2020/09/04 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に虞淵さんが現れました。
虞淵 >  
「フー……」

口元から白煙を吹かす男
巨躯のその男の周囲には、無数の人間が倒れている

男の拳からは鮮血が滴り落ち、ただ一人その場で立っていることから、
この惨劇がこの男の犯行であることを示していた

「しばらくぶりとは言え、俺の顔を知らねェ連中も増えたもンだな」

ピッ、と吸い殻を放り捨て、踏み潰す

さすがに留守にした時間が長かったか
こうやって武器や異能を頼りに囲んでくる連中がそれなりにいる
──まぁ、それはそれで暇つぶしにもなったりはするのだが

ご案内:「違反部活群/違反組織群」に持流 童男さんが現れました。
持流 童男 > 違反部活群を、警邏していたら地下からすさまじい轟音が
とどろいたのを聞いたので、地下のほうを見に行ってみれば
なにやら、無数の人間が倒れてるのを見てからそれをしたのは多分
一人の某と同じくらいの男が立っているのを見る
今は風紀をしてるので、ここは

「すまぬ!そこの人!事情聴取してもよいでござろうか!!
あとケガしてないでござるか!?大丈夫でござる?手にケガとかしてないでござる!?」

そう快活にしっかりと、言ってから某と同じくらいの男の人に近寄っていこうとする。

虞淵 >  
「……あ? なンだ、お前は?」

怪訝な、赤い視線を向ける大男
この辺りじゃ見ない顔だな、と思いきや、目立つ腕章

事情聴取なんて言葉を使うあたりも、風紀員だということはよくわかる
だったとして、自分の顔を知らないあたりは新顔か何かか

「失せな。犬相手にしゃべくる舌なんざ持ってねェぜ」

この状況を見てこちらの怪我なんぞを心配してくる男に、肩を竦める

持流 童男 > 「いやいや、普通聞かないといけないでござろう。あと、ここに倒れてる人たちも、しっかりと何とかしないといけないでござろうし。」

そう言いながらも、しっかりと巨躯の男と同じ赤い視線を見つつも、真正面から見据えて

「だいたい犬ってなんでござるか犬って、某、犬が犬ならおぬしはあれでござるよ。ゴジラでござるよね。なんかそんな感じするでござるよね。
大体こんなことしてると『異能殺し』、来るかもしれぬでござるよ。」

そう冗談を言いながらも、しっかりと言いつつも
少しだけ真剣な表情になって

「この状況を作り出したのおぬしでござるか?だったら捕まえねばならないでござるが」
そう問いた、しっかりと真正面から言った。

虞淵 >  
「──……」

フゥ、と小さくため息を吐く

──無視してとっととズラかってもいいが、ちょうど退屈していたところでもあった
誂ってやるか、と。対面する童男へと向き合って

「事情聴取、結構なことだかがまずお前は何者か名乗りな。
 誰ともわからん相手にそんなことを強要する権利はねェだろう?」

「そしてだ。
 事情聴取ってのは任意じゃねェのか?
 強制的にそれを風紀の名の下に強行するってなら理由を並べな」

手順を通せ、と
ちゃんと聞いてやるからよと言いつつ、適当に転がっている木箱に腰を降ろす

「あァ、あと俺様の見立てじゃこいつらどいつもこいつも寝てるだけだ。
 放って置いても命の危険はねェよ」

持流 童男 > 「おお!お主頭いいでござるな!自己紹介は大事でござるな!
某は、風紀委員の持流童男。ただの童男でござる。
お主の名前はなんていうんでござるか?」

そうしっかりと自己紹介をしてから、名前を聞いて
事情聴取は任意については

「なんと・・!!それもそうでござるな。
いや、お主てっきりこう、無法者みたいな感じだったんで
こう・・・うんそれもそうでござるな。
任意なんでお主が言いたくなったら言ってくれでござる。いや、本当に助かったでござる。
ありがとうでござる巨躯殿」

