2022/10/29 のログ
ご案内:「落第街大通り」に狭間在処さんが現れました。
■狭間在処 > 件のハロウィンの祭から一夜明けて。
男は参加を逃してしまい、そこで繰り広げられたお祭り騒ぎの詳細は勿論知らず。
けれど、その熱狂の『余波』は少なからず広がりを伴っているようで、大通りを歩いているだけで偶に話題が耳に入る。
(…随分と盛況だったみたいだな…良きにしろ悪しきにしろ、そういう空気は伝播するものか)
あちこちで破壊行為を繰り広げる謎の男、ハロウィンの一夜限りのライブ。
どちらにも、関われてはいないがその噂も、熱も、一部ではあるがこちらに届いている。
カァ、と右肩に留まった三本足のカラスが鳴き声一つ。そちらを一瞥して軽く指先で頭を撫でる。
【大道具】に用意して貰ったこの使い魔も、扱いに慣れてきて随分助けて貰っている。
(…何より、普通に筆談や手話などを用いずに言葉で意志の疎通が取れるのが有り難いな…)
もう、10年近く『声』が出ない日々が常だった男にはその有り難さが身に染みる。
■狭間在処 > (…気のせいか、違反部活なども少々活発化してきているようにも思えるが)
あくまで男が何となく空気で感じ取ったものであり、実際にどうなのかは知らない。
ハロウィンの祭の影響なのか、全く別の要因なのか、そもそも男の気のせいか。
「……名残惜しくはあるが、終わった物はしょうがないな。」
呟きは自然と口から漏れたが、それは男の唇からではなく右肩に佇むカラスから発せられたもの。
やや渋みはあるが、落ち着いた青年の声…それが、本来の彼の声かは自身にも分からないが。
(そうなると、気になるのは例の破壊者の方だが…。)
その件の人物との接点も因縁もありはしないが、もし対峙したら矢張り戦闘になるのだろう。
正直な所、勝てるか生き延びれるかどうか、というよりも…彼の破壊行為の根本が男としては気になる所だ。
(――相応の理由無ければ大胆な行動は取らないだろう。ただの愉快犯…などとは毛色が違う)
…ふと、己の考えに気付いて緩く頭を振った。最近、地味に変な分析癖が付いてきた気がする。
■狭間在処 > 一先ず、思考を切り替えよう。自分がやるべき事は『人身売買』に関わる違反組織/部活を潰す事だ。
それ以外の組織や部活には手を出していないが…狙いが明確だから迷いが無い。
(…ただの『八つ当たり』も、ここまで来れば大したものか)
まぁ、潰した所で後から後から沸いて出るから、それこそいたちごっこ、という奴で。
キリが無い、たかが一人で出来る事にも限度はある、ただの八つ当たりでそこまでするか?
等と、言われた事も思った事もあるが、それで止まれるならとっくに見切りは付けている。
(…そっち系統の違反部活や組織が活発化しているなら、むしろ潰せるチャンスと思うべきか)
目立つほどこっちとしても潰し易くて助かる。痕跡を消すのにも慣れている。
そもそも、『たかが一人』の手によるものだ。危険視される事もそんなに無い。
…が、どうにもそういう系統の組織は何時も通りそうだ。まぁ目立つ訳にもいかないだろうから当たり前か。
■狭間在処 > (…ただ、『ヤタ』が居ない時の予備案も考えないといけないな…矢張り…。)
以前、貰った『符』を思い出す。あれは特殊な数式により振動を起こすものだったか。
その振動を声帯の代替として声を擬似的に発する、というプロセスだった。
「……『振動魔術』を頑張って覚えるべきかもしれないな…。」
拾わなくてもいい呟きを右肩に乗るカラス――『ヤタ』が拾ってわざわざ声を発する。
それを一瞥して、小さく肩を竦めながらもう一度カラスの頭を軽く撫でた。
(…魔力の質や量が不安定な体なのがネックだが、一つくらい魔術を覚えておいて損は無いからな…。)
戦闘面、というより会話の為の予備案という使用用途なら、或る程度習得すれば行けるか?
魔導書に関してのツテは無きに等しいので、地道に足で探し回るしか無いだろうか。
■狭間在処 > 一先ず、考えていてもしょうがないのでまずは動く事にしよう。
表の方に出向ければ、そういう書物も事欠かないかもしれないが…。
(……もしかして、スシーラに頼んで『変装』させて貰った方が良かったかもしれない)
惜しい事をしたな、と思うが今は取り合えず…落第街のあちこちを巡って目当ての魔導書を探そう。
右肩のカラスが一声、カァ、と鳴く声を聞きながら青年は雑踏に紛れるように大通りを歩き去る。
ご案内:「落第街大通り」から狭間在処さんが去りました。