2020/11/11 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」にシャンティさんが現れました。
シャンティ > こつり こつり こつり
女は小さな音を響かせて歩みを進める。

『躯の群れがあった。それぞれの手に、思い思いの武器を持ち彼らは眠る。体には刃による傷が残り、恨みを込めた目を晒す。』

女は謳うように語る。

「あらぁ……せっか、く……育って……い、たの……に……ざぁん、ねん……だ、わぁ……ふふ」

女は気怠げに、面白げに口にする。


「風紀、委員……に、も……勘、の……いい……子、いる……の、ねぇ……ベージュ、の……髪、の……男の、子……ふ、ぅん……?」


小さく首を傾げた。

シャンティ > 「あぁ……あなた、たち、も……さぞ、や……無念、だった……で、しょう、ね……ふふ。怒り、憎しみ、悲しみ……みぃん、な……美味し、かった……わ、ぁ。でき、れば……もぉっと、育て、たかった……の、に」

くすくす、と女は笑う。死体の群れの中で笑う。
まるで、その場のぬしであるかのように。

くるり くるり
女は踊るように回り、くすくすと笑い続けた。


「そう……そう、ねぇ……こう、くる、の……な、ら……そう……やっぱ、り……こちら、の……テコ入れ、も……必要、よ……ね、ぇ?」

やがて、ぴたり、と止まり。
思案げな言葉が濡れたその唇から漏れた。


「不死鳥、の……よう、に……と、は……いか、ない……わ、ねぇ……やっ、ぱり……ええ、ええ……それ、は……最初、から……わかって、いた、こと……」


溜息をつくように、女はいう。
それに答えるものはいない。

シャンティ > こつり こつり こつり
女は躯の群れを見聞するように歩き回る。

『その男は、右から袈裟懸けに切り伏せられていた。傷は重く、深く、体がちぎれんばかりになっていた。その横には腕が落ちた男。深々と刺し貫かれた傷が残り、苦悶の表情がその顔に残る。』

謳うように、女は凄惨な状況を語りだす。
まるで、物語を読むように。まるで現実ではないように。
しかし、それは紛れもなく目の前に転がる現実であった。


『その躯は、端正な顔に一際深い怒りを刻んでいた。その体に刻まれた切傷も特に深かった。』


こつり、と足が止まる。


「ふふ……あなた。あなた、ねぇ……リーダー、さん……か、しらぁ……? ふふ。あなた……借りる、わ……よぉ」


楽しそうに笑う女の手には、もとから持っていた本といつの間にか増えたもう一冊の本。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
シャンティ > 「人々の欲望を抱える街の深奥。死と欲望と悪徳の渦巻くセカイ。挑むは圧制を敷くもの。挑むは正義を騙るもの。復讐するは我にあり。青年は決意を込めて立ち上がる」

朗々と謳い上げる。
その声とともに……女の側に落ちた影が立ち上がる。

そこには、死体と瓜二つの青年の姿。


「……あ、らぁ……?」


なにかの気配がする。
見られただろうか。それは、少しだけ困る。
まだ、早い。

でも、イレギュラーも物語のうち、だ。

紫陽花 剱菊 >  
暗雲立ち込める朧月夜。
夜空は覆われて、何時になく宵闇は深い。
漆に彩られた夜の幽世、此処は其の深淵。
根の国より深し、落第街。
今宵、帳に包まれた嘆きも憤りも、誰にも届かぬ。
そんな生者の知とは言えぬ場に、野分の如く、一陣の風が吹きすさぶ。
亡骸を僅かに揺らし、女の布を、髪を揺らす。
後は静まりし、死者の国。

「─────"何をした"。」

……但し、自ら深淵を歩む者はもう一人。
何時から其処にいたのか。縊れた布を僅かに靡かせ、影は女の背後に立ち出る。
水底の様に黒い双眸は、女の背中を静かに見据える。
其の瞳は、確かに"見ていた"。故に、問いかける。
公安の刃、紫陽花 剱菊此処に見参。

