2021/11/18 のログ
ご案内:「落第街大通り」に雪景勇成さんが現れました。
■雪景勇成 > 「…ああ、そうなのか。じゃあ、改めて――…”おかえり”ノーフェイス。」
古巣に帰ってきた感じ、という言葉に彼女とは似て非なる赤い瞳を瞬きさせて。
フッと、僅かに口元を笑みに変えながら改めてそう彼女に言葉を掛けようか。
彼女の何もかもをまだ己は知らない。当然だ――今回でやっと2度目の遭遇なのだから。
知っていくならこれからだろうし、積み重ねるのも当然これからなのだ。
いずれ、彼女の色々を知る事がある機会もあるだろう――ならば。
それを面倒臭がらずに楽しみとするのが、きっと正解だ。少なくともそうしておきたい。
「――まぁ、否定し切れないというか割と当たってるんだろうなぁ、と思う程度にはきっちり相手を見てると思うぞアンタ。」
仕事とプライベートは極端なくらいに別個に割り切っている。
そうでなければ、自分が破壊した街の一角を堂々とプライベートで歩き回りはしないだろう。
どちらかといえば、今のこちらの方が素の性格…と、言うほどでも無いが何時もの自分だ。
仕事の時も取り繕っているわけでは無いが、仕事だからこその冷徹思考になっているのは否めない。
二重人格でも何でもない、公私の完全な区別化――自然と身に付いた彼の処世術だ。
銃の形を真似た指先を向けられれば、相対するようにこちらも同じ仕草を彼女へと向けて。
「…そりゃ、名探偵だって偶には”ハズレ”を引く事もあるって話だ。
つまり…しょうがねぇよ――古今東西、言葉と肉体言語がコミュニケーションの基本だからな。」
話さなければ相手を理解する事も出来ない。時に激突する事もあるだろう。
誰かを理解したいのならば、勝手に決め付けたり推測したりではなく…飛び込むしかない。
銃の形を作った指をこちらは静かに下ろしつつ。可愛い娘だった、という追加情報には…
「…アンタ的にむしろそれが一番重要だったんじゃ?」と、突っ込みを入れてみる。
「……ああ、アンタの言葉は身に染みるよ。…長年こうだったから癖になってんのかもな。
…ただ、何が楽しいか…っつーのが自分でもまだよく分かってねーんだ。
…まぁ、少なくともアンタとこうして話しているのは”楽しい”とは思う。
正直、自覚はあるけどそこらは俺はまだまだ初心者な訳だ。」
面倒臭いという口癖も、無愛想な口調も、結局は自分の問題で。
「たのしい」と思える事を探すならば、そんな態度の一辺倒ではいられない。
…多分、いやとっくに自分は理解しているのだ。我ながら重過ぎる腰だとは思う。
(…こうやって、相手の事をちゃんと目を見てきっちり言ってくるのはやっぱ律儀だよな…)
お陰で、こっちも何時もの面倒臭がり無愛想さがちょっと抜け気味だ。
むしろ、それでいいのかもしれない――きっと、ガキの頃は自分はそうだったんだから。
「そうだな――じゃあ、一つ。アンタが何かやろうとしてたら、遠慮なく首突っ込みに行かせて貰うさ。」
と、笑みを浮かべた…ちょっと苦笑気味なのは素直な笑顔は慣れていないせいだろう。
■ノーフェイス >
「こんな距離で見てたって、相手をちゃんと見れてるか自信はないケドね。
…フフ、そう、ボクも『たのしい』。
キミというニンゲンを知れること、こうしてお互いの歩みがこの島に刻まれていくこと…
これはボクとキミにしかできなかったことだ、それをいまは誇ってみよう?」
女はそう笑った。
わからないこと、知ることに対する不安や怖じというものが女にはなかった。
動くことが目的に近いのだから、それを恐がっていても仕方がないから大胆になる。
「凄いじゃないか、ボクはだいぶずけずけ言ったけど…自覚あったんだな!
じゃあその長年の積み重ね、ずっしり重たい腰をあげて、冒険をはじめてみよう。
いつからだって始めるのは遅くないんだから、ボクみたいに」
低音弦からはじまる、明るく弾むアルペジオ。
安物の楽器だが、それを至上の音色に変えるのが、奏者の腕の見せ所。
ピックを握った手が、ボディを叩く。
木製の空洞から跳ね返った音が鳴って、弦楽だけでなくパーカッションもひとりで兼ねる。
「キミがフーキイインを続けてれば、いつかそうなることもあるかもしれないケド…
ボクは戦争とかやろうとしているワケじゃないから、そこはどうかご了承を。
お互い、たくさんの『たのしい』を見つけていこう…この島で」
そう、女がやろうとしているのは違反部活。
表の規則に囚われない、なにかを追求する行為。
だけれど違反部活であるということは、必ずしも落第街に与するということではない。
まだなにもない『夜に吼えるもの』だが…良いピースがひとつ手に入った実感が、
女の胸には確かに宿っていたのだ。
「さて…キミのおかげで一曲目がなにか決まった。
それくらい聴いていく時間はあるんだろ?
