2023/06/25 のログ
ご案内:「落第街大通り」にスティールバイソンさんが現れました。
スティールバイソン >  
俺様は人様のテリトリーに我が物顔で入ってくる奴が大嫌いだ。
その手の輩が好きな奴はいるのか?
なんて話はしてねぇ。

ポリシーの問題だ。

今日は落第街に迷い込んだか、エンジョイしに足を伸ばしたか。
哀れな男子生徒三名をとっ捕まえてカツアゲの真っ最中だ。

大通りでやることか?
人がいるところでやるから意味がある。

ワカってねぇ奴らには、ワカらせなきゃいけねぇんだよ。

スティールバイソン >  
夕方の落第街が騒がしくなる。

「ああ、ああ。お前らの言い分はわかった」
「だが声がデカいぜ……別にここじゃ騒いだって」

「正義のヒーローなんて来やしねぇんだよ……」

周りの注目を集めてくれるのは良いことだな。
だがやかましいのは良くないことだ。

「底ひなき 渕やは騒ぐ 山川の 浅き瀬にこそ あだ波はたて────…」

足元の小石を靴で思い切り踏み潰す。
示威行為だ、ビビりやがれ。

「小せぇことにイチイチ騒ぐのは小者のやることだぜ!!」
「そういうのをなぁ、浅瀬に仇波っつーんだよッ!!」

「お前らが財布を出せばいいだけの話だろ、おお!?」

スティールバイソン >  
「いいんだぜ、お前らがテルミナスセブンのスティールバイソンに逆らうってんならよぉ」
「俺様はてめぇらの骨を折るだけだぜ!!」

逃げ出そうとした一人の生徒の襟首を掴んで引き戻す。

「どこ行こうってんだ、ああ!?」

がなり立てる。
こういうのがシンプルに相手を追い詰める暴力であることを。
俺様は知っている。

「話の続きだ………骨が折れたことはあるか?」
「最悪だぜ、その部分が笑えるぐらい腫れ上がってよぉ」
「痛みで立てなくなるんだぜぇー!?」

「そうなったらお前ら……どうやって落第街から帰る気だ?」

指先でコツコツとコンクリートの壁を叩く。神経質に。

ご案内:「落第街大通り」にノーフェイスさんが現れました。
ノーフェイス > 「地獄の沙汰も金次第、とはよく言ったもんだね。
 まァここは、地獄って言うにはずいぶん浅いところな気はするケドも」

スティールバイソンより向かって正面、ちょうど生徒が逃げようとした方向から。
ひょこひょこと歩いてくるのはこの界隈には珍しく随分に身なりの良い女。
羽織ったシルクのジャケットの前面は開いて、白い肌がそこかしこに覗く。
血のように赤い髪を揺らし、片手にはビー玉の入った瓶飲料。

「ンで旦那。 カレらはなにしてこうされてるの?」

歴史深い安っぽい甘さで喉を潤しながら、彼の前に立たされた三人のうち、
愚かにもポケットから財布の端をのぞかせていた生徒のそれを、するりと抜き取った。

「ン……んー……?」

財布を開いて、奇妙に眉根を寄せて、黄金の瞳を細めてから。
財布を閉じて、隣の生徒のポケットに戻しつつ。

「――歩けなくなるまえに、ちょっと話を聞かせてよ。
 ボクもちょっとヒマ持て余しててね」

大胆不敵に笑う。三人の生徒を挟んで向かい合う。

「待てって」

逃げようとした別の生徒の襟首を掴んで引き戻した。

スティールバイソン >  
「ノーフェイス」

あーあ、嫌なところに出くわしたな。
そんな態度を隠しもせずに頭をガリガリ掻いて。

「こいつらはまだ何もしてねーよ」
「ただ俺様の縄張りを歩いてたんだ」

両手を広げてあーあーと大仰に肩をすくめてから。

「いいか、ノーフェイス。アンタが顔を突っ込むことじゃあないぜ」
「いつもみたいにアンタなりに面白いことしてればいいだろ」

「コイツらみたいにつまんねー奴らに構うか、フツーよぉ」

やりづれーな、と手の甲で額の汗を拭って。

学生たち >  
「僕たちは……その」
「この辺で美味しいフレッシュジュースを出す店があるって」

「怖いもの見たさと……好奇心で…」

スティールバイソン >  
舌打ちをした。
聞かなくていいことを聞いた、とも。

ノーフェイス > 「ボクの劇場のお客様だったら助けようかと思って?」

財布の中にチケットがなかったので、じゃあいいかな、くらいのノリだった。
実際、彼らの目的はずいぶん可愛らしい動機だった。
ふぅん?と楽しげに片眉をあげて、彼らの調子を見守った。