こちらも木箱に腰を下ろしてメモをバッグから取り出す
そして寝ていることに関しては、

「おお!命に別条がないでござるか。
ならばよかったでござる!すっごいほっとしたでござるよ。」

そう心底安堵した顔を、巨躯の男に向ける。
本心のからのほっとしてるようだ。

虞淵 >  
「オイオイ、無法者だったら何だってンだ?
 無法者相手だから道理を通さなくても良いと思った、とでも言うつもりかヨ」

大仰に両手を広げ、戯けるように肩を上げ、言葉を向ける

「成程、お前の名前はわかったが。
 俺がお前に名乗り返してやる義理も義務もねェな?
 礼には反するだろうが、こんな場所で礼儀を説くなんてつもりもねェだろう」

どっかりと脚を組み上げ、膝上で手を組み、口の端を吊り上げる
威風堂々、という言葉が似合うような男の所作、そこには悪びれる様子などは微塵も感じ取れず

「──で?他に何かあるのか?」

持流 童男 > 「うむ、だから助かったでござる。そして済まなかったでござる
道理を通さなくてもいいわけないでござるよな。礼は大事でござるしな」

謝罪を述べる。そして続けられた言葉に少しだけ
冗談めかして笑かけて

「うっそだろぉ!?でも一理あるでござるよな。
うーん!じゃあ呼びやすいように、言わなければ、そうでござるな・・巨躯殿でいいでござる?それかガングロ卵殿とか・・?」

そうしっかりと巨躯殿に冗談めかして言いつつも。
威風堂々としっかりと座っている男に対して

「えーっと、お主が・・巨躯殿が一人でいたってことはこの人数相手してたでござる?」

そう事情聴取をしようとする。周りを転がっている人たちを見る。

虞淵 >  
「ククッ、お前、ちゃんと話を理解してンのか?
 俺がお前の質問に答えなきゃいけねェ理由はなんだッて聞いてんだぜ」

事情聴取をはじめようとする童男を眺め、愉しげに嗤う

「──はッ、まぁ好きに呼べばいいけどヨ。
 仮にも風紀の腕章してンなら誰かに言葉を向ける時は気をつけな。
 くだらねエ呼び方で相手を怒らせて名誉毀損なんざ笑えねェだろ」

持流 童男 > 「むむ!?そういうことでござったか!?」

そう驚きながらも、考え込む、うーむ、
巨躯殿が、某の質問に応えなきゃいけない理由・・理由・・

「いや、普通にこの人数転がって・・いや違うな。
うーん・・・うーん・・・お主が某の質問に応えなきゃいけない理由でござるか。
そうでござるな。某は、風紀委員で、お主が、この現場にいたからでござるかな。」

巨躯の男に対してこちらも考えながらもしっかりと言いつつも

「っと!?それもそうでござるな。確かに名誉棄損は嫌でござるな。」

そうしっかりと巨躯の男に言う

虞淵 >  
「成程」

脚を組み替える
口元には笑みを讃えたまま

「お前が風紀委員でこの現場で何があったか、知る必要が在る。
 だが俺がこの場を見ていたかどうかはわかんねェな?。
 お前が此処に来る、ほんの少し前に俺が此処に来ただけだったら?」

「『全員なぜか倒れていて、怪しい人間は見ませんでした』で満足かい」

持流 童男 > 視線をちらっと拳のほうに向ける、いや思いっきり血の跡ついてる・・!!!しかも結構新しい奴・・!!

「あの・・その笑みを浮かべてるところ悪いんでござるが、
お主の手、思いっきり血に濡れてないでござる?しかも結構新しい奴。」

そう気まずそうに巨躯の男に言った。

「しかも、思いっきりお主立ってたでござるよね。こう倒れてる人のところに。だとしたら全員なぜか倒れているのはおかしくないでござる?」

そう疑問を問いた

虞淵 >  
「ああ、コイツかい?
 そこの入り口のドアのささくれだってるトコで切っちまってな」

いいつつ、拳についた血をぺろりと舐める

「ああ、立ってたぜ。
 座ってたほうが怪しくねえか?
 此処に来たら人が大勢倒れてた、で立ち尽くす人間のほうが普通は多いんじゃねェかい?
 アンタの考える『こういう場所に出くわした一般人の自然な行動』ってのはどういうんだ?
 ただ突っ立ってるってのは、俺には異質な行為には思えねェな」

持流 童男 > 「そうでござるな。いきなり大勢の人が倒れてたら、
普通思考停止するでござるな。うん
棒立ちになるのも、うなずけるでござるな。
某だと・・・・うーむ、驚くでござるな。でも実際異質ではないんでござるよなぁ!棒立ちになるの!」

