2021/01/13 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群 『蜘蛛』」に羅刹さんが現れました。
羅刹 > 「……蟻んこみてぇに潰しやがって。
作るのにいくらかかったと思ってやがる」

廃墟跡に、煙草を吸いながら立つ金髪の男。
あまりにも堂々と、先日『検挙』された建物の前に立ち、小声で悪態をつく。

勿論無防備というわけではないし、彼のことを知る者もそうはいないだろう。
辺りは『梟』と『蛇』、そして…未だ見せていない『特製地雷』で固めているが。
それでも、身一つでこの場に立つのは肌がぞわつく。

先日潰されたのは、麻薬を取り仕切る『蜘蛛』の拠点の1つだ。
情報をいつの間にか集められているのか、あるいは目についたものを壊しているだけか。
前者なら苛烈さが足りない。
そのため、羅刹としては後者の可能性を強く考えている。

ただ、それにしても…目立つ奴以外にも厄介な相手が多いものだ。
蜥蜴、ひいては下部組織にも戦闘用の異能を持つものは少ない。
戦力の増強は随時行い、各所に『武器庫』を造れるまでになったが…現状ではゲリラ戦、あるいは不意を突くことによる拉致狙いが有力か。
風紀委員も脅威ではあるが、それに近しい組織の動きも活発なことも掴んではいる。

(一筋縄じゃあいかねぇ。それはわかってる。
だが、だからこそ…やる)

そう、相手が弱ければ…ここまで考えることはしない。
無限ともいえる兵器、武器が手に入る現状では大抵の組織は相手にならない。
だが、強ければ。
それだけ、じっくりと…損害を与え、苦しませ、嬲れる。
一撃で決めても、蜥蜴の頭の心は…全く晴れない。


―――苦痛で顔を歪ませ、悶え、殺してくれと泣き叫ばせてから、殺してやる―――


できるかどうかではない。
彼が死ぬまで、蜥蜴は動き続ける
その彼は…少ないとはいえ、犠牲になった蜘蛛のメンバーの事を思い。
蛍火のようなタバコの火を輝かせている。

羅刹 > 「………」

確かに、被害は出始めている。
だが、まだマシだ。
梟の努力と羅刹の能力でダメージコントロールはできている。

しかし、薬の正体を嗅ぎつけられるのも時間の問題だろう。
そうなれば…生産場所も辿られる可能性が高まる。
場合によっては幹部を引き上げ、蜘蛛を解体するか…あるいは蜘蛛の一部を相手方に潜り込ませるのも選択肢。

「…ちぃ、とリスクはあるがな」

すぅ、と煙草を吸い込んでから、煙を吐く。
今日は『蜂』も落ち着いている。
しばらくは、ここで物思いに耽っていても…『仕事』に支障は無い。

羅刹 > 「そろそろ、行くか」

追悼は済んだ。
復讐の牙を研ぐため、また動き出そう――

ご案内:「違反部活群/違反組織群 『蜘蛛』」から羅刹さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
  復讐の牙が、深遠の中で研ぎ澄まされている頃。

部下達の活躍もあって、最近は己が戦場に出ずとも『成果』を上げている事が多い。
過激派の先輩方も喜んでいるという。神宮司だけは、微妙な表情を浮かべていたのだと人づてに聞いたが。

さて、となれば己の仕事は部下達のサポート。
事務処理。装備の調達。人員の確保。成果報酬の設定等々。
所謂『裏方』に回る事が多くなるのだろう。
個人的には、それが理想の形である。個人の武勇に頼る警察機構など、不健全極まりない。

――かといって、現場の仕事が嫌いな訳でも無い。
元々、己の異能は戦闘向きなのだ。活かす場があるなら、それは重畳というもの。

「……さて。不用意に武器をばら撒かれては、あいつらの行動を阻害させる可能性があるからな。
不用意に違法薬物を扱う組織と取引をしたのが仇となったな。
恨むなら、自らの浅はかさを恨みたまえ」

今回の『標的』は、兵器の密輸と販売を取り仕切る組織。
製造ではなく、島外から兵器を仕入れて違反組織に販売している武器商人の様な組織であった。
本来であれば、風紀委員会の捜査網にも中々かからない相手ではあるのだが――

