2020/07/09 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」にロベリアさんが現れました。
ロベリア > ここは落第街の一画にある廃墟。
かつてはゲームセンターとして賑わっていたが、営業停止してからは不良や二級生徒達の溜まり場となっている。
そして、違反部活『ラグナロクを拓くもの』が拠点としている場所でもあった。

彼らの主な活動は、違法な対戦型格闘ゲームの制作およびそれを用いた賭博行為。
プレイアブルキャラクターは美少女しかおらず、脱衣KOやNPC戦に敗北後のレイプ演出などが展開される。
キャラクターボイスが実装されていることから、女性を拉致して制作に携わらせているとまことしやかに囁かれているが、真偽のほどは定かではない。
しかし所詮はゲーム、グラフィックも稚拙なドットであるため今のところは微妙な人気に留まっている。

そんな異臭漂う廃墟の扉を無遠慮に開け放つ、小さな影が一つ。

ロベリア >  
「この辺りがヘンにさわがしいと思ったが、原因はここか!」

突然の闖入者に集まる視線。しかし、動じることなく店内を見回す。
その少女───ロベリアはこの場所がどういった場所かはよく知らない。
ただ「うるさかったから」という理由だけで殴り込みをかけたのであった。

次第にざわつき始める利用客たち。
気にせずゲームを続けている者もおり、ピコピコと無駄に派手な音響が響いている。

「ああもう、中はもっとうるさいな! ワレを不快にさせたツミは重いぞ!
 音の出どころは、そのヘンテコなキカイだな? ぶちこわしてくれるっ!」

煩わしげに両手に闇の魔力を溜め始めるのを見て、いよいよざわめきが強くなった。

ロベリア > 少女は二級生徒ではないが、風紀を取り締まる立場でもない。
証拠の押収だとか、首謀者の捕縛だとか───現場に対する意識は何一つ持ち合わせず、己の都合だけで破壊をもたらす。
両手から放たれた闇色の弾丸が、不規則な軌道を描いて格闘ゲームの筐体を撃ち抜いた。
威力はそこまで高くないため爆発などはせず、ゲームが壊れるに留まっているが。

「わはははは! 泣け! 叫べ!
 そっちの方がよっぽど耳に心地よいぞぉー!」

高笑いと共に行われる破壊行為に店内騒然。
ただ遊びに来ていただけの利用客たちは逃げ惑うが、追い打ちはしない。
彼女としては不愉快な音を立てる機械が止まればそれで十分なのだ。

ロベリア > 一方的な蹂躙が繰り広げられているにも関わらず、止めようとする者は誰もいなかった。
それもそのはず。ここにいるのはゲームの中ではイキリ散らせても現実の相手にはまともに口も利けない小心者ばかり。
たとえ小さな少女であっても、危険な存在に立ち向かえるほどの度胸は持ち合わせていないのである。

数分後───
全ての筐体が動作を停止する頃には、店内にはロベリアしか残っていなかった。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」に持流 童男さんが現れました。
ロベリア >  
「ふぅーっ。ようやく静かになったのだ!」

一仕事終えたような爽やかな表情で額の汗を拭う動作をする。
実際には棒立ちで魔力を飛ばしていただけなので、汗をかくような運動はしていないのだが。

「気がつけばダレもいなくなったな。ふん、なんじゃくモノどもめ。
 しかし、このヘンテコなキカイはいったいなんだったのだ?」

既に沈黙して動かない筐体をしげしげと眺める。
まぁ静かになったならいいか、とすぐに興味を失った。
逃げ回る中で利用客たちが落としていった鞄などから金目のものを漁っていく。

持流 童男 > 「寝ようと思って騒がしく物音が聞こえてみて来てみれば何してるでござるか。こら」

と言いつつロベリアさんに対して注意を向けつつ
いつものマントを翻しつつも

「ロベリア殿、全く。駄目でござるよ。こういうことをしちゃ。」
「ってこれ筐体ではござらんか!」
と言いつつ壊れた筐体を見てうおおおとうなっている

ロベリア >  
「……むっ?
 なんだ、ダレかと思えば いつぞやの英雄気取りのニンゲンではないか」

誰もいなくなった店内に響いた声に顔を向ければ、見覚えのあるマント姿。
無惨にも破壊し尽くされた筐体に慟哭する様を見ながら、ふと違和感を覚える。

「ん……キサマ、どこかフンイキが変わったか?」

彼の体から、前にはなかった妙な魔力を感じたのだ。
訝しむように歩み寄って覗き込む。

持流 童男 > 「おう、今は、胸をはれて守れるヒーローになるっていう目標のために修行中の身分でござるがな」

照れくさそうに笑いながらも
覗き込まれつつ

「ん?雰囲気が変わったでござるか?うーむ特に、イベントは・・色々会ったでござるな。異形の賽子ベルト・・?と出会ったり、友達も増えたりしたでござるよ。女友達のアール殿と、男友達の紅月殿っというかけがえのない友達を!」