そう言いつつも、うーんうーんと唸りつつも
少しだけじとーと拳についた血をなめる巨躯殿
対して拳を疑い深く見つつも

「・・・ささくれでそんなんになるでござる?」

そう言った。

虞淵 >  
「疑ってんのかい」

言いつつ、適当に拳を拭い、見せる
どこにも傷は見当たらない

「傷が治っちまう異能でなァ。切り傷程度ならこの通りだ
 出血した血は残っちまうからどうしようもねェが」

もちろん嘘だ、が
それをこの場で確かめる術などはないだろう
そんな異能の持ち主はこの島にはあちこちにいる

「──他にまだ何かあるかい」

持流 童男 > 傷がない手首を見る
どこにも傷はないのを見てから
すこしだけ安堵してから

「・・・ささくれの傷がなくてよかったでござる。いや、疑ってしまって悪かったでござるな。大きい人殿。
しかし、どう、報告するでござるかなぁ・・うーん!」

そう思いながらも、ほかにないかを確認してから

「ないでござるな。・・済まないでござる。お主を疑ってしまい。
事情聴取に協力感謝するでござるよ。」

そう敬礼をしつつも、木箱から立ち上がろうとする。

虞淵 >  
「じゃあ、もう行って良いんだな」

確認をするように言葉を投げかけてから、立ち上がる

「ついでにお節介焼いてやるよ。もうちょっと現場を見てみな
 こいつら武器をもって集まってやがる」

「凶器準備集合罪だか、凶器準備結集罪だったか。
 取り締まらなきゃいけない連中は目の前にいンじゃねェのかい、大将」

言いつつ、ポケットから取り出した煙草を咥え、火をつけて

持流 童男 > 「もちろんいってもいいでござるよ。・・おお・・・!?マジでござるな。ありがとうでござる。・・・お主の名前を知れないのが、残念でござるが。」

そう頬を掻きながらも、武器を持っている人たちに手錠をしつつも
縛りつつも俵の様に巻きつつも。

「お主は本当に、周りを見てて、しっかりしていて
良き人・・なのかもしれぬでござるな。ありがとうでござる。
名も知れぬ、良き人、某は、少なくともそう思うでござるよ。」

そうしっかりと巨躯の男の人に、感謝を述べつつ男たちを縛り付けていく。後ろを警戒はしていない。

虞淵 >  
「──………」

廃ビルの地下、その出口となる階段に脚をかけ、男は立ち止まり、白煙を吐き出す

「なァ大将」
「クソ真面目は構わンが、それでこの街の風紀をどうこうできると思わねェほうがいい」
「信じるヤツは馬鹿を見る。他人の言うことは信用しない。それが当たり前の街だぜ」

階段入口のドア、それを足蹴にして──
そこにはささくれなんて、ありもしない
彼は、童男はこのドアを調べすらしなかった

「そんなザマじゃガキ一人にすら手玉に取られるぜ。
 悪ィこた言わねェヨ。イチから風紀の先輩方に鍛え直してもらって来な。
 正しいコトばっかやってちゃ埒があかねェ、そンな話はこの街にゃゴロゴロしてんだぜ」

持流 童男 > 階段入り口にささくれがないのをみて、少しだけショックを受ける
嘘をつかれてたのだ。ショックを受けた顔をしつつも、頬を掻いてから

「大きい人殿、風紀の先輩を頼ってみようと思うでござる。
それで、また鍛えなおしてもらうでござる。
人を疑うのも大事なんでござるよね。疑わないと守れないものもあるんでござるよね。
・・・・ありがとう。助言をしてくれて。」

素直に、感謝をした。嘘をつかれたのがショックだったけど
でもしっかりと道を示してくれたのだ。がんばらねば

虞淵 >  
「それだ。こういう話をして尚、アンタは俺の話をまともに聞いてる」

ピッ、と吸い殻を投げ捨てる

「俺はお前にとって信用に値する男か?何度も俺の拳を見たろう。疑ったろう。
 なぜそんな相手の言葉を真に受ける?信用する?言われた通りにしようとする?」

男の表情には少なからずの、落胆が見えた

「無能そうな野郎をちとからかってやろうと思っただけだったが──」
「やめときゃ良かったぜ。気の毒になっちまったよ」

「これがこの島の今の警察機構、か」

だからこの街の住人は風紀委員になんか頼らない、そんな意識の連中が多いのだと
こんなやつらを当てにして、明日をまともに生きてなんかいけないのだと、吐き捨てるように背を向けて

「随分と風紀委員もレベルが落ちたな」

そのまま興味を亡くしたように、男は去ってゆくのだった

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から虞淵さんが去りました。
持流 童男 > 「すまぬでござるな。大きい人殿。某は、人を信じるくらいしか能がないものでござるから」

