2022/10/23 のログ
ご案内:「落第街大通り」に狭間在処さんが現れました。
■狭間在処 > 最近またどうにも騒がしい――けれど、彼の日常は何時も通りで、良くも悪くも変化が無い。
強いて言うならば、そろそろ『声』の代替手段が欲しい所だが…それも中々見付からない。
(…何時かの符を参考にして…いや、いっそ振動系の魔術を勉強して、それを応用する方が現実的か)
筆談、手話を基本としたジェスチャーだけだと、意志の疎通に矢張りどうしても制限が掛かる。
口パクなどでも行けない事は無いが、それなりに観察眼や読唇術に長けた者でなければ厳しいだろう。
相変わらずの、小競り合いや喧嘩、賭け事や雑談、軒売りの店先を横目に大通りを一人歩く。
(――黒街や歓楽街の方が特に騒がしいようだが…そちらまで気軽に出向くのも、な)
好奇は惹かれど、あまり表側に近付き過ぎないように自ら線引きをしている。
窮屈、とは思わない。世間知らずなのは否めないしそこは耳が痛い所ではあるが。
自分はここで生まれ育って――酷い目にも腐るほど遭ってきたが、故郷といえば故郷だ。
二度、表の側を体験して…新鮮だったし、驚いたし、正直――楽しかった。
それは紛れも無い本心で、だからこそ…矢張り、表側に出向けないなとも思った。
――服を貸してくれたあの親切なご老体は息災だろうか?
――あの不思議な雰囲気の少女は、日々を健やかに過ごせているだろうか?
――あの表側に運ばれたらしき『残骸』の少女は、元に戻っただろうか?
思い案じはすれど、それは気掛かりに過ぎず確かめる度量が無い…臆病者だな、と薄く自嘲する。
■狭間在処 > (…まぁ、大丈夫だろう。少なくとも俺に出来る事は無いからな)
何時か、礼はしたいと心底思うけれど。それは機会が巡ってくればの話だ。
座して待つより他は無し…自分から動ければそうしたいが、表側に自ら出向くのはリスクもある。
(…念のために偽造学生証くらいは入手しておくべきか?)
今まで、大して使うほどの理由も無いので手は出していなかったけれど。
表側に行く・行かない以前に色々と仮の身文章は役立つ事もあろうか。
とはいえ、『声』の代替手段などもあるし優先事項としては一段下になる。
ふと、大通りにの一角に目を向ければ無邪気に遊ぶ子供達の姿が目に留まる。
それを眺めていて、スラムの片隅で暮らしていた幼い頃をぼんやり思い出す。
「………。」
結果的に、あの頃に比べたら今は陳腐な表現だが天国なのだろう、おそらくは。
子供の視線が不意にこちらへと向けられる。目が合えば一瞬戸惑うが、律儀に軽く会釈。
(……子供は…苦手だな…。)
ぽつり、と漏らした心の声を知ってか知らずか、気が付けば駆け寄ってきた子供達に囲まれていた。
「………?」
どうした、何か用か?と。そんな簡単で当たり前の問い掛けすら満足に出来ない。
矢張り『声』というものは生きていく中では、必要不可欠なのだとこういう所で痛感する。
一方、子供達はといえば…青年の何かが物珍しいのか、じぃ、と見上げたかと思えば無遠慮にあちこち触ってくる。
…スリなどの心配は無さそうだが、子供達に興味を持たれるものが自分にあるとは思えないが。
■狭間在処 > 子供達は、自分の何がそんなに珍しいのかこちらを窺いながら矢張りぺたぺたと触ってくる。
別に不快ではないのだが、少年少女達の行動の意味が分からずに困惑したような面持ちが些か顔に出ていただろうか。
不意に、ニコリと彼/彼女たちが無邪気に笑った。…既知感を覚えたのは何故だろう?
