2021/02/14 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
「……貴様達は運が良い。いや、本当さ。そんな下らない事で嘘をつくはずがないだろう。
私は今日は割と寛容かつ機嫌が良い。だから、別に甚振りもしないし嬲り殺しもしない。
何なら、逃走を試みるだけなら大目に見るとも。逃がすとは言わぬが」

『表』がバレンタインデーで一喜一憂している頃。
此方は落第街の片隅で、散々に逃げ回っていた違反組織の車両を異形で踏み潰している真っ最中であった。
フロントを多脚の異形に押し潰され、無数の砲身を向けられて。
辛うじて無傷の儘の車内には、絶望的な表情を浮かべた違反組織の幹部達が勢ぞろい。

「……部下の成長を喜ばない上司はいないだろう?実に喜ばしい事だ。隊員達の士気も上がるというもの。
そういう話を小耳に挟んだのだから、機嫌が良くなるのも分かるだろう?」

粉々に砕け落ちたフロントガラスの向こう側。
拉げた車内を見下ろす様に、異形の上に佇む少年。
幹部達は少年の機嫌を損ねぬ様に、必死に頷くばかり。

「……まあ、私にもあるとは思わなかったんだけどな。
律義と言うか何と言うか…貴様達もそういう良い部下を育て給えよ。来世でな」

よいしょ、と異形から飛び降りる。
砲身が軋み、車内に向けられる。
男達の絶叫が一瞬響いた後――鈍い砲声と、爆発音が響き渡った。

神代理央 >  
「…全く、追いかけっこは苦手なんだがな」

轟々と燃え盛る自動車の残骸を眺めながら、懐を弄る。
何時もの様に、煙草を咥えようとして――手にぶつかったのは、出掛け間際にデスクから取ったもの。
綺麗にラッピングされた、甘い香りの漂う小箱。

「……………んー…うん…」

何となく、此処で封を切るのは勿体無い気がして、懐にしまい込んだ。
改めて弄ったポケットから取り出した煙草に火を付ける。

「……逃げなければ、今日くらいは生かしてやっても良かったのにな」

甘ったるい紫煙を吐き出しながら。
物言わぬ車の残骸と躯に視線を向けて、小さく笑みを浮かべる。

神代理央 >  
しかし、捕虜を取ってからその情報を精査しつつ、違反部活を襲撃してはいるのだが、今一つ『当たり』に辿り着いた気配はない。
厳密には、拠点を潰しただけであったり、今回の様に幹部クラスのみであったりと、完全に叩き潰した違反部活の数は襲撃の数と比例しない。
とはいえ、得ている情報の分は処理している筈なのだが――

「…偽情報、というよりも。切り捨てて良い連中から漏らしているのだろうな」

確かに、捕虜の情報通りに違反部活の拠点は存在する。
しかし、其処を虱潰しに当たっていても敵の本丸に辿り着けない。
隊員達の損耗も気になるところではある。
時間は此方の味方、と昨夜雪景に豪語してはいるが――

「……結局は、個人の力に頼らざるを得なくなってしまう、か」

部下達の練度が完全ならまだしも。
未だ精鋭部隊とは言い難い者達では、下手に戦闘に巻き込まれると被害が嵩む。
であれば、己を含めた戦闘向けの能力を持つ者達で個別に対応するしかないのだろう。

「まあ、慣れた仕事ではあるが…余り出張って、皆の仕事を奪うのもどうかと思うんだがな…」

元々は、単独で違反部活を潰して回っていたのだ。
一人で敵と戦うなど造作もない事ではあるのだが、余り自分が前線に出過ぎては部下の戦功を奪う事になりはしないかと思案顔。

「……クリスマスとか、バレンタインとか。そういうイベントを普通に楽しめる様に、表に慣れて欲しいものだけど」

最近は、鈴音の指導の甲斐もあってか隊員達はそれなりにチームワークや協調性は身に着けている模様。
其の侭、表の暮らしにも慣れてくれないかな、と。紫煙と共に吐き出す思案の溜息。

神代理央 >  
まあ、落第街の住民とて無限にいるわけではない。
まして、全ての住民が違反部活の関係者、という訳でも無いのだ。
時間は彼等の味方かも知れないが、此方の敵でも無い。
彼等の『駒』は、何れ尽きる。

「…人員は兎も角として。予算、兵站、組織の巨大さ。
これ等で勝る委員会は、連中と持久戦になったところで問題がある訳でも無し」

「……そう考えれば、我ながらこういう時は便利な異能だと思う事にするか。何せ、弾薬の補給がいらないというのは実に楽で良い」

小さく背伸びをしながら、半分程灰になった煙草を燻らせる。
増援――というよりも、後片付けの後詰が来るまでの暫しの一服。

「……もう少し、敵の動向と組織の規模を知りたいところではあるが…。
………あの捕虜、そろそろ使うか。此処迄大人しくしていたのも、或る程度覚悟は出来ているからなのだろうし…」

ふーむむ、と此の場所に似付かわしくない暢気な悩む声。

「押収した薬品関係のリストから使えるモノと…あと何が必要かな。
……チョコレートでも、持って行ってやるべきかな?」

少しだけ愉快そうな声色で。
少年のぼんやりとした独り言は、闇夜に溶けていく。

神代理央 >  
ぼんやり物思いに耽っていると、遠くから聞こえるサイレンの音。
どうやら、後詰がやって来たらしい。
とはいえ、此処迄無事に車両をぶつけずに辿り着けるかどうか。

「……まあ、所々拡げておいたから、大丈夫…大丈夫かな…?」

その夜。
特務広報部の装甲車両の修理費の見積もり申請書をせっせと書く隊員達の姿があったとかなかったとか。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から神代理央さんが去りました。