「……骸ばかりと聞いていたが、よもや、黄泉還りとは言うまい。其方、何者だ?」

シャンティ > 『紺色のコートに黒髪一本結び。紫陽花を彩った竹刀入れを携えた男は音もなく現れた。闇から滲み出るように。それは卓越した技に依る人智を超えた業である。「――」その男は女に静かに、しかし力強く問いかける。』

女は戸惑うこともなく謳うように読み上げる。


「あ、らぁ……なに、を……です、か……? ふふ……別にぃ……ただ、すこぉし……弔い、を……して、いるだ、け……よぉ……?」

くすくす、と笑って女は答える。

「それ、とぉ……何者、ですって、ぇ? こん、な……ところ、で……いき、なり……他人、に……聞く、なんて――野暮、ねぇ?」

くすくす、くすくす、と。
女は変わらず笑い続ける。

紫陽花 剱菊 >  
「…………」

即ち其れは、和歌の如し流麗さ。
女が読み上げた澄んだ声音が、耳朶に染みる。
だからこそ、剱菊の眉間は皺を寄せた。

「弔いとは、死者を写し代を創る事が、か?」

女の傍に居る影を一瞥した。
男は乱世にて、戦場で生涯を捧げた。
闇夜に紛れるなど、茶飯事だ。
故に、獣とは言わずとも、其の目は良く闇を映す。
然るに、骸の顔も、其の影も見えていた。
居た堪れぬ気持ちが、胸中を渦巻く。
表情に出す事は無くも、無意識に奥歯を噛み締めた。
さぞ、無念であろう、と。

「……女性(にょしょう)に無礼とは承知している。
 然れど、公安として……否、災禍を作り出した男の"友"として、聞かねばならん。」

是は、公安委員会による諜報活動では在る。
同時に、是は"友との約束"を果たすための宿業で在る。
災禍を引き起こした、鉄火の支配者。刃を交えし、友として。
此の陰謀を同胞から聞きして今、此の骸の山へと馳せ参じた。

「……然るに、此の無礼はお詫びしよう。私の名は、紫陽花 剱菊(あじばな こんぎく)
 覚えずとも良い。だが、其方が此処に足を運んだ理由は聞かせて頂きたい。」

どうか、と付け加え一礼。
会釈。ともすれば、礼儀は弁える。
得体の知れぬ女性と言えど、無礼を詫びぬは、道理に反する。

シャンティ > 『女の言葉に男は眉を潜める。「――」男は静かに顔に出すこともなく、ただ奥歯を噛みしめる。「――」男は礼を尽くし、ただ只管に真摯に言葉を紡いだ。』

変わらず、女は謳うように語る。
楽しそうに朗々と、笑うように。


「えぇ、えぇ……もち、ろん……弔い、よぉ……? 彼の、無念、を……思え、ば……ふふ。」

くすくす、と
くすくす、と。
女は変わらず笑う。佇む影は、ただ黙って立ちつくしている。


「あ、らぁ……公安、さん……だった、の、ねぇ……なる、ほど――此処に、きた、のは……そう、いう……こと、ねぇ…… で、もぉ……ふふ。まさ、か。こぉ、んな……こと、して、る……風紀、委員……と、なかよ、し……こよ、し……な、のぉ? それ、は……どう、なの…かし、らぁ? こう、じゃ……ない、のかし、ら……?」

揶揄するように、両手の人差し指をパチン、パチンと打ち合わせてみせる。
くすくす笑いがかわらず響く。

「私、は……ふふ。弔い、に……そし、て……ふふ。 あとは――この、『即興劇』を……見届、け……る、ため、に……ね?」

先程までの笑いとはまた違う。場にそぐわない、いたずらっぽい笑いを顔に浮かべる。

紫陽花 剱菊 >  
"視られている"。否、"読まれている"。
さながら、其れは己と言う一冊の本。
よくぞ、空にしたためる己が風情。
不快とは微塵も思わない。在るがまま、其の在り方も"良し"とはする。
唯、一つ気になるのが……。

