2020/12/29 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
「一足遅かったー…、か」
比較的損傷の少ないビル、その地下で溜息をつく。風紀委員腕章の少女
打ちっぱなしの壁がむき出しの地下フロアには人の気配はなく
埃の被ったシーツのかけられた木箱が数点、無造作に置かれていた
夜逃げは少なくとも数日前
風紀委員の動きに感づいたか、それとも知覚系の異能の持ち主がいたか…
どちらにせよ情報提供からの下調べ、今回のケースでは凛霞のサイコメトリーの使用
それらを含めて十分に裏打ちを得てからの突入だった
指先を埃の積もったシートへ滑らせる、薄い層とはいえ、くっきりと後が残った
「これだと少なくとも夜逃げは一週間くらい前…?」
証拠を確実なものにするためとはいえ、時間をかけすぎたかなあ、と頬を掻く
■伊都波 凛霞 >
此処を根城にしていた違反部活は武器の密造と流通に関わっていた
落第街の犯罪の温床の一つである…といっても過言ではなさそうな組織だった
それだけに彼らもまた慎重で、すぐに地下へと行方を晦ませ、これまでも摘発を逃れている
未来予知の異能者なんかを抱えられていたら厄介だなあ、なんて思いながら、
同時に突入した仲間と手分けして箱の中身などの検分に入る
出てくるのは主に銃器
オートマチックの拳銃など、素人であっても殺傷能力を簡単に発揮できるものが多い
…異能を持たなかったり、あっても制御に難があったり、
そういった人間が落第街で生き抜くためには必要な"力"なのだろう
一つを手にとり、その動作を確かめる
「…劣悪なポリマー製のフレーム。
パーツも3Dプリンター製だろうけど…9ミリ弾頭を撃つには十分足りるかな」
技術進歩の結果とはいえ、随分と簡単に密造できるようになったんだなと改めて感心する
■伊都波 凛霞 >
常世の島は異能者の集う島でもある
この地において異能を持たない、異能の使用に難がある者は否応なく劣等感に悩まされることになる
武器…銃という力はシンプルだ
銃を避けられる、銃の通用しない『一般人』はまずいない
そして老若男女問わず、それを手にした時の攻撃力は"平等"である
それは力なき者の劣等感を埋めて余りある、頼れる存在になり得る
密造・流通がなくならないわけだ
「…ここに残ってるのは運び出せなかった一部だけなんだろうなあ」
箱の中へカシャンと銃を戻して、再び溜息を吐いた
■伊都波 凛霞 >
しかし逃げ出すにしても用意がいい
やや時間をとったとはいえ、凛霞自身のもつサイコメトリーの能力はかなりの高精度である
一週間近くも前から逃げ出す準備を整えたとなれば、いくらなんでも早すぎるような…
「…考えたくないけど、未来予知関連の異能者がいるか、もしくは…」
木箱の上に腰を降ろして、しばしの思案
「…スパイ?」
いやいや、身内を疑っても仕方がない
考えを振り払うように、小さく左右に首を振る
■伊都波 凛霞 >
仮に未来予知の異能者が違反部活にいたとして、それも未来全てを見通せるわけではないはず
限られた中で未来を予測し逃げ回る、というのは相応にコスト…手間がかかる
風紀委員の内部に仮にスパイがいたとしても全ての情報が筒抜けというわけではないので、やはり同じこと
それはこうやって、全ての武器を運び出せていないことからも明らかだ
と、なればいずれは追いつかれることになる
そんなことは逃げる側だってわかっているはずなのだけれど
「内通者がいるにせよどちらにせよ、こっちの動きがある程度見えてるなら──」
はっ、と
なにかに気づくようにして立ち上がった
■伊都波 凛霞 >
そもそも地下が蛻の殻だった時点で数カ所の残留思念を読み取っておくべきだった
こちらの動きが予測されていたことばかりに考えが向かい、そちらに注意を払えなかったことに後悔する
