2021/11/05 のログ
クロ > 「……そうだな。お終いだよ。
どうにも出来ないと知っているから。
どうにもならないと知ったから。
人は、願わずにはいられない」
ドームが、崩れていく。『失われた者の願い』では、維持など出来ない。
直上の物など。止めようがない。

崩れた紋様は、人型へと戻っていく。

「…そうだなぁ。もう伝えたくても伝えられねぇんだよなぁ…。」
願った少女はもうこの世にはいない。自らを省みず、自分に託して。

「小石ひとつ、か。」
悟った。自分ではもう止められない。止めようもない。
願いの力が弱ければ、人一人殺すことすら叶わない。

それでも。やらねばならない。自分は『願われるもの』だから。

小石を、拾い上げる。
それを、安定しない紋様で、投げつけた。運が悪くなければ…避けずとも当たらないだろう。

神代理央 >  
投げつけられた小石を避ける事は無い。
ただ一歩、敵対行動に反応した異形が、ズシンと音を立てて一歩動いた。それだけ。
小石は、少年にすら届かず。カツン、と音を立てて異形へと当たって――落ちた。

「どうにも出来ない。どうにもならない。だから願う。
それは構わないがな。実現出来るかどうか、はさておいて。
その願いが叶わぬ儘、より強大な力に捻じ伏せられるという現実を見るよりは。
叶わぬ儘、夢だけを抱いていた方が現実的な救済だとも、思うがね」

訥々と紡がれる言葉。
"敵対行動"は行われた。たかが小石一つ。されど小石一つ。
風紀委員に対して、抵抗の意志を示した。

「ヒトは、願いを叶える為に常に進歩と進化を続けてきた。
私の異形は、私の異能はその象徴。ヒトが作った『破壊』を願うモノそのもの。
それがヒトの力。ヒトの可能性。プロメテウスの火。
曖昧な願い一つなど、積み上げられた人理の焔に焼き尽くされてしまうのは――歴史の常だろう?」

砲身が軋み、怪異に向けられた砲身が狙いを定めて。
…轟音と共に、火を噴いた。

クロ > 「そうだな」
ばつり、と。砲によって上半身が吹き飛ばされる。
吹き飛んだ紋様は、霧散して消えていく。

「自分の願いは自分で叶える。それが許されるならそれが一番だろうよ」
上半身が消え失せても、声は消えない。下半身の紋様から、上半身が型どられていく。

「だが、それを許されなかったモノは、どうするべきだったんだろうな」
自分へ、問いかける。モノは、どうするべきだったんだろうか。
自由に生きることすら許されなかったモノは、弄ばれるままに死ねばよかったのだろうか。
どんな願いを持つことも叶わぬまま、死ねばよかったのだろうか。

「どんな人間でも力の奔流には抗えない。強大な力の前では無力だ。
力をつけようとするのは間違いじゃない。だが……」
クロは、身を持って知っている。ずっと、その身に溜め込み、怪異と呼ばれるまでの、『呪いの塊』となっていたのだから。
だから、聞こう。理不尽を押し付けてでも。その身に怨嗟が纏い付こうとも。その鉄火を振るう理由を。

『聞こう、人の子よ。汝の願いは、なんだ?』

声ではない。直接、脳に響くような、波長。
別次元の存在が、語りかけるような。

神代理央 >  
「許されない、と決めたのは自分自身だ。
自由に生きられない、と決めたのも自分自身だ。
生まれた時からそうだった、と世界が決めたのなら、世界に抗えば良かっただけだ。
それが叶わぬと思うのなら、それもまた構わない。
全ては『自分で決めた事』だ。誰が、どうしろと命じた訳でもあるまい」

自己選択。少年の言葉は、態度は、全てそれに尽きる。
生まれ落ちた時から、何も選択出来ない事など無い。
極論、生きるか死ぬか、という選択肢は誰にでも与えられている。
願いを持つのも自由。叶えようとするのも自由。
叶わないから死ぬのも、自由。
――だが、それを嘆くのはお門違いだろう。

