2020/09/06 のログ
ご案内:「違反部活群 とある廃ビル屋上」に柊 真白さんが現れました。
柊 真白 >  
違反組織を二つ潰してくれ。
そんな仕事を受けたのが、二週間ほど前。
専門は人殺しではあるものの、仕事であれば違反組織を潰すこともやっているのでそれはいい。
いつもと違ったのは、直接潰すのではなくその二つの組織間で抗争を起こして潰してほしい、との内容。
なのでこの二週間色々やった。
片方の事務所の前で爆竹を鳴らしたり、もう一方の事務所にフラッシュバンを投げ込んでみたり、二つの組織のメンバーが近付いたタイミングでこっそり一人を斬ってみたり。
その甲斐あってどうにかこうにか抗争まで持っていくことが出来た。
眼下で行われているカチコミを、屋上の端に座って見下ろす。

「疲れた……」

感想はそれに尽きる。
何せいつもと勝手が違うのだ。
自分で直接手を下すのではなく、二つの組織の動向をコントロールしてうまくぶつけるのには本当に神経を使った。
お話の中には参謀がそういうことをしているが、自分はやはり現場で動いている方が性に合っているな、なんて思いながらぼんやりと。

ご案内:「違反部活群 とある廃ビル屋上」にツェツィーリヤさんが現れました。
ツェツィーリヤ >   
「随分とお疲れみてーだねぇ、”白”の」

純白の娘が見下ろす反対側からそんな声が投げかけられる。
同時に屋上の縁から腕がにゅっと伸び、それを支えに体を引き上げた女がいた。
そこにいるはずの女の姿を認めると無駄足にならずに済んだなと小さくため息をこぼしながら小さく伸びをした。

「はー、やれやれ。
 血の気の多い連中は言っても聞いちゃいねぇなぁ」

足元から聞こえる銃声に目を細めながら服についた埃を払う。
抗争好きな連中は本当にこまる。あれほどこれ誘導されているぞと助言してやったというのに。

「一応契約上聞いておくけども、”誰の差し金かな?”」

柊 真白 >  
「私は暗殺者であって陰謀屋じゃないから」

背後から聞こえた声に振り返りもせず。
座ったまま脚をぶらぶらさせつつ、視線は眼下の抗争を見ていたまま。

「念入りにやったから。うまく行ったなら何より」

忠告も聞き入れられないほど熱くなってくれたのなら苦労した甲斐があったと言うもの。
よいしょ、と立ち上がり、こちらも服に着いた汚れを払う。
結構高いのだ、あまり汚したくはない。

「それを聞かれて答えるような三流じゃない」

くるり、と振り返れば、その顔には装飾のない目の部分だけが開いた白い面。

ツェツィーリヤ >  
「へー。まぁそうだろうねぇ。
 チェスプレイヤーを演じるにゃ、ちとてこずっていたもんなぁ」

こちらを向いた顔には仮面。
認識阻害のそれは”観測”中に確認している。
一応身元を隠すつもりはあるようで何よりだとは思ったが……
嗚呼、こういうタイプか。と認識を改める。
 
「ま。一応説明しておくけれど、下でドンパチしている連中の片方と縁があってねぇ。
 こっちで言う……そう、”ちょっとしたお友達としての協力”をお願いされてたってところかね。
 つうわけで一応ね、聞いとかなきゃいけないんだわ、義理立てに。」

まぁ意味はなかったようだけれど。と肩を竦める。
この島は上も下も馬鹿みたいにいるが……やはり平和ボケしているのだろう。
メンツを実利より優先するなんて、あっちなら死んでいる。
……それに合わせてこうして行動している自分もその例に漏れないかもしれないが。

「そりゃそうだ。
 そこでべらべら喋られたらあたしのプランは台無しだ。
 というかそいつはこういう家業向いてねぇからやめたほうが良いって忠告するレベルだな本当」

そんな馬鹿がいるものかねと嗤うように口にしながら服を整えた後数秒じっと目前の相手を見つめる。
得物と身体能力は観測中に見定めてはいるが……
実際には最低でも倍は早く動くと考えたほうが良い。
表情も色もない顔を向ける相手にこちらは顔を隠すこともせず僅かに口の端を吊り上げながらゆっくりと歩み寄り、

「ま、この位かね」

ぴたりと立ち止まる。

柊 真白 >  
彼女の言葉を興味なさそうに聞く。
こちらとしては抗争が起きた時点で半分成功しているようなものだ。
後は報復に見せかけて交互に数を減らしていけばいいのだから。