「…刑事課も、良い仕事をするものだ」

落第街に流通する違法薬物の捜査中に、刑事課が摘発した組織との取引記録からその存在が露見した。
兵器を取り扱うという事で、重火器による激しい抵抗が目された為、突入には慎重な意見が相次いだのだが。

少年は『私一人で十分だ』と突入を申し出た。
今は、組織の拠点から200m程離れた所で、のんびりと佇んでいる最中。
既に、敵に発見されている事も承知の上。

神代理央 >  
違反部活の拠点を前に無防備に佇む風紀委員。
しかし、情報をも売り物とする違反組織の幹部達は、直ぐにその正体に思い至る事に成る。
その結果、急速に固められる防衛体制。拠点である落第街にしては小綺麗なビルの内部には警報が鳴り響き、そこかしこの廃屋に潜んでいた構成員達がばらばらと各々武器を手に飛び出して来る。

「……ふむ、反応が早いな。それなりに出来る者が幹部に――」

言葉を最後迄言い切る前に、銃声が響き渡る。
渇いた破裂音が連続し、硝煙が灯りの少ない落第街を覆い尽くしていく。
しかし、その着弾音は――『金属に跳ね返る』様な音を立て続けている。

「…狼狽えることなく攻撃の指示を出せるのも良い。兵の質は兎も角、迅速な指示を出せる指揮官というのは得難い人材であるからな」

少年を凶弾の雨から守り抜いた巨大な大楯。
異形の中でも防御力と機動性に優れた『大楯の異形』は、主の前に宛ら壁の如く立ちはだかり、銃弾を全て弾き返した。

「だが、投射する火力が足りぬな。私の事を知っていたのだとしたら、ライフル程度でどうこう出来ぬと分かっていただろうに。
制圧射撃の手本というものを、見せてやらねばなるまいな?」

ぱちり、と指を鳴らせば湧き出る様に現れる無数の異形達。
その背に針鼠の様な砲身を生やした、金属の蜘蛛の様な多脚の異形。
それらが、軋む様な金属音と共に、その背の砲身を構成員や拠点へ向ける。
それを防ごうと、銃撃が再開されるが――

「……薙ぎ払え」

鋼鉄の異形達が唯の銃弾で止まる訳も無く。
轟音と共に放たれた砲弾の雨は、文字通り鉄火の暴風となって『敵』に降り注いだ。
距離が比較的近かった事もあり、数秒と経たずして大気を揺るがす様な着弾音が周囲に響き渡るのだろう。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」に羅刹さんが現れました。
羅刹 > 違反部活の反撃が始まる、少し前。

(全く勤勉な事だ。一応、もっと離れておけよ。
前の当たりで、大体の殲滅範囲はわかっちゃいるが…あの異形だ。
長距離砲撃、索敵ができないとも限らねえ)

(…了解、ボス)

遠方から、長大な望遠鏡を利用することによってその様子を観測する梟。
梟の一人からの報告を受けた羅刹は、あきれ顔で呟く。

全く、昨日ウチの手足の一部を捥いだ癖に、今度はまた別の場所か、と。
蜥蜴には…あまり大きな武器の取引は最低限しか必要なくなった。
外部協力者の大道具のおかげである。
それ故に、今鉄火の暴風が降り注ごうとしているのは、蜥蜴の下部組織ではない。

ただ、求められていたために『Spider』を婉曲に流していただけだ。
要するに、客である。
この落第街に数いる客の1つ。蜥蜴には守る義務も義理もないが…

(『こっち』の狙いが伝わったのか知らんが。単独で動いてくれるのは『ありがたい』)

前回、蛇を利用して…鉄火本人ではなくその部下を狙った。
こちらの意図…人的資源を狙うぞ、という思惑が伝わったのか、梟から報告がある限りでは鉄火の支配者は単独だ。
もちろん、部下を潜ませている可能性はあるが…それはまだ、情報が足りない。
どのような場面でどのような戦略を取ってくるのか。
それを見極める必要がある。

(……礫(ツブテ)、例のあれを試すぞ。…『地雷』はまだ使うには、はええ。
まず、お前の能力を活かす)

(なー、ボス―。そのコードネームだせーよー。いや、鉄火にゃムカついてるからやるけどさぁ。
もっとこう、『メテオ』とか、どうっすか)

