2021/12/12 のログ
ご案内:「落第街大通り」に紅龍さんが現れました。
紅龍 >  【前回までの紅龍おじさん!】

 違反部活『蟠桃会』の用心棒、元軍人の紅龍は。
 『斬奪怪盗ダスクスレイ』の情報を集めるために探偵の『ノア』に仕事を依頼する!

 自衛のため重装備で用心棒の仕事をこなす紅龍。
 そんな中、好奇心に瞳を輝かせた少女『マヤ』に出会う!
 少女とのやり取りにどこか懐かしさを覚えていた紅龍だったが。

『生きててよかったね』

 去り際に囁かれた一言が、頭から離れないでいた。
 自分が生き残った事に意味があるのか。
 生き残った事で何が出来るのか。
 今『生きている』事実を、じっくりと噛みしめるのだった。

紅龍 >  
 大通りに面した屋台の一つ。
 さほど座り心地の良くない椅子に座り、ガタガタと傾くテーブルに肘をつく。
 軽く飯を食べたところだ。

「しっかし、面白くねえヤツだったな」

 つい先ほどまで、目の前に座っていた『客』を思い出す。
 顔も隠して声も変えて、男か女かもわからん身形だった。
 まあ、『取引先』の立場を考えりゃ、こんなところに出入りしてるのは知られたくねえわな。

「――で、これか。
 やっぱりあのガキは使えるな。
 探偵を名乗ってるだけはある」

 ノアから送られてきた、ある監視カメラの映像。
 噂の斬奪怪盗と、風紀委員のガキが殺り合ってる映像だ。
 風紀委員の方は『芥子風菖蒲』とか言うらしい。
 怪盗と互角にやりあってるのを見ればわかるが、こいつもまた、大した『バケモノ』だな。
 つーか、命知らずの戦い方だなこりゃ。
 このガキ、早死にするんじゃねえか?
 

紅龍 >  
 関係ない人間が多少死のうと、オレにとっちゃ問題じゃない、が。
 怪盗とやりあって、片付けてくれそうなヤツに死なれたら困る。
 出来る事なら、オレのあずかり知らないところで、始末をつけて貰いたいもんだが。

「そう上手くはいかねえよなあ。
 どうせなら貸しの一つも作っておきてえが――表立って協力ってわけにもいかねえな」

 なにせ、違反部活と風紀委員だ。
 怪盗の方が目立ってくれてるからいい物の、本来ならオレも風紀委員のターゲットにされておかしくない。
 まあ、そのまま大人しく捕まってやるつもりはねえが。
 そんな諸事情で、協力するってのも難しい所だ。

「――これ以上派手に暴れられる前に、カタをつけてえとこだが。
 足取りが追いきれねえとなると、また出てくるのを待つしかねえ、か」

 今わかっているのは、『怪盗』は強さのわりにやる事がみみっちいって所か。
 派手な騒ぎを起こすが、やってるのはただの強盗殺人。
 力を見せつけるような様子から、目的は力の誇示か。

「――あほくせえなあ」

 眠たい事実に欠伸が出る。
 どうにも、やる気が出ない話だった。