「なんで邪魔しなかったの? しようと思えばいくらでも出来たはず」

仕事中、視線は感じていた。
が、邪魔する様子が無かったので無視をしていたのだ。
彼女の邪魔があればもっと苦戦しただろうし、なんならうまくいかなかった可能性の方が高い。
距離を縮めて立ち止まった彼女の顔をじいと見る。

ツェツィーリヤ >  
「ん?そんなの簡単だろ。好みの相手がいなかったから、だよ」

あっけらかんとぶっちゃける。
こちとら金を積まれたので”付き合って差し上げた”だけだ。
殊勝に話を聞くならともかく、血気に逸り誘導されるような相手に
こちらが疲れてまで修正する義理などないというのが今回の感想。

「心中するなら相手は選ぶだろ。
 ”可愛らしいお嬢さん”にでも懇願されたなら吝かでもないけれど
 我慢(マテ)のできないチェリーボーイは楽しくイケないから死んでも願い下げだぁね。
 全く、この島には自称タフガイが多すぎやしないか」

片手に持ったハンドガンをくるくるとまわしながら困った、とばかりに肩を竦める。
こちらは”観測”し、予想し、そして対象も見つけ、形式上問いかけた。
全てではないが、義理は通した。それ以上はまた別のお付き合い(お仕事)だ。

「要はアンタの”ご奉仕”を邪魔して欲しいっていう”お願い”も
 自分達でお遊びの計画も立てれない男連中がいたって事さね。
 あんたもプロならわかるだろ?”お願いされた以上は働かない”んだよ。あたしも」

柊 真白 >  
「ふうん」

好み。
なんと言うか。

「なんだ、アマチュアか」

仕事に私情を持ちこむ時点でプロではない。
そう判断した。

「依頼されてないなら営業すればよかったのに」

興味をなくしたようにくるりと背を向け、再び眼下の抗争へ目を向ける。
どうやら状況は五分の様で、撃ちあいが続いている。
この調子なら、後片付けもそう時間はかからなさそうだ。

「――で。何しに来たの」

背を向けたまま。

ツェツィーリヤ >  
「あっは、言うねぇ。
 アイアンメイデン(鉄の処女)とか言われたことない?
 そういう初心でお堅い子も嫌いじゃないけれども」

断続的に響く銃声のなかでケラケラと笑い声をあげる。
思っていたよりは理性的に在ろうとするタイプらしい。
個人的には若干安心した。一番面倒なタイプではないらしい。

「言ったろ?そこまでの義理も無い相手だって。
 営業(コールガール)するのも楽じゃないだろ?
 好みの相手なら普通に口説く方が趣味に合ってるんだよ」

既に階下の狂騒には興味を失っている。
この騒ぎの終着点は見えている。報酬も期待できそうにない。
であれば、やるべきことを終わらせてあとはさっさとずらかるだけだ。
それが本当に気が進まないのだけれど。

「……ま、お嬢様と踊ろうと思ったら招待状はこっちから出さなきゃいかんかね」

手遊びに回していた拳銃のセーフティを指先で外しながら気だるげに向ける。
明らかにやる気のない雰囲気でため息をこぼしながら銃口を向ける。

柊 真白 >  
「そんな風にはよく言われる」

頑固とか硬いとか。
こちらは合理的に判断しているだけなのだが。

「そう」

まぁ、そう言うタイプもいるだろう。
割と面倒なタイプだ。
やることが無ければさっさと逃げてしまうのだが、生憎下の騒ぎが一応の決着を見せるまでは離れるわけにもいかず。

「――じゃあ、少し遊んであげる」

再び振り向き、屋上の縁から一歩だけ前に。
両腕はだらんと自然体。
左腕に携えた自身の身長ほどの長さの刀は未だ鞘の中。

ツェツィーリヤ >  
「冗談はコミュニケーションにおいて非効率だけれど必要らしいからね。
 ま、あたしゃそのあたりのセンスはからっきしなのだけれど。
 一方で冗談みたいな連中に付き合わなきゃならんのだから
 全く……ままならないものだぁね」

普段通りに振舞ってはいるものの
全く貧乏くじを引いたものだ。と内心うんざりしている。
なるほどこれではアマチュアも良い所だ。
商売する相手選びを間違えたのだから。本当に苛立たしい。
冗談は顔と言葉だけにしてほしい。
お陰でこんな面倒な”手続き”を踏まなければならない。罰ゲームも良い所。