(――あぁ、そうか……何も知らなかった頃の俺なのか。)
唐突に理解した。昔はそんな屈託の無い笑顔も浮かべられたんだな、と少し懐かしくなる。
無意識に、手を伸ばして目の前の少年の頭をぐりぐりと少し乱雑に撫でてやる。
「………。」
(大丈夫、俺はちゃんと生きているから。くだらない八つ当たりは直ぐには止められないけど。
…だから、何時か昔みたいに素直に笑えるようになったら、その時は思い切り笑ってみせるさ。)
その言葉を心の中で告げる。何かに『満足した』かのように、頭を撫でられていた少年は無言で頷いて。
――唐突に、一陣の淡い風が吹き抜けると共に少年少女達は忽然と姿を消していた。
ゆっくりと、周囲を見渡せば何時もの見慣れた喧騒と、子供達は最初から居なかったかのような。
狸か何かに化かされたみたいだな、と思いながら軽く頭を掻いてから。
(まぁ、…何だ。少しだけ気は楽になったかもしれない)
幻覚か幽霊か、それとも怪異の類か何かの現象か。少なくとも敵意や害意は無かった。
…少しだけ、自分の原風景を思い出せた事はむしろ有り難いと思うべきだろう。
ご案内:「落第街大通り」にシャンティさんが現れました。
■シャンティ > 『それは、夢か幻か。しかし、確かに息吹を 質感を持って 彼の者の前に現れた。得られたのはしばしの戯れ――それでも其処には何かがあった。』
こつ こつ こつ
小さな足音を立てて、謳うように語りながら女は歩いてくる
「……ふふ。お邪魔、だった、か、しら、ぁ……?」
物怖じもせず、今ここにあった幻想を知っているかのように女は笑った
「しば、らく……ぶり、だ、わ、ねぇ……ど、う? 調子、は……?」
■狭間在処 > 謡うような声に、緩やかに視線を向けた先。覚えのある銀髪、褐色の肌、虚ろな視線――そして携えた一冊の本。
軽く無言で会釈をする。彼女の目は見えないようだが、何故かこちらの『言葉』はそういえば彼女に伝わるのだったか。
『……いいや、別に邪魔では無いさ。…まぁ、子供に懐かれるとは思わなかったが。』
青年の口が開くが、そこに『声』は乗っていない。声にならぬ声、それでもたぶん伝わりそうで。
「…調子か…まぁ、変わらずだな。最近はまた色々騒がしくなっているようだが…。
少なくとも、俺の周りではそこまで変化は見られないな。」
もっとも、それも時間の問題かもしれないし、何かの間違いで渦中に青年が飛び込む事もあるかもしれない。
それが、どういう『配役』になるのかなんてそれこそ未知数で、青年自身だって分からない。
『…スシーラの方こそ、そちらの調子はどうなんだ?』
矢張り、『声』は乗らない。それを是としながら問い掛けを返す。
■シャンティ > 『「……いいや、別に邪魔では無いさ。…まぁ、子供に懐かれるとは思わなかったが。」』
「……ふふ。案外、あなた、の……願望、なの、か、も……しれ、ない、わ……ね、ぇ? 」
くすくすと笑って答える。それは、声にならない声を聞いているように一言一句正確であった。
「そう、ね、ぇ……色々、『遊んで』、いる、子……たち、が……いる、みた、い……だ、し? ふふ。その、うち……『ショー』、も……ある、らし、い……わ、よぉ……? あなた……お祭り……好き?」
その一部に関わりがあるといえばあるのだが、まるで他人事のように口にする。
「……ん、私……? そう、ねぇ……ふふ。いつも、どおり……か、しら……ね、ぇ? あ、は」
くすり、と笑い……ふと、思い出したよう
「そう、いえ、ばぁ……この、あいだ、の……『表』、に……出た、後……も……変わら、ず……とい、う……こ、とぉ……? また、ご用命、は……ある、か、しらぁ……? かわ、ら、ず……そう、いう……オシゴト、も……でき、る、わ、よぉ……?」
■狭間在処 > 「……深層心理とかそういうものか?…否定はしないが、意識している分ではそんな願望は無いんだけどな…。」
願望――願望?何かに強く希うものがあっただろうか?
やっている事はただの『八つ当たり』で、終着点など無い。
まぁ、望郷の念じみた、子供の頃の無邪気な自分に対する『何か』はあったのかもしれない。
しかし、こちらの事葉を相変わらず正確に一言一句余さず理解しているのは。
それが、どういうカラクリかは気にしない。ただ、単純に『会話』が出来るならそれで良し。
『……今回”も”派手な火遊びになりそうだが…風紀の連中が、気のせいか殺気立ってもいたし。
…祭りか…体験したことは無いが、率直に言えば…そうだな、その空気感には興味はある。』
青年は殆ど知らないに等しい今の出来事。彼女が一部に関わっている事も当然知らず。
ただ、率直に答える言葉は淡々とした語り口ながら真実その通りだ。
別に、排他的でも無関心でもない。人並みに感情は当たり前にある故に、彼にも好奇心は当然備わっている。
『…そうか。まぁ息災ならそれでいいが。』
見知った顔が、それこそ敵対でもしていない限りは元気にやっているのは良い事だ。
少なくとも、以前会った時と変わらぬ空気や風体ならば、彼女の言うとおり『何時も通り』なのだろう、と。
『…ご用命――いや、流石に変装して表はあの限りで十分だ。そちらの腕前は確かに良かったが。』
そもそも、初めて『表』の世界を体感できたのは彼女のお陰でもある。
そういう意味では恩人であるし、特殊メイク等やらで『変装』して表を束の間体験させて貰った。
あの後も、一度転移の事故で落第街の外に飛ばされた事はあるが、表を歩いたのはその2回だけ。
『…少し、気掛かりな事が無い訳でもないが…取り急ぎ、俺があちら側に渡る理由は無いな。
どちらかといえば、”これ”を少し解消したいと思っているが。』
表の世界への好奇心は未だにあり、だから理由が無いと断るが実際はそんな事は無い。
