2020/06/15 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
「──…もぬけの殻、かあ」

小さく息を吐きながら、人の気配も痕跡もない打ちっぱなしの壁を眺める
このプレハブはとある違反部活が使用していた──はずだった

こういった組織の規模が大きくなる前に立ち入りし、検閲するのも風紀委員の役目
今日はその役目でここ落第街まで赴いた凛霞だったが

「引っ越したか、それとも…」

最近、こういうことが増えたような
風紀委員の活動情報漏れか、それとも……

ご案内:「違反部活群/違反組織群」に日ノ岡 あかねさんが現れました。
日ノ岡 あかね > 「もう潰されたのかもしれないわね」

いつのまにか、その女はいた。
ウェーブがかったセミロングが月光に照らされ、黒い輪郭に微かに光を与える。
常世学園制服に身を包んだその女。
首につけているのは……真っ黒な首輪のようなチョーカー。

「お仕事お疲れ様。こんな遅くまで大変ね」

見るものが見れば一目でそれとわかる、委員会謹製の異能制御用リミッター。
……首輪付き。

伊都波 凛霞 >  
誰かいたなら色々と事情を聞いて終わりにもできたけれど、誰もいないのでは…

元々事情があるような二級学生については厳格に動くタイプの人間ではないので、風紀委員の中ではかなり異端な少女
違反は許さず、暴力的な違反学生はすべて粛清、などとする風紀委員からは、良い印象を持たれていないかもしれない

故に、時にはこうやって自ら落第街まわりの仕事にも就くのだが…今日は少し状況がおかしい

「……? 貴女は…」

ふとかけらえた声
いつの間にか──気配を感じられなかったのは不覚だけれど──その場にいた女の子に視線を向ける
目につくのは、首元の

「潰された。っていうのは、風紀や公安以外に…?」

手入れによって摘発されたなら、情報が残っているはず…
異能を抑制するチョーカーをつけた少女、ということは元違反学生なのだろうか
──こういった事情に、詳しいかもしれない

日ノ岡 あかね > 「私はあかね。日ノ岡あかね」

くすくすと、あかねは笑う。
日ノ岡あかね。
風紀資料にもその名が残っている元違反学生。
違反部活『トゥルーサイト』最後の生き残りにして……一年間の『補習』から戻ってきた女。
あかねは、猫のように薄く目を細めて、少女に語り掛ける。

「さぁ? 何処に潰されたかまではわからないわ。でも、風紀委員会や公安委員会が何も知らないなら……そういうことじゃないの?」

あかねは笑う。少女の目をじっと見ながら、ただただ静かに。
薄く夜天に輝く月明りが……二人の少女を照らした。

「私も久々の古巣だから詳しい事はわからないけどね」

伊都波 凛霞 >  
──名前は、聞いたことがある
それなりに聡明で物覚えも良い少女である
確か、違反部活の生き残りで──

「…そうだよね。自ずと結論は出ちゃう。
 潰しあいなのか、それとも…あ、私は伊都波、伊都波凛霞…」

口には出さなかったけれど、自浄組織の存在
噂程度にはなっていた、かもしれないけれど、眉唾だ

「どの道、見たまんまを報告するしかないかな…あかねさんはなんで此処に?」

月明かりの下で、視線を交わす

日ノ岡 あかね > 「なんとなくよ。ただ散歩したかっただけ。こんな良い夜なんですもの。理由なんてそれで十分でしょ?」

嬉しそうに、あかねは笑う。
凛霞の目を覗き込みながら、その表情を味わうように。

「報告書は正直に書かないといけないものね。私も毎日書いているけど、案外気を遣うものなのよね。脚色を交えずに書くのって。リンカちゃんも大変ね」

馴れ馴れしく目前まで近寄って、あかねは凛霞の顔を見上げる。
塵埃の入り混じったプレハブ小屋の空気に、微かに二人の女の髪の香が混じった。

「此処にはどんな違反部活があったのかしら。教えてくれる?」

楽しそうに笑いながら、あかねは尋ねた。

伊都波 凛霞 >  
覗き込まれるその表情は、どこか複雑なものだろう
もぬけの殻になった違反部活、何かの被害にあったのかと思うと…
違反学生であっても、やりきれない気持ちになってしまう、そんな少女だった