「…願い?」

倒し切れた、とは思わない。
会話は続いている。言葉も続いている。
だから、直接響く様な声にも驚く事は無いが――その内容に、僅かに怪訝そうな表情を浮かべて――

神代理央 >  
 
「……何度も言わせるな、怪異。私は、他者に自らの願いを叶えて貰おうなどと思わない。
私の願いを言葉にして、理解と共感を得ようとも思わない」


「私は、私自身の力で全てを成し遂げる。
その為の力が、その為の術が、私には、ある」


「……"願い事"を聞くのなら、より脆弱な者に聞いて回る事だ。
私の願望を知りたいと思うなら、より強い意志を持つことだ。
それで…それが、この私が打ち倒せるというのなら!」


「幾らでも、どれだけでも!惰弱な願い事を集めて回ると良い!」


 

神代理央 >  

人理の闘争の化身。疑似的な神域の力。
二つの神性を得ながら、未だ十全にその力を発揮しない少年が、吼える。
それは明確な意志の力。闘争を振るう力。
鉄火による闘争そのものが、強靭な意志であり、矜持であり。
願い、という言葉を否定する少年の在り方そのものだった。
 
 

クロ > 「………まぁ、そうだよなぁ」
ざわり、と。紋様の先端が、黒く染まる。

「正しい」
ざわざわ、と。黒の侵食が進んでいく。

「他人になど頼るべきではない。それを許されるならば。」
染まる。染まっていく。幾多もの『死に際の願い』が、クロを染めていく。

「死は理不尽だ。その者の何もかもを奪っていく」
悍ましく染まっていく。それは、かつての『厄災』のように。

「だからこそ、願わずにはいられない。呪わずにはいられない」

願いを束ねていく。死に際の呪いを象っていく。指先のような呪紋を、神代理央へ向け―――――

『人の子よ。望み通り…その身に幾多もの『呪い』を受けるがいい』

突き出した。呪紋によって伸ばされた指先は刃物のように鋭くなり―――――もし、それを受けてしまえば。

今まで殺した者の怨嗟の声を、聞くことになるだろう。

神代理央 >  
「……そうだな。無力に苛まれ、全てを奪われれば呪いたくもなるだろう」

「所詮は――」


そこで、僅かに頭を抑える。まるで、頭痛に耐えるかのように。
或いは、何かを抑え込もうと努力するかの様に。
だから――避けなかった。避けられなかった。
怨嗟の声。死せる者達の声。レクエイムにすらならなかった声。


『……だが、それも。最早慣れたものだ。そんなモノ、とうの昔に聞き飽きたぞ?』


怪異の指先が突き刺さり――少年は、嗤った。
その雰囲気は、その纏う力は。先程迄相対していた"神代理央"のモノではない。


『ヒトが全て滅んでも尚、闘争は終わらぬ。
神を願い、神を造り、その神を戦争の道具に使う。
そんなヒトの怨嗟も呪いなど、赤子が泣き叫ぶ様なモノ』

周囲の異形達が軋む。金属が擦れ合う音は、まるで狂信者の歓喜の如く。
或いは、出来損ないの讃美歌。或いは、造物主への祈り。

『だが、それすらもヒトであるならば愛おしい。
ヒトの業。ヒトの罪。ヒトは美しい。ならば、其方の在り方も同じ事』

『――であレば。我が闘争の一助としテ。
我に。余に。俺に。僕に。私に。
喰ワれては貰えないだろうか?』

呪いを受けた儘、少年の姿をしたモノは、ゆっくりと歩きだす。
一歩、二歩、三歩、と。
怪異に向けて穏やかに。両手を広げて。歩き出す。

クロ > 「…………成程。ご同輩だったのかい」
ずる、と指先が抜ける。黒に染まった紋様の色が、抜けていく。
所詮は死人の願いだ。意思の力は長くは保たず…元の『願望機』へと戻っていく。

