2021/11/24 のログ
ご案内:「落第街大通り」にノアさんが現れました。
■ノア > 噂をする声が聞こえた。
曰く、刀を持った、スーツ姿の仮面の男。
声はいくつもあったが、内容はおおよそ似たようなもので。
最近巷を騒がせる怪盗が、この夜も街を騒がせていた。
職業病でも無いが、安全圏から騒ぎを眺めようと路地を覗き込めば、
その凶刃は少女の首に向けられていた。
――助ける?
無意識にコートの中の銃に手をかけ、しかし視界の端に映るモノに気づいて収める。
ビルからビルへと駆ける青い稲妻。風紀の一振りの姿だ。
「出る幕無さそうだな……」
言いつつ、チラリと背後の光景に目をやりながら大通りの本筋に戻る。
ぶらりぶらりと、アテも無く裏の街を練り歩く。
何をしているというでも無い。
強いて言うならば情報待ち。
足で稼ぐには、些か自分の体の調子が良くはなかった。
■ノア > 所在なく、片手でいじる端末で眺めるのはフリーマーケットのサイト。
いつか拾ったヴィンテージのバイオリンは未だ売れず。
7桁ともなればこの島でもそうそう買い手がつく物でも無いので、
当然と言えば当然だが。
「ま、売れねぇわな……」
元より元手も無く手に入れた物を売りに出しているのだから、ある程度値下げして捌けばいいのだが。
ぼやく男は値下げどころか本土の相場以上に釣り上げて出品していた。
金欲しさというのとは違って、どこか手放したくないような後ろ髪引かれる思いがして。
■ノア > 面を上げて月を仰ぐ。
照らす光は、表も裏も隔てなく降り注ぐ。
誰が管理しているのかもわからぬ自販機に小銭を投げ入れ、
缶コーヒーを手に取る。
遥か向こうの表の世界で、今頃友人は何をしているだろう。
今更日和るとも思わない。禊のために、彼は何かを語るだろうか。
「……んな訳ねぇか」
妙に硬いプルタブを押し上げ、黒い水に口を付ける。
なにせ妹に背を押されたのだ。
彼が選択を間違えるなどとは微塵も思う事は無い。