「…散歩?だめだよ、そのチョーカー、異能の制御がされてるんでしょ?襲われでもしたら危ないよ」

嬉しそうに笑うあかねに、苦笑を返す
どことなく、無理矢理に笑ったような表情になってしまった

「…そうだね。確か娼館紛いのことをしてた…だったかな。二級学生を使って。
 生活に苦しい学生もいるから、ある程度は仕方がないんだけろうけど……」

いわゆる武闘派のような組織ではない
けれどそういった運営をする以上は、それなりのガード…用心棒的な異能者も此処にはいたはず
だから余計に、なんの痕跡も残っていないのが異様だった

日ノ岡 あかね > 「心配してくれるなんて、リンカちゃんは優しいのね……ありがと、嬉しいわ」

満面の笑みをうかべて、あかねは笑う。
苦笑にも気にしたそぶりは見せず、律義に答えてくれる凛霞に小さく数度頷く。

「そうなると、恨みも買っていたでしょうけど、それと同じくらいに贔屓にもされていたでしょうしね。
襲われる理由も守られる理由もあったのに『こう』っていうのは、確かに妙よね」

凛霞の答えに満足するように小さく笑う。
視線は一度も、凛霞の顔から逸らさない。

「優しいリンカちゃんからすれば……『こう』なった人達の事も心配かしら?」

『こう』なった人達。
痕跡も残せず、消えてしまった『誰か』。

伊都波 凛霞 >  
「…どうかな」

少女、あかねとのやりとりの中で
笑顔の絶やさない少女あかねとは違い、その表情はその胸中に合わせころころと変わる
あまり裏表のない人間であるということを感じさせながら、投げかけられた質問には少しだけ言葉を濁して

「自業自得だって、斬り捨てる人もいると思うし、それが間違ってる…なんて息巻くつもりもないんだけど…。
 辛い思い、痛い、苦しい思いをする人は、やっぱり少ないほうがいいな、とは思うから……」

性善説、と言ってしまえばそれまで
でも見知らぬ人間にも感情移入をしてしまうのがこの少女、凛霞なのだろう
風紀委員という組織から見ればかなり異端である…というよりも、甘いという印象をもたれるだろう

日ノ岡 あかね > まるで四季折々の華のように変わる凛霞の表情変化を見ながら、あかねは相変わらず楽しそうに笑う。
夜闇に溶ける黒い瞳が、ただただ凛霞を見つめ続ける。

「リンカちゃんはより多くの人を助けたいというより、より多くの人に苦しまないで貰いたい……ってことなのかしら?」

小首を傾げて、面白そうにあかねは尋ねる。
恐らく誰がみても一目で『情緒豊か』と分かる少女……伊都波 凛霞を見て、あかねの目が細まる。

伊都波 凛霞 >  
「…そうだね。少なくともこうやって、実感しちゃうと…。
 ほんとに自分が見えない場所で、苦しんでいる人まで、なんて烏滸がましいことは言えないんだけど」

そう言うと視線を外して、プレハブの中を眺め、やや歩くと、しゃがみ込む
──床に膝立ちになれば、やや埃の被った床へとその手を伸ばして、指を触れる

少女の異能はサイコメトリー
この場の、物質に残った記憶を読む
けれど『建物』は物質としては大きすぎる
記憶の断片に触れることは叶わず、小さな溜息をついて立ち上がる

「できることなら、見える範囲の人には苦しまないで済む努力をしたいな…ってくらい」

そう呟いて、再びあかねへと視線を戻した

日ノ岡 あかね > 「リンカちゃんは面白い子ね」

凛霞の行いを一部始終ずっと見守り、視線が戻るまで待ってから。
あかねは変わらぬ笑みを浮かべたまま、呟いた。
月明りを背に笑うあかねの輪郭が、仄かに光を帯びる。

「とっても優しい子。私の友達も優しい子が多いけど……リンカちゃんもその子達と同じか、それ以上に優しい子なのね。今まで色々、大変な思いをしたでしょうに」

そっと……それでいて遠慮なく手を伸ばして、凛霞の頭を撫でる。
まるで子猫にでもそうするかのように。

「それでも此処にいるんだから……アナタは強い子ね」

あかねは、慈しむように笑った。

伊都波 凛霞 >  
「そうかな。結構、自分勝手だよ?」

面白い、優しい…と評されることに苦笑を浮かべて
遠慮なく伸ばされる手には少しだけ困惑した表情を見せる、けれど
なんだかそれに敵意はまるで感じなかったこともあって、そのまま撫でられてしまう

