2021/12/19 のログ
毒嶋 楽 > そもそも落第街近辺の警邏は最低でも二人一組だったのでは。
出掛けにそう確認したところ、「楽ちゃんの異能なら防御に徹すれば問題ないでしょ」と一蹴されてしまっていた。
それは実際その通りで、今現在も手を突っ込んだポケットの中、パチンコ玉を握り締めて体を硬化させている。
如何なる不意打ちでも対応できるようには。

「ま、他の子達が来るよりは俺ちゃん一人なら替えも利くか……って。
 お~、そうなの?この先?へえ、風紀委員の配給とかかしらん。
 え、煩かった?あはは~……まあ、怒声や銃声よりはマシっしょ?それとも、もしかして寝てた?」

そこで立ったまま、と声を投げて来たローブの人物へと振り返る。
だったらごめんね~、と締まりのない笑顔を向けつつも眇められた瞳の奥では抜かりなく相手を見定める。
ローブを着た女性である、ということは分かったが、それ以上の情報は判らない。
そして何より、声に対する印象が残らない。

(何かしらの阻害が働いてるのかね……はてさて異能か魔術か……)

どちらにせよ攻撃的では無さそうだ、と判断すればすい、と其方へと歩み寄って。

セレネ > 己の蒼でも認識出来るのであれば。
彼が常、警戒して巡回しているのが分かるかもしれない。
分からなくとも見ず知らずの人物に対して警戒無しで声を掛ける事は無いだろうが。

「その答えから察するに、君は風紀側の人間かそれ以外か…。
そうだね、何せ此処等は常に余裕のない場所だから。」

相手が歩み寄ってくるのなら、魔術的に相手を傍に寄らせないよう壁を作りつつ。
それでも尚近づいてくるのなら、己から香る仄かなローズの香りが漂ってくるだろう。
その香りも、決して害を成すものではなく、相手に好意を齎すかのよう甘やかに香るだろう。

毒嶋 楽 > 「いやあ、此処での配給って色んな人らがやってるじゃない。
 風紀もだし、風紀を警護につけた諸部活動とか、宗教関係の人たちとか。
 だから今回はどこが主催なんだろな~って思ってねえ。」

へらへらり。隈の濃い顔に軽薄な笑みを貼り付けて。
軽い足取りで歩み寄っていたが、不意に足を止める。
接近も阻害しようとしてる?と魔術は門外漢ながらも違和に気付き、小さく肩を竦めるとポケットを探り始めた。

「あ~、だいじょぶだいじょぶ、別に何かしようってわけじゃ~ないから。
 親切に教えてくれたお礼?にほら、チョコちゃんあげようと思って。お詫びも兼ねてさ~」

ポケットから取り出したのは小さな立方体のチョコ。
包装紙には『プックルチョコ』と書かれている。コンビニとかで一つ数十円の物だ。

「そんで親切に乗っかってお話しでもしよっかな~って思って。
 お邪魔だったりするかしら?」

セレネ > 「そうだね、めげずに此処の人々を救おうとしているのは私も分かっているけれど」

風紀、生活、その他諸々の組織に所属する人が此処に生きている人々を救おうとしているのを知っている。
そして此処で生活している彼らが懸命に生きている様は己も知ってはいるけれど。

「…ハ、そういうのはスラムの子にでもやる事だね。
詫び、というのはどういうことかな。」

お菓子一つや二つで絆されるような場所でもあるまい。
彼が差し出した立方体のチョコレート、飛びつかないのはもしかしたら違和感があったかもしれない。

「私から話せる情報は少ないよ。それこそ情報屋に聞くのが良いだろうさ」

毒嶋 楽 > 「そだねぇ~……まあそれで実際に救われる人間が一人でも居るんだから、その間は続けるんだろうさ。」

大した心がけだよなあ、と毒嶋個人としては思う。
一応は風紀委員所属の人間が、その様な感想を抱いている程度なのは如何なものかと思われてしまうかもしれないが。
団体の思想と個人の思想は必ずしも合致しないこともままあるものだ。

「や~、こんなとこに来るくらいだし、割と明日をもしれない我が身だから。なるべく貸し借りは作りたくなくって。
 お詫びはお詫び、寝てたとこ煩くして起こしちゃったでしょ?
 俺ちゃんもよく電車とかでこう、ドアに寄りかかったまま寝落ちするから~」

