2022/10/25 のログ
ご案内:「廃ライブハウス」にノーフェイスさんが現れました。
ノーフェイス >  
「――――」

火照った身体を冷まして、いいきもちで眠ろう。
巷を騒がすテロリズムも、試験や進路にかかる悲喜こもごもも、どこ吹く風に。

ケースからよく冷えたグラスを取り出して、頭を抑えた小さい缶を振る。

「プルタブは変わんないんだよね……ふっしぎ~ィ。
 そのままでいい場所もあるってワケだ」

タブを跳ね上げて、鮮やかな赤がグラスに満ちていく。

ノーフェイス >  
赤々としたトマトジュース。
缶飲料ではあるけれど、屈めばとっても良い香り。
閉じ込められたみずみずしさは、自分の識るものよりも鮮やかに思えた。

「冷た」

半ばまで満ちた赤に、また別の缶の内容液を。
ふたつの色が混ざり合い、もとの色をわすれるように。
鮮やかに……交わる。
うっとりと見つめたそれに、小洒落たマドラーで更に煽った。

金属がグラスを叩く涼やかな音を奏でた。
ゆっくりとマドラーを持ち上げていくその様に――フフフ、と笑った。

ノーフェイス >  
「でーっきた。
 なんか飲みたくなったんだよな、コレ」

覗き込んだ色が、脳に焼き付いたように。
艶を帯びた唇をつけて、グラスを――行儀悪く大きめに傾けた。

「ふぅ」

瞼の裏の闇のなかで、レッド・アイを噛みしめる。
酔うには度数が足りないけれど、喉を潤すにはちょうどいい。

「―――ん」

目をあける。
いまひとたび、今生きる時間に回帰すると、充電中の端末が点灯していた。

ノーフェイス >  
SNS上にアップロードされた画像や動画ファイルへのリンク。
それはいつものことだ。"面白いこと"をキャッチするために。
表裏問わず、様々な人間の目を借りている。
対価は金から、それこそ様々。 
通貨という概念に縛られなければ、買えるものは爆発的に増える。

「なんだコレ?」

いいきもちのまま親指で画面をフリック。
フリック。

表情が失せる。
フリック。

「………」

眉根が寄せられた。
フリック。

ノーフェイス >  
 
「……なんだコレ」
 
 

ご案内:「廃ライブハウス」からノーフェイスさんが去りました。