2021/12/09 のログ
ノア >  
「一応探偵として名前売ってんだけど、まぁ似たようなもんか。
 見た目気にしてるってんならもちっと可愛い恰好をオススメするよ。
 んなゴツいの背負ってると肩も凝るだろ」

おっさん呼ばわりを訂正することも無く。
昔の上司を思い出すような、ここいらでは珍しい容姿の男。

「こっちもこっちで廃止済みのモンでね、残り少ないからありがたく吸ってんの。
 健康的な煙草なんてモンの方がよっぽど怪しいって。
 
 肺の事気にして得する程、長生きしねぇよ」

肺に落とす前に小さく口に溜まった煙を吐き出し、大きく息を吸う。
実際肉体的なコンディションは落ちていく一方だろうが、そこを気にする事もあるまい。

「あぁ、アイツね。
 ついぞ最近もガスマスクとやりあってた仮面野郎。
 目ェつけられたって、あんた良く生きてたな」

以前自分も出くわした相手だ。
あの場に紫髪の刀の女『八ツ墓千獄』が通りがかっていなければ、
そのまま追われる形になっていたなら生き延びる自信は無い。

紅龍 >  
「馬鹿野郎、オレが可愛い恰好なんざしたらキモイだろうが」

 煙を深く吸って、肺を満たす。
 しかしここでもガスマスクか。

「――らしいな。
 あんなのとやりあえる、その『ガスマスク』とやらもおっかねえもんだ」

 空を仰いで、ポンポンと煙を吐く。
 こうして白煙で輪を作ってやると、よく喜んではしゃいでたっけな。

「見逃してもらったんだよ。
 オレは精々逃げ回るのが関の山だ。
 ま、だからこんな装備でもしてねえと歩いてらんねえのさ」

 背負ったライフルを背負い直す。

「で、探偵な。
 ならなにか、あの怪盗の情報でもねえのか?
 ガスマスクもそうだ。
 他にも、此処にゃやべえやつらがゴロゴロいんだろ。
 能力なり獲物なり、いくらかよこせよ。
 役に立ちそうなら相応に報酬は払ってやる」
 

ノア > 「ガスマスクに関しちゃ本人の情報はろくにない。
 が、見聞きしてる限りじゃアイツ本人が無差別に落第街で
 暴れまわってるってのは聞かねぇ。

 もしかしたら、正義のヒーローなのかもしれねぇぞ。
 見てくれ自体は寧ろ悪役じみてっけど」

赤い鞘の刀を背負ったガスマスクというのも、当然この街で小さく噂をされていた。
が、それが何か危害を加えてきたという話はまるで聞かない。

「へぇ、寧ろ真っ当に対峙して見逃して貰える程度に渡り合っただけ凄ぇじゃん。
 ただの違反部活の鉄砲玉って感じでもなさそうだな、あんた。
 俺もいっぺんやりあう羽目になりかけたけど、あいつ撃って当たれば素直に死んでくれるようなタマか?」

俺の拳銃程度なら斬り払われるか当たってもそれ以上のしっぺ返しで自分が死ぬだけだろう。
ただ、確かに目の前の男の背負う物なら、あるいは行動不能に押しやる事もあるのかもしれない。

「情報、ね。
 残奪怪盗に関しては、仮面の向こうが見れたわけじゃないのもあってね。
 寧ろ今情報収集の真っただ中、ってとこ。
 だけど、アイツは危険だぞ? 逃げる奴がいりゃむしろ嬉々として襲ってくるタイプだ。
 自分の強さを誇示したがってるキライもある」

紅龍 >  
「正義のヒーローねえ」

 それが、意外と冗談にならないのは、今の時代じゃ常識の一つだ。
 超常の力を持ったヤツが、途端に正義や悪に目覚めるってのは腐るほど目にして来た。

「少なくとも44AMP弾は避けたな。
 700NEも避けたから、あたりゃあ死ぬか、いてえんだろ。
 とりあえず、コイツなら殺せるとは踏んでるが――当たってくれたらの話だな」

 言いながら、背負っていたライフルを降ろして、片手で突き出してやる。

「持ってみな」

 重さ二十五キロの特別製。
 見た目は多少大きいアサルトライフルだが、七十口径。
 今となっちゃ、オレ専用の代物だ。

「わざわざやりあうほど物好きじゃねえよ。
 出会わなきゃそれでいい。
 だから情報が欲しい、明快だろ」

 行動のパターンが分かれば、遭遇を避ける方法もある。
 とは言え100パ^セントじゃねえから、装備は外せねえが。

「アレの情報がねえなら、他のはねえのか。
 危険な連中くれえ、それなりには把握してんだろ」

 探偵を名乗っておいて、何もありませんとくりゃ、無能もいいとこだ。
 が、こいつは見た目ほどガキには見えねえ。
 それなりのモンは持ってるだろう。
 

ノア > 「当たれば死ぬってのは良いな、人を相手してる感じがしてまだ気が楽になる」

突き出された物を見やる。初めて見る代物だ。
形状としてはやや大ぶりだが、片手で突き出してくる辺り重量は大した事――

「重っ」

受け取るときに両手だったのが幸いして取り落すような事は無かったが、
とてもでは無いが片手で振り回せる類の物では無い。
口径も、自分の知るライフルのそれの10倍近いだろうか。
どうやら700NEと言ったのも、冗談ではなさそうだ。
震える手で落とす前にと突き返す。

