2022/12/19 のログ
ご案内:「落第街―北西地区【轍雲】」に鞘師華奈さんが現れました。
鞘師華奈 > 「――いや、本当に懐かしいなぁここ…あれから3年と半年…ぶりかな?」

何時もの仕事着の上にコートとマフラーを身に付け、人知れず訪れた落第街の北西にある一角。
この辺りは人の気配は少ないが、昔はもうちょっと混沌としていたように思える。
かつて、女が5年ほど所属していた今は壊滅した違反組織のアジトも存在していた区画だ。

ちょっとした”探し物”を求めて久しぶりに足を向けてみたが…まぁ、何と言うか…”何も無い”。

(…考えたら、あの当事に風紀の特攻課と真正面から激突したからアジトごと吹っ飛んだんだよなぁ…。)

今思えば、風紀の虎の子の部隊の一つに、よくもまぁ真正面から喧嘩を仕掛けたものだと。
つくづく、当事の自分達の馬鹿さ加減に呆れと感心が半々、といった気持ちで更地が多いその辺りをゆっくり歩く。

「…リーダーと、私を含めて幹部が5人、その下に大体50人前後…組織としては小さい方だったかな…。」

鞘師華奈 > 冷静沈着だが同時に売られた喧嘩は買うリーダー。
やたらと好戦的で、何時もトラブルを引き連れてきた男。
自分に魔術の基礎を教えてくれた妙齢の女性。
ジャンキーな癖に、幹部連中では一番常識人だった少年。
自分より少し先に入っただけなのにやたら先輩風を吹かせていた少女。

「…そして、当事は今より無鉄砲だった私が居た…と。」

今はもう全員一人残らず居ない。遺留品の一つすら無く、女の記憶の中にのみ存在するかつての仲間達だ。
アジトがあったであろう場所に立つ…周囲の更地と何も変わらず、本当に何も無い平坦な場所。

(…探し物どころか、何一つ残ってないね…あったとしても、当時の風紀の連中が持っていったか処分したか。)

小さく吐息を零す。一度”死んだ”身ではあるが、幸い当事の記憶は大部分は鮮明だ。
――だからこそ、死んだ筈の自分が何故、3年前のあの時に蘇生したのかが分からないのだけど。

鞘師華奈 > 「…体の左半分がぐしゃぐしゃになって、ついでに黄泉の穴に落とされたから普通に死んだのは確かなんだけど…。」

死の間際まで、正直嫌な思い出だが覚えてはいる。その後に意識と記憶が途切れたので死んだのは間違いない。
――そして、次に目が覚めたら常世病院の病室だった。何故かぐしゃぐしゃだった肉体も元通りになって、だ。

「…蘇生したのは間違いない…で、私が蘇ったのは何らかの【儀式】が私に施されたから。
…生贄は私自身を含めた、当事の仲間全員…【人柱の儀】…ここまでは掴んだ。」

更に調べた結果、どうやら自分の両親が死んだ【火事】もその儀式の一環だったという事。
ただ、肝心の儀式の内容――つまり、私に”何が起こったのか”。そこが未だ分からない。

「…やらかしたのは多分リーダーなのも間違いない…認めたくないけど。
…私の髪の毛が一部赤くなっているのも、あの焔の力も多分、その儀式の結果なんだろう。」

知らず独り言を漏らしながら、かつてアジトのあった場所を離れてこの地区をまた歩き回る。
当事の記憶に、何かヒントは残っていないだろうか?…ただ、思い出す記憶にそれらしきものが無い。

「…意図的に記憶を消されたり、欠損している可能性も十分に有り得るからなぁ。」

やれやれ、と吐息を零しながら懐から煙草の箱を取り出して。
1本、片手で箱を押し開けて取り出せば口の端へと咥えつつ。

ご案内:「落第街―北西地区【轍雲】」にジョン・ドゥさんが現れました。
鞘師華奈 > 「…で、だ。原因不明の眠り病みたいな症状。…これは副作用か何かだとは思うんだけど…。」

女は親しい人間以外に寝顔を見られるのを極端に嫌う。
何故ならば、まるで死人みたいに生気が無い青白い寝姿だからだ。
まるで、眠っている時が本来の自分――正しく死者であるみたいに思えて。

(――もうちょっと裏常世渋谷を探って…いよいよ、黄泉の穴に足を運んでみるしかないかなぁ。)

アレから一度たりとも足を運んだ事の無い、かつての自分の終焉の場所。
ジッポライターで火を点けながら、紫煙を燻らしつつ一息。あそこに足を運ぶのはトラウマなのかとても嫌だけど。

ジョン・ドゥ >  
 何にもない場所だ、ってのは、まあまあ資料で見てわかっちゃいた。が、立ち寄っていない場所ってのがあれば、とりあえずは立ち寄ってみたくなる。
 ほら、ゲームで地図が埋まって無ければ、とりあえずマッピングしてみたくなったりするだろ?そういうもんだって。

「……だからって、瓦礫に埋まるとは思わないだろ、普通」

 随分ほったらかしにされていた場所らしい、って事だから、なにか面白そうな「おとしもの」でもあるんじゃないかと思ったのにな。とりあえず高い所に上ってみたら足元が崩れるんだもん。そりゃないだろ?