「付き合う男をもう少し選べるようになればいいんだけれど。
 誰か見る目がある仲介者でも紹介してくれないかな。レディー」

武器は抜かないか。ある意味とても素直なタイプで相手ながらも少し心配になる。
けれど、同時に酷く厄介な相手でもある。それでも対処できると考える前提があるわけだから。
まぁ、多分よほどでなければ死にはしないだろう。それだけは安心した。
嗚呼、本当に面倒だ。あんな依頼蹴れたら良かったのに。
であればこうやって建前の為に踊らずに済んだの。
……全く、酷く非効率だ。

「ありがとう。では”お嬢さん、一曲いかが”?」

ゆっくりとほほ笑み一礼した後、躊躇なく引き金を引く。

柊 真白 >  
「あなたはもう少し依頼者に対して真摯になるべき」

そうすれば信用も得られてまともな仕事が来るだろうに。
自業自得、彼女の軽薄な態度が招いた事態だ。
それはさておき、躊躇なく放たれる弾丸。
急所に当たれば容赦なく人の命を奪う金属の塊が火薬の爆ぜる音と共に銃口から飛び出す。
それはそのままこちらの急所へとまっすぐに飛び、

「遅い」

自身の目の前で真っ二つに割れた。
ぱちり、と言う小さな納刀音。
左手の鞘から刀を抜き、飛来する銃弾をぶった切って再び刀を鞘へ納める。
それを、彼女が引き金を引いたのを確認してから行っただけ。
人間の限界を悠々と超えた神速の居合。

ツェツィーリヤ >  
既製品の弾丸は狙いた違わずまっすぐと飛び、しかして激しい火花を散らしながらはじけ飛ぶ。
抜刀の速度は無造作に構えるだけのものがある。勿論身体能力もそれ以上だろう。
……まぁ壁を三角飛びして駆け上がっていたのだから別に不思議ではないが。
少々評価を上方修正しながらそのまま連続で発砲しながら一歩だけ下がる。

「おー、サムライ。
 この島にはごろごろしてんなぁ本当。
 昔は男の方が多かったんだっけ?」

剣呑な武器を向けながらも口からこぼれるのは穏やかな言葉。
理想的なら軽い手傷でも負って逃げられて、
あとは早漏共に「逃げられましたー」とでも言えればいい。
必要以上(お金以上)に戦う、ましてや戦果を挙げる必要もない。
元よりこれは戦後処理(負け戦)なのだから。
一番不味いのは相手がまさかの弱さで”誤って捕まえてしまうこと”だがまぁそれはない。
だってこんなにも早いのだから。

「まぁこんな市販品見慣れてるだろ?
 勝負にならんよ。こんなもの。
 この島でこれは外程信頼できない」」

撃ったところで平気な連中がごろごろいるのだ。
”あちら”の野辺の獣程度の耐久と速度はあってもおかしくない。
必要ないならそもそも狩る意味もない。つまり適当に撃って時間稼ぎしながら証拠を残せばいい。
……が、ふと発砲を止める。

「……付き合う相手は多少は選ぶべきだよ?お嬢さん。
 相手が紳士(ジェントルメン)なら真摯に付き合うけれど、タフガイ気取りの田舎者の
 ”荒野の決闘”なんかつきあっていたら馬鹿しか見ない。
 まぁあたしが言っても説得力はないかもしれないけど」

正直本気でこの子大丈夫かと少し心配が勝ったから。

柊 真白 >  
「サムライじゃない」

あんな真っ当なものとは違う。
どちらかと言えば、ニンジャに近いだろうが、それは言わずに。
一発撃つたびに一歩。
次々と放たれる弾丸を次々に切り捨てながら距離を詰めて。

「自分より遅い武器じゃ、流石に」

言いつつも、実際銃弾より早く動けるわけではない。
最高速度はせいぜい八十キローーそれでも人とは比べ物にならないが――が良いところだ。
こちらの真価は速度よりも初速。
初速からトップスピードで動く自身を拳銃などで捉えようと言うのなら、風紀の「魔弾の射手」くらいは持って来いと言うのだ。

「ご忠告痛みいる」

とは言え流石にこちらも付き合う相手は選んでいるつもりだ。
話題にしているのは彼女の態度の話。
銃撃が止めば一気に懐までの距離を詰め、その拳銃の銃身を斬り飛ばそうと刀を走らせる。

