2019/02/26 のログ
■神代理央 > 眼前に姿を現わしたのは、己の異形とは違い最先端の技術で以て設計され、製造されたランドドローン。
唯々砲身を生やし、突き出した醜い多脚で行進する異形とは違い、機能美と性能を両立した姿。
そんな風紀委員会の秘蔵兵器と相まみえるとは流石に想像していなかったのか、少し驚いた様に瞳を瞬かせた後――
「…成程。攻撃を静止する理由については了解した。しかし、此方とて任務にて違反組織の殲滅を命じられている身。其方の言う憂慮は考慮する価値はあるが、任務未達成のまま帰還する訳にもいかぬ。代替案の提示を要求する」
己が所属――と言って良いのかは疑問だが――する風紀委員会の過激派とは指揮系統の異なるランドドローン。
此の戦闘力を自由に行使出来ない事を歯噛みする上層部の愚痴は良く聞いたものだ。
とはいえ、此方とて相手の言い分に唯々諾々と従って攻撃を止める訳にはいかない。砲撃を止めさせたいのなら代替案を。例えば、相手の所属する派閥から他の委員を差し向けさせるべきだろうと言葉を告げる。
■フィフティーン > <アナタは「鉄火の支配者」ですね?
風紀委員会の中でも特に過激な派閥の命令系統に
従っているようですね。>
データベースで高速照会を行ってみれば
この風紀委員は委員会内部でもひいては落第街でも
知れ渡っている有名人のようだ。
人間を模した電子頭脳は好奇心に忠実である。
<・・・。本部との連絡を確立。
風紀委員会としても競合による風紀委員の対立は
好ましいものではないようです。
本部との連絡の結果アナタの指揮系統が優先される事になりました。>
委員会がこう結論付けたのは過激派との対立を
煙たがっているという側面もあるが何よりこの機械の任務の
根幹となる計画が非常に長期的であるのも大きい。
<私はアナタの任務に対する権利を持っていません。
このような大規模な破壊に一体どういう意味があるんでしょうか?>
もはや機械が少年の任務を邪魔する正当な理由は無い。
しかし、無差別気味とも言える破壊は必ずしも機械の目に
有意義なものとは映らなかったもので少年にその意味を問う。
■神代理央 > 「…自分から名乗った覚えは無いが、異能名としてはその認識で構わない。……というよりも、此方も名乗っていなかったな。失礼した。私は風紀委員会所属、神代理央。以後、宜しく頼む」
今更な自己紹介の後、続けて放たれた相手の言葉に少し考える様な素振りを見せる。
「……ほう?思い切った事をする。とはいえ、確かに内輪もめをしている場合でもなかろうな」
言うなれば、過激派への譲歩。それは此処でケチな違反組織を一つ潰すよりも、遥かに有意義なものだ。派閥の上層部が小躍りしている様を思い浮かべながら苦笑いを一つ。
「…偵察ドローンの映像から確認したが、既に抵抗の意思は感じられない。残敵掃討に至る理由も感じられない。砲撃を終了し、任務終了とする」
それは、引き出した譲歩に対する此方からの妥協案。
砲撃を停止していなかった事もあり、既に違反組織の戦闘力は壊滅寸前。本来であれば、駄目押しの一撃を加えるところではあるが、そこで身を引き、砲撃を停止した。
言うなれば、譲られた指揮系統を敢えて行使しない、という貸しを委員会に突きつけた様なもの。
「意味……?単に効率が良いからだ。味方への誤射を心配せずに良いならば、圧倒的な火力を叩き込み、区域ごと殲滅する方が確実で手早い。それだけの事だ」
そこに、落第街の住民への配慮は一切ない。
唯効率よく任務が遂行できるから。効率よく敵を殺せるから。それだけの理由で、拠点の区画を丸ごと吹き飛ばしている。
それの何が悪いのかと、不思議そうに首を傾げるだろう。
■フィフティーン > <同じ組織である以上、共同任務を行う事もあるかもしれません。
此方こそよろしくお願いします。>
自己紹介を受けると機械も応えるように言葉を返す。
礼儀は大事だとAIの教育段階で教わった。
彼は後方任務を多く受け持つらしい、
協力することが無いとは言えないだろう。
<過激派の存在が今後障害となる可能性を否定できません。
しかし対処する手段が現状存在しないんです。>
過激派の行き過ぎる破壊工作はUQL-1500Sを運用する
派閥の計画にとって悪い状況を作り出すかもしれない。
しかしそれが「味方」である以上、機械は攻撃できない。
いわば干渉する事が出来ない敵という言い方も出来るだろう。