と自慢げにいい笑顔で言いつつも

ロベリア >  
「ヒーロー? 英雄と何が違うのだ?
 あいかわらず人助けにトモダチにと、群れるのがスキなやつだな」

首を傾げつつ、悪とは程遠そうな近況報告に眉を顰める。
しかし、異形の賽子と聞けば興味深そうな顔をした。

「ほう、いかにも魔界っぽい名前だな! どんなのだ? どんなのだっ?」

それは傍目から見れば、新しいオモチャの話を聞いて目を輝かせる子供のようでもあった。

持流 童男 > 「おお!それならこれでござるよ!暫し待つでござる」
ベルトに関心を持たれたのが嬉しかったのか、バッグから取り出して

異形の賽子ベルトを持ち出して、ロベリアさんに見せる

「かっこいいでござろ!触ってもいいでござるよ!」

いたずらっぽく笑いつつも嬉しそうに

ロベリア >  
「おおぉ……っ!」

あなたが取り出したベルトを見て、少女はさらに目を輝かせた。
このアイテムからは魔力……それも呪いに近い、黒魔術寄りの力を感じる。
魔族であるロベリアが惹かれるのも当然と言えば当然だ。

「キサマ、こんないいものをどこで……なにっ、触ってもいいのかっ!?
 わはぁ……ものすごくカッコいいぞっ!」

興味深そうにぺたぺたと触ってみたりしている。
いったいどんな力を秘めているのか、見たくてウズウズしてきた。

持流 童男 > 「ふふふ・・実はこれ、変身できるんでござるよ・・・!」

少しいたずらっぽく言いつつ

「良ければ、見るでござるか?このベルトの力」
(おい・・まぁ悪くはないが)

とロベリアさんに対して変身を見てみるかと言うのを伝える。
ダイスさんも、乗り気のようだ。

ロベリア >  
「ヘン、シン……だとぉ……ッ!?」

極めつけにもたらされた情報に目を見開く。
無性にワクワクする気持ち───それがロマンというものだということを、少女はまだ知らない。

「見たい! すごく見たいっ!」

首がちぎれそうな勢いでぶんぶんと頷くだろう。

持流 童男 > 「おっけい!!任せるでござる!!!」
と快活に言った後に一拍おいて
スウと呼吸を入れて。
「お主には、特別にこのフォームを見せるでござるよ。最近制御できてきたでござるし」

といった後に

「変     身」

「イビルダイスロールゥ・・・・」
ダイスロールぅ!!!!!!と甲高い声とともにベルトのダイスが回る
闇が持流を包み、そして、闇が従うように、持流に装着冴れていく
重低音とどすの利いた音がながれ、闇の中から赤い稲妻が走る。
地獄から響くような声とともに
「ワーニング!ワーニング!ワーニング!ワーニング!」
「RISE UP・・・ダークネスヒーロー」「ヴィラン、レッドラム、デストロイ、「「マーダーズ」」
「暗黒の英雄:ドラクロ!!!!!!ヤベーイ!!!エグーイ!!!」

なかから冷ややかな赤い目をした涙を流し、そして底冷えするかのような気配を携えた異形が底に立っていた。闇よりも凄まじい闇の化身がそこに佇んでいた

「・・・・・・・・」(っとをなんとか制御できてるでござるなうん)
制御は、なんとか出来てるようだが、「殺意」「悪意」などが体から溢れてるのがわかるだろう。

ロベリア > 少し離れたところから変身プロセスを目に焼き付ける。
ベルトから発せられる音声の意味はよく分かっていないが、そこから溢れ出すのは闇。
魔獣の咆哮もかくやという雄叫びと共に現れたのは、温厚な男の面影を消した異形の姿。
抑えきれない悪意の波動をその身に受け、少女は───

