいとも 思うことが出来た
また、落第街の希望を 見つけてしまったようだ

「それは理想論だ そう言われたらどうします?」

それでも そんな問いも向けよう

メア > 「勿論、理想論よ。これで誰も彼もが救えるわけじゃない。
手の届かない人は助けられないし、大きな悪意には翻弄されるしかない」
事実、落第街を主戦場とする戦いでインフラも何もかもがボロボロだ。
トラックを用いて炊き出しをしなければならないほどに。
落第街の名の通り、落ちぶれた者達の街で、その復旧には数多の困難があることは想像に難くない。

「でもね、そんな事を言ってくる奴には、こう言ってやるのよ」

また、炊き出しの方へ目を向ける。
数百人以上が、炊き出しのカレーを食み、知己と再会し、涙を流しながらも、笑顔で溢れかえっている。

「これが現実だ、ってね?」

理想論、机上の空論、偽善。そう言って反発するのもいいだろう。
方法が間違っている、と言われても否定は出来ない。もっといい方法も、あるだろう。

しかし。

「事実は、空論に勝るものよ」

此処にある笑顔は、今確実に存在するものなのだ。

何者にも、否定は出来ない。

>  
「ええ、また戦場になるかもしれない
 そうなったら抗えるものはほんの一握り」

そうだ、大きな悪意 力 それには翻弄されるしか無い
やはりそうなるか 心を落胆で満たしかけたその時だ

こう言ってやる そういう相手の視線を追ってみる
気付けば、大きな輪が出来ていた そこは、表にも負けないくらいの 光景

「ははははは! 確かに現実ですね
 この街で生きてきてこんなのは初めてみましたよ」

清々しいほどの現実 こんな街でこんな光景が見られるとは 思ってもいなかった

「いい言葉ですね 頂きました」

今度使わせてもらいます そう紡いだ後は飽きずに笑顔の輪を 眺め

「私は、柊と申します 貴女は?」

作った笑みではなく 本当の笑みで笑顔の集団を眺めながら 問い

メア > 「メア。メア・ソレイシャスよ。柊さんね、覚えておくわ」
笑顔を向け、握手をしようと、手を伸ばす。
落第街に通ずる者なら、名前を聞いたことがあるかもしれない。

そして、少しして、気付く。

「…柊さん、って。『雲雀』の?」

手を伸ばしたまま、首を傾げる。

>  
「メア・ソレイシャス……ああ、なるほど」

よく話題に上がる名前だ 慰安で訪れてくる 心優しい少女
笑顔の輪から視線を戻す 笑顔を向けられたなら笑みを浮かべたまま
優しくその手を握ってゆっくりと上下に振ろう

「……はは、ええ。悪徳金融の柊です」

こんな悪徳業者相手だ、憎悪の視線の一つでも覚悟しよう

「がっかりしました? こんなのが手伝っていて」

メア > 「いえ、そんなことはないわ。そんなこと言ったらあそこのお医者さんだって中々のものだもの」

診察をする人に目を向けて。
柊さんが感じていた通り、彼は元々法外な値段で医療を売っていた闇医者だ。
でも今は、ほぼ無償で診察を行っている。

「金貸しだって、闇医者だって。対価は苛烈であれどその手段は人を助けるものでしょう?それに………『雲雀』は取り立ては苛烈であれど、きちんと返す人には誠実だし、利息だってそこまで多くはないって聞いてるわ?