(同じ三文字だろ。さっさとしろ)

(ちぇ。へーい…合流しまーす)

組織の中で珍しく、羅刹に対して気安く話してくる若者。
最初は能力目当てであったが、慣れてくるとなかなかどうして、組織内の雰囲気を和らげる雰囲気を持っている。
発火能力者の焔が寡黙な分…組織内で良い緩衝材となっている若者だ。

長身のその男が、遠距離から観察していた梟と合流し。
1つ、2つ。
深い緑色の球体を手に取り。
その球体に付けられている機械で、何かの操作をしてから…次々に宙に浮かせていく。

「こっちは30秒、あっちは後1分っと。おっと、位置もバラさねーとな」

彼の能力は手にもてる範囲の物体に動きのベクトルを加える能力である。
ただし、どういった強さでどう動かすか、は無制限。
つまり…一度手に持てば、何かに当たるまで動きを加えることが可能。

これがどういうことかと言えば。
発射地点をぼかしつつ、遠距離攻撃をすることができるということ。
発射位置を決めなければいけないため、準備に時間はかかるものの。
時間をかけていいなら、時間差攻撃と位置欺瞞を行える、非常に有効な攻撃手段だ。

(前ん時も俺が出たかったなー)

(お前が居なきゃ別の拠点がやられてた。ただ、あの時仕掛けなきゃ人員削りもできなかった。それだけだ)

(合理的結構~、ボスのそういうとこ好きよ)

羅刹の能力で会話しながらも、男の掌ぎりぎり…硬球テニスボール2個分ほどの大きさを持った緑色の物体は次々と遠距離から鉄火の支配者を取り囲んでいく。
そして…鉄火の嵐が、『客』の建物を吹き飛ばすその瞬間。

「ゴー!!」

ベクトルを向けられたその緑色の球体が次々に、まるで散発的攻撃のようにタイミングを散らして襲い掛かる。
その数、十。
それは、奇しくも鉄火の支配者が呟いた、火力である。

極限まで小型化されながら圧縮された爆薬と細かい破片が無数に仕込まれ。
破裂すれば、亜音速に近い速度で破片がばらまかれる…かつての時代の手榴弾、と呼ぶにはあまりに強化されたもの。
それが十、鉄火の支配者の直上付近をドーム状に取り囲むように、爆ぜる。

盾の異形が居るため、そのままでも幾分かは防がれるだろう。
鉄火の支配者が反応できれば、完全に防がれる可能性も高い。


そんな、散発的。しかし、殺意に溢れた攻撃は…鉄火にとっても、身に覚えのあるものか。

神代理央 >  
此方の砲撃が、敵の拠点を吹き飛ばした瞬間。
まるで連鎖反応を起こすかの様に――直近で、爆音が響いた。
案の定、最初に反応を見せたのは己よりも異形の方が早い。
昆虫の様な複眼で上空の"脅威"を確認すると同時に、主をその盾で覆い隠すかの様に身構えた。

次の瞬間。爆音と同時に、降り注ぐ破片が大楯の異形を雨簾の様に打ち付ける。
金属と破片がぶつかり合う不快な音が、砲声を掻き消す様に周囲に鳴り響くのだろう。
数秒の後、大楯の異形が崩れ落ちる音が、轟音の中から漏れ聞こえるだろうか。

逆に言えば、それ以外の反応は無かった。
大楯の異形が動いた以外の行動を少年は示さない。
周囲に展開する異形も、変わらず砲撃を続けている。

――そう。少年を襲撃した者ならば。その長ならば容易に気付く反応。綿密な計画と、高い指揮能力。状況判断能力を持つ襲撃犯のリーダーであれば、一瞬で気付くであろう違和感。
"砲撃が止んでいない"


「……Einsatz!」


刹那。文字通り異形が"生えた"。
大地から湧き出る様に。宛ら、最初から其処に居たのだと言わんばかりに。
金属が軋む音が、不格好なオーケストラの様に鳴り響く。

「……タイミングも、威力も申し分ない。優秀な指揮官に率いられた獣の群れ。私の部下に欲しいくらいだ。
通常の風紀委員であれば、戦闘続行が困難な負傷に至ったやも知れんな。
だがしかし。しかし。私がどれだけの敵と戦ったと思っているのかね。私がどれだけ、多くの能力者達と骨肉を削り争ったと思うのかね」

