2020/06/11 のログ
東郷月新 >  
「――やれやれ、無粋な」

死地に入るという時に、邪魔が入った。
派手に、というよりも天変地異のレベルで地形が変わっている。
そりゃあ、こんな落第街の奥でも風紀だか公安だか出張ってくるだろう。

目の前の相手との決着をつけたい気持ちはあるが、ここで捕まるのも馬鹿らしい。
ゆっくりと刀の血を拭い、鞘におさめる。

「――飯でも食いに行きますか」

闘争の気分が落ち着いたら、急に体の痛みと空腹が襲ってきたせいか独り言を言う。
おそらく、回復の為に体が欲しがっているのだろう。

虞淵 >  
「あー」

面倒そうに応えながら、溜息をつく

…互いにそれなりに負傷しているにも関わらず、行く先は病院ではなく、食事である
イカレてる、と普通の人間ならば言うのだろうか

「酒もだな」

ほんの数瞬前まで殺し合っていた二人だがなぜか戦いが終われば考えることは殆ど同じ
仲良しこよしで出かけるというわけにもいかないが

「ヘタこいて逮捕されるなんざダセー真似するなよ、大将」

貴重な喧嘩相手だ、失うのは惜しい
向こうとしてもそれは同じこと、かもしれないが

それだけを吐き捨てるように言い残して、一足飛びにビルへと飛び上がり、その場を離脱する
最後の最後まで規格外な姿を見せていた

ご案内:「とある違法部活のアジト」から虞淵さんが去りました。
東郷月新 > もちろんそんなヘマをするはずもない。
とはいえ、流石に相手はできないのでこちらも物陰に消えるようにその場を後にする。
規格外なのはどちらも同じ、という事だろう。

ご案内:「とある違法部活のアジト」から東郷月新さんが去りました。
ご案内:「違法部活アジトから少し離れたビルの屋上」に夢莉さんが現れました。
夢莉 > 「―――あぁ、一応言われた通りに通報しといたぜ。
 ちゃんと戦闘やめてどっかいった」

何処とも知れぬビルの屋上で、双眼鏡を片手に持ちながら尋常ならざる男たちの殺し合いを見ていた者が一人。
美しいブロンドの髪を伸ばした人物は、未だ立ち込めている煙の方を見ながら誰かと通話をしている様子だ。

夢莉 > 『あ、そう? いやぁーよかったよかった。
 これで二人して共闘だ!みたいな流れになってたら目も当てられなかったし』

電話から声が聞こえる。通話相手のものだろう。
他人事のような話し方に、金髪の人物は苛立っている様子だった。

「アホぬかせ。そうならねえって分かっててオレにここで待機しとけって言ってたんだろーが!!」

『ははは、バレた? まぁ…今はそんな騒ぎ大きくしないとは思ってたし。あのお二人も』

「はぁ……で、これでよかったのかよ? どっちも要注意対象だろ?
 片方に至っては脱獄犯だったろ。公安監獄の。
 完全にオレら公安にとってのターゲットだろ」

公安にとっては戦闘を行っていたうちの1人、東郷月新は仇敵といってもいい。
言ってしまえばお尋ね者。捉えれば勿論、手柄になる。
公安委員会に所属している彼……夢莉も、勿論この電話の主も、そんな事は当然分かっている。

『まぁまぁ、何事も順序とかタイミングとか…色々あるじゃない?
 それにほら、二人でケンカしてたなら邪魔するのは無粋じゃん?』

「…」

今まさに邪魔を入れたんだが?と言いたいのを、夢莉はぐっと堪えた。

ご案内:「違法部活アジトから少し離れたビルの屋上」に日ノ岡 あかねさんが現れました。
夢莉 > 『それにほら、二人がケンカしてる所に飛び込んでも返り討ちが関の山でしょ。
 見てたユウリなら、あのお二人に勝てるレベルがそうそう転がっちゃいないってのは……分かるだろ?
 二人合わさってじゃなおさら無理無理。俺だったら死んでもゴメンだもん』

…まぁ、その意見には同意する。
分かりやすくサイレンを鳴らさせて、大ごとになるぞと警告したのはその為でもある。
少人数、小規模ならあの二人に『無かった事』にされかねないのは、事実だ。