表のよりも、『まとも』じゃないかしら?」

『雲雀』が苛烈になるのは契約を破った時だけ。それは自身を守るための術であるし…メアはそれを否定するつもりもなかった。

>  
「あはは、あの闇医者何してるんでしょうね」

そんな柄ではないだろうに ほぼ無償で診察を行っている
それが可笑しくて クツクツ 喉奥で笑おう

がっかりされるだろう、そう 思っていたのに
返ってきた言葉は 優しいもので

「ふ、あはは…! そう来ますか! 本当に面白い人ですね
 メアさんは あーあ、表よりもまともですか」

確かに苛烈になるのは契約を破ったものにのみだけ。

”表よりまとも”その言葉に救われた気がした 
ずっと胸の奥に溜まっていたものが消え去るような
そんな感覚をも 覚えて

「私が先生になりたいって言ったらどうします?
 応援してくれちゃいます?」

メア > 「そうね、なりたいものがあるのなら…それが間違ったものでない限り、応援するわ?」

でも、と付け足して。

「今の貴方には、今の貴方にしか出来ないこともある。それを放り捨てる前に、まず後継者を作るべきかしら?」

金貸し業でしか救えない事だって、ある。それを蔑ろにするのは、メアにとっても『困る』ことになる。

「それが出来たのなら、先生になるのも良いんじゃないかしら?後継者に『教える』事も出来たんですし」

>  
「後継者、ですか……いるにはいますけどね」

まだ、全てを引き継ぐ準備はできていない
教えることはまだたくさんある

「ふ、はは 仰るとおりで言葉が出ませんよ」

自分の右腕に すべてを教えることが出来たら 
組織がその時まで存続していたら そうしよう

「全く、惚れてしまいそうですよ」

冗談を吐いて ウィンクをしよう

メア > 「惚れてもいいけれど…私は『一夜の夢』だから。誰かのものになる、っていうのは出来ないわよ?」
ウィンクを、返して見せて。

「さて、そろそろ配膳に戻ろうかな。十分休ませてもらったし」

そう言って、カレーの配膳に戻る。噂を聞きつけて食料を求める列は増えていくばかり。
なにしろおかわり可なのだ。休憩の前と後で、その長さは2倍ぐらいになっているだろう。

>  
「ははは、どうやらそのようで」

いい夢を見せてもらった
それだけで、充分だった

「そうですか、では私は仕事に戻りますよ
 最後まで手伝えなくすいません」

やることは、見えてきた
あともう少しで くっきりと見える そんな予感がして

「それでは、頑張ってくださいね?」

ウィンクをもう一つしたら 踵を返して 
二人の部下を回収して 消えてゆこう
 

メア > 「お疲れ様。ありがとうね、助かったわ」
配膳をしながら、手をひらひらと。

指示によって、効率も良くなった。
手伝いを申し出てくれる人も、増えてきている。

暫くの間は、この炊き出しは続けられるだろう。

悪意に、晒されなければ。

ご案内:「落第街大通り」からさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」からメアさんが去りました。
ご案内:「落第街 大通り 炊き出し場」にメアさんが現れました。
メア > 「はい、どうぞ!今日は肉じゃがですよ―!」
前日と同じように。いや、大きくなった炊き出し場に、二人の配膳役と一緒に。食料を求めて来た者達へ食事を分け与える。

最初は十数人の試みだった。それが今や数十人の協力者…それも、無償でついてきてくれている。多少の対価を求めながらも、闇医者まで協力してくれていた。

助け合いの輪が広がりつつある、落第街の一角。その噂を聞きつけて、更に多くの難民が集まりつつあった。

そして、人が集まれば、問題も起こる。

「うーん……沢山人が集まってくれてるのはすごく嬉しいんだけど…流石に、キャパオーバーかなぁ」

待ち時間が3時間。どう考えても炊き出しの待ち時間じゃない。
どう、解決したものだろうか。

メア > 「一番手っ取り早いのは炊き出し場を他に作る、なんだけど……」
メアが此処を炊き出し場にしたのは、歓楽街から物資の調達が可能な位置であるからだ。
辛うじてトラックの運用が可能であり、それ以外の場所は砲撃等によって路面状況が最悪に近い。
建物の倒壊等も起きており、メアが記憶している地図も役に立たない可能性もある。

