2020/10/07 のログ
ご案内:「違反組織『狸の臍繰り』――拠点跡」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 >
何時もに比べれば、随分と雑な"狩り"だったかもしれない。
燃え落ちる雑居ビル。あちらこちらが崩れ落ちた廃ビル。
瓦礫の山。黒焦げになったナニカ。
「……碌な戦力も持たぬのに、降伏せぬからだ。
拳銃と金属バット如きで、此の私をどうするつもりだったのかね?」
生き残っているのは、違反組織『狸の臍繰り』の首領唯一人。
この組織は元々、落第街で細々と盗品を売り捌いたり胡乱な魔術具を販売する程度のものであった。
しかし、昨今の『朧車』の騒動を聞きつけ、その存在を知る生徒の不安を煽り、情報をばら撒き――異能が進化する薬だの、魔獣を召喚する御札だの、イカサマ紛いの物を流し始めた。
異能の進化薬は、薬局のビタミン剤。
魔獣の召喚符は、下級グールを召喚出来るものの命令権を持たないという代物。
要するに、紛い物を売り捌いていた、ということ。
とはいえ、手入れや検挙程度で済む様な、脅威度の低い組織。
現に、この組織に戦闘を仕掛けた際には――ゴロツキに毛が生えた様な抵抗しか、してこなかったのだ。
その結果が、拠点が燃え落ち、構成員は全滅し。
煤だらけになった首領のみが、己を茫然と見上げる有様であるのだが。
■神代理央 >
では何故、此の組織が『検挙』ではなく『殲滅』になったのか。
一つは、上層部――己の直属の上司である神宮司の意向がある。
朧車討伐任務は順調であるとはいえ、それは落第街へ風紀委員会の力を誇示するには少々薄い。
『風紀委員会の武威を示せ』との指示は、風紀委員会過激派の総意であるとも言える。
そして、もう一つの理由は――
「………懺悔も情報提供もいらぬよ。貴様達は唯、私に踏み潰される為に、今迄勢力を拡大していたのだから。
ご苦労様。そして――さようなら」
首領の男を、複数の異形が取り囲む。
必死の命乞いが。情報を吐くとの血を吐く様な叫びが。
不協和音となって、周囲に響き渡り――
「……最後くらい、潔く死ね。五月蠅い」
振り上げられた異形の脚が、男へと降り注いだ。
重量物が大地に振り下ろされる音が、暫く響き渡るだろうか。
■神代理央 >
やがて、瓦礫が燃え盛る音だけが響く空間で、少年は小さく溜息を吐き出した。
鉄火の暴風を振るった拠点周囲の区域は、見るも無残な姿と成り果てている。
火焔に照らされる無数の異形の群れが、現世の物とは思えない影を落としているだろうか。
「……此方、神代。予定通り殲滅を完了した。
退屈な相手だったよ。朧車の方が、まだやりがいがある」
通信機のスイッチを入れて、不機嫌そうに言葉を紡ぐ。
「折角此処迄したのだ。情報の流布について失敗されては困る。
――……ああ、そうだ。風紀委員会は、例え怪異討伐に戦力を割いていようとも、落第街に未だ十分な戦力を投射できると。
そのついでに『ヘルデンヤークト』の名を挟み込めば良い。
主目的はあくまで、風紀委員会の武威を示す事故な」
何事かを答える通信機に言葉を続けると、それ以上の返事を待たずに通信を打ち切った。
不機嫌、というよりは憂さ晴らしに近い様な感情を纏った少年は、懐から取り出した煙草に火を付けて――甘ったるい紫煙を、周囲に撒き散らすだろうか。
ご案内:「違反組織『狸の臍繰り』――拠点跡」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
殲滅完了、の報告を受け真っ先に到着した風紀委員は、丁度近くを警邏していた…まぁ、彼もよく知る顔だろう少女だった
器用に瓦礫の上を跳び進みながら、少年の元へと辿り着く
「お疲れ様、理央くん。──…いつもにも増して、酷いね」
辺りの惨状を眺めながら、特にオブラートには包まぬまま、言葉を投げかける
風紀委員に挙げられた色々な報告内容は閲覧済み、
今の彼の佇まいや雰囲気が持つ意味をある程度は把握していた
「……大丈夫?」
そしてかけられる言葉は、色んな意味をはらんだものだっただろう
■神代理央 >
投げかけられた声は、己も良く知る先輩委員の声。
事後処理の到着にしては些か早いな、と思わなくもなかったが――彼女であれば、何となく理由は想像出来る。
付近の警備に当たっていたのだろう。距離の問題さえなければ、責任感の強い彼女が駆け付けるであろうことは容易に想像できる。
「今晩は、伊都波先輩。酷くなるように戦力値を調整しましたから、まあ多少は。