「……心眼か。其の宵闇を視る目は、如何にして風情を読み取ると?」

夜闇を見下す、戦人の目。
戦人において、他者の観察は癖付ける程に重要である。
然れど、確証はない。憶測では在るも、女の目はとても、己を視えているようには見えない。
何かしらの異能、魔術で在るのか、摩訶不思議、妖の様な女性だと胸中独り言ちた。

「…………」

弔い。確かに彼女は、そう言い切った。
言之葉の裏迄探れるほど、器用な人間には非ず。
水底の暗い黒は、女を見定めるような静かな眼差し。
瞬きをする事なく、一歩、女へと踏み込んだ。

「友で在る。故に、契りを果たし、宿業を共に分かち、故に────見定め、"成すべきを成す"迄の事。」

凶行には返す言葉も無い。
其れが咎と言えば、甘んじて受け入れよう。
然れど、顔を伏せる事は無く、臆する事も無く、凛とした居住まいは崩れぬ。

「出遅れたのは間違いでは無い。私は、あやつを信じていた。
 未完の器。……道は違えど、似たものを感じていた。変われると信じていたが……。」

此の在り様、申し開きをするつもりは無い。
剱菊は、言之葉を紡ぐのは未熟。
成れば、こそ。

「……如何にして、死者を写し弔いとする?『即興劇』と申したが……。
 此度の事情、"此の場"において是を知る者を唯、見過ごす訳にもいかぬ。」

歓楽街における、風紀上層部襲撃事件。
其れに伴い、あたかも"見せつけ"の様に行われた落第街への凶行。
其処には稚拙で在ろうと確実に陰謀闇渦巻、是根の国、落第街の在り様を"劇"としたためた女性に双眸を細める。

「─────……其方、何を知っている?」

成ればこそ、真っ直ぐに問いかける。
如何様に受け流す事さえ出来る愚直さ。
是しか知らぬ。だが、間違いなく彼女は黒と言わずとも、"一枚噛んでいる"。
剱菊は、そう踏んだ。

シャンティ > 『男の目は女を見据える。其の胸の内まで見透かそうとするかのように。「――」 」男は足捌きも見事に踏み込んでくる。「――」』

謳う、謳う。
まるで見えているかのように、盲目の女は謳う。

「……ふふ。それ、は……女の、ひ、み、つ……よぉ? 公安、さん。まあ……探る、のが……オシゴト、ですも、の……ねぇ。でも――」

一体それは何を指すのか。女はくすくすと、笑ってはぐらかす。

かの少年は、確かに一度焚き付けた。けれど、自分が其のような手管を下すまでもなく醜く滑稽に悲しく悲哀に満ちて転げ落ちていったようだ。けれど、”其の程度”ではまだ、足りない。もっと、鉄火を、戦火を、阿鼻を、叫喚を。悲劇を、喜劇を、修羅場を、愁嘆場を、広げてもらわなければ。


「いい、のぉ……? 彼、に……つい、て……なく、て……ふふ。 また、なに、か――する、かも……しれ、ない……わ、よぉ? それ、でも……私、に……聞きた、いの…か、しらぁ……ひょっと、して……答え、なけ、れば……その、長く、て……硬、そう…な、モノ……で、いじ、め……られて、しまう、のかし、ら……?」


くすくす、と笑う。笑う。何も恐れていないような口で。

「それ、なら……すこぉ、し……考え、ない、と……だ、けれ、どぉ……あぁ、あぁ……風紀も、公安も……こわい、わねぇ」

シャンティ > ――この先、如何なることが起きるのか
それはまた、次の幕で

今宵は此処で「幕間」と相成ります。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」からシャンティさんが去りました。