そもそも新しく炊き出し場を作るなら補給ルートの他に調理道具等の調達も考えなくてはならない。
多くの人数を相手する以上、それなりのものを用意しなければならない。
専門店に行って買い付けに行っても良いのだけれど、残念ながらそこまで資金があるわけでもない。道具にかまけて食材を購入する資金が無くなってしまえば本末転倒である。

ご案内:「落第街 大通り 炊き出し場」に照月奏詩さんが現れました。
照月奏詩 >  
 つい最近まで自分の戦いは続いていた。今回の騒動で表に出ようとしてこの街の損害を考えもしないで暴れようとした組織や集団。必要以上に手柄を求め、無茶苦茶な攻撃を加えようとしていた逸れ風紀委員。それらに攻撃を加えていたうちにタイミングを失っていた。
 本当であれば自分達がやるべきだった事。それをボランティアがやってくれた。だからせめて、悪意がここを襲った時にここを守れるように。この場に足を運んだ。
 といえば恰好もつくだろう。それも半分は正解だ、半分は。

「悪い、肉じゃがは良いんだが……清潔な布とお茶だけもらっても良いか」

 そうボランティアをしていた少女に話しかけるのは一人の青年。見た目だけ見れば黒いマスクをつけたただの青年。しかし腹部に添えられた手。そしてその下には大きな血の跡。足元にポタとたまに落ちるのを見ればどう見てもけが人と分かるだろう。
 連日にわたる仕事。それらをこなしていた時に生まれた一瞬の隙、その間に食らった銃弾。しかし治療できるようなインフラはほとんど裏には残っていなくて……頼れるのはここだけだった。本来であれば用意するはずだったここで助けられるというのも皮肉だ。
 しかし背に腹は代えられない。

メア > 「あら…ええと、ここで出来るのは応急処置ぐらいよ?」
言われた通り、お茶…ではなく、白湯を紙コップに入れて渡しながら。

清潔な布は闇医者に渡っている。
調理場にあるのは使って洗ってを繰り返しており、傷口を覆うモノとしては適切ではない。

「治療を受けるなら、トラックに載せていって貰ったほうが早いかも…」

闇医者も今一人で診察しており、こちらも長蛇の列を成している。
軽傷の者が殆どだが、中には目を覆いたくなるような重傷を負っている者もいる。

それを、ただ一人で、文字通り寝る間も惜しんで治療している。

手に負えない者は空になったトラックの荷台に載せられて病院まで運ぶ手筈となっており…普通に診察してもらうにしても、その方が早い可能性もある。

「圧迫できそうなもの持ってくるから、ちょっとまってね」

そう言って、持ってきたのは。野菜などを入れていた袋を水で洗ったもの、そしてテントを張る際に使う麻縄だった。

「治療、とまではいかないけど。これで圧迫すれば出血はましになると思う」

こんな情勢下でしか許されない荒療治だ。やらないよりは良い。

照月奏詩 >  
「忠告感謝するよ、けど……俺より優先するべき人が大勢いるっぽいしさ」
 
 と目線を送るのは同じく列に並んでいる人たち。自分など銃弾1発喰らった程度。まぁ重症であることは間違いないが、幸いにも急所は外れているわけで。
 ならば止血だけでいい自分より優先するべき人が大勢いるだろうという判断だった。弾丸はもうとっくに抜いている事だし。

「ん、ありがとう」

 もらった布を当てるとズボンのベルトを抜き、圧迫するように巻き付ける。少し顔をしかめ息を強く吸い込むが、それからゆっくりと吐き出す。

「これでよし。ホント助かったよ。流石にボロ布で傷を覆うわけにもいかなくてさ」

 と貰った白湯を一口飲む。暖かい水が冷えた体に染み渡る。
 それから周りを見回して。

「大変そうだな、ホントなら手伝ってやりたいんだが……生憎この傷じゃな。整列くらいなら手伝おうか?」

 と今の自分でもできそうな事を提案する。
 有事になれば戦闘だろうとこなして見せるが、有事でないなら安静にするべき怪我だ。

メア > 「いえ、トラックを待ってて。怪我人を働かせる訳にはいかないし…それに、銃創を甘く見ないほうが良いわ」

渡した野菜の袋の布だって、衛生的に良いというわけではない。止血しても動けばまた出血するし、感染症のリスクだってある。

「急所に当たって無くても、最悪死に至ることだってあるんだから」
腹の銃創に手を添えて。
腹には、腹膜がある。内臓がある。一つ一つなくしてはいけないものだ。
銃創から感染症を起こしてしまえば、腹膜を通して内臓へ菌が回り、臓器不全に陥る。