これがコーヒー代だ…どうぞご清聴を」
スタッカートの効いたストロークを一発、周囲の視線を引き寄せる。
場所代はもう払ってあるんだ、貧乏所帯の『夜に吼えるもの』は、歌わなければ損というもの。
跳ねたリズム、モードはフリジアン。
唇から紡がれるのは、活力に働きかけ、血潮を沸き立たせる、内面の嵐を呼び起こす《うた》。
…ただいま。
■雪景勇成 > 「…まぁ、正直あまり知られるとそれはそれで落ち着かない気もするけどな。」
相互理解は大事だ――語らって、ぶつかって、そうして積み上げてお互いを知っていく。
けれど、決してそれが嫌な訳ではないけれど――長年、何処か避けてきた事だから。
ちょっと、臆病なガキの自分が今の己の袖を引くのだ。それでも――。
だから、不器用な笑顔を浮かべながらも、自分なりの言葉を返すのだ。
「――そりゃ、長年こんな性格やってりゃ、ふと客観的に自分を見る機会も多いからな。
…冒険心なんて、本当にガキの頃に失ったモンだと思ってたんだが――」
奏でられ始める音色。楽器の類は全く詳しく無いので自然と耳を傾けながら。
…今まで、そういえば趣味や娯楽も敬遠していたが…そちらに手を出してみるのもいいかもしれない。
「ああ、そこはそれな。風紀の仕事で遭遇したらこっちもやる事はやらせて貰うが――…
今回みたいにプライベートなら何も咎めるつもりもねーよ。アンタの好きにやりゃいい。俺は楽しそうなら首を突っ込むだけだ。」
仕事とプライベートは矢張りきっちり分ける習慣は直ぐには抜けないけれど。
今はまだ風紀を辞めるつもりも無いし――簡単に辞められない事情もある。
『表』と『裏』…コインの両面。けれどそれが交わるのは決して無意味ではない。
混乱も騒動も起こるだろうが、それすらも楽しめるように――なるだろうか?
『夜に吼えるモノ』に――『嵐を呼ぶもの』は何かを齎す事は出来ただろうか?
「ああ、どうせ暇してたしな――音楽はさっぱりだが、きっちり聞かせて貰うさ。」
こういう時間を楽しめるように…今すぐには無理にでも何時かは、と。
彼女の奏でる音楽と《うた》が場を沸かせる――こちらにも当然影響は出ていて。
「…ったく、本当に――”面倒臭い”ったらありゃしねぇ。」
けれど、その呟きは決して否定的なものではなく…曲を聞いている間、彼は確かに笑っていたのだから。
ご案内:「落第街大通り」からノーフェイスさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から雪景勇成さんが去りました。
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」にノアさんが現れました。
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」に柊さんが現れました。
■ノア > 日も落ちた落第街の入口。
時折点滅する薄暗い照明に照らされた小綺麗とは言い難い酒場『地獄の門』。
情報の行き交う場所がホームグラウンドの緑のロングコートにアッシュの髪。
表と裏の交差点に訪れる影が1つ、今日も今日とて扉に手をかける。
「事務所に行ったら空振るとはな…」
言いつつ、カウンター席に座る黒スーツの背中に安堵する。
その姿は、自分の知る物からすると幾分か丸く見えた。
■柊 >
最近の事務所は、右腕である男に全てぶん投げているので最近は暇で暇でしょうがない。
しかも最近は出会いにも恵まれ、復讐の火はもう消えかかって
逆に昔の夢である教師になりたい、と本気で考えている
だからだろうか、甘いカクテルを飲む此方の顔はいつもの笑みなどは浮いていない迷子のようなそれだ
そうして、新たに扉が開けられる それに興味本位 目を向ければ
仕事を頼んだことのある男が見え 軽く手を振ろう
「こっちで一緒に飲みませんかー」
人空きのある笑みを浮かべたが どこか弱々しく
隣の席が丁度空いているだろう
■ノア >
「ん、そんなら遠慮なく。
おんなじの一つ」
声の調子は以前と変わらず。
然れど、違和感があるのは表情と背負った雰囲気か。
相変わらずの糸目を携えたこの金貸しから、貼り付けたような笑みが消えていた。
自分の行き先に迷い戸惑うような、表情。
自分の分のカクテルがカタリと置かれると、手に取る。
落第街の闇金融『雲雀』の頭取たる貫禄が鳴りを潜めた相手の顔を見やり、言う。
「クソったれな街でのお互いの無事を祝って――乾杯。
探したぞ、柊」
隣の男にグラスを差し向け、小さく音を奏でる。
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」にノアさんが現れました。