そう、去っていった後の悲しみを見せつつも。
捕縛していく男たちを風紀委員の人たちに連絡を入れる。

「・・・某が、いることで、もしかして風紀委員のレベルを落としてるでござるのかな。」

そう悲しそうに言いつつ。風紀委員の到着を待つ。

「だけど某は、それでも人を信じぬくでござる。」

しかしその顔は辛そうだったというーーー

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から持流 童男さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に葛木 一郎さんが現れました。
葛木 一郎 >  
――人が、死んでいた。
“あの晩”に、いくらでも人が死ぬところは見た。
だから、俺は別になんてことないと思っていた。苦しいけれど。
人はいつか死ぬから、遅かれ早かれだって思っていたはずなのに。

「うっ、うえ……」

胃の内容物が迫り上がってくる。
目の前の現実を現実として受け入れたくないと身体が叫んでいる。
叫びたくなるほどの現実を目の前にして、俺は声が出なかった。


金髪。

俺と同じくらいの背丈。

そして、右腕には風紀委員会の腕章。

その喉から、どんな言葉と声が出るかを俺は知っている相手。
命の重さに人は貴賤はないというけれど、俺はこいつを特別扱いしている。


埃っぽい、かつて違反部活の本拠地だったという建物。
ここに、俺以外の人間はいない。俺以外全員が見ていなかったか。
もしくは。

・・・・・
見ないふりをしていた現実が、目の前に現れた。


「……九重ッ!!!!」

触れることはできなかった。
つんと鼻につく腐臭は、もう『どういうことか』を示している。
ただ、夜半に叫ぶことしかできない。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」に羽月 柊さんが現れました。
羽月 柊 >  
落第街の古い知り合いが、『お前の探しているモノが居る』と言っていたのが先ほど。

状況を教えられることは無かった。
しかし、楽しそうに笑っていた意味を、今知る。


──葛木 一郎。
とある事件の最中で羽月 柊と出逢った彼。

『トゥルーバイツ』事件と呼ばれたそれは、
『欠損』と『願い』を持ったモノ達が、
『真理』というたった1%の願いの成就と、99%の死を求めた事件。

青年と男が対峙した時、彼はその1%を求めていた。

しかし、柊と言葉を交わし、その1%をあの時は諦めた。

そうして、『教師をやってくれ』と、
『共に歩む』と言った写し鏡たちは、




 ここから、物語を始める。




「──…葛木!」

友人のヨキから、彼が探し人をしていると聞き探していたが、
見つけたのは新学期が始まってからとなった。

それも…あぁ、彼が……『取りこぼした』場面に逢うだなんて、誰が想像できるだろう。

叫び声を追いかけるように、その名前を呼んだ。


彼の後ろで仮面を外して。

葛木 一郎 >  
「……羽月せん、」

声で誰かはわかった。
自分が探していた人物の片割れは生きていることが今わかって。
もう片方はすでに息をしていない。二度と自分の名前を呼ぶことはない。

喉を焼くように上がってきた吐瀉物を必死に飲み込み。
震える手をどうしようもなく抑えながら、携帯端末を操作する。

――あれ?
どうやったらいいんだっけ?
風紀委員への連絡って、どうやってやるんだっけ?
番号。そうだ。番号を、入力して、ああ、でも、直通回線が。
……あったはず、なんだけど。

振り返ることもできない。
ぎりぎりのところで端末を取りこぼしていないだけ。
これを落としたら、俺の理性も多分糸を切ってしまうことだろうと思う。
だから、落とせない。

落とさない。でも、ここから一歩も動けない。

死因は? コンクリートに付着した血液は赤黒い。
昨日今日で死んだわけじゃない。絶対に。夏休みの終わり際から、今日まで。
行方不明になっていた時間は途方もない。
その間に殺そうってったって、アリバイなんてつくりたい放題だ。

じゃあ、俺は何ができるんだ?

「……おひさし、ぶりですね」

出てきたものが、夕飯の台湾ラーメンじゃなくてよかった。
ちゃんと、言葉を選ぶことができて。よかったな、と、少しだけ安堵した。

羽月 柊 >  
彼の様相に息を呑んだ。

いくら風紀委員とはいえ、…いくら"あの時"死の近くにあったとはいえ、
やはり……彼は、一郎は子供なのだ。



男の片耳のピアスが揺れる。

この痛みを、自分は良く知っている。

けれど、それは彼だけの痛みだ。



「あぁ、ああ…葛木。」

久しぶりだなという返事よりも先に、動けない彼に駆け寄る。
あの日間近にあった紫髪を揺らして…桃眼を心配するように細めて。

対峙ではなく隣に。

可能ならば、彼に触れようとする。
可能ならば、彼の肩に手を置いて、しっかりしろと写し鏡に呼びかける。

「…そうだな。……君をずっと探していた。
 まさかこんな状態で逢うとは思っても見なかったが…。」


『大丈夫か』などと聞ける訳がない。


「…吐き出してくれて構わん。…俺が、ここにいる。」

そう、言葉をかける。
重荷は、一緒に背負うと、そう誓ったのだから。

葛木 一郎 >  
「すいません、連絡を、入れてもらえますか」

弱音よりも先に、自分の背負った看板を支えた。
自分が一人の人間である以上に、風紀委員会の一員でもある。
この腕章はその『覚悟』の証であるし、これをしている以上は。