気掛かりがあるのも本当だ。だが――どちらにしろ問題が一つ、悩みと言うべきか。
己の喉下の包帯を軽く指先でトントンと叩くように示すジェエスチャーをしながら。
『――せめて、『声』の代替が欲しい所ではあるな。アンタは特殊みたいだが、普通の対話が出来ないのは地味に厳しい。』
■シャンティ > 「ふふ。も、しか、したら……の、お話。で、もぉ……も、し……少し、でも……心当、たり、ある、な、らぁ……自分を、ふり、かえる、のも……いい、かも、しれな、い……わ、よぉ……? 自己、分析……と、いう、やつ、ね。」
くすり、と笑う。それが事実であろうと、そうでなかろうと。女にとってはどちらでもいい。ただ、なにかがあれば面白そう、というだけだ。女はカウンセラーでもなんでもないのだ。
「そう、ねぇ……思い、思い、に……遊んで、いる、みたい、だ、しぃ……火遊び、も……あれ、ば……本当、に……お遊び、も……どちら、も……ある、意味……派手、には、なり、そう、ねぇ……ふふ。あぁ……お祭り、興味、ある、な、ら……この、フライヤー……最近、巻かれ、てた、の……あげ、る、わ、ねぇ?」
騒動の起きることをまるで、他人事のように面白がるように女は笑う。笑いながら、小洒落たフライヤーを投げてよこす。"HELL 16-2 1563 1st"と書かれたそれは、ブラック・マーケット開催の告知だった。
「私、の……もの、じゃ、ない、けれ、どぉ……ふふ。調べ、れば……多分、あち、こちで、噂、されて、る……はず、よぉ……?どう、するか、は……あなた、の、自由……ね?」
くすくすと笑った。
「あら、残念。ご用命、なら……ま、た……いつ、でも……ね?」
あの限りで十分、という言葉に少しだけ本当に残念そうにする。普段、忍び笑いを浮かべてばかりいる女にしては珍しいことだ。本当に残念だったのかもしれない。
「……けれ、ど。ふふ。そう、ね。そっち、も……大事、ね、ぇ……声、の……問題、ね? 立ち、いった、こと……聞いて、も?」
唇に指を当てて少し首を傾げながら、女は問う。
「外科、的に……どう、こう……する、のか。魔法、的に、どうにか、する、のか……そも、そも……できる、のか……違って、くる、と思う、し?」
■狭間在処 > 『…自分自身を見つめ直す、という事か……そうだな…そうしてみてもいいかもしれない。』
実際の所、何度かそのような事はしてはいるが、結局出る答えは毎度同じだ。
何か見落としがあるのか、自分自身が自覚していない盲点があるのか。
スシーラの言葉に頷くように同意はするが、今の時点で見落としに気付けるかは分からない。
『…まぁ、あちこちで派手にやってるのは俺の方にも断片的に届いてはいるか…。
…フライヤー?……あぁ、そういえば何かばら撒かれていたというのは…。』
それも、小耳には挟んでいたし、落第街にもある程度拾われたのかばら撒かれたのか。
兎も角、同じフライヤーを持っている通行人を見掛けた事くらいはあったが。
青年も、なまじ詳細を知らないからこその他人事の空気で小洒落たフライヤーを片手でキャッチ。
『……これは…パスワード…ではないか。暗号…なのか?』
真っ先に目に留まったのは、【HELL 16-2 1563 1st】の文字。意味が分からず小首を傾げて。
これは、調べないと流石にこの場で解読、というのは無理そうだ。
その他の文面なども軽く読み進めていく。ブラック・マーケット…か。
『……成程、確かに”面白そうだ”。…ただ、この開催場所が暗号化されているのを解かないといけないな。』
さて、困った。謎解きの類は昔からあまり得意ではないのだが。
頼れる伝手も居ないし、そうなると矢張り自力で調べまわるしかないか?
『……何か残念そうだな……まぁ…そうだな。
アンタの腕前は良かったのは確かだし…”今は”遠慮しておく、と訂正するよ。』
言葉を少し言い直す。今は兎も角、またいずれ頼む機会はあるかもしれないから。
それが何時になるかなんて、それこそ分からないがあちら側に関わる事もまたあるかもしれない。
『…外科的には無理だな。相当”弄られた”ものだし、闇医者等もお手上げと言っていた。
どちらかといえば、魔法的な手段の方が可能性としては高いかもしれない。
…ただ、それも永続的に声が出るという条件を加味すると厳しいかもしれないな。』
前に、一時的に喋れるようになった事はあったが、アレは符に特殊な数式を書き込んで『振動』を利用して擬似的に音声を復活させるものだった。
もう、あの符は使い切ってしまったし、青年に振動を操る能力や魔術の心得は無い。
『…魔道具か何かの代替も考えたが、意外と『声』に特化した物は数が少ないみたいでな。
そっちも成果は芳しくない…まぁ、永続的とまでは行かずとも一定時間声が出ればそれで十分なんだが。』
纏めれば、外科的には絶望的で、魔術や異能で『代替』する事は一応可能かもしれない、という所か。
■シャンティ > 「ふふ。案外、新し、い……自分、と、か……新、しい……世の、中、との……付き、あい、方……と、か。見つ、かる……かも、しれ、ない、わ、よぉ……? ま、あ……見つか、らない、こと、も……ある、だ、ろう、けれ、どぉ……別、の……なに、かが……みつか、る……か、も?」
自分もしらない自分、他人が知る自分、自分も他人もしらない自分。存在すれば、多様な見方が其処にある。それを見つけるもよし。見つからなければ、それはそれで自己認識の強化にはなる。それがいいことかどうか、は……本人次第だが。
「そう……暗号。そう、ねぇ……少し、だけ……ヒント。それ、は……人、が……熱狂、する、とこ、ろ……見る、モノ、見せる、モノ……その、両者、が……あって、成立、する……そんな、ね? 今、は……見る、影、も……ない、けれ、ど……その、日……だけ、は……特別。」