「はぁ……」

 仕方ない、よな?

 EV19制限解除(セーフティリリース)、と。弾種は貫通、性質は……まあ、爆発させとくか。

 ……多分、銃声は重い。そしてそれ以上の炸裂音、低音の爆発。内側から山になっていた瓦礫が吹っ飛んでいって。そこから這い出して来るのが、デカい銃を持った、目つきの悪いチンピラみたいな野郎が一匹。

「……個性的(ユニーク)だよな」

 瓦礫から出て立ち上がったら、女と目が合った。……うん、とりあえずなんでもなさそうに片手でも上げて挨拶しておこうか。
 

鞘師華奈 > 「――…!?」

決して気を抜いた訳ではない…筈だが、いきなりの重低音にも似た炸裂音と共に、近場にあった瓦礫の山がいきなり吹っ飛んだ。
高く舞い上がり、そして放物線を描いてあちこちに落下していく大小の瓦礫の群れ。
幾つかはこちらに飛んでくるが、それをひょいっと首を傾けたりと最小限の動きで交わしつつ。

「……やぁ、こんばんわ。また中々に面白い登場の仕方をするね。」

煙草を口の端に咥えたまま、如何にもチンピラっぽい目付きの悪い男が吹っ飛んだ瓦礫の山から這い出てくるのを眺めつつ。
目が合えば、挨拶と共にそんな軽口を微苦笑交じりに投げ掛けてみようか。

「――そうだね、確かに個性的だけど…なんでまた君は瓦礫に埋まってたんだい?」

女は服装もだが口調も男性的だ。これは女のスタイルというかこだわりでもある。
一度、会話の合間にゆっくりと紫煙を吐き出す――少なくとも、男の様子からして敵意や害意は無さそうだ。
こちらが手を貸す…までもなさそうだし、彼が立ち上がり片手を挙げてくれば、こちらもひらひらと右手を軽く振ってみせる。

ジョン・ドゥ >  
「人生においてサプライズは潤いですよ、淑女(レディ)?」

 チンピラっぽい見た目は自覚してるが、それはそれとしてそれなりにスマイルしてみるとしよう。どうも、この女はサプライズには慣れてるみたいだしな。

「あー……例えばなんだけどな」

 とりあえず体に付いた塵やなにやらを叩き落として、銃をジャケットの下にしまう。軽快なトークをするにはちょいと遠い。数歩、近づかせてもらおうか。

「地図の中に、なにもない空白があるとするだろ?でも、実際はそこに土地が存在するわけだ。そういう隙間、埋めて見たくならないか?」

 まあ多分、こういうのを好奇心って言う。うっかりすると、ネコちゃん(キャットウォーク)でも落とし穴にすっぽりだ。

「そんなわけで、埋まってみたんですよ?」

 うっかり埋まった、って言うと恥ずかしいし。とりあえず、自分から埋まった事にしとこう。どうせ、バレるだろうけど。
 

鞘師華奈 > 「…私としては、淑女より男装の麗人とかの方が好ましいかなぁ…。」

一瞬、きょとんと赤い双眸を丸くするが、直ぐに可笑しそうに微笑んで煙草を蒸かす。
実際、声や髪型など顔立ちは女そのものだが、服装などは男性的なそれだ。
そういう意味では、男装の麗人というのも間違いではない…かもしれない。多分。
チンピラスマイルというのは、何処か凶悪なイメージも付随するものだが…

(…軽く話した感じ、彼は結構”理性的”みたいだな。)

第一印象はそんな感じ。見た目は兎も角、言い回しや態度はむしろ”まとも”だ。

彼が仕舞い込んだゴツい拳銃を一瞥する――見た事が無い型式だ。特注品…オーダーメイドだろうか?
先ほどの炸裂弾頭と思しき一射からして、頑強で弾薬の使い分けも可能と見た。
この辺りの観察する癖は女が公安の一員だからというのもあるが、それはさて置き。