「フレッシュジュースくらい表っ側(あっち)でも飲めるでしょうに。
 よっぽど落第街(こっち)に惹かれてたみたいだね。
 その冒険心や……天晴れっていうんだっけ?そういうカンジだ」

愉しそうに笑うものの、彼らへの助け舟はない。
危険は「ある」とする。そのうえで来るものを歓迎したい。

「まずは手の骨を折って、それでも出なきゃ脚の骨を折る。
 きくところによっちゃあ、なんでも首まで折ってしまうんだって。
 "終端の七人"、スティールバイソン。
 なんでも四番目を背負っているのは、もはやその両腕には死がつきまとうからだとか……
 日本だと、4って数字は随分不吉なんだって。ねーえ?」

災難だったね。と生徒諸君の肩を叩く。根も葉もない噂が拡散されていく。

「というワケでボクの関わる案件じゃあないみたいだケドー―ー
 ここらへんってキミのシマなの?旦那」

踵を返そうとしたあたりで、くるりと見渡した。

スティールバイソン >  
「そりゃザンネンだったな」
「俺様は話を聞いた上でフェニーチェ残党とのコンタクトだの」
「ドラッグ目的だのだったらぶん殴ってたところだぜ」

はぁーあ、と溜息をついた。
俺様も甘いものが好きだからちょっと同情しちまったじゃねーか。

「そうらしい」

尾鰭がついていく俺様の噂を特に否定もせずに。

「ここからあそこまでの区画」
「リバティ・ストリートは俺様の管轄だ」
「そこを歩いてる奴らは……あー」

すっかりやる気が削がれた。
なんなんだよ。
それとは逆にノーフェイスの言葉に学生たちは震え上がっている。

「財布で一番デカい札を一枚出せ」
「今日はそれで手打ちにしてやる」

三人から札を手にしながら思う。
これもドア・イン・ザ・フェイス・テクニックか?
いや……無貌(ノーフェイス)だろうな。

学生たち >  
わああと叫んで街から離れていった。

ノーフェイス > 去っていく彼らを視線で追う。
もう興味が失せたように戻した。こういうこともある。
落第街は楽しい場所で、しかし保障のない危険な場所だ。
"リスクのない、安全な場所"――なんていう"舗装"がされてはたまらない。

「あんまり追い詰めると噛まれるよ。
 ああいう手合は興行を知らない」

瓶を傾けて喉を潤しながら、そんなふうに笑った。
"大変容"ののち、誰もがそのポケットに、時に無自覚にナイフや拳銃を隠し持つ。
窮鼠は牛をも噛むかもしれない。とはいえ、だからと引き下がるならヴィランは名乗れまい。

「――――とは、いえ。
 ああいう"ちょっと行ってみよう"で来るやつが増えることは。
 ボクは歓迎したいな。ちょっと前まで、ボクがこの島に来たときくらい。
 ずいぶんと"血のめぐり"が悪かったと思わないか?
 まるでどこぞの国にかつてあった、隔てる壁がそびえ立つように。
 この場所が、おもしろくない、危険なだけな区画のように扱われていた」

何事もなかったかのように。
一時停止がビデオテープのように
――もうビデオテープという言葉が通じるかも怪しい――動き出す町並みを見渡し。

「もっと来て欲しいね。ボクは。
 なんなら次は、用心棒なり、護衛なりをつけて、彼らも懲りないでいてほしいケド」

笑った。境界線を滲ませるように、夜と昼の境目の空から。
するりとあなたに視線を動かした。

ノーフェイス >  
 
 

「その管轄ってのは誰が決めたんだよ」


 
 