わかるような、わからないようなヒントだけを述べる。
「たど、り……つけ、たら……ふふ。楽しん、で、ね?」
そして、くすくすと笑う。宴に参加するモノが増えるのは喜ばしいことだ。女はそう考える。それだけで、大なり小なり変化は訪れる。それが良い変化だろうと悪い変化だろうと、どちらでもよい。
「あら……残念、そう……に、みえ、た? ふふ……いえ、ね。久々、に……いい、仕事……できた、と……思った、から……ね? 気を、遣わ、せ、てしま、ったかし、らぁ……ごめん、なさい、ね?」
小さく、ぺこり、と頭を下げる
「……医者、が……投げ、た……の、なら……医療、機器、も……難、しい……かし、ら、ねぇ……シンプル、なの、だとぉ……それ、が……早い、の……だ、けれ、どぉ……ん………」
しばし、在処の言葉を静かに受け止めてから、女は唇に人差し指を当てて考える。珍しく、真面目に考えているようでもあった。どこか、奇妙な親切さでもある。
「……ん。そう、ねぇ……永続、的、と……なる、とぉ……魔術、でも……魔導具、でも……定期、的な……調整、とか……要り、そう……よ、ねぇ……あぁ」
ふと、思いついたように小さく指をふる。
「……自分、の……声、と、いうの、に……拘り、は……ある、の、かし、らぁ……?」
そして、口から紡がれたのは奇妙な問いかけだった。
■狭間在処 > 『…自分自身を深堀りし過ぎると、却って面倒な事にもなりかねないから俺としてはあまりやりたくないんだけどな…。』
別に、男の過去は…まぁ、壮絶ではあるが”珍しいものではない”。
落第街やスラムでは無数にある悲劇の一つであり、その果てに今の自分が居るだけだ。
そんな自分を深く見つめ直しても、おそらくロクな事にならないと薄々勘付いてはいる。
だが、冷静に冷徹に自己分析をしてみて、己の盲点を洗い出すのは一考の余地があるだろう。
(――仮に、異能の暴走や俺の中途半端な『怪異化』が下手に変化しても困るからな。)
そう思いつつ、視線はフライヤーの文面を改めて流し読みしていたのだけれど。
ふと、スシーラの告げるヒントに顔を彼女へと戻す。勿論、そのヒントの意味は直ぐには理解できないが。
『――ヒントを出す、という事は…アンタは『見せる側』なのか?
…まぁ、どちらにしろヒントは有り難いな。正直、ノーヒントでは厳しかったと思う。』
疑問を呈するが、仮に彼女がそちら側だとしても別にそれはそれで構わないのだ。
狂騒の渦というものは、『見せる側』と『見る側』、両者が揃ってこそ成り立つもの。
彼女の曖昧なヒントから、答えに辿り着けるのかも祭に参加出来るのかも今は分からない、が。
『…いや、最初は戸惑ったが、アレはアレで新鮮だったし…重ねて言うが、アンタの腕前のお陰だ。
だから、謝る事は無いし…いずれ、また頼めたらとは思う。』
今すぐに、ではなくともいずれは。生真面目故に律儀にそう答える辺りは、青年の性格が出ているだろう。
しかし――一応、知人とはいえ存外に真剣に取り扱ってくれるものだ。
無論、『声』についてであるが…打算?親切心?青年にそこはよく分からない。
そもそも、自分の『声』の問題が仮に解決するとして、スシーラにメリットとかあるだろうか?
等と、つい思考に耽りそうになるが、それは抑えて彼女の言葉を聞く。
『……?声への拘り、か?…いや、そこまでは…。流石に、この見た目で女子供や老人の声、は少し抵抗ありはするが。』
不思議そうに思いながらも、そこまでしっかりとした拘りは無いのだと答える。
そもそも、少年の頃からこの調子なので、青年は今の自分の『正しい声』を知らない。
そういう意味では拘りは無いと言えるだろう。流石に、この見た目で女性や子供、老人の声は違和感は覚えてしまうが。
■シャンティ > 「ご利用、は……計画、的に……と、いう、あたり、か、しらぁ……ふふ。深淵、を……覗く、とき……深淵、も、また……こちら、を……みて、いる……だ、った、かし、らぁ……深淵、は……深、そう、ねぇ?」
何の、とは特に言及しない。それだけにとどめて、くすくすと笑う。そもそも、この街にいるというだけで闇は深い。怪人じみた相手であればなおさら……であろう。
「ふふ。興味、ある、人……に、見て、もら、わない、と……意味、が……ない、もの。エンターティンメント、も……大事、だけれ、どぉ……たま、には……フォロー、も……必要、よ、ね。」
誰も彼も来る宴も楽しいものである。しかし、こうしてクローズドにして楽しむのもまた、一興。なにしろ、何が来るかもわからない。熱意あるものだけが来てほしい、というのもわかる。それでも――熱意があってもたどり着けない場合もあるだろう。それはそれで、少々つまらない。女はそう考えた。
「また、たのめ、たら……ね? ふふ……真面目、という、か……人が、いい、と、いう、か……生き、辛い、人……ね、ぇ?」
揶揄するように笑うが、別に悪意もなにもない。純粋に面白がっているようだ。
「拘り、は……ない、の……な、ら。裏技、とい、うか……ズル、は……ある、わ、ねぇ……気に、いる、かは……別、と、して…… そ、う……たと、えば……使い、魔……と、か?」
念話によって意思が伝わり、人語を喋ることにだけ特化した使い魔。そのようなものであれば、運用できるのではないか、と。女は提案する。
■狭間在処 > 『――何処かで聞いた事があるようなフレーズだが…けど、”深淵”は誰にだってあるものだと思う。深さや”中身”が異なるくらいで。』
自分にも、スシーラにも、誰にでも。そして、自分の深淵を一番覗き込めるのは自分自身しか居ない。
そして、そんな自分の深淵を垣間見んとするならば、ソレもまたこちらを見ているのだと。
『…エンターテイナーの集団…と、いう認識でいいんだろうか?