「かっッ………………こいい!!!!!!!!!!!」

めちゃくちゃに興奮していた!
背中の羽はパタパタと忙しなく動き、尻尾も激しく左右に振れる。
おどろおどろしい見た目も、魔族から見れば実に美しいフォルムであった。

「キサマ、こんなすごいモノを隠していたとはな!
 ヒーローが聞いてあきれる。今のキサマは、まるで高位魔族のような出で立ちよ……!」

貶すような言い草だが、これは最大限の賛辞である。
魔族からそう見える時点で正義のヒーローとは程遠い姿なことは間違いない。

持流 童男 > 「・・・・・・・」(お主に対してはこのフォームはかっこいいでござろう!・・・って伝わらなかったななら)
と言いつつ、闇を形成しつつ、それを文字にしてこの一文を伝えつつ

このフォームを制御するまで結構やばかったでござるからな。鬼殿に狙われたりしたでござるし。

闇を形成して文字にしつつ伝える。

このフォームはそういう「殺意」をテーマにしてるフォームらしいのでござるよ。だからヒーローとは本当に程遠いのでござる。あまり使いたくないけど今回は、お主のために変身したでござるよ

「・・・・・・」
闇が会話して、会話が成り立って入るが、無言で佇んだまま悪意でロベリアさんを射抜いている。ただ制御しているからか、襲いはしないだろう。

ロベリア >  
「ふむふむ……そうか、そうなのだな」

悪行を重ねるために授業をフケることが多いロベリアはあまり学がない。
最近ひらがなが書けるようになった程度なので、闇が文字を模っても漢字だと読めないのだが……
こんなにカッコいい相手の前で恥を晒したくないので、雰囲気だけで分かった気になって頷いている。

「いやしかし、いいものを見せてもらった。
 礼として、ワレもとっておきをキサマに見せてやろう!」

不敵に笑い、腰に手を当てて仁王立ちのポーズを取る。
無断欠席や今回のような傍若無人な振舞いにより、悪行ポイントは十分に貯まっている。
"変身"を残しているのはキサマだけではない───そう言って。

「括目せよ、ワレの真の姿を!
『大悪魔・限定解除(ディアボロス・オーバーロード)』ッ!」

高らかに声を上げた直後、少女の足下で闇が渦巻いた。(続)

ロベリア > 闇の奔流が暴風のように店内を吹き荒れ、床に散らばる物を巻き上げていく。
平時のあなたであれば立っていられないほどの風圧、そして強大な魔力のうねりを感じるだろう。
それがロベリアの身体を取り囲み、彼女の肉体が闇色の輝きと共に形を変える。

小柄な体躯は見る見るうちに背が伸び、成人女性ほどに。
セーラー服が闇に溶けるようにして漆黒のドレスへと変貌し、平坦だった胸は見違えるほど大きくなった。
髪も伸びて結び目が解け、足下まである真紅の長髪がさらりと落ちる。
閉じられた双眸をゆっくりと開けば、纏う雰囲気に子供らしさは無く───
鋭い眼差しであなたを射抜く、高貴なる大悪魔の姿がそこにあった。

ロベリア > 【後日再開予定】
ご案内:「違反部活群/違反組織群」からロベリアさんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から持流 童男さんが去りました。
ご案内:「裏切りの黒 地下拠点」にエルヴェーラさんが現れました。
ご案内:「裏切りの黒 地下拠点」に吸血鬼《ヴラド》さんが現れました。
エルヴェーラ >  
テーブルを覆う、青白い魔力光。
エルヴェーラが細く白い指を突き入れれば、
整理された情報が、文字通り根を張る。
植物が成長する様を早回しで見ているかのようだ。
根は葉を生み出し、描写を始める。

描かれるのは落第街の地図と、その情報だ。

突き入れた指を震わせたり、撫でるように動かすことで、
空中に淡い光の文字が刻まれていく。
数多の光が筆跡を描き、大量の文字《じょうほう》が空間に、
集約され、集結していく。

留まることなく流れていく文字は、ある一点でその動きを
ぴたりと止める。

『トゥルーバイツ』

その文字を見て、エルヴェーラ――拷悶の霧姫《ミストメイデン》は、
深い息を床に吐いた。

「やはり。今のままでは情報が足りませんね――さて、吸血鬼《ヴラド》?」

エルヴェーラ一人がソファに腰掛けるこの部屋で、
彼女は宙に言葉を放つ。

吸血鬼《ヴラド》 >  
彼女の声に応じるように、影から闇が歩み出る。
それは霧、黒い霧。
しかして、ヒトの形をして意識しなければ見逃してしまうような。
対話するのに丁度いい距離感。
テーブルを挟んで対面する。
一瞬では互いに手出しできないようだが―――話合いには程よい距離感で
霧はヒトの輪郭に変わる。