如何な手段であれ、風紀委員の動きが予測できたのなら
いたちごっこはいずれジリ貧になることも承知の上だと言うのなら…
自分が逃亡する側ならば、逃げ場のないこの地下に間違いなく『罠』を残して逃げる──
「まさか…!」
咄嗟に地下のドアまで走り、手を触れて意識を集中させる
ズキンッ──
「ッ…う」
ここのところ異能を使う頻度が増え、最近は時に頭痛を伴い脳内で再生される記憶の断片が乱れることもあった
ノイズの走る映像の中で見えたのは…違反部活と言うには大規模な、随分を数の多い…人、人。人
そして確かに伝わる、悪意の残滓
乱れた映像の中では細かい部分までは見てとれなかったが、
密閉された地下空間で自分が罠として使うなら間違いなく
『爆薬』の類──
■伊都波 凛霞 >
『【ザ…ザザ…】の…【ザッ…】ガサ入れ【ザー…ッ】6日後【ザッ、ザザザ】』
増え続けるノイズの中で聞こえた声は、確かに今日、風紀委員の手入れが入ることを知っていた…その事実を示していた
納得がいった
わざわざ木箱がいくつか残っていたのは…
「っ」
手前にあった木箱を蹴倒す
大きな音を立てて床に散らばる無数の拳銃と、それに覆い隠されていた…
プラスチック爆弾がその姿を現した
「やっぱり……」
即座に拾い上げ、配線を切断する
危ないところだった。爆弾は…作動はしていない
地下に入る時にカメラの類は確認できなかった
風紀委員がビルに侵入したらタイミングを見て起爆する手筈だったのだろう
危機一髪だった
「…って、他にないよね…?」
他の木箱も調べるべく、なぎ倒してゆく
■伊都波 凛霞 >
「…地下の残留物に爆弾を確認。全部動作は停止済み。上も気をつけて」
一緒に踏み込んだ、上の階層の仲間に連絡を取り
はぁー…っと気が抜けたように壁に背を預け、座り込む
凛霞の周囲には爆弾3つ
余裕で地下が吹き飛びビルの上側が落下してくるレベルの炸薬量だ
随分と容赦ないことをする…と思ったけど自分達もそれなりにやってることなのでお互い様だろうか
「景気いい置き土産してくれちゃって…」
不意打ちで踏み込んだつもりでいたから、こういう可能性を見落とす
「…平和な学園生活に慣れすぎて、鈍ったかな……」
■伊都波 凛霞 >
怪異と相対する自分と、学生である自分を大まかに分け始めたのが、一年生の頃だった
昼間は学園で真面目に学生を
それ以外の時間は、伊都波の後継者として…
何事も完璧にこなす、なんて思われるようになったのもそれから
元々そういう気質だったのかもしれないが、自分は完璧に学生を演じることができていた
それが混じりはじめたのが、風紀委員・刑事部に入って以降
学生でありつつも、伊都波凛霞としての能力を発揮する
鈍った…というよりは…『普通の学生』であろうとする自分が混ざった結果…
弱くなった、気がする
■伊都波 凛霞 >
「っ、痛……」
ぼんやりとそんなことを考えていたら、再び頭痛に襲われる
流石に異能を酷使しすぎている自覚はある、が…
まだ、風紀委員での捜索が打ち切られた彼のことを諦めきれていない
あの子がいてくれたからこそ、自分は幼馴染と再会ができたし、今がある
まだ、何も恩を返していない
そんな風に考えて、手の空いた時には常世渋谷に赴いて、異能を使っての人探しが日課になっていた
「…ま、頭が痛いだけなら死にはしないので…っと」
独り言をつぶやいて、立ち上がる
■伊都波 凛霞 >
上の階からの連絡が入る
どうやら爆薬が仕掛けられていたのは地下だけだったようで
要するに地下に雪崩込んだ風紀委員が残された銃器を手調べしているうちに
全員まとめて…という手筈だったのだろう
上を警戒して手分けしていなかったら、危なかったか
幸い遠隔透視の異能者などは向こうにいなかったのだと思われる