ツェツィーリヤ >  
「……違いが判らん」

軽口をたたきながらもただ撃ち続ける。
間合いとタイミングの管理が状況では最優先だ。
勝ち戦よりこういった戦いの方が数倍難しい。
けれど、うんざりとした表情の端にわずかに笑みが浮かんでいる。

「無駄とわかっててもやらなきゃいけないのが”お仕事”でしょう?」

だからこそ弾を切られるとわかっていても撃つ。
……出来るからこそ、熟練しているからこそ無意識になぞってしまう、
”武器を揮う時の距離”を測りながら。
一歩ずつ近づく速度に合わせながら胸中でタイミングを計る。

「ここ」

そしてその瞬間、軽くステップを踏みながらそこに銃を”置き”ながら手を離す。
ステップ自体は人並み離れた速さでもない。あまりに早すぎる相手にとっては誤差のようなもの。
狙い通り既製品の銃は真っ二つになるだろう。
……刀を振るう真正面から僅かに体の外側にずらされた距離で。
そこは刃物の性質上、数ミリ直前よりはるかに切りにくく、そして腕に負担をかける場所。
同時に掌から零れる親指大ほどの小さな銀色の球が零れ落ち……

「避けろよ?」

刹那すさまじい閃光を放った。

柊 真白 >  
「む」

斬る直前、銃の位置がずらされた。
なるほど、こちらの速度にタイミングを合わせてくるあたり手練れには間違いないらしい。
しかしこちらもその程度で「ずれる」ほどの中途半端ではない。
腕で合わせるのではなく、身体を回してきっちり正面で捉え、両断。

「ち」

しかし同時に舌打ち。
どうやら誘われたらしい。
彼女の手から零れ落ちるなにか。
恐らくは音か光か、もしくは爆薬か。
拳銃を真っ二つにした直後、弾けるように後ろへ跳ぶ。
直後、閃光。
両目を塞ぐわけにもいかず、視線を外すこともできず。
どうにか右目は庇えたものの、左目――距離感を持っていかれた。

ツェツィーリヤ >  
「ま、合わせられるか」

恐るべき反応速度だと閃光の跡地で軽く両手を鳴らす。
零したのは所謂スタングレネードに分類されるもの。
起爆物をとある金属を極小で均一な粉末にしたもので覆い薄いフィルタをつけたそれは
空気中で強烈な反応を起こし閃光と轟音を巻きちらす。
いまだにアーミーショップで売られているようなマグネシウムタイプのものより効果が迅速で携帯しやすいのが利点だが……結構なお値段がするのが問題点の一つ。
まぁ勉強代として涙を呑もうと内心悲しんではいる……が
”野辺の獣すら超音速で襲ってくる場所”においてはおもちゃのような物だった。
いわゆるちょっとした手品のようなもの。とはいえ有効な相手はかなり多いのだが……

「……成程、暗殺者だ。
 最速で最短距離で、速攻で決める。
 教科書のような一撃。」

速いだけで目が追い付いていない能力者は意外と多い。
速すぎれば一々目で見なくとも片が付くことは多いからだ。
そう言った連中は手品で簡単に再起不能になるが……
こちらをねめつける視線の焦点はあっている。
引いたところを見ると追撃を警戒したのだろう。
……確かに致死の一撃を入れるには絶好のタイミングだったから。

「慎重派だね。
 悪くない。奥ゆかしい子は好きだよ。レディ。
 ふふ、比喩でなく貴方とダンスを踊るのは楽しそうだ。
 きっと素敵なステップを踏んでくれるだろうから。
 今度本当に一曲お相手してもらえると嬉しいけれど如何かな」

嗚呼、良かった。思っていたよりももっともっと素直で、純粋だ。
こんな貧乏くじ極まるお仕事の割には可愛らしい子に出会ったなぁと思う。
……もっとも認識阻害の装備のお陰で顔は拝めないのだけれど。

「嗚呼、貴方と踊るのは楽しいね。
 こうやってすこしずつ外堀を埋めていくのも楽しいけれど
 どうやらそろそろ魔法が解ける時間のようだ。
 ……貴方も引き留める相手をお断り(排除)してそろそろ帰らないといけないでしょう?」

くすくすと笑いながら一歩、歩を進める。
懐からもう一丁の銃を抜きながら。
 

柊 真白 >  
「なるほど」

経験と勘である程度の距離感は補えるが、流石に高速で飛来する銃弾を正面から切り捨てることは出来なさそうだ。
爆発物を警戒して引いたのは、少し悪手だったかもしれない。
その辺の読み合いを強制してくるのだから、やはり手練れ。