抵抗があればもう少し派手に出来ましたけどね。碌な抵抗も無ければ、此方が攻撃する機会そのものが減ってしまいますので」
速度も無ければ、自立行動も出来ない己の異形。
しかし、その投射火力だけは一体一体が並みの戦車を上回る。
総合力で劣っているので、数で押し切るしか無いのだが。
ともあれ、そんな異形達が列を成し、群れを成し、砲弾を叩きこんでいた違反部活の拠点は――彼女の言葉通り、見るも無残な姿に成り果てているだろう。
「――…任務の遂行という点においては、特に問題ありません。
ああ、心配なさらずとも周囲への避難勧告は完了していますよ。
何時ぞやの子供達の様な惨状は無いかと思われます」
彼女の発した言葉に、僅かな沈黙を保った後。
ニコリと笑みを浮かべて、言葉を返すだろうか。
■伊都波 凛霞 >
理央の言葉に、僅かに眉間に皺を寄せる
ここまでやる必要が"在った"とはっきり少年は口にした
これ迄も彼の容赦のなさは知れるところではあった、が
明らかに必要以上に、という今回の殲滅は──別の意図を感じたからだ
「…それじゃ、後処理は私と、動向している風紀委員で。
少し規模が大きいけど、周辺被害が少ないならどうにかなるし」
基本的にはスリーマンセルで警邏に当たる凛霞
他の二人は…まぁ、個人の機動力という点で大きく劣っているのだろう
それだけ此処へ、早足で駆けたということでもある
「君のことだからそっちの心配はそれほどしてないよ。
──随分と"乱れてるように"見えたから、そっちの心配」
これまでも派手なやり口で知られた生徒ではあった
でも風紀委員の使命を胸に、その佇まいは威風堂々、己の信を貫き通す精悍な少年、という印象だった
今は笑顔に変わった表情、けれどその直前の彼の様子を、見逃してはいない
■神代理央 >
「有難う御座います。事後処理や後始末は何時も他の方にお願いしている有様なので、情けない限りですよ」
穏やかに微笑む。しかしてその笑みは、貼り付けた様な――というより、必要な仮面を選択して取り出した様なモノ。
洞察力の鋭い彼女であれば容易に気付けるものであり、それを隠そうともしていない、作られた笑み。
「………乱れている、ですか。それは何というか…心外…とまでは言いませんが。
果たすべき義務は果たし、与えられた任務はこなしています。
それが"乱れている"…とは、私だって傷付きますよ?」
苦笑い――擬きの笑みを浮かべた後。
巻き上がる業火を背に、彼女に言葉を紡ぐ。
逆光の如く炎に照らされた己の顔は、今どんな表情なのか。
もう己自身にも良く分からない。
■伊都波 凛霞 >
「お礼はいいよ。お仕事だし。
元々こっちの裏方のほうが性に合ってるしね」
手早く端末で必要な人足等の連絡を飛ばして、彼へと向き直る
……繕った、仮面のような笑み
そんな顔をする少年は、以前…よりももっと前
そう、水無月沙羅と出会う前の彼と比べても…異質に感じた
「私の知ってる理央くんは義務や任務も当然として、
自分の信念に忠実な人だったからね。少し、今の理央くんに驚いてるくらい。
少なくとも、不機嫌そうに違反部活を叩き潰すような人じゃなかったから」
「ごめんね。傷つくようなこと言って。でも──」
あの温泉旅館で、僅かな時間だけど話した、あの時のこの少年の顔を知っているから余計に…
「なんだか良くない方向に向かおうとしてるように見える。……私の思い過ごしなら、いいんだけど」
まだ炎の収まる様子のない、煌々とした火を背負う少年の顔を、まっすぐに見つめる
■神代理央 >
「……不機嫌そうに、叩き潰す、ですか。
ああ、それは……まだまだ私も未熟ですね。自分の感情を、押し殺す事が出来ていないなんて」
彼女の言葉は、実に良く己の内面を表しているだろう。
それ故に浮かべた、苦虫を噛み潰したような表情は――偽りの無い、本心であったのかもしれない。
「しかし、良くない方向というのは考え過ぎですよ。先輩。
朧車の討伐は、各委員会と有志の手によって順調に進んでいます。
違反組織への対処がその間後手に回っていた感は否めませんが…その為に、新たな下部組織も設けました。
遠からず、落第街に風紀委員会の武威は轟くでしょう」
炎を背に、薄く嗤う。
作ろうとしていた理想の組織は、上司の手によって歪み、恋人と別離し。
未成熟な精神は、其処からの逃避対象として『与えられた命令』に忠実である事を選んだ。
其処にあるのは唯『風紀委員会の暴力装置』と化した少年。
「先輩にも、是非ご活躍頂きたいものです。
『黒い灰被り姫』の異名は、落第街で脅威の対象となり得るでしょうから」
再び浮かべた笑みは、純粋に愚直に、歪んでいるだろうか。