2023/01/31 のログ
ご案内:「落第街大通り」にシェン・トゥアールさんが現れました。
シェン・トゥアール > 夜の落第街…雨にネオンが烟り、人々は背を丸めて足早に歩く。
悪党であろうが市民であろうが、冷たく染み込んでくる雨には抗えない。
雨音はカーテンとなり、周囲の音をかき消してくれる。
そう、例えば…一触即発と化した連中の口喧嘩などもだ。

「俺はこの男の”女性遍歴”を洗ってるだけだ。
 あんたらに迷惑をかけないつもりなんだぞ。」
不良生徒たちに突きつけた写真を指さしながら、チャイナドレスの少女が語りかける。
頭の上には大きな兎の耳、コートには「RABBIT DETECTIVE OFFICE」のロゴ。
幼いように見えても、彼女は立派な探偵なのだ。

一方、不良生徒たちはずいぶんとパンクな格好に身を包んでいる。
写真を見て激昂するところを見るに、彼らのボスが写真の人物なのだろう。
それぞれ得物を構えて立ちはだかるところを見て、少女は小さくため息をついた。

「俺は風紀とかじゃないから、あんたらを殴りつける理由はない。
 でも、そうやって得物を握ってこっちに殴りかかってくるんなら…」
そこまで言うと、ゆっくりと拳を握り、半身で構えを取った。
「相手をさせて頂こう。 黙って殴られるのは趣味じゃないからな。」

シェン・トゥアール > 得物をもって襲いかかってくる不良生徒の一撃を、ひらりと、まるで重さを感じさせない動きで躱す。
そのまま相手の背中に着地すると、ぴたりと相手の背中に手を当てた。

「ふん!」
一声叫んだ瞬間、破壊的な”力”が手のひらから溢れ、相手を吹き飛ばす。
それと同時にひじ部分が展開して排気口のようなものが顕になると、
生じたであろう反動がそこから衝撃の形で溢れた。

「こりゃ楽でいいな、普通に気を練るより簡単だ。」
少女は全身義体である。 本来であれば、生身の体を最大限活用する
練気、そして発剄などとは相性がよくない。 それを補うための様々なギミックが、
このボディには施されているのだった。

発剄の威力に気圧されて一瞬怯んだ不良たちも、再度少女に飛びかかる。

「せい…はっ、とう!」
機械じかけのはずのボディは、驚くべき柔らかさをもって敵の動きをいなし、
かわし、受け流してから、その勢いを身体に蓄えて相手に返す。
まさしく中国武術のような身のこなしで、目にも留まらぬ連撃を叩き込んだ。

打ち合うこと数分、自分の前に倒れた不良生徒たちを見下ろしてから手を合わせ、深く頭を下げた。
「一週間ってところだな。なるべく怪我をさせないようにしたんだ、許してくれよ。
 それで、だ…。 さっきの男はどこにいるんだ?」
しゃがみこみ、比較的元気な男に問いかける。
とうとう観念したか、居場所を吐いてくれた男ににっこりと笑いかけた。

「はい、どうも。」
そのまま頭をこづく。 相手の頭がぐらりと傾いで、そのまま意識を失った。

「さて、と…。」
このまま向かってもいいが、それなりに時間も経過している。
どうしたものか。 雨がしのげる軒下に避難して、少しばかり思案することにした。

シェン・トゥアール > 「…よし!」
決意を込めて一声叫ぶと、そのまま”写真の男”のいる場所へと飛び込んでいく。
―――なにかを殴りつける音と壊れる音がしばらく鳴り響いたあと、
満足げな表情で少女はその場を後にするのであった。

「浮気現場も抑えたし、これで完了だな。」
すっかり雨の上がった夜空と空に浮かぶ星々を眺めながら、
大通りの方へと歩いていく。 良い仕事をした時は宴とと決まっているのだ。
――――たとえ家賃が溜まっていたとしても。

ご案内:「落第街大通り」からシェン・トゥアールさんが去りました。