立ち込める粉塵が晴れていく。
其処に佇むのは、肉眼で視認出来る程の魔力の障壁を纏った少年の姿。
『肉体強化』の魔術を防御へ全て割り振り、割り切ったその防御力は――落第街や裏常世渋谷の怪異の攻撃ですら、防ぎぎってきた。
聞こえていようといまいと。語り掛ける様に、或いは謳う様に。
『敵』へと告げる、傲慢な言葉。

「そして、何故私が単独で行動しているのか。
人員が不足している訳でもない。単独で無ければならない理由も無い。
私は、私一人で火力を賄える。対組織戦において、私の異能は私個人で完結する。唯、それだけの理由だよ」

数体の異形は、気付けば20を超えている。
背に生やす砲身は、文字通り無数。

「好機だと思ったかね。今がチャンスだと思ったかね。
情報を得る機会だと、思ったかね?
ならば、情報はくれてやろう。私が投射する火力。精々観測してみるといい」

聞こえていなければ、単なる独り言だな、なんて苦笑いを浮かべた後。
ぱちり、と指を軽く鳴らした。


そして、砲撃が再開される。
一見無造作に見えて、その着弾地点は拠点周囲の中でも比較的高層の建造物へと集中しているのだろう。
此方を視認する必要がある、と仮定するならば多少は高い所にいるのだろうと。また、蜘蛛の巣を張る様に展開しているのなら。
何処に着弾しようと、多少は被害が出るだろうという希望的観測。

精密に狙う必要は無い。狙った地点の周囲を焼き払える火力であれば良い。
かくして。少年を狙った火力の数十倍とも表現出来る様な鉄火の暴風が、周囲に降り注ぐ事になる――

羅刹 > (ボス。これはまずい。私が生きている間に出来るだけ、伝えます。
あの砲台は、やはり焔との戦闘で見た通り、主の危機を察知する。そして、本人は―――)

(ボス!あれぜってーこっち向くって!!あいつたけぇーとこに砲台向けてやがる!
蟻を回収用に寄越してくれ!!『握って』逃げるからよ!
おい、諦めんなボケ鳥!反対に移動するぞ!砲撃に合わせろ!)

(鉄火自身も…人並外れて、硬い。いくらかは直撃を受けたはずです。
が、ダメージは見えなかった。恐らく魔法でしょう。私にも漏れ出る魔力が視認できました)




『盃』を通して聞こえる、二人の声。
ああ、やはり防ぐか。
この程度では足りないか。
不意を突き、火力を備えても尚…二人の報告からは歓喜が聞こえない。
『礫』が操れる最大限の大きさ。それを利用した爆撃だったが…

――全く、サービス精神旺盛だな、支配者。

射程距離、攻撃範囲、全てが規格外。
射手にありがちな…本体が脆い、あるいは戦闘能力がない、という弱点すらもカバーしている。
正に支配者を名乗るにふさわしい能力。
それでこそ、だ。


(優秀な人材をネギトロにされてたまるか。
蟻はルート22の南付近に集める。なんとかそこまで行けるか?)

かなり遠い逃げ道だ。
しかし、この状況なら礫の能力が活きる。
それを信じての、言葉。


(りょー、かい!ま、鉄火とは今度また対決してやるさあ!)

返ってくる言葉は何とも明るい、未来への執着。

礫は…余りの手榴弾5個。それを、効かないとわかっていながら…
今度は時間が無いため、操作してすぐに居場所から僅かにカーブする程度で放つ。
どうせ目くらましにもなりはしないが、やらないよりはマシだ。

直後、狙い済ました鉄火の支配者の砲撃が着弾。
様子を見ていた少し高いビルの上部が『粉々』になる。

「どりゃああああああああああああああああああああ」

礫と梟はそれに合わせて空中に飛び出し。
スカイダイビング真っ最中に瓦礫を掴む。

直後…彼の能力によって、彼の身体に掴まった梟と共に…鉄火からは逆方向に『吹っ飛ぶ』
瓦礫に強烈な力を加え、爆風から逃れていく算段。
肩が外れそうになるが、死ぬよりはマシだ。