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」にノアさんが現れました。
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」にノアさんが現れました。
■柊 >
「結構甘いですよ?」
甘党の此方は辛い酒は飲めないのでいつも甘い酒ばかりだ
以前頼ったこの相手は信頼もでき 仕事もでき 容姿も良い
覚えていないほうが可笑しいような そんな男だ
「ええ、このクソッタレな街で互いの無事を祝い……乾杯
あはは、部下にも最近よく言われますよ
ああ、この前の仕事助かりました……ありがとうございます」
債務を放り出してトンズラをこいた男がおり それを探し出してもらった
その際の手際が見事で 感動したのも覚えている 謝礼もたっぷり弾んだだろう
「それで、私なんかを探してどうしました?
債務者の罵詈雑言を届けに来たのなら勘弁してください?」
自分を嘲笑するような笑いをしたなら ため息を一つ
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」にノアさんが現れました。
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」にノアさんが現れました。
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」にノアさんが現れました。
■ノア > 「いきなりキツイ酒飲むよりよっぽど良いさ」
口を付けると甘い香りに乗ってほのかなアルコールの気。
強い物ではなく、チビチビとのんびり飲むのにはちょうど良さそうだ。
「アンタの所の依頼はあと腐れが無くて良い。
捕まえて引きずり回しても気分が悪くなるような相手がご指名に上がってこねぇ。
おかげで仕事の後の酒も美味いってもんだ」
仕事とあらば、年齢性別問わず引っ張り出すまでなのだが、
闇金融を名乗る割には『雲雀』から逃れようとするような者は総じて救いようのない相手ばかりであった。
「ご依頼で、な。
捜索対象は落第街の恩人“金貸しの柊”
お手紙付きであんたの安否確認だとよ」
言いつつ、青い便箋に入った手紙をクラッチバッグから取り出して手渡す。
■柊 >
「ふふ、それもそうですね
ああ、マスター、次カシオレください」
その甘い酒をぐいっと飲み干し ため息のような深い息を吐き出す
そうして マスターへと次の酒を注文 空のグラスの縁を撫でた
「あはは、それはそうでしょう 逃げるやつはだいたいクズの中のクズ
真面目な方々は着実に返済してくださいます」
ありがたいことです そう言って クツクツ 喉奥で笑う
実際、ありがたいことに逃げ出そうとするのは本当にどうしようもないものばかりで
新たに来たグラスを手に半分ほど呷る 甘い味が
頭をスッキリさせてくれる そんな気がした
だが、続いた言葉 それは眉を顰めるには十分な言葉
「恩人? 私が?」
手渡された便箋、それを受け取り 中から手紙を取り出し 目を通そうか
■元債務者からの手紙 > 僕が柊さんに助けて貰って、ちょうどもうすぐ半年になります。
勉強はさっぱりですけど、なんとか馴染めて今では風紀委員なんかやっています。
あの時、僕は子供同士のやっかみで馬鹿にされたのが悔しくて、甘い話に釣られて落第街に踏み入れて薬に溺れてました。
薬を使うだけで異能の力が何倍にも強くなるんです。買うたびに値段が吊り上げられてるのに、それでも止まれなくて。
借金まみれになった時に証明書を担保にしたせいで落第街からも出られなくなって。
言われるままに身体を売っても全然足りなくて、そうしたらどこの取り立てにも余所から借りてきて払えって言われました。後で知りましたけど、どこもかしこもグルだったんですよね、彼ら。
本当は最後に柊さんの所で借りた時、前の所の借金だけ返して逃げるつもりでした。
でも柊さんは貸すだけじゃなくて
『何年で返済します?』
って、どこでどんな仕事したら本当ならいくらもらえるかって、
仕事をくれてやるなんて言ってワケ分かんないくらい安く使われてたのとは違う仕事紹介してくれて。
『雲雀』だけが、柊さんだけが。僕がちゃんと働いて返せる道筋を立ててくれたんです。
そうしたら踏み倒して逃げようとしてたのが恥ずかしくなって。
使い潰したりせずにプランを立ててくれた柊さんを裏切るような真似をしたくなくて。
そりゃもう必死に働きました。
約束通りしっかり2年はかかりましたけど、柊さんは僕に自由をくれたんです。
僕にとって、柊さんは命の恩人なんです。
だから、風紀委員と落第街が戦争になったって聞いて、ずっと心配していました。