そしてドアが開いてそのままホームに転げるまでがワンセット。
先の問いかけに返答が無かったのを、無言の肯定ととらえたらしい。妙な仲間意識まで持ち始めている。

「ああいや、情報が聞きたいとかじゃなくって。
 なーに、他愛無いお喋りさ。こう寒くっちゃ人恋しくもなるじゃない?」

セレネ > 「……風紀委員は随分暇と見える」

吐き捨てる言葉は冷たく。個より団体を見るのが団の所属として正解の筈だ。
そうでないのなら、それは団としては異端の筈だ。
彼の言葉をそのまま受け取るのなら、それは異端になるのかもしれない。

「貸し借りと思うのも個人の価値観だ。
…とはいえ、君がこれを詫びと思うのならこれは私にとっては貸しになるのかもしれないね。」

貸し借りをきっちり返したい性質なのだろう。相手も、己も。
ならば己はこの詫びを受け取らねばなるまい。似たような気質であるならば。

「ハ、お喋りね。面白くもないお話でも良いなら受けてあげよう。」

彼の差し出したチョコレートを受け取り、手で弄びながらそう答えた。

毒嶋 楽 > 「暇だったら俺ちゃんも嬉しいんだけどね~……
 なまじっか人手だけはあるから、何をするにしても手が足りちゃうってのが現状なんじゃない。」

現場に出るにせよ、机上で事務処理をするにせよ。
人手は多いに越した事は無い。無いが。
如何せん人員の分配が下手では?と後者を主に担当する事になってる毒嶋は不満を覚えない事もない。
あと血の気が多過ぎる輩も多過ぎる。と思い返してみると不満が連なりそうなので毒嶋は思考を追い遣った。

「んまぁ、それはそうね。俺ちゃんが個人的に借りだと思っただけ。
 でもま、親切には報いといた方が気も楽だし。あー……そうお婆ちゃんが言ってた。」

取って付けた様な嘘を付け加えてチョコレートを渡す。
満足気に頷いてから、相手に倣って壁に背を預けて。

「わ~い、ちょうど話し相手欲しかったとこなんだよね~
 年末だからかみんな忙しくってさ、声の出し方忘れちゃうかと思った。

 ……それで、これは確認だけど。
 君、この辺りの住人じゃないでしょ?」

天気の話でもするかのような朗らかな口調から一転、
ギリギリ相手に聞こえるかくらいの声量で訊ねる。

セレネ > 「ハハ、君は色々抱えているみたいだね。
まぁ、なんというか。ご愁傷様…というのは言葉が違うのかな。
んー、お疲れ様、というのも違う気がするけれど。
日本語というのは難しいものだね…。」

溜息一つ。己はそういった組織には所属していないし、所属する気も今はない。
だからこそ、その気持ちも分からないけれど。

「ハ、君の祖母の言う通り、人の親切には素直に報いた方が良いね。」

小さく鼻で笑っては、彼の取って付けた嘘に乗っかるように言葉を重ねて。
渡されたチョコはローブのポケットに仕舞おう。

「――…仮にそうだと告げたとして、君はどうするのかな。」

”確認”と前置きをしたのなら、それは殆ど確信していると己は捉えている。
ならばどうだと挑発する声色は、それこそ何気ない普通の口調だ。

ここで狼狽えるのは表の人間だと示しているものなのだから。

毒嶋 楽 > 「ま~ね~……委員会の木っ端構成員の悲しいとこ。
 どこも末端がこうだとは思わないけどねぇ。生活委員とか、割と楽しそうだし。」

俺ちゃんも監査行くならあっちにすりゃ良かったかな~、とがっくり項垂れながら愚痴を溢す。
少なくとも向こうには破壊活動を行うような人員は居ないだろう。
喫煙者が溜まってるからという理由でトイレ破壊しようとする生活委員は嫌だ。嫌すぎる。

