2020/10/26 のログ
■神代理央 >
さて、先日の話合いで大見得をきった手前、多少は働いておかねばならない。
違反組織への過剰な武力行使。話合いによる解決を放棄した、純粋な暴力による解決。
少しでも良識があれば、賛同など得られない。賛同を得る必要も無い。
此処で鉄火を振るうのは、己だけで良い。
「――避難勧告発令から30分経過。規定時間の経過を確認。予定通り任務を遂行する」
ボイスメモ兼音声報告書に独り言めいた言葉を呟いた後。
背後に控えた無数の異形達を一瞥し、遠くに見える違反組織の拠点へ視線を向ける。
今回は珍しく避難勧告に従う者が多く、組織の構成員の降伏もちらほらあったとの報告が入っている。
拠点に残留しているのは、徹底抗戦派と首領格。そして逃げ遅れた末端の構成員達。
落第街の住民については、避難が完了しているものとして判断する。避難が済んでいないとしても――それは、仕方のない事であるし。
■神代理央 >
さて、任務を開始する前に撮影用のドローンを飛ばしておく。
何機かは撃墜されるかもしれないが、別に構わない。
『違反組織へ断固とした対応を取った』という映像が残れば、それで良いのだから。
「……目標、前方の違反組織拠点及び周辺区域。弾種榴弾。
3斉射の後、掃討戦へ移行」
別に言葉にする必要は無いが、音声記録も残る事だしそれっぽい事を言っておく。
異形達は召喚された時点で弾種を決定しているし、思念で操作出来る異形にわざわざ言葉で指示を出す必要も無い。
単なる雰囲気づくりではあるが――まあ、そういうのも大事だろう。
懐から取り出した煙草に火を付け、紫煙を燻らせて。
500m程離れた先に見える違反組織の拠点である廃ビルを眺めていた。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」にF.U.R.Yさんが現れました。
■F.U.R.Y >
「おィ」
紫煙の先から、一人の男…?がやってくる。
疑問符を浮かべたのは、その男の左腕が異形のものだったからだ。
血まみれの体にはいくつもの傷。
手首からは血が流れ、足には銃か何かで撃たれたような傷が見受けられる。
マトモな状態には見られないが、しかし何事もないかのように歩いてくる。
「テメェは間違いなく風紀委員だな。
答える必要ねェぜ。
テメェの顔だきゃ知ってらァ」
ククク、と傷など構い無しに笑う男の顔は、獣のように凶悪。
手負いの獣……と言ってもいいのだろう。
明らかに普通じゃないその状態がより一層、この男の異質さを際立たせている。
■神代理央 >
投げかけられた憤怒の気配を濃厚に漂わせた声に、チラリと視線を向ける。
その視線の動きに合わせる様に、拠点に向けられていた異形達の砲身が一斉に男に向けられる。
「如何にも、私は風紀委員で相違ない。……というよりも、私の事を知っている素振りだな。
思い当たる節は…まあ、沢山あるから。今更深くは聞かぬがね」
明確な敵意。異形の左腕。
はて、その姿には見覚えがある様な。厳密には、そう露わにした報告書の類を、見た事が有る様な――
「……まあ、良いか。名乗りたければ名乗ると良い。
名乗りたくなければそれでも構わぬ。
風紀に敵対する者の名など、一々覚えるに値せぬ」
パチリ、と指を鳴らせば現れるのは大楯の異形が二体。
親衛隊の様に、少年の前に展開して"本陣"を固める。
「先手はくれてやる。好きにしたまえよ」
■F.U.R.Y >
「あァ知ってるさ。
テメェみてェなうるせェ風紀のクソは余計にな」
拳を構え、姿勢を低くし。
それは武術と言うには余りにも荒々しく、四つ足の獣のように右手を地につけた構え。
「ハッ!!名乗る?