「アンタは…俺とは、真逆の考えを持つんだな」

クロはその身に呪いを溜め込み、人を呪った。

目の前の存在は、経緯こそ知らないが…人を愛した。

相反する存在。

「俺は人間が嫌いだ」

身勝手に願う人間が嫌いだ。

身勝手に呪う人間が嫌いだ。

そうさせる人間が大嫌いだ。

「アンタとは、相容れない」

もはや、相対する力は残っていない。

「俺はアンタを否定する」

残っているのはモノの意思だ。『皆を助ける』という、願いだけだ。

「だから、喰われてなどやらない」

タコのように、紋様を周囲の建物に絡ませる。皆には、自分も含まれている。無為に消えることはない。

「じゃあな。『人殺し』」

そのまま、ワイヤーアクションのように体にあたる紋様を引っ張り上げ、飛び去って行った。

神代理央 >  
『……同輩、同胞。それトは、少し異なるのではないだろうか。
所詮、我は造り物故。未だ安定もセず、自然発生した訳デもない。
だかラ、其方を取り込んデ稼働時間の向上を目指スのは、道理ではナいかと判断しタ』

不思議そうに首を傾げる。
傾げながら、怪異に手を伸ばして――


『否定。それは常在。余は望まれナがら否定さレた。
それでも、ヒトを愛する心は不変なれば。闘争にヨッテ応えルのは必然であれバ。
………シッパイか。これ以上の権限、は――』


伸ばした手は、怪異には届かない。
最後に投げかけられた言葉には、透明な笑みを浮かべて。

『ヒトゴロシ。是認。ソレガ私に望まれたことナレバ』


――全てが終わって。少年はぼんやりと意識を取り戻す。
後に残ったのは、未だ指示を待つ異形の群れと、鳴り響く通信機。


「…ああ、私だ。状況は?
――雪景が?いや、戦闘行動に入っていないのなら、現場の判断に任せる。
とはいえ、増援が必要な状況であれば直ぐに送れ。其方の人員は、余裕があるだろう」


「……B-05にパワードスーツ?違反部活のものか?
…………データ無し、か。いや、ならば情報収集に留めろ。
此方の装備よりも敵の方が性能が上回っているならば、無理に戦う事は無い。
どのみち、其方のエリアは予備戦線だ。増援は送るが、無理はするな。怪我でもされたら、戦力が不足する」



一通りの指示を出し終えて、通信を終える。
ふと視線を向ければ、遥か彼方には燃え盛る瓦礫の山。
取り敢えず、今宵の目的は――少なくとも、自分の役割は果たしただろう。

「……怪異。違反部活。第三勢力、か。
其処までして、この落第街という街は守りたいものなのか。
この街自身が、奪い、奪われて成り立っているというのに」

こつり、と革靴を鳴らして背を向ける。
自分の仕事は、まだ終わった訳ではない。
前線での仕事の次は、指揮官としての仕事が残っている。
"猟犬"は、未だ餌を欲している。

「……私だ。一度本部へ戻る。A-01に車両を寄越せ。
その間に、各地の状況をもう一度――」



最初の一撃は放たれた。
火焔と黒鉄の軍勢が、先ず一歩。"表"では生きられぬ者達の街へ、土足で踏み込んだ。

「…さて。何時まで持つ。何時まで持ち堪えられる?
早くしなければ飲み込んでしまうぞ。焼き払ってしまうぞ?
"二度目"は、もう容赦する事も無い。
投射される火力は、何も待ってはくれない。多少の策など、正面から叩き潰すだけ。
圧倒的な鉄と火を、どうするのだ。どうしてくれるのだ?
楽しいな。愉しみだよ。ああ、とても、愉しみだ」


怪異と出会い、願いを否定し、そして再び戦場へ。
立ち去った少年の後に残ったのは、硝煙の香りだけ。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」からクロさんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に羅刹さんが現れました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に伊都波 凛霞さんが現れました。
羅刹 > 焼き払われた落第街、その地下
…規模が大きくなったとはいえ、行われたこと自体はほぼ同じだ
地表は焼き払われ、多数の違反部活、組織が破壊された
けれど、元より防備を整え、内部の問題を解決しようとしていた蜥蜴は
いち早く地下に、闇に潜んで被害をある程度免れていた

もちろん、ゼロとはいかない
多少なりとも損害は負ったが、鉄火に加えて謎の大剣による攻撃
後者は、これもまた所属不明のパワースーツによって被害は少なくなったし
前者については、これも詳細は不明ではあるが進行は予想したほどではなかった