「早期の治療は後の活動にも影響を与えるわ。幸い、落第街以外の施設は生きてるんだし、早いことそっちに掛かった方が、賢明だと私は思うわ?

貴方が行けない、という事情があるなら話は別だけど」

照月奏詩 >  
「そもそも歩き回れる怪我なのに正規の病院かからない時点で御察し。だろ?」

 いけない事情があるのならというのにそう返して苦笑い。
 自分の身分はすべて裏ルートで作った物でしかない。当たり前だが正規の病院なども使えないし、治療などもってのほかである。
 手を添えられた瞬間には少しだけ声を漏らすだろうが。すぐに元に戻す。

「ま、働かせないってのは申し訳ないがありがたくはあるな。正直結構ツラい物があるし」

 相手がそういってくれるのなら、安心して座っているとしよう。その辺の空き箱に腰を下ろすと改めて白湯を口に含む。

「にしても、あんたみたいなのがいてくれると本当に助かるよ。殺伐としてるこの街なのにここだけは平和な空気だ」

 と回りを見る。自分の好きなこの街の空気、変な言い方だが街全体が家族のような雰囲気を持ったスラム等独特の空気がここにはあるように感じる。
 それを感謝すると相手に目線を向ける。

「それにしても、医者か何かか? 風紀って感じじゃないし。さっきの判断とかも結構的確だったぜ? 内臓だけは綺麗に外れた銃創だしこの傷」

メア > 「いえ?私は唯の、ここの学生よ?異能も魔術も何も持たない、唯のね」
悪戯っぽく笑ってみせる。

「ただ、前に居た世界が、戦争ばっかりだった、ってだけよ」
だから、本格的な治療の仕方は知らなくとも。
応急手当の方法は知っている、というだけなのだ。

「んー…でも、やっぱりお医者さんに掛かった方が良いと思うけどねぇ。個人経営の診療所とかなら身分証明いらないって所もあるし。何より―――――」

彼の言動に、思考を巡らせる。彼は、恐らくいい人だ。この現場を見て、自分を後回しにして、手伝いを申し出る。それは。

「治療を受けなきゃ、動けない時間が増えて、助けたくても助けられなくなっちゃうよ?なんだったら、私が紹介してあげてもいいから」

彼は、助ける側の人だ。一時ここを離れて付き添っても良いかもしれない。
幸い、柊さんのお陰で私一人ぐらい抜けても大丈夫な体制にはなっている。

照月奏詩 >  
「なるほど、異世界人ってタイプか。それにそんな世界出身なら詳しいのも納得だな」

 相手の事を聞ければなるほどと納得する。
 異世界人、それもそんな世界なら納得だ。そしてその後の言葉には少しだけ笑ってから。

「問題ないって、弾は抜けてるし……知り合いの闇医者もいる。つっても、酒が抜けるとダメ医者で今頃酒がないって駆けまわってるからさ。つまりあれだ、ホントに応急処置程度で良いんだよ」

 血の量だけは多いけどと苦笑いをする。
 でもたぶん相手も相手でほっとけないというのもあるのだろう。そうでなければこんな場所などするわけもない。なのでと少し考えて。

「……じゃああれだ。応急処置は知ってるって事だったよな? だったらこんなベルトで無理やり抑える感じじゃなくてしっかりと応急処置だけお願いしてもいいか? 俺がやると本当の意味で急場しのぎになっちまうから」