名乗る気なんざねェと言いてえが……」
そう言いながら、足に力を入れる。
踏み込みの動作。
この先で”突っ込んでくる”というのが分かる、分かりやすく、単純な構え。
「F.U.R.Y(ヒューリィ)……
風紀のクソ共に土産に持って帰りやがれ。
――――生きてやがればな」
言葉と共に、地面が砕け。
真っ直ぐ、正面に立つ”邪魔なヤツ”を殴りに、獣が駆ける―――――
「ブッ潰すッ!!!!」
そして放たれる、異形の左腕の一振り。
躊躇いなく、小手先もなく、ただ単純に、体重を乗せた一撃。
されど人間のそれではない、人ならざる膂力。
戦いのゴングのようにそれが振りぬかれる―――――
■神代理央 >
「ヒューリィ…ああ、成程。どうりで心当たりがあるわけだ。
貴様がヒューリィか。であれば、私も用事があったところだ」
報告会で上がっていた『最近現れた風紀委員に敵対する男』
報告書で見ていたから心当たりがあったのか、と勝手に納得していたり。
「おや、満身創痍といった身形で随分と大口を叩く事だ。
だが、そういった闘争心は嫌いでは無い。精々足掻け、溝鼠」
そして――駆け出した獣に、鉄火の轟音が反響する。
周囲に展開していた異形達の砲身が吐き出した砲弾は、貫通力よりも破壊力を重視した榴弾。
着弾時の爆風、衝撃。そして何より、発射時の砲声そのものが、音響兵器の如く男に襲い掛かる。
突っ込んで来る"拳"に、多脚の異形が防御の構えをとる事はない。
榴弾の弾幕を突破すれば。或いは突破するまでも無く。
振るわれた拳は、砲撃を敢行した異形へ先ず一発、命中するだろう。
■F.U.R.Y >
「一々シャクに障る野郎が―――――ッ!!!!」
降り注ぐ弾丸の一つを、異形の拳が捉える。
鋼同士がぶつかり合う、爆発音のような轟音。
拳が砲弾を砕き、瓦礫を舞わせながら……男はさらに前へと駆ける。
左腕で受け、砕き、駆ける。
左右で砲弾が炸裂し、異形の力で強化されていようと生身の姿をしている部分の肉を裂いてゆく。
しかしそれでも、止まりはしない。
それは荒れ狂う暴風のように、真っ直ぐに暴れながら突き進むだろう。
血をまき散らしながら接近し……砲弾のように前へと跳び。
異形の一体の上面にしがみ付き……鋼の塊すら容易く貫く左拳で、その異形を”殴り潰そう”とする。
「じゃ、ま、だァアアアアアアアアアア!!!!!!!」
■神代理央 >
突進、猛進。
猪突猛進とはこの事か、と感心した様な素振りを見せながら、男への砲撃制度を高めていく。
砲弾を文字通り"叩き落し"ながら迫る男が、焼け落ちんばかりのに砲撃を続ける異形の一体に飛び乗った。
振り落とそうと身を捩る間も無く――鉄火の暴風を撒き散らしていた異形は、その巨体が叩き潰され無残な姿を晒すだろう。
「やるではないか、溝鼠。……しかし、手負いの儘私に挑もうとは、些か蛮勇が過ぎるのではないかね?」
残った多脚の異形達は、叩き潰された異形諸共吹き飛ばそうと砲身を振り翳す。
放たれた砲弾は、味方の残骸という目標を得てその精度を上げるだろうか。
とはいえ、異形を一撃で叩き潰すその剛力は脅威である。
「……ふむ。なるべく近付かれたくはないな」
思念を送り、異形達の陣形を変える。
歪な金属音と共に砲撃を続けながら駆動した異形達は、弾幕の密度を高める様に密集し、ひと塊となって砲撃を続ける。
その一方で、少年の親衛隊たる大楯の異形達は、万が一の事態に備えて盾を構え、その健脚を直ぐに稼働させられる様に、膝を曲げる。
「……しかし、避けきれている訳では無いのだから随分と痛みもあろうに、良くやるものだ」
小さく肩を竦めて、大楯の異形の陰から嗤う。
それは、戦場を俯瞰するかの様な傲慢さ。
■F.U.R.Y >
埒が明かねぇ―――――
異形を砕き、潰し。
時にはその歯で噛みつきながら暴れるそれは、その変わらぬ状況に痛みよりも先に”怒り”を覚えてゆく。
だが……
砲弾を弾き続けたせいで踏ん張る足に力が入り、先に受けた銃創から血が噴き出す。
体制が崩れ、押され始める。
流石に負傷したままの体では、苦戦を強いられる状況。
徐々に体の傷は増えてゆく。
その中で見える、高みの見物をするガキ。
デケェガラクタの後ろでふんぞり返り、オレの事を見下すように嘲笑ってやがるガキ。
「――――――――――――――」
■F.U.R.Y >
”それ”を、見た時。
腹の底で何かが煮えたぎるのを感じた。
睨みつける瞳。
遠方からも明確に感じる、相手を噛み殺さんという眼。
――――空気が、変わる。
遠方からすらも、危険を感じさせる程に。