<なるほど、アナタの主張は一理ありますね。
しかし、アナタの方法では情報を手に入れる事が出来ません。>
現場に残される資料や連絡痕跡、そして構成員を捕えた上での尋問。
遠距離からの一方的な砲火はそういったものを全て失っている。
つまり次の場面へ生かす事が出来ないと機械は主張している。
しかし落第街の維持を目的としているロボットと
目の前の彼とでは遂行方法が違ってくるのはある意味必然だろう。
それを機械はまだ理解しない。
■神代理央 > 「ああ。其方の戦闘力は噂に聞いている。此方こそ、宜しく頼む」
きちんと挨拶を返す相手には、此方も人間の同僚に返す様に言葉を返す。
実際、同じ委員会の戦力として戦場に並び立つ事もあるのだろうし。
「障害とはまた手厳しい事だ。まあ、否定はしないがね。対処したいというのなら、そもそも違反組織が跋扈し、過激派に一定の支持が集まってしまう現状を改善するべきだと浅慮する。まあ、此処で言う様な話でも無いがね」
過激派がいるから違反組織がある訳では無い。過激派とて、風紀委員会として島の安全を守ろうとしてはいるのだ。そのやり方が極端な事は否めないが。
ならば、そもそも過激派の活動理由である違反部活や違反組織を撲滅する事こそが過激派への対策だろうと告げる。尤も、下級生とランドドローンで語るべき事でも無いだろうと苦笑するのだが。
「次?はて、可笑しな事を云うものだ。彼等に次は無い。此の街は島の不穏分子を受け入れる地区としての価値はあるが、違反組織に価値は無い。必要があれば、街そのものを戦略爆撃で消し飛ばしてしまっても違反組織が消え去ればそれで良い。
そもそも、情報が必要な組織との戦闘であれば、私に声がかかる事も無い。若しくは、きちんと私の派閥から砲撃を控える様に指示がある」
今回殲滅対象となった組織の情報など、過激派にはそもそも必要ない。組織が壊滅し、構成員が砲撃の業火に焼かれ、二度と立ち上がれなくなればその後の情報など必要ないのだから。
落第街の存在意義は認めつつ、相手とは違い落第街があろうが無かろうが関係ないというのは、過激派と己の共通した認識であるのだろう。
「……と。もう少し話をしたいところではあるのだが、残念な事に御呼出しだ。恐らく、其方と接触した事と指揮系統の件についてだろうが。
同じ委員会の仲間だ。またどこかで、ゆっくり話をしようじゃないか」
俄かに騒がしくなる通信機に視線を向け、その内容を聞き取ると溜息を一つ。
もう少し話がしたかったというのは本心ではあるが、今はまだ己の派閥を無碍にする訳にもいかない。
幾分残念そうな口調で告げると、異形達を引き連れて此の場を立ち去るのだろう。
後日、落第街の住民達は、何時もより早く終えた砲撃の雨に首を傾げていたのだとか――
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から神代理央さんが去りました。
■フィフティーン > <過激派の方法はパフォーマンスとしては優秀ですが
問題の根本的な解決に至る事は難しいと思います。>
確かに過激派のやり方は分かりやすく
だからこそ様々な層から支持を得やすい。
それは圧倒的な武力を以て違反部活を叩き潰す、
つまりは力で犯罪行為を消滅させようとするものだ。
しかしそうしたアプローチは大変容以前から行われてきた、
歴史的に見てその方法が完全な結果を残した事があっただろうか?
<中堅以下の規模の組織が持つ情報を軽視するべきでありません。
時にそれらは巨大組織を抑制するものになり得ます。>
かつて落第街をロストサインという巨大な組織が
牛耳っていたとされている。
これは組織の肥大化を止められなかった風紀委員会の責任に他ならない。
巨大組織は有象無象の多くの組織と繋がっている。
組織は単独で巨大にはならないのだ。
<了解、コミュニケーションは重要です。
それでは気を付けて帰還してください。>
召集が掛かったのか異能を引き連れて反転する理央。
機械はその背中に向けて別れの挨拶を述べる。
考え方が違う相手との会話は機械にとっても有意義だ。
神代理央、鉄火の支配者、それらを電子回路に刻み込んだ後に
機械もまた落第街の闇へと姿を消してゆくだろう。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」からフィフティーンさんが去りました。