2022/10/25 のログ
ご案内:「廃ライブハウス」にノーフェイスさんが現れました。
■ノーフェイス >
「――――」
火照った身体を冷まして、いいきもちで眠ろう。
巷を騒がすテロリズムも、試験や進路にかかる悲喜こもごもも、どこ吹く風に。
ケースからよく冷えたグラスを取り出して、頭を抑えた小さい缶を振る。
「プルタブは変わんないんだよね……ふっしぎ~ィ。
そのままでいい場所もあるってワケだ」
タブを跳ね上げて、鮮やかな赤がグラスに満ちていく。
■ノーフェイス >
赤々としたトマトジュース。
缶飲料ではあるけれど、屈めばとっても良い香り。
閉じ込められたみずみずしさは、自分の識るものよりも鮮やかに思えた。
「冷た」
半ばまで満ちた赤に、また別の缶の内容液を。
ふたつの色が混ざり合い、もとの色をわすれるように。
鮮やかに……交わる。
うっとりと見つめたそれに、小洒落たマドラーで更に煽った。
金属がグラスを叩く涼やかな音を奏でた。
ゆっくりとマドラーを持ち上げていくその様に――フフフ、と笑った。
■ノーフェイス >
「でーっきた。
なんか飲みたくなったんだよな、コレ」
覗き込んだ色が、脳に焼き付いたように。
艶を帯びた唇をつけて、グラスを――行儀悪く大きめに傾けた。
「ふぅ」
瞼の裏の闇のなかで、レッド・アイを噛みしめる。
酔うには度数が足りないけれど、喉を潤すにはちょうどいい。
「―――ん」
目をあける。
いまひとたび、今生きる時間に回帰すると、充電中の端末が点灯していた。
■ノーフェイス >
SNS上にアップロードされた画像や動画ファイルへのリンク。
それはいつものことだ。"面白いこと"をキャッチするために。
表裏問わず、様々な人間の目を借りている。
対価は金から、それこそ様々。
通貨という概念に縛られなければ、買えるものは爆発的に増える。
「なんだコレ?」
いいきもちのまま親指で画面をフリック。
フリック。
表情が失せる。
フリック。
「………」
眉根が寄せられた。
フリック。
■ノーフェイス >
「……なんだコレ」
ご案内:「廃ライブハウス」からノーフェイスさんが去りました。