「…あーーマッピングかな?まぁ、分からないでもないかな…ただ、それでうっかり”落とし穴”は気をつけないとね。」

彼が何で瓦礫の山に埋もれていたかを察したらしく、数歩の距離を詰める彼にも動じず肩を竦めて笑う。
とはいえ、小馬鹿にするような笑顔ではない。どちらかといえば普通に愉快といった類の笑みだ。

「それで?面白いものは見付かったかい?ここはマッピングするにしても目ぼしいものは殆ど無い一角だと思うけれど。」

と、周囲を軽く親指でくいっと示すように。瓦礫の山と更地、そしてバラック小屋が幾つか。
何処かの辺境地帯のようなうらぶれた寂しい場所だ。かつてはもうちょっと”賑やか”ではあったが。

ジョン・ドゥ >  
「……埋まってみたんですよ?」

 一応、念のため、もう一回言ってみよう。真顔で。

「たしかに男装は似合ってるけどな。紳士(ジェントル)よりは淑女(レディ)だろ?いい女には変わりないさ」

 嫌がられてるって感触はないな。面白いと思ってもらえるなら何より。……洞察力は高いな。警戒する必要はなさそうだが。

「そうだな……意外と住みやすそうだと思ったのと」

 周りを眺めて、落第街にしては喧騒が少ない空気を吸って、と。……似てるな。

「いい女と出会えた、な。公安のお嬢さん?」

 頭の中のチップが算盤を叩いて、記録されてる学生と勝手に照会した。こんな美人が公安とか、言われないとわからないな、これ。
 

鞘師華奈 > 「あ、うん了解了解、埋まってみたんだね?」

真顔で念を押してくるチンピラ男。ここは話を合わせるべきかと、取り敢えず相槌を打っておこう。

「いい女ねぇ………いや、この島はいい女はあちこちに居ると思うけれど。」

自分の知り合いを何人か思い浮かべて見るが、冷静に考えてレベルは高いと思う。
そういうのはどちらかといえば疎い女ではあるが、それでもそう思える程度には。

「んーー…セーフハウスやセカンドハウスにはいいかもしれないけど、利便性は悪いしお勧めはしないかな。」

”元・住人”としての率直なご意見というやつ。実際、利便性は悪い土地だ。
ごちゃごちゃしているのではなく…むしろ逆であれこれと”無さすぎる”からだ。

「――何だ、面は割れてるのかい?一応、自分から大っぴらに名乗ったりはしてない筈なんだけど。」

どういう理屈かは知らないが、少なくともこちらの大まかな所属や情報を把握出来ている、となれば。

(…同じ公安か、もしくは委員会の関係者…こっち側の人間の可能性はゼロではないけど…)

「――多分だけど、君は風紀の人かな?こっち側の人間に見えるけど少し空気が違う。
かといって、公安とか他の委員会の人にも見えないし。」

別に、根掘り葉掘り探る気は無い。答えたくなければスルーしても構わない程度の問い掛けだ。
どのみち、こちらの面は割れているのならば取り繕う必要性も薄い。

「――と、いう訳でお察しの通り、公安委員会の新人。鞘師華奈。一応学園の3年生。君は?」

ジョン・ドゥ >  
「そうそう。わんちゃんも棒に当たるってもんですよ。埋まりたくて埋まるヤツなんて、変態くらいしかいないだろ」

 いくらなんでも個性的過ぎる。そんなやつがいたらあってみたいな。秒で逃げる自信あるね。

「そうなんだよなあ。この島、ハイレベルすぎて正直ビビる。ただ、あんたみたいなタイプは多くはないな。好きだよ?うん」

 男装の麗人、って言葉は確かに似合う。が、それで終わらない女らしい魅力がある。むしろ、男装がこいつの魅力を引き出してると言ってもいい。

「……名乗られなくちゃ相手を知れないようじゃ、お外の戦場じゃ騙し討たれてお陀仏だな」

 くく、と笑いつつ、ポケットから腕章を取り出して見せよう。

「俺を見た時の視線の動き。顔よりも手足に向いただろ。次に全体像じゃなくて視線、口元。極めつけは俺の銃を警戒じゃなく、分析するために他より時間をかけて観察した。
 ……それだけヒントがあれば、ご同業かお隣さんかな、って思うさ」

 しかも相応に場数を知ってる。やりあえば負けないだろうが……苦しいタイプの相手だ。やりあいたくはないね。

「風紀委員の実験動物(モルモット)、一年、ジョン・ドゥ。偽名だけどな。よろしく頼むよ、華奈先輩」

 おどけたように言いながら、腕章をジャケットに押し込んで、右手を差し出そう。ご近所付き合いは大事にしないとな?