「でしょー?だからそのチョコは遠慮なく頂戴しておいてちょーだい。」

自分の祖母じゃないけど、まあ言葉のニュアンスの齟齬は気にしない。所詮嘘だし。
へらへらと薄っぺらな笑みを浮かべたまま

「いや?別に何も?
 強いて言えば落第街に一般の生徒が居ったで、て報告書書かなきゃいけなくなるから、聞かなかった事にするだけ。

 ただ……気を付けてね、とは言っとくけど。老婆心ってやつで。
 まあそこそこ腕のある魔術師さんみたいだから?余計な心配ってやつだろうけどね~」

そういう人も居る、という事を念頭に置いておけば次からの立ち回りも変わってくる。
有事の際の優先順位だとか、警邏時の時間つぶしの相手とか、そういう面で。
それに落第街の住人と現職の風紀委員があまり過度に接触するのは避けたいという面もある。
だからあくまで確認をしただけだった。
確認を済ませれば、声量は元に戻って空元気じみた朗らかさを被って。

「それよりこんな通りに面した場所で何を?
 天体観測?寒いから星もよく見えるもんねえ……この辺りは人工の明かりも少ないし?」

セレネ > 「辛いなら異動届でも出せば良いんじゃないかい?
ま、私には関係ない事だけどね」

彼の愚痴には適当に返しておく。どうせ己には関係の無い事だし。
本当に悩んでいるのなら上司や顧問に相談するのだろうから流しておくことにした。
彼の事などよく知りもしないのだし。

「んー、適当にそこらの子に配っておくよ。」

寒い時期だ、小さなチョコ一つでも貴重なエネルギー源だろう。
ヒラヒラと手を揺らめかせて。

「そうか報告書。君らも大変だねぇ…警邏一つでわざわざ報告書を書かないといけないとは。
腕のある魔術師とは買い被りすぎだ。精々普通の腕しかないよ。」

軽く肩を竦めそう言う。己の魔術の腕は然したるものではない。
そう思ってくれれば己も楽だから。
とはいえ、相手自身も魔術師であるなら実力は分かってしまうかもしれないけれど。

「あぁ…そうだね。満月も近いし、月の見える良い場所を探してただけさ。
なにも悪い事をしようとしてた訳じゃない。
最近噂の…なんだっけ、ダスクスレイ?とか、そういった輩じゃないさ。」

毒嶋 楽 > 「ま、そうなんだけどね~……」

結局は愚痴なので解決を求めてるわけでは無い。
流されたところで然して思う所も無い。
その通り、本気で悩んでいるのならもっと別の誰かに相談している。

「俺ちゃんも割とばら撒いてるから被ったりするかもねぇ~。
 ま、一日に1個貰うも2個貰うも誤差か。奪い合いにさせないようにだけ、気を付けて。」

ぴ、と人差し指を立てて忠告を。
こんな場所だけれど、子供同士の諍いなんて極力起きて欲しくは無い。

「何も無ければ「今日はなにもありませんでした いい日だなあ」で終わるからさ~
 そうなの?俺ちゃん魔術はさっぱりだけど、そういうもんなんだ。へぇ~。」

自分は扱えないが、扱える人間は委員内にも少なくはなく。
彼ら彼女らの力量を見ているからこそ、相手の魔術にはそれなりの評価をしていた毒嶋だったが。
本人がそういうのなら……と評価を改めることを視野に。

「ああ~、満月。そういやもうほとんど丸いもんねぇ。
 ま、危ない事しようとしてるんじゃないなら良いさ。
 ……ふーむ、そうだよなあ噂になってるよなあ、そいつ。」

最近出没するという怪盗の名を聞けば、少しばかり表情が翳る。
目下対応に追われている風紀委員だが、下手に手を打つと死傷者が出かねないと手をこまねいているのが実情だ。
ついでに手をこまねいている間に処理しなきゃならない被害報告書がどんどん嵩んでいく。最近の悩みの種だった。

セレネ > 元々の職業柄、所謂愚痴と相談の境界線は分かっている。
どうすれば良いか?自分がどう悩んでいるのか、そのような言葉がなければ
その殆どは愚痴に入るのだと思う。