…フォローは有り難いし…悪くないな。殺しや暴力が『無い』のが特に。』
日常からそれに慣れ過ぎてしまっているが故に、そういうものが無い狂騒はむしろ肯定的ではある。
ただ、少し残念なのは自分は『見る側』で『見せる側』にはなれそうもないな、という事くらいか。
青年は、別に平和主義者でも博愛主義者でも何でもないが、物騒な事は”無し”で盛り上がるのは素直に良いと思っている。
『――ただ、風紀や公安で気付いたヤツが紛れ込んでくる可能性もあるように思えるが。
…あぁ、いや。”それも一興”という奴か。祭や宴は”派手な方が盛り上がる”からな…。』
懸念を口にするが、直ぐに見方を変えた。それも織り込み済み…いっそアドリブで盛り上がのがショーの醍醐味だろう。
見た目や雰囲気は硬質な青年だが、そこは柔軟というか割りと理解があるらしい。
もっとも、そうでなければこの祭に興味を持つ事がそもそも無かっただろう。
『――自分が不器用な生き方をしているのは流石に自覚しているが。…生き辛い、か。』
どうだろうか?まぁ、窮屈さはあるといえばあるかもしれない。
自分から縛っている一面もあるにはある。例えば表に自分から進んで出向かない事とか。
それも、青年の”人の良さ”…表の人間に自分が迷惑を掛けない為、というものだ。
辛辣な見方をするならば、この街の人間では”甘い”レベルではあろう。
『この街』に適応しつつも、人の良さは残り続けている。そういうアンバランスさ。
『…使い魔、となると。俺の意志や口の動きに応じて変わりに喋ってくれるという感じだろうか?
まぁ、確かに使い魔次第で声はかなり変わりそうではあるが…。』
成程、拘りとはそういう意味合いかと納得。少し考えるように間を置き。
『…スシーラは、そういう使い魔か何かにツテみたいなものはあるだろうか?
もし、あるなら紹介して貰いたいのだが…無論、無ければ無いで構わない。』
使い魔、となると矢張り魔術――召喚術方面か。そっちは無学なので一からとなると厳しいな、と内心で吐息を零す。
■シャンティ > 「それ、は……そう、ねぇ……ふふ。そし、て……それ、は……深く、ても、浅く、ても……その、誰、かの……大事、な……ナニカ。それ、を……知る、のは……とて、も……たのし、い……の、だけ、れ、ど……あら、これ、は……余計、だった、わ、ね」
くすくすと不穏なことをいいながら笑う。人の人生を楽しむ。悪趣味とも言える、それを平気で口外して女は笑うのだ。
「そう、ねぇ……そう、考え、て……もら、って……いい、わ? ただ……方向、性、は……だいぶ、メンバー、で……違う、けれ、どぉ……? そう、ねぇ……暴力、も……よし、と……する、の、だって……まあ、ね?」
あくまで、楽しいことをしたいがために集まった。それだけなのだから。それでも、楽しければそれで良い。どこか破綻しているその考えのまま、女は進む。
「そう、ね……風紀、とか……きた、ら……暴力、とか、は……ある、で、しょう、ね? それ、も……エンターテインメント、よ?」
くすくすと くすくすと 暴動が起きそうなそれを女は楽しそうに語る
「だいた、い……その、通り、ね。問題、は……使い魔、の……声、と。種類。なに、しろ……代わり、に……しゃべ、らせ、て……そし、て……連れ、歩く、の……だ、もの。選択、は……大事、だ、わ?」
女は珍しく笑いを収め、至極真面目に言葉を紡いだ。
「でき、ない……こと、は……提案、し、ない、けれ、どぉ……ただ、注文、どおり、に……でき、るか、は……別、よ? さ、あ……どう、す、る?」
■狭間在処 > 『――アンタ、実はかなり悪趣味だろう…?まぁ、それはそれで別にいいんだが。』
僅かに目を半眼にしつつも、その悪趣味を否定はしない。そもそも口煩く言うつもりなんて無い。
それが彼女の在り方の一つなら、自分がどうこう言えたものではないからだ。
そういう意味でも柔軟で、懐が広いとも甘いとも言えるのだが…。
『…俺個人としては、こういう祭は純粋に楽しみたいな。暴力なども”込み”も、まぁそれはそれで盛り上がるならアリ、ではあるだろう。』
別に自分がその渦に混ざる、とは言わないがこれもまた否定はしきれない。
エンターテイナーにも、それぞれの矜持や拘りというものがあるだろうから。
方向性が違う集団だからこそ、生まれる熱があり色があり、それが狂騒と熱に変わるのだ。
だから、それに暴力が含まれているとしても、それはそれで一つのショーの形なのだ。
『”楽しむ事”に貴賎は無いからな…正直ぶっ飛んだ集団とも思えるが、俺からすれば良いと思う。』
自分が潰して回っている連中より何百倍も、それこそ比べるのすらおこがましい程に”楽しそうだ”。
無意識に薄く口元に笑みを浮かべる辺り、案外そういう方面の適性もあるのかもしれない。