男は依然、黒い姿のままに見えるが先程とは違いその表情を――仮面に隠されていない口元は伺い知ることは出来るだろう。

「お待たせしたかな、拷悶の霧姫《ミストメイデン》。だとしたらすまないね、拠点《ここ》に来るのも久しぶりなんだ許してくれ」

その言い方は柔らかい―――しかし、冷たい声色。

「残念ながら欲しがりそうな個人情報《パーソナリティ》は手に入ってない」

二つのチップをテーブルの上に置いてそちらへと滑らせる。

                            ・・・・・・
「こちらで手入れたのは一つはいつもの。 もう一つが少しは足りない情報の足しにはなる」

エルヴェーラ > 影から歩み出た黒い霧――吸血鬼《ヴラド》。

魔術を用いた情報集約は勿論、自動で行われるものではない。
地道な調査、情報収集を行った上で、情報を積み上げているに過ぎない。
そして、そうした積み上げを得意とするのが、彼女の目の前に現れた男なのだ。

目星のついた重要な情報を、特定の人物からピンポイントで抜くのであれば、
それこそソレイユ――フェイスレスが適任だ。
対し、落第街の情報を広い範囲で集めてくることにおいて、組織で彼の右に出るものは居ない。
野菜売りの好青年は落第街に根を張り、着実に溶け込み――確かな情報を、拾い上げてくる。
互いに手法の異なる二人だが、そのどちらにもエルヴェーラは信用を置いていた。

「謝る必要などありません。私は憤りを覚えませんから、安心してください」

静かに、そのように口にする人形。その昏い紅に染められた硝子細工のような瞳。
無機質なその目は、霧の男を見上げれば、ぱちりと瞬きをする。

「ああ、そちらはダメ、でしたか。まぁ、そう簡単に掴めるものではないでしょう。
 引き続き、調査をお願いします」

突き入れた右手の人差し指を青白い光の中でぴん、と伸ばしながら、
少女は虚ろな色で語を継ぐ。


男から受け取ったチップ。それを、空いた左手で握りしめれば、
その拳から青白い光が放たれて、青白い芽を息吹かせる。


「なるほど……」

一言口にして、エルヴェーラは右手を素早く動かし始める。
『トゥルーバイツ』、そして『トゥルーサイト』。
そう書かれた項目に、光の羅列を刻んでいく。


「しかし、トゥルーバイツの拡大――凄まじい勢いで進んでいるようですね。
 まるで魔法のようです。それほど迄に彼女の言葉が落第街に住む湿った者達の
 胸を打ったか、或いは――」

――何かタネでもあるのでしょうかね、と。
そう口にしながら、エルヴェーラは情報を打ち込み続けていたが、
とある『言葉』を打ち込んだ瞬間、その手を止めた。


その『言葉』は。
彼らにとっての過去。
彼らにとっての災厄。

それは――

吸血鬼《ヴラド》 >  
こうして姿を見せ合うのは久方ぶりだ。
定期的に渡している情報も大体はこちら側で生活する仲間に彼女の下へ届けさせている。
情報の機密についてだけは、アナログであったほうが安全だというのはこうして簡単に手に入ってしまっているからだ。

この少女の表情(かお)は、出会った時から変わっていない―――ヒトのことを言える義理はないが。

「そうかい、なら良かったとしよう」

さて、と男は少しだけ立ち方を変えた。
それは少女が情報に目を通し始めたからだ。

サラッと流せるような最近の情報、我々にとってはあまり焦るべきでもないような。
だけれど、これから必要になるかも知れないそんな情報だ、と男は先に知っているから。

「個人情報に関してはあんまり期待しないでくれ……そういうのはアイツの方が得意だろ」

今回の場合は、今の対象の立ち位置が厄介というのもありそうだ。
一通り読み終えた彼女からの『トゥルーバイツ』の話題。
個人的な感想なら幾らでも言える。 余りにも破格な条件であったり、率いる者のカリスマ性……あれは魔性の類だと個人的には思うが、現状を変える革命者に彼女はなる手段を取り、変わりたいと願いなら変われない者たちの心を掴んだ。
そういう風に単純に考えるのは楽だ。