「奪い合い。欲しいものは力づくで奪うのが常ではないのかな。」

彼の忠告に対しては、不思議そうに問いかける。
こういった場所だ。弱い者は奪われるのは当たり前ではないのかと。

「あぁそうだとも。もっと凄い魔術師はごまんと居るさ、此処にもね。」

己は自身の腕に自負はしている。だが、決して慢心はしていない。
上には上が居るのだと思っている。そう言う事で、己は大したものではないのだと周囲に思わせる為。

「君も暇があれば月を眺めてみるのも良いかもね。
今年最後の満月なのだから。
…そうみたいだね。」

尤も己はその怪盗とやらにも遭遇した事はないけれど。
情報もSNSで得られる物くらいだ。

さて、と己は声を上げ。

「私はそろそろ失礼しよう。
かなり冷えてきたからね。」

今まで凭れ掛かっていた壁から離れるとそう言葉を告げた。

毒嶋 楽 > 「そりゃそうだけど……まあ要らぬ火種を撒く必要も無いってな。」

身も蓋も無いな、と思わず苦笑が漏れる。
だが、それを当たり前であることを良しとしないからこそ
この街があくまで歓楽街の一区画として地図に記載されているのだろうとも思う。

「俺ちゃん、魔術に関しては下の下だから十分凄いけどな~」

上には上が、どころかほぼ上しかない。
そんな身の上から見ると相手も十分に凄い魔術師だとは思うが。

「そうだねえ、ちょ~っと意識してみるよ。
 年末までは夜勤シフトだから、夜間に外に出る機会もあるだろうし。
 ……まあ、噂になってるくらいだし気を付けてねぇ~。」

いつどこに現れても可笑しくは無い。風紀委員として注意喚起はしておくべきだろう。
それと同時、自分も気を付けないと、と気を引き締め直して。

「おや、そうかい。話し相手になってくれてありがとねぇ~
 そうそう、俺ちゃん風紀委員の毒嶋楽っての。もし何かあればお気軽にどーぞ。」

壁から離れた相手を見ながら、緩い笑みを向けて。
相手と違って自分は顔も身元も隠すつもりは無い、という意味合いも込めて告げた。

セレネ > 「人は強欲な生き物だ。此方が火種を撒かずとも勝手に撒くような種さ。」

諍い等些細な事で起こる。吐き捨てるように言った。
まるで嫌という程見てきたと言わんばかり。

「それでも扱えるだけ上々だろうよ。
この世界には魔術が扱えない事にコンプレックスを抱く者も居るみたいだからね。」

上には上が。下には下が居るものだ。
凄いとの言葉には軽く肩を竦めるだけに留めて。

「この時期の満月は綺麗だよ。少しは気分も晴れるだろうさ。
…そうだね、充分気をつけておこう。」

相手の注意喚起には素直に従っておこう。
己も今後出くわさないと限らないだろうし。

「…そう、名前は覚えておくよ。」

表で会った時が少し厄介そうだと思いつつ、歩いて此処から離れるとしよう。
彼の視界から外れるように、適当な角を曲がれば。
バチン、と電撃が弾ける音が彼の耳にも届いたかもしれない。

ご案内:「落第街大通り」からセレネさんが去りました。
毒嶋 楽 > 「うんうん、言いたい事は分かるけどだからって自分で撒くことも無いんじゃないのって。」

チョコひとつくらい自分で食べちゃえばいいのに。
つまるところそういう事なのだが、やれやれ、と頭を振って。

「扱え……ふふん、まあそうだねぇ。
 そういうことにしとこう。」

扱えないんだよなぁ、という嘆きはそっと心の中に。
下の下、と見栄を張っては見たものの実質底辺、あるいは論外と呼ばれる域である。
……だからというわけではないが、コンプレックスに関しては解らなくも、ない。

「冷えてると夜空はよ~く見えるからねぇ。寒いのが玉に瑕だけど。
 注意喚起だけじゃなくて警戒強化もしないとなあ、俺ちゃんたちも。」

後手に回りがちな現状、どうにか打開出来ないものか。
一般から意見を公募するのも悪くないかもなぁ、とふと思い至る。

「その時は今日の事は内密にね。
 報告書サボる為に一般の人見逃したなんて大目玉食らっちゃうから~」

離れていく相手を見送って、毒嶋も壁から離れる。
さて警邏の続きだ、と再びとぼとぼ歩き出して、数分後。
最初に言われた通りの場所で炊き出しの豚汁を啜ったりしていたとか―――

ご案内:「落第街大通り」から毒嶋 楽さんが去りました。