 知ってるのなら彼女に任せた方が確実に応急処置にはなるだろう。
 だからそっちをお願いできるか? なんて言いながら首を傾げた。

「……あー、でもあれだな。だとしてもあっちのテントの影か何かに移動するか。ここで銃創公開とか飯がまずくなる」

 というとついてくるか来ないかはともかく、テント側へと移動していく。
 来るなら任せるし、来ないなら自分で適当にしっかりと治療するだろう。

メア > 「んー、でもねぇ。応急処置って言っても、道具があんまりないからねぇ」
そう言いながら、調理場の水のボトルを手に取りながら、テントへ移動する。

「銃弾は貫通してるの?それとも残留してる?傷も見せてもらっていい?」
メアは袋を渡しただけで、ちゃんと傷を見たわけではない。
傷を見なければ、手当もできない。

照月奏詩 >  
「残留してただな。その場にあったナイフつかって軽く斬って引っこ抜いた。むしろ流血はそれが原因だな。つっても、銃弾が残ってる方が鉛毒とかそれこそ残った弾が回りを傷つけたりでヤバかったし」

 テントまで移動すれば、傷を見せる。話した通り銃創その物よりむしろ銃弾を取り出す過程でできた怪我の方が問題というのも事実だろう。
 まぁ銃弾を喰らったのもそうだしナイフでそれを切開して取り出したというのもそうだし。明らかに一般人ではないというのはバレるだろうが。

「で、道具だが……そうだな。これなんかは結構使えるかもしれない」

 と取り出すのはテーピング。しかし、妙に綺麗。
 引っ張ってちぎるも、元の長さは変わらない。

「所謂マジックアイテムみたいな物だ。友人に貰ったんだが尽きないテーピングテープ。だとよ、布とうまく合わせれば包帯代わりにはなるんじゃないか? 流石に図分で背中にグルグル巻きつけるのはできないけど。他の奴ならやってもらえるだろうし」

 なんて笑って答える。

「なんか悪いな、結構厄介な仕事持ってきた」

メア > 「……んー。取り敢えず横になってくれるかしら?」
テントに敷かれたブルーシートの上を払いながら。

「へぇ、こんな便利なものが。これは…まぁ、後で」
正直止血云々は後だ。最悪これで圧迫止血すればいい。

「とりあえず、傷の洗浄。汚染物が残ってたらそこから感染症になっちゃうから」
横になったのならば、持ってきた水で傷の洗浄を行うだろう。

照月奏詩 > 「了解」

 言われた通り横になり、力を抜く。
 流石にこの状況でどうこうはしてこないだろうというのもあるし、そういう事をしそうにないという信頼程度はある。

「汚染物か、たぶん無いとは思う……たぶんだけどな。そのナイフが不潔だったらなんとも言えない」

 なんて軽口をたたくが、戦場が始まれば。

「いっつつ、やっぱり水だとしみるな」

 なんて言う。
 それから少しだけ彼女の方を見て。

「……元の世界で、応急処置は結構やってきたのか? これで実はあんたがはじめてだなんて言われたら。少し笑っちまうが」

 と少しだけ冗談を交える。
 問題ないというアピールも含めてだし、少し真面目になりすぎてる彼女に対して力抜いたらどうだと暗に言う目的もあった。

メア > 「初めてでは、ないわね。元の世界でもそうだし、こっちでも何回かはやったことはあるわ」
先程と同じように、水で洗った野菜の布袋を使って傷の中を拭う。
そして、また水で洗い流す。

「ナイフよりも、銃弾のほうが、ね。銃の使用状況にもよるし、銃弾そのものもそうだし。なにより銃の火薬が身体に良くないから。
ナイフで切ってるからわかると思うけど…表面の傷より中の傷が大きいから。こうやって洗わないと感染症を防げないの」
銃弾は、人体に入ると回転と揺れ、変形と断片化によって皮膚下の傷を大きく広げる。見た目以上に傷が深く、広いのが銃創。断片化の事も考えれば、ナイフ一本だけで銃弾を全て除くのは難しい。