そして、地面が最大限近づいて来れば…その瓦礫に爪を強く打ち付けて能力を解除。
爪が剥がれたが、それも気にしない。
慣性だけが残り、瓦礫や建物に強く体を打ち付けたものの。
砲撃よりもなお遠く逃れた二人は、何とか生き残る。






(ち。何人か、だが…繋がらねーな…。…『デコイ』をいくつか向かわせろ。
絶対に二人に眼を向けさせるなよ)

そう告げる梟は、薄く笑う。
すぐに、鉄火の支配者の元に…また散発的な攻撃が始まるだろう。
ただ、今度は比較的近距離から。
軍用アサルトライフルを主に持ち、ナイフで切りかかっても来る『人』である。
ただそれは結局、多少の銃撃の後…鉄火に焼かれ、死んでいく。

…後に残るのは…違反部活が仕入れていた現品の…煤塗れの『Spider』がいくつかと。
形は軍用だが、型番やメーカーが書いておらず、出どころが全く不明の武器たち。
後は、ニンゲンの肉片のみだろう。

神代理央 >  
潜伏場所を燃やし、逃げ道を砕き、組織的な抵抗を吹き飛ばす。
その為の砲撃、威力射撃。砲兵の仕事とはこうあるべき、という手本を見せつけたつもり――で、あったのだが。

「………これは…逃がしたか?いや…ああ、逃がしたな。
運の良い……いや、違うか。逃走経路が、予想より十全に用意されている。恐らく、実行犯の士気も高い。
此方の反撃に対する反応と指示も、恐らく迅速に下されている…か」

此方に、先程と同じ様な攻撃。
完全に狙い切れている訳では無い。いや、寧ろわざとなのだろう。
爆発に反応した数体の異形の砲撃が、其方に向いてしまったのだから。時間稼ぎの為の攻撃。
爆発そのものは、肉体強化の魔術で容易に防げるものではあったのだが、少なくとも砲撃の制度は緩む。

――時間を稼ぐ必要があるという事は、逃走の手筈を整えている可能性が高い。それはつまり、己の砲撃で実行犯を仕留め損ねた、ということ。
此の砲撃の中でも心を折らずに脱出を図る実行犯。
そして、逃走ルートを確保し、直ぐに指示を出せる能力を持った敵のリーダー。

「…優秀な敵というものは、無能な味方よりも信用出来るというがはてさて。少なくとも、此方の意図を読むという点においては、分かり合える点が多々有る様な気がするな」

「であれば。此方も相応の礼儀と、相応の武力を振るわねばなるまいな。
………先ずは、此の邪魔な"障害物"共を処理してからになりそうだが」

対峙するに相応しい敵を得た。
それは、少年によって万の喝采よりも歓喜に値する事。
だから『デコイ』にも礼儀を尽くす。
決して、片手間に処理などしない。
これは『敵』の優秀な駒を逃がす為の一手。ならば、それに全力を尽くしてやるのも礼儀。

「どうせ、碌な情報も持ってはおらぬのだろう?
降伏するなら受け入れてやるが……まあ、そのつもりもなかろうな」


かくして。
『デコイ』達を待ち受けていたのは、或る意味では救いだったのかもしれない。
拷問される事も無く。甚振られる事も無く。
人間に向けるには、余りに巨大過ぎる火力によって、痛みを感じる間もなく肉片へと変えられたのだから。

アサルトライフルも、ナイフも。
それが決して己に届かぬと理解しながら、全力の火力で薙ぎ払った。
そうして少年が消費した『時間』によって、襲撃者達は無事に撤退を果たすのだろう。
その判断と決断を下した、聡明なリーダーの指示によって。

「……次に期待するとしよう。新たな闘争に。芽吹く火種に。
私の踏み台となるのか。それとも、私が汚泥の大地に叩き伏せられるのか。
愉しみだよ、溝鼠共。暗がりから、私の首を取る機会を精々伺い続ける事だな」

数分の後。
全てが終わった燃え盛る瓦礫と廃墟の中で少年は笑った。
そして、手早く事後処理を依頼する連絡だけ入れると――鼻歌交じりに、その場を後にするのだろう。

証拠も痕跡も残さない襲撃者達。
だが、己が健在である限りきっと。再び相まみえる事になるのだろうから。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から羅刹さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から神代理央さんが去りました。