「重さか何かいじる異能でも使ってる……って訳でもなさそうだな。
 確かに、そいつをぶちこみゃ死ぬだろうけど俺にはとても持ち歩ける代物じゃねぇや」

自分の異能と合わせて使えば、件の怪盗に一発お見舞いする事はできるかもしれないが、
その時はもれなく自分も即死する事になる。

「ただで話せんのなんてこんなとこまでだ。
 出会いたくなきゃこんな街出ていっちまうのが一番だぜ?」

手元にある情報で気軽に話せる物があまり無いというのもある。
危険な連中、ともなれば風紀といがみ合っていた違反部活だが、
デカい所は今は大人しくしている。

紅龍 >  
「くっくっく、わりぃわりぃ、重てえよなあ」

 片手で受け取って、背負いなおす。
 落とさなかっただけ大したもんだ。
 着こんでる防護服を親指で示してやる。

「こいつがタネだ。
 人工筋肉スーツってな、外じゃわりと一般的な軍事兵装だぜ。
 まあ、こいつは特に軍事機密だが、フィジカルスペックを数倍から数十倍にしてくれる代物だよ」

 なかなか構い甲斐のあるガキだ。
 『あいつら』を思い出せて、悪くない。

「へ、ケチくせえと商機を失うぜ?
 まあいいや。
 そんじゃ、前払いでこんなのはどうだ」

 腰から小銃を抜いて差し出してやる。

「44AMPを使うマシンピストルだ。
 反動もそれなりだが、両手で使えば生身でも扱える。
 怪盗に襲われても延命くらいは出来るかもしれねえぞ?」

 口元がニヤつくが、まあ仕方ねえ。

「売り払っても金になる。
 で、なにかいい情報を拾ったらオレに連絡する。
 どうだ、悪くはねえだろ」

ノア > 「人がわりぃぜおっさん、タネがあんなら先に言ってくれっての」

人工筋肉スーツの存在は知っていたが、目にする機会というのはあまりない。
目に見えるだけの装備だけでなく、そういった補助装備をしこたま仕込んでいるのだろう。
それも、恐らく全身に。

「タマ張って拾ってるもんもあるからな。
 ケチにもなるってもんさ。
 ――前払い?」

手渡されたのは自動拳銃、マグナム弾を装填できるという事は
手元にあるチャチな拳銃とは訳が違う。
製造目的自体は同じ制圧用のはずなのだが、吐き出せる殺意がけた違いだ。

「まぁ、ネタも分かんねぇ内から大金寄越せなんて言えねぇし、
 前金で護身具貰えるってんなら話としては悪くはねぇか
 握ったまま情報腐らせて死ぬってのは避けてぇし」

怪盗に襲われてどうこうできるか、となると話は別だが。
ひるむくらいの事をしてくれるなら御の字だ。

「オッケー、とりあえずはこの街の危険な連中のコト。
 まぁとりわけ例の怪盗絡みだな。
 引き受けたぜ、おっさん」

言いつつ、一枚の名刺を取り出しながら

「俺はノア、歓楽街と落第街以外のモンでも必要がありゃ
 探すくらいの事はできる」

紅龍 >  
「へ、いい返事だ。
 そうだぜ、死んだら元の木阿弥よ。
 しっかり生き延びて、情報を稼いでくれ」

 名刺を受け取って目を通すが――ノア、ねえ。

「名刺なんて洒落たもんは持ってねえな。
 紅龍、軍人崩れの用心棒だ。
 連絡先は、そうだな」

 ヘッドギアを起こして、網膜に幾つかの専用回線を投影。
 ――『蟠桃会』に知られるのも面白くねえな。
 軍時代の秘匿回線の中から、一つを使う。
 ガキ――ノアの持つ電子端末のアドレスを割り出して、アクセスの許可を申請する。

「その回線を使えば、盗み聞きされる事もねえだろ。
 売ってもいいが、あんまりやんちゃに使うなよ?」

 ニヤついて笑いながら、冗談を混ぜてやるが。
 まあ本当にアドレスを売られたら、暗号パターンを変えるだけだ。

「オレの情報は欲しけりゃ、そこらに転がってんだろ。
 特に立場も隠してねえしな。
 ま、お前が使えるようだったら、追加で仕事を任せるかもしれねえな」
 

ノア > 「もう暫くは死ねないしな」

軍人崩れの用心棒、ね。『雲雀』の連中と似たようなもんか。

「表の方にも顔出してるもんでね。
 あんましこの島の同業でも作ってる奴いねぇから
 存外便利なもんだぜ?」

毎日のように事件も事故も起こる島だ。
いざという時に身の回りに相談できる相手がいない人から連絡が届くという事も多い。
全てを手助けできるわけでも無いが。

「まぁ、アンタの事もこっちで調べさせてもらうさ。
 売る情報だって選り分けねぇといけねぇしな」

届く端末への申請に許可を出す。
端末自体にあるデータは各々の連絡先程度だが、
この短時間でアドレスを割り出す手腕とツテは侮れない。

「そんじゃ、何か分かったら連絡するさ。
 飯食いてぇならそこのラーメン屋が小汚ぇけど存外美味いぜ」

ただで教えてやれるのはこれくらいだと笑い、ヒラヒラと手を振って通りを去る。
お互いこの街に生きていれば、いずれ紅龍とも会う事はあるだろう。
探りを入れた果てに、彼の所属と経緯に触れた己がどうなるのかは、未だ知れぬ事――

紅龍 >  
「おう、精々勇み足踏み過ぎて、コロッと死なねえようにな」

 去っていくノアに軽く手を払ってやる。
 思った以上に使えそうなヤツだ。

「――さて、ラーメン屋ねえ」

 勧められたラーメン屋を見て見るが、確かに小汚ぇ――というか。

「こいつぁ、趣もあるが、傾きもあるな」

 ――出てきたラーメンの味は、なかなかだった。
 

ご案内:「落第街大通り」からノアさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から紅龍さんが去りました。