「この程度で暗殺者? 馬鹿を言っちゃいけない」

本気で殺そうとするなら姿すら見せない。
相対して警戒させてからの殺しと言うリスキーな手段は取らない。
姿も見せず、警戒もさせず、死んだことすら気付かせない。
暗殺者とはそう言うもの。

「言ったでしょう。遊んであげる、って」

だからこれは遊びだ。
抗争が落ち着くまでの暇つぶし。

「それと、残念ながら私は踊れない」

ダンスなんかしたことが無い。
直後、刀を投げる。
容赦なく躊躇なく、彼女の足を床に縫い付けるために。
同時に初速から最高速で地面を蹴り、階段に繋がる扉のある建物の壁を蹴りつつナイフを投擲。
狙いは肩と肘、それと拳銃を握る腕。
そのまま壁を蹴って更に彼女の背後を取ろうと動く。

ツェツィーリヤ >  
「……本当……貴方その……
 いえ、ごめんなさい。私が悪かったかも」

皮肉のつもりはなかったけれど……ここまで通じないとはと
笑うような、困惑するような何とも形容しがたい表情を浮かべる。
此処まで真面目で堅物な相手と話したのは割と珍しいかもしれない。
ある意味可愛らしともいえるが……日本語って本当難しい。

「伝わらないもの、か」

嗚呼、惜しいかな。
この子はあまり暗殺者には向いていないと思う。
如何にもとても大事な感覚が欠落している。
それはとても可愛らしい。そして……

「……本当に”お堅い”わね。貴方」

酷く煩わしい。
つま先に鋼鉄の入ったブーツで投げられた刀を蹴り上げ、
まるで狭い部屋を跳ね回る毬の様な動きで壁を蹴りながら投げられたナイフを右腕で払う。硬質の音を立てナイフはその黒い腕にわずかに刺さるがまるで無視。
そのまま右腕で銃口を背後に突き付ける。
それはまるで”そこにくるとわかっていた”ような精度とタイミングで相手の額へとまっすぐ、引き金もあと数ミリでも動けば弾丸が発射されるぎりぎりまで引かれている。

「お姫様はお迎え(着地狩り)されるから空中へは行くなって言われなかった?」

首だけで振り返り、流し目で眺めながらゆっくりと口を開く。

柊 真白 >  
きっちりついてくる銃口。
速度が見えている、もしくは未来予知のような能力か。

「なるほど、面白い」

相性が悪い。
自身の武器は速度だ。
だからこそ、その速度についてくる相手にはその強さが殺されてしまう。

「あまり舐めてくれるな」

だが。
だからと言って大人しくやられるほど物分かりが良いわけではない。
スカートの下から右手で取り出したナイフを、彼女の腕に刺さったナイフに向けて投擲。
同時に左手でワイヤーを彼女の首へ巻き付けるように振るう。
こちらを狙う拳銃は、発砲されるギリギリまで彼女の動きを注視しつつ、かと言ってそれだけに集中し過ぎるわけでも無く。
彼女が引き金を引くならば、その瞬間空中で思い切り身体を捻り、銃弾を避けようとするだろう。

ツェツィーリヤ >  
「(困ったなぁ……)」

別の意味で楽しくなってしまったけれど本分を忘れてしまっては意味がない。
本来の予定では適度に怪我でもしてしまおうと思っていたのだけれど
これがなかなか良いラインがない。
わざとらしくなく、かつできるだけ”凡庸”な振る舞いをしつつ、
程よく死なない程度に怪我をするというのはなかなか難しい。
……さて、この子にどうやって”逃げて”貰おうか。

「っと」

そんな事を考えているとワイヤーがとナイフが放たれる。
ナイフはともかく、ワイヤーに関してはあの速度を出せる相手だと流石に首がちぎれる可能性がある。
ので、あっさりと銃口を引きワイヤーを銃口に引っ掛ける。
さくっと投げられたナイフが先に刺さっているナイフに当たる感触は期待を込めて無視しつつ軽くけん制程度に返す足で足元に転がった長刀を踏み

「ほぃ」

軽く体をひねりながら回転し、踏みつけた刀で足元を払う。

柊 真白 >  
銃口はこちらの額から外された。
ならば普通に着地しつつ、ワイヤーを引いて銃を落とさせようとする。
足元を払う刀は軽く跳躍して回避。
そのまま空中でやはりスカートの下から取り出すのは、