「―――――――――…る」
黒い左腕の装甲の割れ目から、光が漏れだし……
ぐらつく体を無理矢理踏ん張りながら、右腕で……己の左腕を”殴った”
『何、嗤ってやがる―――――――ッ!!!』
■F.U.R.Y >
瞬間、殴られた左腕の前腕が押し込められ。
腕が力で膨張したかのように、腕の装甲が”展開”される。
そこから漏れだす、熱と、光。
まるで黒き火山から吹き出す、マグマのような光―――――
■神代理央 >
"敵"の異形が、俄かに変形する。
恐らく、何か一手打ってこようとしている。
それを見届けてやる義理は――此方には、ない。
「……榴弾を集中させろ!左腕は狙うな、本体にダメージを集中させろ!」
主の叫びに応じて、僅かに砲身の位置を変える異形達。
そして、命令の儘に放たれた砲弾は、変形する左腕を避ける様に。
男の身体を狙って、無数の砲弾が、放たれる――!
■F.U.R.Y >
”変貌”した拳。
その力を溜めるのように、腕を引き絞り――――――――
迫る無数の砲撃へと、振りかぶられる。
「Lars of Duo(ラース・オブ・ドゥオ)ッ!!!!!」
それは、先ほどまでと同じ……単純なフルスイング。
だが”込められた怒りが違う”
溢れる怒りが、力が、まるで違う。
力が腕を通し、その先――――――――
集まったガラクタ共。
そしてその先にいる”怒りの対象”へと放たれる。
これを拳圧と呼んでいいのだろうか。
もっと”別の何か”とすら思えてしまう力の塊。
撒きあがる砂塵と共に、崩れた瓦礫が舞い上がる程に。
放たれた砲弾が、拳に触れずとも鉄屑に成り下がる程に。
純粋な”力の渦”が、鋼の異形達を纏めて――――――――襲い掛かる。
■神代理央 >
――その衝撃波は、正しく"怒り"の象徴だった。
放たれた砲弾は、衝撃波で吹き飛ばされ。
密集していた異形達はその陣形が仇となり――高密度の圧力によって文字通り圧壊した。
軋む様な金属音。圧縮され、暴発する砲弾。吹き飛ばされ、押し潰された異形達は凄まじい勢いで周囲の建物に激突し、爆炎と共に消し飛んだ。
一瞬で崩壊した己の布陣。
正確には、衝撃波から己を守った大楯の異形はまだ残ってはいるが――彼に接近戦を挑む愚は、したくはない。
確かに、戦闘前からダメージを負っている様子ではあった。
砲撃を弾いている間、破片や爆風によるダメージもあった。
しかし、感情とは数値化出来ないエネルギーの最たるもの。
窮鼠猫を噛むという言葉もある。
深追いはするべきではないだろう。
何より――『風紀委員の敵』は必要なのだ。直ぐに狩ってしまうのは、勿体無い。
であれば、迅速な撤退が必要になる。この戦いで得た情報を共有し、精査し――次に、もっと楽に戦う為に。
「………けほ、けほ。全く、乱暴な一撃だ。文明社会に相応しくない。溝鼠の足掻きにしては、荒っぽい。
そうやって力任せに我が身を顧みず戦い続けるのは、悪手ではないかね?」
湧き上がる粉塵に軽く顔を顰めて咳き込みながら、小言めいた言葉を男に投げかける。
しかし、そんな少年の姿を隠す様に、鋼鉄のカーテンの如く、男と少年の間に大楯の異形が立ち塞がるだろう。
「興覚め、という事も無いが。此れ以上の争いは無益だろう。
貴様とて、万全の状況で私の首を取りたいだろう?」
質問の様に見えて、全く彼の返答に期待している様子は無い。
言いたい事だけ言ってしまうと、大楯の後ろで彼に背を向ける様子が、伝わるだろうか。
「ではな、溝鼠。名乗る迄も無いだろうが…私の名は神代理央。
風紀委員会特務広報部の、神代理央だ。
私の首が欲しければ、先ずはその傷を癒す事と……貴様が吹き飛ばしたモノの、後始末に励む事だ」
彼が吹き飛ばし、爆散させた異形達はそこかしこで火焔の熱を撒き散らし周囲に焔を拡げていた。
落第街が燃え落ちようと此方の知った事では無いし、彼がどう思うかは分からない。
それでも、風紀委員会に敵対するくらいなのだから、落第街への愛着くらいはそこそこあるだろう。
「風紀委員会に喧嘩を売るその度胸は褒めてやろう。
精々、その左腕が擦り切れるまで頑張り給え」
最後に、朗らかな声色で言葉を投げかければ。
カツリ、コツリと革靴の音を響かせながら――大楯の異形と噴煙に紛れて、此の場を立ち去るのだろう。
■F.U.R.Y >
その嵐の収束と共に、あふれ出す腕の光もだんだんと消えてゆき…
腕からはまるで熱暴走をおこしたかのように煙が立ち込める。
ガラクタ共の大半が潰され、落第街の家屋の一部も崩落を始めながら。
そこに立つ一人の男。
「雑魚共ォ…蹴散らしたぜェ……!!