まだお礼も言えていないのも、心残りで。
こんな状況だから、直接お伝えできなくてすみません。
今の落第街になりたてとはいえ風紀委員が行くのは危なそうですしね。
街が落ち着いて、いつかこっちに来る事があれば、その時はもう一度お会いしたいです。
こっちに来てからオススメのお店も沢山できたの、紹介したいですし。
甘い物が嫌いじゃなかったらラ·ソレイユってお店のフルーツタルト、絶品なんで一緒に食べに行きましょう。
風紀委員ってちゃんとお給料出るんで、その時はお返しさせて下さい。
……長くなっちゃったな。
このあたりでペンを置かせて貰います。
この手紙が柊さんの手に渡る事を祈っています。
三輪 庵
■ノア > 「酔いつぶれて摘まみだされるのは俺ももう御免でね。
ん、マスター、こっちギムレット」
言いつつ頼むのは度数の高い物。
「真面目な奴が馬鹿を見ねぇ。
だからかね、こんな街に居ンのにそんなもんが届くってのは」
喉奥で笑う押し殺したような笑いに、口の端を意地悪そうに吊り上げて応じる。
落第街の中では小綺麗で人好きのする顔をする柊だからこそ、
甘く見て無下にすればしっぺ返しは他所よりも苛烈な物が待っている。
「半年だか前に、『雲雀』で返しきったガキから。
内容は読んでねぇけど、アンタに礼が言いたいって言ってたぞ」
内容など大方本人から聴いているのに白々しくもそう言ってのける。
目の前に置かれたカクテルグラスの白い水面を見ながら、遠い所の事を話すように言う。
■柊 >
「その割に度数の高いもの頼まれてますが?」
お酒強いんです? 問いかけた言葉は心配するような声色だ
「真面目な人から絞っては駄目でしょう
ここいらの闇金は少し短絡過ぎますよ
……これで罵詈雑言をだったら恨みますからね」
意地悪そうな笑み それを見るに少し警戒はした
しかし相手の仕事は信用できる
罵詈雑言が書いてあっても依頼主の問題でしょうがないだろう
「半年前ですか……しかもガキ
候補は数人浮かびますがね」
どれ、と目を通した その先 その文字に 文章に目が惹きつけられる
その手紙は 心を優しく溶かしてくれる そんな内容の手紙
一生懸命考えたのだろう 一生懸命書いたのだろう それが文章から 文字から
伝わってくるような そんな素敵な手紙
「庵……あの頑張り屋さん。風紀委員なんかになったんですね
全く、今は危ないっていうのに 懲りてないんでしょうか」
柄にもない 何年も枯れていたはずの涙が 目から溢れて手紙を濡らしてしまった
それが申し訳なくて 手紙をもう一度じっくりと読んだ後は
便箋に丁寧に戻し 宝物のように 丁寧に懐へとしまい込む
まだ涙は止まってくれない ぽろぽろ 涙をこぼして
「素敵な、素敵な お届け物ありがとうございます
これで、腹が決まりました ありがとうございます」
先程の覇気がない笑みは鳴りを潜め 憑き物が落ちたような
晴れやかなものだ
■ノア > 「……憑き物でも落ちたって感じか。
まぁ、何にせよこれで仕事は完了だな。こっから先はプライベートだ。
おかげで良い夢見れそうなんだ。多少の酔いくらい許せって話だ。
ああそうだ。マスター、カレー2つ甘口で。
美味いもん食って笑う権利くらい、誰にでもあるんだよ」
あんた、大通りで食いそびれてたろ? と、
言いつつ白い皿に盛られた湯気の立ち昇る物の一つを押し付ける。
「……やりたい事があんならやりたいようにやるべきだ。
少なくとも、向こうに一人アンタを待ってる奴もいるみたいだしな」
■柊 >
「ええ、落ちました……相変わらずいいお仕事をなさる」
大の大人がこれでは 格好がつかないではないか
溢れ出る涙を無理矢理にでも止め、自然な笑みを相手へと向けよう
「ええ、そうですね。ノアさんが酔いつぶれたら介抱して差し上げましょう
おっと、甘口で宜しいので?」
続いた言葉 それに頷いておく
たしかにあのカレーを食いそびれたのは惜しかった
押し付けてもらったカレー スプーンを手に取り 一口
「美味しい……
しかし、私を待ってるとは奇特な人ですね 誰でしょう」
甘口のカレーが美味しくて 何度も口に運び のどが渇いたなら酒を
そうして、腹が決まった やりたいことを口にしよう
「後日、自首します そうしたら教師になりますので
また一緒にお酒飲んでくれますか?」
■ノア > 「やっぱ、アンタはそっちの顔の方が似合ってら」
言いつつ、隣の男に笑みが戻った事を確認するとカレーを一匙すくって口に運ぶ。
甘く、良く煮込まれた熟練された味。
大通りの炊き出しとは些か違うが、過ぎ去った時間は思い返せど混じる事はできない。
「いくら後で請求されるやら……
ま、潰れた時にはお手柔らかにな。
甘いくらいが今日には丁度いいだろ?