だが…

「…ケンカ始まる前にどっちかないし両方に接触は出来たろ?
 オレじゃなくてお前が来れば、どっちかは捕まえられたかもしんねーだろ。」

自分は兎も角電話の主ならば、今しがた人間とは思えない暴れっぷりを見せた二人とも。
実際どうなのかは別として、電話の主はそう思わせる雰囲気だけはしっかりと纏っている。
纏っていてもらわなければ困る。一応自分の上司にあたるのだから。

『まぁ…運が良ければいけたかもしんないけど。
 でも運ゲーだし。やだよ俺、運で死ぬのは』

HAHAHAと笑いながら言ってのける。
こいつのこういう適当な所がホント嫌いだ、と夢莉は思った。

「テメーのそういう所ほんっと腹立つな‥」

実際に言い放った。

『それに…今回は捕まえる為に通報させた訳じゃないしね』

「あ?」

日ノ岡 あかね > 「相変わらず、此処は賑やかね」

その声は、微かに上方から降りてきた。
給水塔の裏。
作業用の螺旋階段に腰掛けているのは……黒い首輪のようなチョーカーをつけた、ウェーブのセミロングの女。

「こんばんは。お電話中なら黙っていた方がいいかしら?」

夢莉 > 「……悪ぃ、客来た」

『おっと』

後ろから声を掛けられ、電話を切り上げる。

(誰だ…? 気が付かなかったぞ今まで)
「ああいい、ただの雑談だ。
 ……邪魔したか? そりゃわるい、むしろこっちが直ぐに消えるよ」

無愛想にそう返せば、直ぐに立ち去ろうとする。
裏でこそこそやっていたのだ。あまり他人に見られるべき状況じゃないだろう…そう判断しての事だった。

日ノ岡 あかね > 「いいのよ、ゆっくりしていって。別にここは私の特等席というわけじゃないんだし。それに……」

トントンと、チョーカーを指さす。
黒い首輪。
委員会が使用する……異能制御リミッター。

「私も偉そうな事言える立場じゃないし」

くすくすと、女は笑った。

「私はあかね。日ノ岡あかね。アナタは?」

夢莉 > (制御リミッター…前科もちか)
学園内で違反行動を行い、その結果委員会に捕らえられ厳罰処分を下された者に与えられるものだ。
読んで字のごとく、異能を抑制する装置。
つまるところヤンチャした人間の烙印のようなものだ。
勿論、名前の通り異能に制限がつけられる。この島でそれは相当な枷だ。

「成程ね…キズ者って訳だ。
 ま、こんなトコほっつき歩く奴なんてそんなんばっかだよな。
 はーぁ……名前なんか聞いて何する気だ? ……ガガーリンとでも名乗っとくよ」

安直だが偽名を名乗っておく事にした。一応、場所が場所の為に、念のため。

「で、こんな辺鄙なトコに何しに?
 花火大会はお開きだぜ」

日ノ岡 あかね > 「ガガちゃんね。天にも昇る気持ちということかしら? 今は青空じゃなくて残念ね」

可笑しそうに笑って、螺旋階段を降りて歩いてくる。
その際、ガガーリンと名乗る少女の顔から、あかねは目を逸らさない。

「ちょっと古巣に遊びに来ただけよ。私は『楽しいこと』を探しているだけ。今も昔もね」

仕舞いに、目前まで歩いてくる。
猫のように、足音はしない。

「花火大会の御話とか聞かせてくれたら嬉しいかも。勿論、無理にとはいわないけどね? ガガちゃんもお仕事あるみたいだし」

夢莉 > 「楽しい事ねぇ…」

まぁ、退屈はしない。それは自分にとっては楽しいとは大いにかけ離れた理由での事ではあるが。
だがこういった快楽好きは違うのだろう。全く羨ましいことだ。

「古巣、ね。
 お生憎、デカい花火が弾けたせいでその古巣の影も形もなくなっちまったかもだけどな。

 …なーに、規格外な男2人が暴れ放題、方や腕力で刀を受け止めるわ、方や所かまわず剣でバッサバサ。
 ハリウッド映画でも見てんのかって位にハデにやってるもんで風紀委員がサイレン鳴らしたって話。
 楽しそうに暴れやがって貧弱なこっちは不安で夜も眠れやしねーよ」