スティールバイソン >  
「ああいう手合で警戒するのは異能と銃だ」
「銃を持っている奴は重心と警戒してる時の構えでわかる」

「そして異能者に負けるんじゃテルミナスセブンなんて名乗らねーんだよ」

暑いな。今年の夏も暑くなる。
何かしら対策が必要になるのが煩わしい。

「俺様も別にあいつらが憎くてやってるわけじゃねぇんだ」
「何せホレ、これに懲りてくんなきゃよぉ」

「路地裏の連中は金出せば無事に返してくれるほど優しくはねーんだぜ」

ヘラヘラ笑いながら財布をポケットに突っ込んだ。

「確かに……裏は表を、表は裏を恨んでた」
「一触触発だったと言っていい」
「どっちも強硬派がハバを利かせてたし」
「つまんねー消費があちこちで起きてた」

自分たちに興味をなくして動き出す世界。
耳の裏に蚊の鳴き声が聞こえて顔を顰めた。

そして、ノーフェイスは問う。

 
「テルミナスセブンだ、って言っても満足しねーよなぁ?」
「何が言いてぇ」

ノーフェイス > 「お優しいことで」

肩を揺らして笑う。
死体を見て気持ちいいと思う手合いではないだろう。
深い場所はより危険で、浅い部分を安全と見せるのはそういう手合の奸計だ。

「……さすがに"落第街のしおり"なんてつくられちゃあ、たまらないケド」

来やすくはなってほしいが、そういう手引きで白日の下に晒されてしまうのは、なんかイヤ。
"暗黙の了解"で成り立つ世界が望ましい。
たとえば、この傷ありの大男に差し出す金は持っておけ、くらいの。

「―――ボクは認めてないぜ。
 思えばここに来た時から"そう"だったけど、
 "そう"だからって迎合する理由はボクにはないよな」

笑ったまま告げた。なんとなく気に入らないから噛みつく。
不当な抑圧には反骨する。そういう性質。
現状では、"あの生徒たちのため"という言い訳を。
彼自身が振り払ってくれたので。

「Liberty……良い名前だ。
 自由は自分の手で掴まなくっちゃな……?
 銃に恐れず、異能で倒れず――酒は効く、ビールで育つ牛は美味しいっていうな。
 ……立地もいい。ちょうどこのあたり、ほしかったところでさあ―――」

首をごきりと鳴らして、一歩を踏み出す。
裏と裏のくだらない喧嘩。誰が敵で誰が味方か、それは本来ずっとミクロな話。

食糧強盗 > ドン。

瞬間、近く、通りの店舗が爆発した。
爆発現場から出てきた者はといえば、精肉店にでも吊るされていそうな肉の数々を、
単車の後ろに繋いだ台車に詰め込んでいる。食糧強盗。よくある話。

ノーフェイス > 「……ここらへんキミの管轄なんだよな」

――あれどうする?
親指で強盗を指して、視線を向けた。

スティールバイソン >  
「ああ、優しいぜ……」
「首の骨が折れる音なんざ聞きたくねぇくらいにな」

肩を竦めてオーバーなアクションで笑った。
あれは傑作だった。

「教師にナントカ地区には近寄らないようにしましょうって」
「言われてるくらいでちょおーーーど良いんだよ、ちょうどな」

認めない、と来たもんだ。
そりゃそうだ、こいつときたら反骨精神が旺盛であられる。

そのロックな精神性が気に入っているところは多分にある。

「じゃあちょうど良いなァ……」
「ここで俺様をぶっ倒せばいい」

「俺様のメンツは丸つぶれ、明日にはその辺のガキすら俺様に敬意を払わなくなるだろう」

「だが……そこには大きな壁があると思うぜぇ…?」
「俺様の鼻っ柱を折るっていう………」

「超えるべき壁が……んなあああああああああぁぁ!?」

爆発音。
肉を盗んでやがる、強盗だ!!

管轄と言われれば是非もない。

「追うに決まってんだろ!!」
「あの店のグアンチャーレが食えなくなるのは御免だぜ!!」

ウオオと叫んで食料強盗に殴りかかる。
リバティストリートは俺様の管轄だ。

つまり、面倒事も俺様のモンなわけだ。
 

畜生ッ!!
逃げるんじゃねぇ!!

ノーフェイス > それなりに名の売れた者同士の喧嘩に湧き始めていた街路を横目に、
リアルタイムで色々起こる。なにひとつ一秒先が保障されていない街。
そういう場所だ。

「はいはい、ご相伴いたしますよ。
 偶然にもまだキミは顔役殿でいらっしゃいますし、その面子を立てましょう。
 肉屋に恩を売っておくのも悪かないしぃ――つぎは大食い勝負かな?」

刺激を欲していただけなところもある。
おっとり刀で駆け出す男の背後を、楽しげに追従するのだ。
そういうことが当然起こるが、この世界の強者は風紀委員の力を借りられない。
解決するのも自分からだ。

「ところで旦那、グアンチャーレっていうのはー?」

美味しいヤツ?酒が進むヤツ?
そんな話をしながら、ごくありふれたどたばたに身を投じる。
楽しく騒げれば良い。そういう手合がこの女だった。

ご案内:「落第街大通り」からスティールバイソンさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」からノーフェイスさんが去りました。