次はテメェの―――――ッ!!」
そう言いながら迫ろうとして、片足から嫌な音が聞こえ体制が崩れる。
先の戦いで撃たれた二発の弾丸の傷が開き、動きを阻害しているのに気がつく。
知った事か――――――
それでも進み、暴れんとする男の前から立ち去ろうとする敵。
「ァ――――!?」
ふざけるな。
まだ始めたばかりだろうが。
何処にいきやがる。
「ォイ待てやァ!!!!!終わってねェぞ勝負は!!!!!
逃げんじゃねェ!!!!!! ブッ潰してやる……オイゴラァ!!!!!!!」
叫びながら追う。邪魔なガラクタ共を薙ぎ払いながら。
しかし、追いつくことはない。
追いつける事が出来ないほど、足の傷は開き、力を喪っている。
それでも叫び、追う。
次第に敵の姿は見えなくなり……ただそこには、”怒り”だけが残される。
獣の咆哮と、行き場のない怒りだけが、そこには残った……
ご案内:「違反部活群/違反組織群」からF.U.R.Yさんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 >
昨日の戦闘の結果、討伐し損ねた違反組織。
しかし彼等は、千頭の一部始終を目撃しており『此の侭抵抗しても勝ち目は無い』と判断した者達により内部崩壊。
結果として、包囲を継続していた風紀委員に皆投降するという何とも歯切れの悪い結果となってしまった。
「…まあ、無駄な戦闘を行わずに済んだと喜ぶべきなのだろうが…」
現在、その後始末に追われる同僚達を遠巻きに眺めながら、その護衛と周囲への威嚇を兼ねて昨日包囲していた拠点から少し離れた場所で欠伸を噛み殺していた。
"戦わずして違反組織を投降せしめた"というのは、特務広報部のあるべき姿やも知れないが、上層部はそれでは不満な御様子。
一応、昨夜の戦闘データは映像付きで提出しているので、お咎めがある訳では無いのだが。
「『風紀委員会の武力をよりはっきりと可視化すべし』か。
気楽に言ってくれるものだが…」
小さな溜息と共に、買い込んでいた缶コーヒーを一口。
缶に描かれたコミカルな魔女のイラストを見て、ハロウィンに浮かれる世間を思い浮かべれば小さく苦笑い。
■神代理央 >
今のところ、摘発と保護は順調に進んでいる様だ。
非戦闘員も含めた風紀委員が活動している事もあって、違反組織の襲撃も考慮した上での護衛任務であったが、余り心配いらなかったかもしれない。
投降した構成員や、避難し損ねていた二級学生達を保護する同僚達を遠くから眺めつつ、甘ったるい缶コーヒーを一口。
「…明日は、違うエリアを回ってみなければな。余り甘い顔をしていても、落第街の風紀が緩むだけであるし」
本来であれば、投降なぞ許さぬ過激な対処が求められるのが己の仕事。
しかし、余り我を張っていても組織で上手く回る訳がない。というより、己が所属する派閥は風紀委員会の中でも主流派と言える程数が居る訳でも無いのだし。
懐から取り出した煙草に火を付けながら、そんな取り留めの無い事をぼんやりと考えていたり。