「──…強くなりたいね、もっと」

まるで自分を見透かされるような視線
それでいて…不思議な雰囲気のある少女、だと思った

「…あかねさんも強そうだなあ」

そう、呟いた
誰かを強い、評する人は、強い人であることが多いから

日ノ岡 あかね > 「ふふ、どうかしらね。私自身が強いとか弱いとか……あんまり私は興味がないから。『楽しいこと』が大事なだけ」

一頻り頭を撫で回してから、少し名残惜しそうに手を離す。
そのまま、後ろで手を組んで、あかねは薄く笑った。

「ねぇ、リンカちゃん。『助ける』と『苦しませない』は、私は違うと思うのよ」

唐突に、そうあかねは呟いた。
凛霞の目から視線を逸らさず、ただずっとその相貌を見ながら……淡々と。
塵埃が、夜風に攫われていく。

「『助ける』は改善してあげること。『苦しませない』は守ってあげること。それは同じことのようにみえて……全然違う事」

あかねの目が……薄く細まる。
まるで、変化する月のように。

「アナタは……どちらを選ぶのかしら?」

伊都波 凛霞 >  
「なんか、そんな感じがしちゃっただけ。気にしないで」

強いことには興味がない、という少女
楽しいことが大事…という少女は、その楽しいことを守るため、得るためだけに動くのだろうか
そんなことを内心で考えながら、少女の視線を受け止めて…

「んー……そうだね…」

唐突に投げかけられた呟き
助けること、と 守ること‥
似ているようで、違う、その答えは…やや考えるでもなく、すぐに口を開いて

「どっちでもいい。じゃダメ?
 改善することがその人の苦しみを軽減することに繋がるなら、それもしたい。
 守ることでその人を苦しみから救えるなら、そっちもやりたい。
 それくらいの我儘、通したって多分バチは当たんないよ」

きっとね、と笑顔を返す

日ノ岡 あかね > 「……そう」

その答えに、あかねはゆっくりと頷いてから。

「あはははは!」

楽しそうに、声をあげて笑った。
恋話で盛り上がる少女のように。
遊戯を楽しむ子供のように。
ただただ……あかねは笑った。

「素敵ね、リンカちゃん……まるで白馬の王子様みたい」

暗に……普く全てを救うと言った少女。
伊都波凛霞の強い言葉に、日ノ岡あかねは歓喜で応えた。
まるで……花束を贈られた少女のように。
ただただ……嬉しそうに。

「だから、リンカちゃんは強くあろうとするのね」

強さがなければ、それは叶わない。
強さがなければ、それは成し得ない。
ならば答えは、一つしかない。

「私、アナタみたいな人の事、好きよ」

秘事を語る乙女のようにそう呟いて、あかねは踵を返す。
セミロングのウェーブが、緩やかに夜風にゆれた。

「私のことも……『助けて』『守って』ね。リンカちゃん」

その言葉だけを置いて、あかねは去っていく。
まるで猫のように足音一つさせず。
ただただ……静かに、夜の路地へと消えていった。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
伊都波 凛霞 >  
踵を返し、自分を『助けて』『守って』と言い残した少女
その真意を知りたくて、思わずその背に手を伸ばした、けれど

「──…‥」

静かに夜の落第街に姿を消した少女、あかね
一人、風景を溶けた残滓を視線で追いながら──

「…そう、だね。強くならないと」

最後にもう一度だけ、プレハブの中を一瞥して、自身もまた帰路へと

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 落第街そのものが、巨大な違反部活の集合体の様なもの。
であるならば、此の街全てを焼き払ってしまった方が都合が良い気がしないでもない。
しかし、こんな場所にも一応存在価値が無い訳でも無い。故に、その存在そのものを明確に否定するつもりは無い。
ただ、間引きは必要だろう。剪定する様に、定期的に。