『…まぁ、仮に俺がショーに参加者として行けたとしても、連中と事を構えるのは避けたいな。
…あぁ、でも、いっそ大暴れするのもアリといえばアリか。』
大前提として、ショーそのものを破綻させないように、純粋に盛り上げる為に、という但し書きは忘れずに。
『…そうか。俺はあまり使い魔に詳しい訳ではないから、その辺りも正直把握できていないが。
声については、まぁ聞き取れる声量と出来れば男性的な声なら、それ以外は声の質などには文句は無いな。
…使い魔そのものについては、小型だと連れ歩くのに楽だから助かるが…。』
例えば、手の平サイズか肩の上に乗るくらいか。他に何か補足があるとすれば…。
『…後は、空中に浮かぶか或る程度飛べるタイプだと有り難いかもしれない。
自立移動出来ると、万が一の時には退避させたり安全圏に逃げて貰う事も出来ると思う。』
と、口にしてから注文が過ぎただろうか?と、反省。
■シャンティ > 「さ、て……どう、かし、ら……? エンターテインメント、の……ため、に……人、を……まきこ、む……の、は……悪趣味、かも、しれ、ないわ、ねぇ……? ふふ。お祭り、に……なる、し……許し、て……もら、え、たら……いい、わ、ね?」
くすくすと女は笑う。明らかに、かけられた言葉の意味をわかっていて、わざとずらすかのような物言いだった。しかし、そこに不快な気分はなさそうで。ただ、冗談めかしているように聞こえたかもしれない。
「あぁ……発起人、は……だいぶ、愉快、な……人、だか、ら……もし、興味、あれ、ば……声、をかけ、て……あげ、て? 仲間、は……きっと、歓迎、よ? どんな、人、か? ふふ。お祭り、に……くれ、ば……いや、で、も……わか、る、わ。あの、子……私、と……違っ、て……わかり、やすい、もの」
自分をその道に誘った相手のことを思い出して、くすくすと笑う。あれは特殊な存在で、特異な存在で。ややもすれば飲み込まれてしまうかもしれない。それは、それで面白い、とも思う。
「ふふ……いい、の、よ? それが、宴、という、もの、だし、ね? あぁ……だか、ら……抑え、る……こと、は……ない、から、ね?」
くすくすと在処の反応に笑う。
「あ、ら……それ、くら、いの……要望、で、いい、のぉ……ん……そう、ね、ぇ……」
少し考える。その間に、女の手にはもう一冊、これもまた奇妙な表紙の本が現れる。
「……来よ 来よ 来よ 汝 彼方より 至りしモノ 我が呼び声に 応え 来よ 来よ 来よ 契約の下 至れ 至れ 至れ 汝ら 我が使いなり 縺翫∪縺医?謌代′縺励b縺ケ縲?蠢?螳溘↑蜒輔??縺ィ縺乗ュ、蜃ヲ縺ォ縺?〒繧」
口から漏れるのは、奇妙に流暢な言葉と……何ともつかないノイズのような言葉。それが終わるとともに、互いの間に、光が現れる。が、奇妙なことに眩しさはなかった。
「……さ、て。と、する、とぉ……こん、な……とこ、ろ……かし、らぁ……?」
現れたのは、カラス、のように見えるが三本足のそれ。小型の竜のように見えるが手が翼になった、うす青いそれ。小鳥のように小さいが、うす赤い鱗に覆われ単眼、一本足のそれ。
彼らは、青年の若くわずか高い声、壮年の男性のような低い声、年齢の重みを感じさせる低く重い声、を口々に喚き散らしていた。
「あら……元気、ね、ぇ……声、に……つい、て、は……混ぜ、ちゃ、って、も……いい、し……ちょ、っと、くら、いな、ら……つかい、わけ、は……効く、けれ、どぉ……見た、目は……ね、ぇ?どう、す、る?」
■狭間在処 > 『……悪趣味ではあるが、それを批判するつもりはないぞ。
元より、俺自身がその祭に興味を示している時点で、人の事をどうこう言えたモンじゃない。』
青年は甘い部類ではあろうが、完全な『善人』とは言い難い。
『ヒーロー』ではなく、『ヴィラン』でもなく、我ながら中途半端だ。
冗談めかしたスシーラの言葉は、わざとズレを生じさせる言い方ではあったが、冗談めかして聞こえる。
『……俺が思うに、その手のタイプの主催は『混沌』を形にしたような人物なイメージがあるが。
…成程、そもそも参加出来るかも分からないが、一目見るくらい出来れば幸いだな。』
それが、まさか一度面識のある互いに名乗らず別れた屋台通りで遭遇した炎髪赤眼の女性だと。
この時の青年はそれを知る由も無く、さてどんな人物なのやら…と、ぼんやり思う。
『…まぁ、”空気をぶち壊し”にしないように気をつけるつもりではあるが。
…自分で言っていてどうかと思うが、”羽目を外す”のは苦手だからな…。』
実際、人前でそういう態度を一度も見せた事は無いし、普段の自制心や理性が強い。
羽目を外す、という言い方は少々アレだが…あまり開放的になると、後が怖いのもある。
「……!!」
彼女の行動を見守っていたが、僅かに瞳を丸くする。これは召喚術…で、いいのだろうか?