のこのこと…一部を除いて外に人員を出すわけには行かず
暫定的な情報は多いが、やはり本格的な…人質を取られた故の強行が始まったのだろう

(こらえ性の無ぇことだ)

価値があるとはいえ、一人にかけるコストではない
そもそも、こちらが適当な違反部活に女を売り渡せば、その砲撃に巻き込まれて死ぬかもしれない
だというのに、砲撃は、攻撃は徹底的であった

(既に要らねえと判断されたか。
まァ、それならそれで使い潰すだけだがな)

それとも、何がしかの方法で通信を行っているか…と考えたところで
護衛から、今日の客を連れてきたと連絡を受ける
一等秘匿性の高いアジトに移し、今日話をする人物

その人物を待って、部屋の中で煙草を咥える


「――――――……………」

地下にいくつかあるアジトの内の1つ
その中の一室である部屋は、ソファが運び込めなかったため木の長机とパイプ椅子が対面で備えられている状態だ
ともあれ、話をする分には問題ないだろう

護衛がノックをすれば、入れろ、と告げて来客を通す――

伊都波 凛霞 >  
扉の前に立ち、2回、軽く叩く
声が掛かり、背後の見張りに『入ってもいい?』と視線を送る
手振りで入ることを促され、ノブを回して部屋の中へ

待っていたのは当然、自分を呼んだ人物

声は掛けず、澄んだ視線を男…羅刹へと向ける

砲撃の音も、騒ぎも
伝え聞くまでもなく、何が起こっていたかは想像がつく
一旦の平穏でしかないだろう時間
どんな話をされるのやら、といった面持ちで

羅刹 > 最早やり取りも慣れたものであろう
部屋に入れば、対面に座ることを促し

「知っての通りだが、お前を取り戻すことを理由に暴れまわってるようだ。
お前が入っていたアジトが直撃を受けなくて幸いっつーとこだな」

煙草の煙を吐いて、当然の事を確認する
防御手段はあるかもしれないが、無事にこうして留めておけたのは幸いだった

「だが、今日呼んだのは別件だ。忙しいからこそ、片付けておかないといけねえ問題がある
例の、二人きりで会わせた…柊、っつー男の事を覚えてるか」

名前を言えば思い出すだろう
忘れる名前でもないかもしれないが

「…そいつが、この前、妙な事を言い出してな。
あまりにも筋が通らねえことをぐだぐだと言いやがる
しかも、お前と会った直後に、だ。
だから今日は、参考人として呼んだんだが……、そのことに、何か心当たりはあるか?」

軽く、雑談をするような口調だが
今は丁度『内政』を進めている最中だ
裏切り者は見逃せない。そのヒントを得るための質問

伊都波 凛霞 >  
「知っての通りって言うほど知ってるわけでもないけど」

私を取り戻すため…っていうのはどうかな
後半は言葉を呑み込む

対面に座り、話を聞く姿勢
別件だという言葉に首を傾げる
非常事態のような気もするが、それよりも優先される話なのか

「柊さん…?」

「つまり、私が何かあの人に入れ知恵をしたんじゃないか…ってコトかな」

心当たり、なんて言ってはいるが、
直々に呼び出したのだからある程度確かな疑念は持っているのだろう

羅刹 > 非常であるからこそ、内部から刺される事態は避ける
今は、女には仕事もさせずに『餌』として使う時まで見張りを付けている状況で
さっさと解放すればこの事態も終わるのだろうが…、それにはまだ早い

闇雲に焼き払われるのは、既にこの組織は慣れている
いつもの『挨拶』が多少大袈裟になっただけだ、という認識
もちろん静観するつもりは無く、対処は進めているところでもある

「ああ。察しが良くて相変わらず話が早え
話としては、それ以外にもあるがそっちは後だな。」

煙草をぐりぐりと灰皿に潰す
その残り香だけが部屋に漂い

「…ま、してねぇっつーなら別にそれはそれで構わねえ
ただ単に時期が合いすぎてたんでな。あり得そうな可能性を探ってるだけさ」

口調は軽い
軽く、見せかけている
ぎし、とパイプ椅子が軋み、男は片手で頬杖を突いて女を見つめる

伊都波 凛霞 >  
「私の性格なら、してたとしてもしてない、って言うことくらいはわかってるよね?」

対面する男へ、小さく肩を竦めて見せる
事実はどうあれ、そうしたと口にすれば彼が危険に晒される
そちらを選択しないことくらい、男はお見通しの筈だと見ていた

「それはそれとして…"お話"すれば考え方を柔軟にしてくれたり、変えてくれる人なんかもいるわけで
 此処にいるうちは、誰とでもそうさせてもらうつもりではあるんだけどね」