「……本庁の指示が遅いな。或いは、何か横槍でも入ったかな」

内定調査の末、違反薬物を密造しばら撒いている違反部活の拠点が判明した。
学術大会に向けての大掃除、という事で己が派遣されたのだから、必然的に取るべき手段は殲滅という事になる。

拠点となっている倉庫群から少し離れた広場に、複数の異形を召喚して待機。後は号令一つで、異形の背に生えた砲身は雷鳴の如く轟いて違反部活の拠点を周囲の区画諸共粉砕するだろう。

問題は、その命令が何時まで経っても来ない事なのだが。

神代理央 > 天空を睨む数多の砲身は、主の命を今か今かと待ち構えている様に鈍く輝く。整然と並ぶ意思の無い金属の異形達は、戦場に居並ぶ砲兵の如し。
遠距離からの一方的な火力の投射。久し振りに己の異能を存分に発揮できる任務だと出撃前は意気揚々としていたものだが。

「……どうせ二級学生の避難だとか、構成員を捉えて情報をとか、その辺で揉めているのだろうが。結論が出てから任務は与えて欲しいものだ…」

『砂糖500%増し増し 五郎珈琲』と銘打たれた缶コーヒーをちびちびと啜りながら溜息を一つ。
日も落ち、夜の帳が周囲を暗く包んでいるとはいえ、何時までも待機しているのは流石に暑いし辛いのだが。

神代理央 > 暫しの時を置いて、通信端末が無機質な通知音を奏でる。
画面に触れて内容を確認すると、小さく溜息を一つ。

「『取り合えず撃ってしまえ』とは、随分と豪気な事だ。まあ、責任を取る覚悟が出来たのか、やけっぱちなのかは知らないが――」

飲み干し、空になった缶を静かに地面に置いて――

「……消し飛ばせ」

短く放たれた一言と共に、耳をつんざく様な轟音が響く。
砲弾の種類も、口径も、何もかもが出鱈目な砲台の群れ。唯只管に敵に鉄火を振り下ろす醜い砲兵達。
ソレらは主からの命に歓喜するかの如く砲弾を吐き出し続け――数舜の間をおいて、遠くから着弾音が地鳴りの様な音と共に響き渡る。
砲撃によって立ち込める硝煙と砂埃を億劫そうに払いながら、拠点周囲を偵察しているドローンの映像を確認。
うん、何も見えない。瓦礫の粉塵が舞っているだけだ。

神代理央 > 数十秒続いた砲撃の後。漸く静寂が忍び足で訪れた落第街の一角で、額に皺を刻みながら端末を操る少年の姿。

「…む、漸くまともな映像が――これでは、追撃の必要は無さそうだな」

砲煙と硝煙を掻き分けてドローンが映し出したのは、轟々と燃え上がる倉庫だったモノの瓦礫の山と、逃げ惑う僅かな生存者。
防御系の魔法だの、反撃の手段だのがあれば第二射を行う予定ではあったのだが。

「所詮は小粒の組織か。まあ、拠点が割れる様な組織などその程度という事なのだろうが」

張り合いの無い、と肩を竦めるとポケットから取り出したのは二本目の五郎珈琲。
一仕事終えた後の糖分が身体に染み渡る。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」にラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが現れました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 先ほどまで建物として形を保っていたコンクリートが、まるで漬物石にでも変身したかのように周囲に散らばっていた。そんな瓦礫の山の一角が、まるで爆薬でも使ったかのように吹き飛んでいく。

「派手にやってくれましたね……まったく、ここまでやるならこんな場所ができないように根本から取り締まってくださいよ」

瓦礫の中から出てきたのは小柄な退役軍人とギターケース、そして数名の子供たちだった。二級学生として登録すらされていない子供、いわゆるスラムで生まれた子たちである。

野暮用でこんな治安の悪いところに来ていたが、来てみれば何やら風紀委員による勧告やら、避難やら、普段の物々しさとは違う空気が漂っていた。どうせ建物を軽く吹き飛ばす程度だろうと思っていたらこの始末。お気に入りのパーカーが埃をかぶって白くなってしまった。