この何百倍もの人数の死体を見ている委員もいるかもしれない。
だから、たった一人の死を目の前に動揺しすぎるわけにはいかない。
……とはいえ、もう、連絡を入れられなかった以上、その職務は果たせていないが。

「風紀に。
 行方不明になっていた学生を発見したって、
 ここのポイント情報と一緒に、それから、委員を呼んでもらえますか」

静かな夜に、いやに落ち着いた声が出た。
泣き喚きたかった。泣き叫びたかった。それでも、そうできなかった。
俺は悲しいはずなのに、気持ちの一定ラインより先にいかないように、
なんだかストッパーのようなものがかかっているかのような気持ちだった。

「……大丈夫です。
 俺は、いいんです。俺は、生きてますから。
 だから、今は、……九重を、見つけたって、言わなきゃ」

深呼吸を二、三度繰り返す。
ある程度言葉も出てくるようにはなってきた。
落ち着いてはいるのだろう。今は、『九重』にはもう見えていない。

『九重だったもの』でしかない。
だから、死者に生者ができることなどそう多くない。
だから、次に目を向けなければならない。それが風紀委員の職務なのだから。

羽月に肩を置かれたまま。端末をそっと差し出した。

羽月 柊 >  
「………。」

今は触れることが出来る。
自分たち自身から死が遠ざかったとはいえ、
やはりそれは自分たちの隣に常にあるモノには違いがなかった。

自分だって死体そのものは見慣れたモノだ。

裏の世界を歩く以上、それはよく眼にすることであるし、
己が魔術師や研究者である以上、それは身近ではある。

しかし、だからといって……今はそれを"雑踏"として無視出来なくなっていたが。


一郎から端末を受け取る。

流石に元学生であったとしても、
風紀委員だった訳ではないし、使い方は分からない。

「…とりあえず、使い方を教えてくれるか。」

彼の指示通りに委員に連絡を取る。
応答してくれるモノが己の知っているモノであれば…話も楽だが。

風紀委員のオペレーターであるならば、説明もしなければ。


一定のリズムで彼の肩を軽く叩く。

「……今は、無理に大丈夫と言わなくていい。
 男だから気を張りたい気持ちは…わからんでもないが……。」

思えば随分と自分の態度も軟化したモノだ。
これは恐らく…友人のおかげかもしれないのだが。

葛木 一郎 >  
「……いえ」

首を軽く左右に振った。
ここをこうして、と、ある程度の端末の使い方を指示し。
自分の気持ちとは裏腹に大笑いしている自分の膝を睨みつけながら。

「これで、多分、数分以内に近くにいる委員へ連絡がいくはずです。
 すいません。……これで、多分大丈夫、です。
 ……現場の引き継ぎをするまでは、男だからとか、そういうのじゃなくて」

誰かを特別扱いするわけにはいかない。
あくまで、風紀委員として。もう一度失敗している以上はミスできない。
だから、風紀委員の仕事はやり通さなければならない。今、ここにいる委員は自分だけだ。

常世島を守る警察機構が、ここで折れてはいけない。
自分一人だったら折れることはなかったかもしれないが、今は。

現状を見ている“島民”の羽月だっている。
だから、“ヒーロー”は、“正義の味方”は、折れるわけにはいかない。
甘ったれるわけにはいかない。自分がやることは決まっている。

水城九重を殺した犯人を、この手で捕まえることだ。
遠くから、サイレンの音が聞こえてくる。聞き慣れたバイクの排気音が聞こえる。


“風紀委員会”が、事件現場にやってくる。

安心している自分がいた。

安心している自分を嘲笑っている自分がいた。


「……先生は、なんでこんなところに」

現場にいる人間は二人。自分と、羽月。
そのどちらもが、“風紀委員会”から見れば被疑者の一人だ。
第一発見者が一番最初に捜査の目を向けられるのは当然のことだから。

葛木という風紀委員も、現場にやってきた男に、そう静かに問うた。