押収した銃器は合計で100丁を超える
気休めだが、この数の分だけ落第街で犯罪に巻き込まれる一般学生が減った、と思うようにしておこう
そして…
「いたた…異能との付き合い方、ちゃんと考えなきゃ…」
頭を抑え、ややフラつきながら…ちょっと今後に不安を覚えつつ
その日は少しだけ早く、退勤させてもらうことにしたのだとかどうとか…
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 >
年の瀬も迫った冬の夜。
年末の大掃除、と言えば聞こえは良いが、やっている事は何時もと変わりない。
強いて言えば、今日の違反部活の摘発は砲火を放つ事無く終える事が出来た、という程度だろうか。
「……まあ"こういう組織"であれば、大それた戦力を持ち合わせている訳も無かろうが…」
今回己が摘発に訪れたのは、強引な手法で人を集め、違法な売春活動を行う組織。まあ、言ってみれば何処にでもあるグレーよりも黒よりの娼館。
多脚の異形を数体展開して組織の拠点前に並べれば、いともあっさり降伏してしまった。
既に内部の捜査も終了し、風紀委員によって女性や組織の構成員は連行・保護された後。
後に残った己は、万が一の残敵への対処と、周囲の警戒任務の為に残っていたが――
「……流石に、摘発を終えた此処に、訪れる者が居るとは思えないのだが…」
と、煙草を蒸かしながら溜息を一つ。
物言わぬ異形達が、無音で佇んで主の周囲を囲んでいた。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に比良坂 冥さんが現れました。
■比良坂 冥 >
静まり返った違反部活の拠点でゆっくりとした足取りで歩み寄る
くすんだ白い髪の少女
「……あれ」
鈍い、というよりもなにか、タイミングが少しズレているような喋りだしの遅い声が発せられる
「……何か、あった?」
ぼそり、と
ふとすれば聞き取ることも難しいような音量
現れた少女は周りを伺うように、昏い視線を巡らせている
その風貌は、風紀委員のデータの中にも存在する要監視対象…
首につけられた異能抑制用のチョーカーがその証左だろう
■神代理央 >
静寂と、己の煙草が燃える音だけが響く拠点前。
ちりちりと燃える煙草を咥え直そうとした瞬間、耳を打つ小さな声。
何と言ったのかまで聞き取れない様な、小さな、小さな声。
唯、誰かが何かを言った、という事実だけを認識する。
「……はて。此処は、散歩をするには向かない場所だと思うがね?」
声のした方に視線を向ければ、其処に佇むのは仄暗い視線を宿した少女。
その少女の正体には、直ぐに思い当たる。何せ、風紀委員として監視対象のデータは基本的に頭に入れる様に心掛けているのだから。
「………ほう?随分な場所で出くわしたものだな、比良坂。
此処にはもう、お前の望むものは何も無いと思うがね?」
周囲の異形が、がきゃり、と歪な金属音と共に砲身を彼女に向ける。
その様を眺め、煙草を蒸かしながら――僅かに首を傾げて、彼女に視線と言葉を向けるだろうか。
■比良坂 冥 >
「……はぁ」
自分の名前を知っているし、その風貌や、状況から少年が風紀委員だということがわかる
砲身を向けられても動じる様子はなく、じっとりとした視線を理央へと向けていた
「……もしかして、皆捕まえちゃった…?
……便利な人たちだったのに、余計なことばっかり、するよね」
都合の良い違反部活だった、と少女は言う
構成員というわけではないのだろうが、個人的に利用していたのだろう
そして、その違反部活が摘発されたということは…
「……晩御飯」
ぼそり
「……責任とってくれる?」
その場にゆらりと立ち尽くしたまま、向けられた砲身など目に入らない様子で少年…理央へと不躾な要求をぶつけていた