子供たちを安全な場所まで連れて逃がしてあげれば、足場の悪い瓦礫の山をピョンピョンと飛んで砲撃手のもとへ向かう。これほどまでの火力を持つ風紀委員など、数えるほどしかいないのだ、誰が砲手なのかは何となくわかっていた>

神代理央 > のんびりと糖分過剰な缶コーヒーを啜っていれば、端末から鳴り響く警告音。違反部活の拠点"だった"場所から何者かが接近している事を、端末の所持者に伝える電子音。

「…生き残りがいたのか?ならば、多少は歯ごたえの――」

と、表示される映像を眺めて暫し沈黙。
主を守る為に軋む様な金属音で再度砲撃の姿勢を取る異形達を、手を翳して控えさせる。

「………避難勧告はしている筈なんだがな」

深い溜息を吐き出すと、大人しく彼女が此方へ到着するのをのんびりと待っているのだろう。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「周囲の建物まで巻き込むなんて、下手な爆破解体じゃないんです。
 やるならもっとうまくやってください」

おかげでパーカーが台無しです。そんな苦言を呈しながら、埃を払う。

「前々から言っていますが、あんな町がいつまでもこの島に残っているなんて、
 上層部と違法組織がズブズブ、なんてことはないですよね?
 ……何はともあれ、犯罪者が消し飛ばされるのはまだいいですが、
 子供たちが瓦礫の下敷きというのは少々いただけません」

これ以上踏み込んだことを言えば、こちらも”目をつけられる”かもしれないので、
あまり下手なことは言わない。しかし、巻き込まれた子供たちのことは不満そうだ>

神代理央 > 「致し方なかろう。私の異能が、其処迄繊細なものじゃない事くらい分かっているだろうに。
とはいえ、服を汚したのは悪かったな」

埃を掃いながら此方へ苦言を呈する彼女に、小さく肩を竦めてみせる。
悪びれている様子は無いが、一応謝罪の言葉は彼女に告げるのだろう。洋服についてのみ、ではあるのだが。

「私の口からは何とも。とはいえ、半ば黙認という側面がある事は事実なのだろう。その意図迄は分からんがね。精々、塵箱は大きければ楽、くらいのものなんじゃないか?」

落第街そのものを"ゴミ箱"と形容しつつ、彼女の言葉に答える。
しかし、子供達をと告げた最後の言葉には僅かに瞳を細めて――

「不満なら、勝手に貴様が救っていれば良かろう。生徒では無いモノの事まで、面倒は見切れん。子供だろうが何だろうが、私には関係の無い事だ。救うなとは言わんが、考慮しろという言葉には頷けんな」

それは、実に真面目な口調。本心からそう思っていると言わんばかりに彼女に告げてみせるのだろう。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「なるほど、まぁ……ゴミが出る以上、掃きだめは必要なのかもしれませんね」

こんな町ができてしまう理由は何だろうか。
あえて作っているのか、消せないのか。犯罪が起こらないようにするのは無理だろう。
しかし、ここまで大きくなってしまうほどに、
風紀委員をはじめとするこの島の治安維持組織は不甲斐ないものなのだろうか。
この疑問ばかりは、この島に来てからずっと胸元に不快感を生み続けている。

そして服が汚れたことに謝罪されるも、それは特に反応もせずに聞き流す。
が、彼が子供について言葉を発した瞬間、形相を変えて彼の胸倉をつかんだ。

「そう思ったから、あそこに留まったんです……ッ
 パーカーなんてどうでもいい、誰の為に治安を維持しているんですか。
 百歩譲って犯罪者は良いでしょう。でも、あそこで生まれた子供たちと、
 ここで暮らす生徒、登録の有無以外に、何の差があるというんですッ」

普段のおちついた口調や、人見知りの口調とは違う、あからさまに憤った声は、
およそ普段の彼女から聞ける類の声ではないだろう>