よく分からない呪文詠唱――何処かノイズのようにも聞こえる――そして、発する光は”眩しくない”。
現れたのは、
――三本足を持つカラスのようなもの。
――翼手を持つ薄青の小型のドラゴン。
――薄赤鱗に覆われた単眼一本足の小鳥のようなもの。
それぞれが、僅かに高い青年の声、想念男性のような渋みのある低い声、年月を重ねた低く重い声を好き勝手に響かせている。
『…凄いな…召喚術というものを間近で初めて見たが…。』
そう、呟きながらも三者三様の使い魔『候補』を順番に眺めていく。
正直、どれが優れているだとか劣っているだとかはあまり関係無いだろうしそこは気にしていない。
(――これは、単純に俺の好みという事になるんだろうか?)
とはいえ、どれも別に悪くは無いと思う辺り、この青年のセンスも些か謎ではあるが。
■狭間在処 > 『――決めた。この三本足の黒いカラス…で、いいのか?これにしよう。』
少しの沈黙と思考を挟んでから、徐に三本足のソレを指差して。声に付いては…
『声は、若い男の声をベースに、若干低い壮年の男の声を混ぜる感じは行けるだろうか?』
■シャンティ > 「ふふ。別、に……批判、でも、非難、で、も……好きに、すれ、ば……いい、けれ、ど。気に、は、しない、し……いま、さら……かわ、らない、し……ね?」
くすくすと笑う。根付いてしまったこの性根を変えるとすれば、よほどのことでもなければ無理であろう。未だに、この街に足を運んでいるのもそれが原因であるのは間違いない。それは自覚がある。そして、進んで治す気もない。
「ふふ。会え、たら……仲間、に……なら、なく、ても、遊んで、あげ、たら……きっと、よろこ、ぶ、わ……あの、子」
すでに一回は見知った仲とはつゆ知らず。仮に知っていたとしても、同じことを言ったであろう。重要なのは、ただただ、人と人との邂逅が何をもたらすか、だけだ
「そう、ね……召喚……召喚、といえ、ば……そう、ね。細かい、こと、は……別に、どちら、でも……いい、し。」
そして、現れたそれらに感心の言葉を漏らす男に、女は不思議な言葉を返す。詳細を晒したところで痛くもないが、だからといってさしてこの場では意味もない。
「ん、その子、ね……おい、で……?」
その言葉とともに、カラスらしきモノは飛び上がり差し出された女の腕に乗る。それとともに残りの二匹はどろり、と泥のように溶ける。そして、まるで何も居なかったかのように……跡形もなくなる。
「蠖シ縺後≠縺ェ縺溘?縺比クサ莠コ縺輔∪繧医??蜻ス莉、縺ォ蠕薙>縺ェ縺輔>」
女は消えた二匹には目もくれず。腕に乗ったカラスに何事か、奇妙な言葉をかけると在処に顔を向ける。
「さ……腕を……出し、て? 契約、させ、る……か、ら……あ、と……声、は……ゆっく、り……しつけ、れば……いい、わ。おし、え、れば……覚え、る……くら、いの……知恵、は……ある、わ?」
そういって、カラスの乗った腕を差し出した
■狭間在処 > 『…まぁ、そこは同感だ。そもそも賞賛されてもな…と、いうのもあるが。』
負の感情を向けられるのは慣れているし、それは正直日常の空気のようなものだ。
彼女とは全くベクトルは違うのは間違いないが、青年も青年で性根は少々歪だ。
『…とはいえ、俺にエンターテイナーの素養があるのかどうか、といった所だが。
…遊ぶのは別に構わないんだが、その主催が喜ぶかどうかだな…。』
別に自分を卑下してはいないのだが、面白みがあるかどうかと言えば疑問だ。
自覚はあるが、普段から自分を出来る限り律しているので、堅物と言われても仕方ないくらい。
まぁ、世間知らず故の天然さはありはするが、それが”ウケる”かどうかなんて分からない。
『…まぁ、俺も説明されても直ぐには理解が及ばないだろうから、厳密に違うとしてもたぶん分からないだろう。』
魔術方面は無学に近いので、仮に細かい事をスシーラから説明されても理解力がおそらく足りなかっただろう。
仮に魔術”ではなかった”としても、それはそれで説明が簡潔かどうかは分からない。
使い魔の『選択』をすれば、三本足のカラスが彼女の腕に身軽に飛び乗る。
残る2体の使い魔は泥が溶けるように綺麗サッパリ消えてしまったようだ。
(…この詠唱…なのか?矢張りノイズのようにも聞こえるが)
とはいえ、分かる者には分かる『力ある言葉』なのだろう、おそらくは。
そして、言われた通りに右腕をそちらに差し出して『契約』を済ませようとしながら。
『…学習能力は高いのは助かるな。あぁ、そこはちゃんと自分で何とか躾けて調整しておく。』
■シャンティ > 「ふふ……人を、楽しま、せる……という、より……結果、的に……人が、楽し、んだ、り……する、だか、ら……ね。あま、り……細か、い……こと、は……気に、しな、くて、も……いい、の、だけれ、どぉ……ま、あ……そこ、は……いい、わ」
要するに、好き勝手にしよう、という……無軌道な集まりなのだ。ただ、それを自らの思うエンターテインメントに当てはめる。それだけのことだ。
「さ、て……」
差し出された腕に、カラスが乗る。三本足を器用に使い……普通であれば食い込むであろう爪も、食い込むことなく其処に居た。
「迢ュ髢灘惠蜃ヲ縲?豎昴??縺薙l繧医j縲?豺キ豐後?荳サ縺ィ縺ェ繧峨s縲?邏?ョ壹r邨舌?縲?蠖シ譁ケ縺ク縺ィ閾ウ繧峨s縺薙→繧偵??遘ー縺医h縲?豎昴?蜷阪r縲?縺昴l繧偵b縺」縺ヲ螂醍エ?→縺ェ縺輔s」
また奇妙なノイズのような言葉が漏れ……
「さ、あ……この子、に……あなた、の……名前、を……教え、て……あげ、て?それ、で……おし、まい」
名前を告げれば、自分以外の"ナニカ"と繋がった感覚を得ることだろう
■狭間在処 > 『…まぁ、そうだな……正直、俺も細かい事をいちいち気にするほどに神経質なのは御免だし。』
無軌道な集団。それが落第街だけでなく、他も…島全体を盛り上げてくれるなら、それはそれでアリだろう。
善悪性別年齢種族問わず、”盛り上げる”のは何時だって最高に”イカレた奴ら”なのだ。
『――こういうの連中が、…何というか…”ロックな奴ら”と言えるんだろうな…。』
ぼそり、と呟く声はそもそも音が乗っていないけれど。
こちらの差し出した右腕に三本足のカラスが飛び乗る。
何故か、爪が食い込まないのが不思議だが使い魔だからだろうか?