「じゃあ、このまま止血しましょうか」
先程と同じように、野菜の布袋とマジックアイテムのテーピングを使って止血する…のだが。
傷を布で抑えるのでなく、傷に布を『詰めて』上からテーピングで圧迫していく。

照月奏詩 >  
「そりゃ安心だ」

 こっちでも 何回かはあると聞けばそう言って笑う。
 
「だろうな、相手が正規軍とかなら貫通させてくれるんだろうが……こういう所じゃ貫通より殺傷力重視だからな……へぇ、そんなやり方もあるのか」

 傷に詰められる。それは初めてみたななんて言ってはいるが、顔は思いっきりしかめている。
 いたくないわけがない。というより普通ならばそれこそ痛みで叫ぶような奴もいるような苦痛だろう。生憎そういうのには慣れてしまっているわけだが。

「にしても、助けてもらって言うのもなんだけど。変わり者だな……こんな場所でボランティアしてるのもそうだし。初対面の相手を血まみれになっても救うのもそうだしさ。ま、逆の奴より何千倍も良い事だけど」

メア > 「銃創にはこれが特に有効なの。傷が『中』にあるから。深い切創とかもこれが有効なの」
表だけの血を止めても、中の血は固まらず噴出する。だから、中にまである傷に直接詰めて止血する。
今ではスポンジを利用した、傷の中に注射する止血注射器があるとかなんとか。

「んー…そうねぇ。私、メア・ソレイシャスっていうの。それで理解してくれるかしら?」
落第街ではちょっとした名のある人物。
目立つ格好でありながら襲われたことが殆ど無い人物。
彼女は落第街で慰安を行っており、救われた人もいる。

照月奏詩 > 「勉強になった。今度から必要になったら使わせてもらう」
 
 できれば使わないのがベストではあるが。やはり仕事柄どうしても銃創をこしらえてしまう事はある。
 そういう時に対処を知っているのは便利だ。
 名前を聞けば少しだけ考えるようになって。

「あー、噂の奴か。ま、どっちにしても変わり者であることには変わりないけどさ」

 どっちにしても組織でもないのに周りを助けて回る変わり者だ。
 まぁ、良い奴であることに変わりはないのだが。
 そうして止血作業が終われば体を起こし体の様子を確認する。
 別に動きを阻害する事はない。確かに良い腕と言えるレベルだった。
 
「ん、問題なし。ホントに今回は助かったよ。血の量とかより単純に動きにくくてな……だいぶ動きやすくなった」

メア > 「動きやすくなったからって、動いていいわけじゃないからね?」
動きを制するように、言葉で刺す。

「動いたら布が吸って固まった血が崩れてまた出血することになっちゃう。後は闇医者さんの所に行くか、ここのお医者さんに治療してもらうか、どっちかにしなさい」
銃創をナイフで切り開いた手前、傷が広くなっている。感染症のリスクも減らしてはいるが無くなったわけではない。
本来なら入院して然るべき傷なのだ。

照月奏詩 >  
「わかってるって、だけど……今のこの街でけが人がブラついてたらいいカモにされるからな。最低限自衛できる程度には動けないとだろ」

 と苦笑いを浮かべる。
 そして立ち上がる。

「ま、もう少しここでゆっくりしたら移動するよ。あのヤブ医者の事だからそろそろ酒を見つけるだろうし。俺の名前は……まぁ、伏せさせてくれ」

 と申し訳なさそうに。
 とテントの扉に手をかけて。

「ま、でもその内会うかもしれないから。もし気が付いても知らないふりしてくれや」

 なんて言いながらテントから外へと出る。
 のんびりすると言ったものの、外に出たときにはその姿はどこかへと消えておいた。
 表に出ては彼女に必要以上に負担をかけてしまう。だから影からこの地を見守っていた。そして約束通りしばらくすれば闇医者の所へと向かったことだろう。