ケッ、とぼやき交じりに。

日ノ岡 あかね > 「いつものドンパチってことね。アクション映画がタダで見られると思えば悪くもないかも? 上映時間が決まってないのと、オチがないのが残念だけど……まぁ、臨場感とリアリティの対価と思えば仕方ないのかしらね?」

口元を片手の甲で抑えて笑う。
少女の少しやさぐれた表情の変化を、あかねは楽しそうに観察する。

「とはいえ、節操がないのは確かに困るかもしれないわねぇ? ガガちゃん眠れてないの?」

小首をかしげながら、にやにや笑って尋ねる。

夢莉 > 「貧弱なもんでね」

唇を尖らせる。
異能社会になってからは異能の強弱で命の価値が決まるようなものだ。
強い奴が大手を振って歩いて、弱い奴はそれらの逆鱗に触れぬように立ち回るしかない。
夢莉は『弱い側』の人間だ。華奢で、弱くて……全くもって嫌になる。
ギリギリ生きていられるのは異能と顔のおかげのようなものだ。
だからこそ余計に嫌になる。

「そういうアンタは、異能封じられてる状態でこんな所来て大丈夫なのか?」
 

日ノ岡 あかね > 「あら、心配してくれるの? 嬉しいわぁ。優しいのねガガちゃんは」

ニコニコと笑って、ほとんど有無を言わせず手を伸ばして頭を撫でる。
自らの無礼な行いを気にする様子は微塵もない。

「なんだか、カナちゃんに似てるわねぇ。そっけない事いいながら、なんだかんだで人の心配してくれるのよね、あの子も」

同僚の友人の顔を思い出して、楽しそうに笑う。

夢莉 > 「やーめーろ」

ペシッと頭に伸ばされた手をはじく。
初対面に厳しい。

「別に心配じゃなくて皮肉…あ? カナ?」

先日出会った同年代の知人の名前。
いや同名の人間等何処にでもいるだろうが……

「…カナの知り合いか?」

日ノ岡 あかね > 「ええ、お友達よ。同じカナちゃんじゃないかもしれないけど」

そういって、くすくす笑う。
手を弾かれた事はまったく気にしていない。

「私の知ってるカナちゃんは、こーんな仏頂面で……あと、煙草吸ってるのわね? ふふ、ガガちゃんと似た者同士だし、多分あたってるわよね?」

両手で目じりを軽く下げて見せて、おどける様に口端を釣り上げた。

夢莉 > 「いや似ちゃいねえと思うけど……あー……
 …でも同一人物のカナでは、ある……な」

変な事もあるものだ。
こんな場所で出会った初対面の相手が、まさか知人の友人だとは。

「…一応言っとくけど変な事に巻き込むんじゃねえぜ?
 見た感じ”懲りてねえ”様子だしな。」

一応の警告。
知人に『仕事』で出会うのは出来れば御免願いたいものだから。

日ノ岡 あかね > 「そう? 似てると思うわよ。二人とも優しいのに素直じゃないところとか」

笑いながら一歩下がって、目を細める。
ビル風に靡く髪を、軽く片手で抑えながら。

「ふふ、『変な事』が具体的にどんなことか分からないから約束はできないわね……心配なら、ちゃんとカナちゃんの事見ててあげてね? 知っての通り、あの子結構危なっかしい子だから」

そういって、踵を返す。
黒髪のウェーブが、微かに揺れた。

「そろそろ門限だし、私は寮に帰るわ。またね、ガガちゃん。お喋りしてくれて、ありがと」

そのまま、振り返りもせず、その場から立ち去る。
足音はしなかった。

ご案内:「違法部活アジトから少し離れたビルの屋上」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
夢莉 > 「そこまでの仲じゃ…」

『そこまでの仲じゃねえ』という前に、早々に立ち去られてしまった。
はぁ、とため息をつきながら手すりに背中を預けて煙草を取り出し、咥えて火をつける。

「…四方テメェ、お前の言った通りめんどくせー事が起き始めてるみてえだぞ。
 分かってんならさっさとどーにかしろっての。ったく…」

ぼやきながら、煙草の煙を味わう。
面倒事の味がした。

ご案内:「違法部活アジトから少し離れたビルの屋上」から夢莉さんが去りました。