2022/10/04 のログ
■笹貫流石 > 『――腕前はそこまで落ちていないようだ。』
ぽつり、とまたマスターが呟くように口にすれば、苦笑いを浮かべて肩を竦める。
「だーから、若気の至りなんだから恥ずかしいってーの。
別に俺の実力じゃなくて鎖が凄いだけだしさ。」
謙遜、でもなく割と本気でそう述べる。昔は昔、今は今。切った張った殺し合いは苦手だ。
まぁ、そもそもこの店でその手のあれこれは厳禁だが。
「さーーて、お仕事終了までなげーけど頑張りますかねぇ。」
やれやれ、と呟きながらも基本は突っ立て周囲の様子を確認しているだけ。
乱闘騒ぎや”それ以上”になりかけたら先手を打って止めに入る、そういうノリだ。
「…ほんと、我ながら扱き使われてんよなぁ。」
等とぼやきながら、地獄の門の夜は騒がしく更けていくのだろう。
ご案内:「違法パブ「地獄の門」」から笹貫流石さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に紅龍さんが現れました。
■紅龍 >
歓楽街から奥に踏み込めば、そこは無法の街。
とはいえ、そこが無秩序かといえば、そうでもない。
『お、紅さん!
この前は助かったよ、おかげで食い逃げが減ったよ』
「おう、あんたんとこの飯はうめえからな、これからもしっかり頼むぜ」
『なんだ紅のにーちゃん、また戦争か?』
「ちげーよ、最近物騒だから用心してんの!」
通りを歩いていれば、声が掛かる。
通りが爆ぜようと、ヒトが転がろうと、店が燃えようと。
ここの連中は、何度でも立ち上がって、日常を取り戻す。
落第街という裏町なりの、無法の秩序をとりもどすのだ。
■紅龍 >
「ったく、逞しい事で」
何度踏みつぶされようと、泥水を啜っても、立ち直る。
そんな泥臭い逞しさが、この街を形作っていると言っても過言じゃねえ。
とはいえ、もちろん、そんな逞しいやつらばかりじゃねえのも事実だが。
『おじちゃん!
紅おじちゃん!』
「ん、ああ、この間の坊主か。
どうした、かーちゃんは元気になったか?」
通りの脇道から出て来た、ボロ布を来たガキが、オレに駆け寄ってくる。
何日か前に、泣き付かれて薬をくれてやったガキだ。
『うんっ、おじちゃんのくれた薬で、すぐに元気になった!
だからありがとう!』
「ばーか、こっちもタダで助けたわけじゃねえんだ。
ちゃんとした取引な、わかってんのか?」
『わかってるよ!
オレ、かーちゃんがちゃんと治ったら、おじちゃんのとこで働くから!』
「よーし、ちゃんとわかってんならいい。
今度うちのヤツに契約書もってかせっから、かーちゃんとしっかり読んでサインしな」
『わかった!
へへ、そしたらオレもおじちゃんの仲間だな!』
「まずは便所掃除からだ。
お前がもう少し成長したら、戦い方も教えてやる」
『うん、すぐデカくなってやるからな!』
そう言って坊主は、来た道を戻っていく。
いまの坊主は、所謂、貧困層の住人だ。
病気になってもまともな薬も買えない、治療も受けられない。
そんなやつらに、働ける場所を用意してやるのも、オレの仕事――そのつもりだ。
「しっかし、懐かれんのも困るんだよな。
あくまで雇用主だって事、ちゃんとわからせねえとなぁ」
まあ何事も経験だ。
こんな町の子供だからって、まともな経験もなく死んでいい理由にはならねえ。
「おーい、じいさん、串焼き一本くれや」
『あいよ。
今日も巡回ごくろーさん』
屋台で串焼きを買って、灰皿の横で食いながら、『タバコ』に火をつける。
賑わう大通りは、ただ眺めていても、なかなか飽きない光景だ。
■紅龍 >
「――こんな日が続いてくれりゃ、苦労しねえんだけどな」
恙ない、平穏な日々。
それを望む人間は多いはずなのに、実現は容易じゃない。
「っても、出来る事しか出来ねえもんな」
串焼きを食べ終わって、屋台から離れる。
この後は裏道の方に回って『部室』に帰るだけだ。
今日も面倒ごとが起きねえように、恙なく――。
ご案内:「落第街大通り」から紅龍さんが去りました。