2022/01/10 のログ
ご案内:「落第街大通り」に紅龍さんが現れました。
紅龍 >   
 【前回までの紅龍おじさん!】

 違反部活『蟠桃会』の用心棒、元軍人の紅龍は。
 『斬奪怪盗ダスクスレイ』の情報を集めるために探偵の『ノア』に仕事を依頼する。
 そんな探偵からの情報を得て、『怪盗』との遭遇に備えるため、風紀委員『芥子風菖蒲』が行った戦闘を分析していた。
 そうした日々の中、懐かしさを覚える少女、『マヤ』と知り合う。
 そして路地裏では探していた『ガスマスク』を目撃、言葉を交わした。
 探偵の調べた情報からは『知のゆびさき』という製薬会社の存在を知り、『マヤ』の血液から精製された薬を手に入れる。
 さらには違反部活の武器職人に依頼し、装備を充実させた。

 そんな日々の中、少女『マヤ』と触れ合う時間は龍の心を穏やかにさせる。
 手放したくない存在が増えた事を、重荷と感じつつも――その重さに安心感を覚える龍であった。
 

紅龍 >  
 ――通りに大きな銃声が響き渡る。

 同時に飛び散るのは鮮血。
 そして、千切れ飛んで行ったのは、男の右足だ。
 地面に転がっていく薄汚い男と、発せられる悲鳴。
 遅れて、周辺住民が巻き込まれまいと離れていった。

「――こちら『トランキライザー』
 対象を制圧した――あ?
 殺してねえよ、穴蔵で拷問にかけんだろ?」

 転がった男に近づいて身を屈める、が。
 一応まともに止血しねえと、死んじまうな。

「――あーあー、逃げたりすっからそうなんだよ。
 大人しくしときゃ、痛い思いしなくてよかったのになあ」

 ヘッドギアの雇い主との通信を切り、男の右足を掴んで止血帯で無理やり太腿を締めあげる。
 まあこれで失血死するところまではいかないだろう。
 

紅龍 >  
 この男は、『蟠桃会』で研究中のある『ブツ』の情報を、他の違反部活に流した。
 『蟠桃会』は裏切りを許さない。
 これからこの男は、なにをどこに、どこまで流したのかを時間をかけて吐かされる。
 そして、全て吐いたら粛清されて――ま、良くて実験台だろう。

「あんまり藻掻くと出血が増えるぜ。
 どうせならちっとは綺麗なまま死にてえだろ?」

 片足を飛ばしておいて何を言うって感じだが。
 通信で居場所を報告する。
 これで少し待てば、『蟠桃会』の下部組織がやってくる。
 そいつらにこいつを引き渡せば、今日の雑用仕事は終わりだ。

「――だから、逃げようとすんなって」

 オレが止血したのをいいことに、這って逃げようとする男。
 そのまだ元気な左足に、短剣を突き刺して地面に縫い付けた。
 また悲鳴が上がるが知ったことじゃない。
 この程度の事、この街じゃさほど珍しい事でもないのだ。
 今更、男の悲鳴が何度か上がったところで、なにが起こるわけでもない。
 

紅龍 >  
 悶え苦しむ男を見下ろしているうちに、バタバタと慌ただしく数人の集団がやってくる。
 下働きの連中だ。
 こいつらにこの裏切り者を引き渡せば、オレの仕事も終わりだ。

「――おう、ご苦労さん。
 連れてったらまずは治療してやれ。
 まずは体力戻させねえと、拷問中にうっかり死なれるかもしれねえからな」

 そう簡単な指示を出して、暴れる男を数人がかりで連れていくやつらを見送る。
 さあ、これでオレの仕事はしまいだ。

「さて。
 軽く飯でも食って帰るとすっか」

 ――ヤツが流した情報がどこでどう活かされるのか。
 そこまで面倒見るのはオレの仕事じゃない。
 例えそれで何百人と死ぬ事になろうと――それは、オレじゃない誰かの物語だ。
 

ご案内:「落第街大通り」から紅龍さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に紅龍さんが現れました。
ご案内:「落第街大通り」から紅龍さんが去りました。