「………。」
契約の儀式なのか、再びノイズにも聞こえる詠唱じみた言葉の羅列が聞こえる。
それを黙って聞きながら改めて三本足のカラスの使い魔を眺めて。
今日からはコイツが、自分の『声』の代わりを務めてくれるのか…と、少しだけ感慨深い。
『……狭間在処――ハザマ・アリカ…だ。』
念の為に二度、己の名前を繰り返す。契約というものが初めてだから慣れていない。
ゆっくりと、ハッキリと発音するように心中の声でカラスの使い魔へと己の名を告げようか。
■シャンティ > 「……契約、完了……ね、ぇ……ど、う? ふふ。とい、って、もぉ……意思、疎通、と、しゃべ、らせ、る……くらい、しか……でき、ない、けれ、どぉ……」
名を伝え、結びつきをつくってしまった。その結果、両者はつながる。その先にあるものは、もはや両者にしかわからない。否、両者にもわからない、かもしれない。
「もし……他、の、こと……した、けれ、ばぁ……二人、で……相談、して、ね? ふふ。あぁ……食事、は……普通、に……食べ物、あげ、れば……いい、から……ね?」
魔力的なナニカ、は必要ない。ただ生物的に必要な分だけ与えればそれで十分だ。なんなら、自ら取りに行かせても問題はない。
「さ……あと、は……どちら、かと、いえ、ば……そち、らの……コミュ、ニケーション、タイム……か、しら? お邪魔、しない、よう……に、私、は……退場、しよう、か、しら?」
くすり、と笑ってあるき始める
■狭間在処 > 『…いや、むしろそれで十分だ。音声の会話を代行して貰えるなら、それだけで意志の疎通が今までより楽になる。』
右腕に留った三本足のカラスと目線を合わせる。”繋がっている”感覚はおそらく契約完了した証だろう。
この先、青年とカラスがどうなるのかは勿論、誰にも本人達にも分からない。
『……今の所は、単に『音声会話』の代行くらいしか考えていないが、了解だ。
…食事は意外だな。てっきり俺の魔力でも食うのかと思っていたが…。』
少し驚くが、それはむしろ有り難い。魔力の質や量が常に変動している己としては。
その内、仕込んで自分で餌を取りに行かせるのもいい…いや、教える必要は無いかもしれないが。
『――そうだな…何というか…あぁ、『変装』の時といい、今回の『使い魔』といい、二度も世話になった。』
そうして、歩き出す彼女を見送りながらカラスと視線を合わせる。そのカラスが口を開き。
「―――ありがとう、スシーラ。いずれまた。」
本来の彼の声、かは分からないが。落ち着いた青年らしき声色が確かにその背に投げ掛けられて。
■シャンティ > 「ふふ……そう、ねぇ……対価、は……いずれ……あなた、の……土産、話、でも……聞かせ、て……くれれ、ば……それ、で」
そう、言葉だけかけて
女はゆっくりと闇に消えていった
「ええ、だか、ら……いずれ、また。会い、ましょう、ね?」
その言葉といつもの笑いだけが、小さく闇に響いた
■狭間在処 > その言葉を受けて、闇に消えていく後ろ姿を見送れば一息。
何となくまたカラスと視線を合わせる。…三本足のカラス…何かの神話の話で見たような気もするが。
(まぁ、いいか…取り合えず、コイツに言葉に慣れたりして貰わないといけないな…。)
ともあれ、そろそろ小腹も空いてきた事だ。またあの屋台通りにでも行こうか。
『さて、どうなるかな――』
「さて、どうなるかな――」
呟きと全く同じ声を耳にしてカラスを無言で一瞥。学習能力どころではない。
「…優秀な使い魔で何よりだ。」
男の意志と呟きは、そのままカラスの口から発せられる。
慣れないと些かシュールな光景ではあろうが、ここでは直ぐに日常に溶け込むだろう。
そして、青年も腕から肩へと三本足のカラスを移動させて、そのまま大通りを歩き去るだろう。
ご案内:「落第街大通り」からシャンティさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から狭間在処さんが去りました。