彼女いうタネとは、要は。

「イカサマじゃなければいいねってか……俺もそうは願いたいね」

個人の資質によるもの、大いにあるだろう。
だけど、すぐにそうだと断じるのが危険であると知っている。

警戒するに足る情報が彼女の手から打ち込まれていく―――


              ・         ・
             《門》  そして  《窓》 。



「トゥルーサイト、『対象』が所属していた組織もだいぶだね……
 情報の正誤なんていうのは、勝者が好きに書けるがその部分は―――見逃せないよね」

エルヴェーラ > 無言で彼が手に入れてきた情報を打ち終えた後、
エルヴェーラは目を細めて情報にもう一度目を流す。
そうして、目を閉じたかと思えば、顔の横で握っていた左手を伸ばす。

「いい仕事です、吸血鬼《ヴラド》」

下から上へ、優しくチップを投げて返す。
チップは正確に、吸血鬼《ヴラド》の胸の前、少し手を出せば
その掌の上へ収まる所まで、届くことだろう。


「本来であれば、その通りです。ピンポイントで情報を抜くのは、フェイスレスの
 得意とするところ。しかし、今回に限って言えば、フェイスレスに情報収集を
 任せるのは悪手だと私は考えています」

フェイスレスからの報告。そして、エルヴェーラ自身が出会った彼女のあの『問いかけ』。
地に根を張った自己《かこ》を持たぬフェイスレスにとって、あの少女は劇薬だ。
二度三度と、引き合わせるべきではないだろうと。エルヴェーラはそう考えていた。

エルヴェーラ自身も、揺さぶられたのだ。
彼女と出会ってから、あの日のことを、夢に見た。

幾度も胸の色を塗り潰す灰色。
それでも、決して忘れ去ることはできぬ、あの鮮やかな紅を。

「『口を開けて待っている』訳には、いかなくなりましたね、吸血鬼《ヴラド》」

彼女は立ち上がり、吸血鬼《ヴラド》へ向けて小さく首を傾げる。
その動作は、その姿は、まるで血の通っていない美術品《びひん》だ。


そして、美術品は唄う。

唄い、唄う。

その声は、暗闇に響く鈴の音。
その声は、降り積もる雪の音。
その声は、全てを包む闇の音。

どこまでも優しく、どこまでも懐かしく、そしてどこまでも冷たい。
深い悲しみを思い起こさせる、異邦の音を揺らす、異邦の調べ。

両腕を広げる。
同時に、青白く光が細かな粒となって、空中に霧散する。
霧散した後に残るのは、微かに青く照らし出される、深い闇。


「さあ、此処に――」




この都市で、裏切りの黒の、物語を。

「――始《はじ》めましょう」

この現在で、過去から未来への、物語を。

「――紡《はじ》めましょう」

この都市で、生きた幻想の、物語を。

「――創《はじ》めましょう」


漆黒の仮面は、彼女の顔を覆う。
血の通わぬ人形の顔を、覆って隠す。

そうして少女は口にする。
詠うように。奏でるように。





「――私たちの、裏切り《トラディメント》を」



少女たちは紡ぐ。

たとえそれが歪んだ物語で、幻想《おとぎばなし》だったとしても。

其処に矜持《のろい》が、在る限り。

其処に信念《のろい》が、在る限り。

何故なら。

裏切りの黒の矜持には、血が流れているのだから。

吸血鬼《ヴラド》 >  
投げ返されたチップの動きは欠けた面の隙間から見える赤い瞳が追いかけて落下位置は計算を終えている。
特に感慨はないが、褒められた仕事に対してというのもあり胸の前に手を出して軽くだけ会釈。
薄暗闇の中ではその一瞬で出された手の上にチップが乗ったと正確に把握するのは通常のヒトの目では困難だろう。
受け取ったチップを手を下げる所作と共に黒に覆われた何処かへ仕舞う。

ヴィランコード:無形の暴君《フェイスレスタイラント》。

数度、すれ違った程度会話もまともにしたことはない。
しかし、個人についての情報収集ならばフェイスレスがよいと聞いていた。実際これまでフェイスレスの入手する情報には驚くべき点が多かった―――まるで本人が直接情報提供してくれたかのようで。

恐らく今回に関して『対象』とは相性が悪いのか、はたまた……。

「そういう事なら、承知したよ―――拷悶の霧姫《ミストメイデン》の判断に従う」

どこまで調べられか、など分かったもんじゃない。
しかして、自身の性質上の限界もある。その事は彼女も承知しているだろう。




 ああ、はじめよう再び。




              ・・・
―――かつてこの手を濡らしたあの血が、ここに未だ流れているのだから。

ご案内:「裏切りの黒 地下拠点」から吸血鬼《ヴラド》さんが去りました。
ご案内:「裏切りの黒 地下拠点」からエルヴェーラさんが去りました。