「お返し」

フラッシュバン。
ピンを外しつつ自分の背中から空中へと放り投げた。
しかし、それはブラフ。
ガワだけの光らないものだ。

ツェツィーリヤ >  
引かれたワイヤーに銃はあっさりと手から離れる。
元よりこの銃は撃つ予定がない物なのだけれど奪われて仕舞えばそれも伝わらない。
内心嬉々として放しながらそのまま体を捻り回転を載せ後ろ回し蹴りの要領で振り上げるように空中の相手を蹴り上げる。
……重力加速度は誰に対しても一定で実に扱いやすい。

「ごめんね?」

さて、ここからどうしようと一瞬考えこむ。
冗談というかそのあたりの機微が伝わるなら
馬鹿みたいに派手な(実の無い)技でも応酬したあと引くのだけれど
その辺りはあまり期待できそうにない。伝わるならこうなっていないので。
まぁ現場の大半は予定通りにならないのがこの世の常。
そもそも狙撃手が対面で暗殺者相手に立ちまわっている時点でナンセンスだ。
……馬鹿がここに建て込もるなんて言うから。

「っ」

その最中、お返しに投げられたフラッシュバンに心が揺れた。
これ貰ったふりしたら仕方がないと周りに思ってもらえないだろうか。
……生憎目が”沢山”あるせいでほぼ無意味なのだが……雇い主にも狙撃手としてしか伝えていない。目が良いので効くんです!という主張はそこそこ信ぴょう性がある気がするが……

「(よし)」

蹴り上げた姿勢のまま、その勢いで後ろにステップする。
僅かに後ろに傾き、もろに光を浴びる角度。
投げ上げられた飛来物を正確に目でとらえ・・・・・・

「っ」

弾けるであろう閃光を防ぐように両眼を覆い、ふらふらと後ずさる。

柊 真白 >  
「っ」

中に浮いたところを蹴り上げられる。
腕をクロスさせて防ぐも、空中で踏ん張れず、しかも体重差は歴然。
大きく弾かれ、くるりと一回転して着地。
地面に転がる刀から同距離に、お互い離れた形になる。

「――これでおしまい」

そのまますたすたと刀のところまで歩き、拾い上げて。
元より彼女のおしばいに付き合うつもりもない。
彼女の仕事はこちらには関係ないし、こちらは時間が潰せればそれでよかったのだから。
抗争はもう落ち着き始めたのか、襲撃してきた方が撤退を始めていた。

「いい暇つぶしになった。またね」

使った武器――彼女の腕に刺さったもの以外――を拾い集め、スカートの下に仕舞い直して、ビルの屋上の端っこへ足を掛ける。
同じような仕事を続けているのであれば、また会うこともあるだろう。
そのまま隣のビル、更にその隣のビルへと跳び移ってその場を後に――

ご案内:「違反部活群 とある廃ビル屋上」から柊 真白さんが去りました。
ツェツィーリヤ >  
追撃のパターンと後ろの縁までの距離を計算し、
後ずさる距離を目測するも予期した閃光は起こらず

「(光らないのかぁぃ!)」

内心思わず突っ込んだ。
そこは光って欲しかった。何のためにフラッシュバンしてるんだと思わず内心突っ込んだ。
防ぎ損ねて屋上から落ちる計画がさっそく破綻したことに脳内で誰かが爆笑している。
……本当大体の事は思い通りにいかない。
さてここからどうしようかと思案を巡らすも……

「おや、振られちゃったか
 これは命拾いしたなぁ」

去っていく姿を眺めながら腕に刺さったナイフを引き抜きながら苦笑し
足元に転がった拳銃を拾い上げ弾丸を確認する。
……ルーンの刻まれたそれは光線銃もかくやといった速度で対象を撃ち抜く術式が刻まれている。
元々超長距離狙撃を得意としている身の上、よく使う弾丸なのだが……

「撃たなくてすんでよかったよ」

小声でつぶやくと懐に仕舞う。
どうやら襲撃は防がれたようだ。まぁ多少は請求できるだろうか。
……期待はしていないけれどまぁ口八丁で何とかしよう。

「じゃあね、”お姫様”」

屋上の扉を足でけり開け僅かに振り返ると
ナイフをくるりと回し、懐に仕舞う。

「”さぁ、お仕事のお話をしましょうか。ミスター”」

お姫様とのダンスは終わり、此処からは愚か者を絞りとるお話。

ご案内:「違反部活群 とある廃ビル屋上」からツェツィーリヤさんが去りました。