座りながら、片膝を抱えるようにしてそんな言葉を向ける
言われたことは約束の通りにする
けれど、言われていないこともする

「どうかな。そろそろ私、邪魔になってきたんじゃない?
 無差別に近い鉄火の攻撃も、案外もう私の奪還なんか関係なくやってるのかもしれないし」

羅刹 > 「ああ。そうだな。
嘘は下手だろうが、そう言うだろうよ」

どう話せば誰に危険が及ぶか、あるいは利益があるか
それをしっかりと考えられる相手だ
組織内でも、引き抜かれはまだしていないものの『人気』な理由もうかがい知れる

そして、こちらを測ってくるような言葉
女としても、解放さえるためにそう動いているのだろう

「はっ、心配するな。そろそろお前を使って手に入る情報も無くなってきた所だ
適当なところで返してやるよ。
鉄火に関しちゃ…あれはただ理由があれば、暴れるっつーことはわかってる」

元々、鉄火は何が無くとも暴れていた
それが理由が着いたからこそ、激しくなっているだけ
以前に…こちらが流した、『焔が奪われたため、復讐に大きな反抗をしようとしている』という情報を流した時もそうであったから
そして、話を聞き終われば、平坦な口調で

「だが、そうなるとあいつも邪魔になる、か。
いきなりあんな無理筋を通そうとする奴を、信用して協力者にすんのは無理だ
俺の顔を知られちまった以上、適当に始末するか…いや、薬漬けにして資産を奪い取った方が得か」


何でもないことのように言って、もう1本煙草を吹かす
一息、吐いてから

「知らねえならそれでいいさ。悪かったな、呼びつけて
帰してやる日は決めて連絡してやる」

伊都波 凛霞 >  
「適当なところで始末、の間違いじゃなくて?」

解放する予定だ、という言葉には違和感を憶える

「"蜥蜴"の目的も知ってる私をぱっと手放すの、逆に疑わしんだけどなー…」

現体制を崩すことだといった、彼らの目的
言ってしまえばできるわけのない妄言の類でもあるが…
組織が実際に力をつければ、放置できない目的でもある
それとも解放することにメリットがあるのか

「…貴方がそういう乱暴な言葉を使う時は揺さぶりだって、
 なんとなくもうわかっちゃうんだけどなあ…」

始末する、薬漬けにする
シャンティさんを捕らえた時の男の雰囲気も、似たようなものだった

「解放と、誰かの安否で私を揺さぶってどうするの?」

羅刹 > 「疑わしいなら探ってみろ
得意だろ、そういうのは。
…そこを気に入ったからこそ、餌じゃあなく、俺はお前を引き入れようと考えもしたわけだ
にべもなく振られたがな」

ふ、と息を吐く
女が言う『わるいこと』をしている以上、なびく可能性は低い
それは既にわかっている事
坦々と、事実を述べていく

「相変わらず、目ざとい…耳聡い奴だ。
だが、前とは訳が違う。例の女はただ単に目に付いてお前への揺さぶりに使おうとしただけだったが…

今回は『敵対』に近ぇことをあれはしようとした。
俺を相手に言葉で約束を誤魔化そうとしてきやがったからな。
…お前が絡んで無ぇなら、それはあいつ一人の責任だ
『身内』ならまだしも『敵』になったなら、容赦する必要は無い。
昨日、外で暴れまわった風紀みてぇにな」

お互いにわかっているであろうことの確認を繰り返す
人質程度で、止まる女ではないということも
ただ、その行動によって動いた一人が死ぬだけだ、と


「ま、今はまだ『身内』扱いのお前と、大量の金を積んでまで会いたがってたんだ。
顛末ぐらいは予想したいだろうと思ってな
他に言うことを聞かせようだとか、そういう意図はねえよ。