こんな日にトゲのあるもん食ったってしょうがねぇ。」
「さてね。
断っちまったけど俺への依頼料が連名だったし、
アンタが今まで何人助けて来たかはさすがにわかんねぇや」
調べれば分かるのだろうが、それも野暮だろう。
彼が知っていれば良い事だ。彼を知っていれば良い事だ。
「そうかい。
良いように取り計らってくれるアテは――ありそうだな。
この島に生きてると一緒に酒飲む相手に困っちまう。
俺がくたばる前にさっさと顔見せてくれよ?」
■柊 >
「あはは、そうですか? 褒めてもお金しか出ませんよ?」
本心だ こんな素敵な贈り物を届けてくれた相手への謝礼
だが、無粋だろうか そう感じて 財布を取り出すのは止めておこう
「ああ、代金は私が持ちます それくらいはさせてください」
金を出すのは無粋であろう であるならば奢るくらいはさせてほしかった
「庵さんたちですか……奇特な方たちですよねぇ
助けた気なんて、なかったんですがねぇ」
確かに完済した人たちに感情を入れ込んでいたりもした
それでも助けたなんて思ってもいなかった 不思議なものだと 思う
「ふふ、貴方のそういう所好きですよ
あ、プライベートなので聞きますが、いい人などいないので?
ほら、ノアさんは顔が整ってらっしゃるので 気配りも上手ですし」
■ノア > 「金が出てくる内は、まだまだ元気だな。
ン? そういうなら此処の勘定は頼らせてもらうか」
言いつつアイスを注文して、アルコールで火照る頬を冷やす。
「どいつもこいつも勝手に助かってるだけだしな。
俺やアンタがいなくたって立ち直れた奴もいるかも知れねぇし。
ただまぁ、おかげで誰かが幸せに生きてんなら良い事したって事なんだろうさ」
無機質に取り立てる、悪意の群れのような他の金貸しならこうはならなかっただろう。
この男の人の情が、心根がそうさせたのだ。
それはきっと、人を導く教師に向いた物だろう。
「俺もアンタの事ぁ気にしてんだ。なんか自分の事見てるみたいで放っておけなくてな。
いい人、ね。分かんねぇや。見た目の良い女は山ほどいるけど、
心を許せるってのとは違う気がしてね、ワーカホリックって奴かもな。
よせよ、男に顔を褒められるとなんかむずがゆいだろ。
んで、アンタはどうなんだ? 気にかけてる奴でも?」
■柊 >
「ふ、そうですね まだ現役バリバリですよ
ええ、お任せください?」
この程度で勝手に感じている恩を返せるとは思っていない
もっと大事な所で返すべきだろう そう感じて
カレーを半分ほど食べたらスプーンを置き
酒を飲み干したら お代わりを注文しよう
お好きに飲んでください とも続け
「あはは、その通りですよ 私はその補助をしたまでです
ええ、私やノアさんがいなくとも世界は回りますしね
……そうですね。良いことをするというのは気分がいい」
今までずっと忘れていたことだった
それを思い起こさせてくれた相手に最大限の感謝を向けよう
恩人です と小さく口にもして
「そうなんです? どういった所とか聞いてみても?
あー、ノアさんは不器用そうですからねぇ 優しいのに。
良いじゃないですか、本心なんですから
えー? 私もいませんよ。教師になったら探すとしましょう」
それはそれで不味い気がしないでもないが
酒を飲み 美味しいカレーを食べている此方は上機嫌で
カシオレのお代わりを注文し