…お前が言った通り、お前はもうメリットよりデメリットの方が勝ってきてる。
最後にあいつらを呼び出す餌に使って、終わりの予定だ。
お前が嫌がっていた『接待』ももう無いだろうさ」


少しでも有利な場所に相手を誘導するための餌
それを機に罠に嵌め、花火をあげて姿を眩ませ
また闇に潜み、力を蓄える
災厄によって削られた戦力を、体勢を整えるために
気楽な口調で、良かったな、とすら言いそうな軽さで言う

伊都波 凛霞 >  
「二重スパイでもやらせよう、みたいな?」

なんてありきたりは流石にないか、と苦笑する

「探るのは解放されてからにする。
 …柊さんは、彼は彼で落第街で生き抜いてきた人。
 いくら貴方でもいざ手を出せばそう簡単にはいかないんじゃないかな」

件の話には否定も肯定もせず
柊…彼の言葉を信じることにする

「終わり、ね…。
 解放されて、どうなるかはわからないけどもし風紀委員を続けるなら

 …普通にまた貴方の敵になるんだけど」

デメリットに更にデメリットを残したまま解放する
そんなことを言う男に、いつもなら感じない薄気味悪さを覚える

「貴方の決定には皆納得?
 私を始末したほうがいいって言う人、多いんじゃないかな」

羅刹 > 「それこそお前は成長して、嘘を吐くだろうさ
…俺らと手を取り合おうとしてな」

容易に予想できる
完璧に近い精神性に加えて、成長性まである
ただ単に二重スパイにしてはこちらが欺かれるか、いいように誘導されるだろうという予想

「そうかよ。ならこの話は終わりだ」

相手が信頼しているというなら
どちらも約束を守り、これ以上変化が無いならそれで構わない

既に、件の金貸し自体からの状況の変化は難しいだろう
ある程度は聞くが、隠すということは疑いを残す事でもある
何もないなら、疑いはそのままだ

「ああ。一枚岩じゃあねえからな。反対意見ぐらいは上がってくる、が。
お前を本気にさせちゃあ、それこそ災厄の焼き直しだ。しかも今度は内部で起こる

…俺に告げた以外の事で…お前には、あの状況からも脱出して優位に立てる何かがある
お前を使って情報と偽情報…得難い武器が得られたからいいが、さっきも言った通りもうデメリットの方がでけぇ
精々、餌に使うぐらいが精一杯っつーことだ」

風紀委員であり、呼び出す餌程度にはなるであろうこと。それは確実だ
だが無暗に囲めば、瞬きの間にノされて終わり…などということになりかねない
それを警戒しているが…それこそ、不確定要素、ただのカンだ

…あの時警戒していたのが戦闘異能の現状トップ2で無ければ確かめることもしただろうが、後の祭り
『素直に負けを認めたと見える』ように、両手をあげて

「さっきから聞いてりゃ、アドバイスばかりだ。
てめぇからも聞きてぇことでも、あんのか」

以前から思ってはいたが。
必要なことだけ聞いて他は一切口を利かないということもできるだろう
こちらの興味を引く様な事を言うということは、と聞き返す

伊都波 凛霞 >  
「ううん。まともに解放されるわけないと思ってたから、疑っただけ。
 …結局、貴方が用心深すぎるから…ってことでいいのかな」

足を崩し、ふぅと溜息
こう、理詰めで会話をする人は他にも知っているが、比ではない
本当にこの男が律儀に約束など守らず手段を選ばなければ、自分など容易に組み伏せられる

…こんな場所でこんな戦いをし続けている人間だ。不器用には違いないのだろうけれど

「それじゃあ私からは…、
 いつでも差し伸べる手だけは示しておく、…っていうことだけ」

いるかはわからないけれど
この組織から足を洗いたいと思うような人がいたら
できれば、ひどい仕打ちはせず送り出してあげて欲しい、と
…無論、世界の裏で生きる人達。そんなに甘い話が罷り通りはしないのだろうけれど
道が見えているのと見えていないのでは、また違うはず

その言葉は、無論羅刹自身へ対してのものでもある
そう言いたげに、澄んだ視線を向けていた