2022/02/11 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に金狼《フォッケウルフ》さんが現れました。
金狼《フォッケウルフ》 >  
『ゴフ…───ゴルル…』

───とある廃ビルの地下、獰猛な獣の呼気と唸り声が反響する

かつては程々の規模で売春をメインとした違反部活を取り仕切る、小さな組織の拠点だった
"黄泉の穴"産という触れ込みの…とある魔術触媒を入手してから──その組織は形を変えた

分不相応な支配力を手に、多くの違反部活を抱き込み
それを望まぬ二級学生すらも強力な洗脳効果を発揮するその"力"で以て、隷属させた
身に余る力を手にした未熟な精神性は徐々に暴走し、悪意と共に地下を狭しと表へと溢れ出た

──溢れ出ようと、した

廃ビルの地下は鮮血に染まっていた
彼は最後に何を思っただろう
獣の爪牙にこびりつく朱へと姿を変えた今や、その想いを聞くことすら出来ないが

少々の後悔があっただろうか
自身の過ちを自覚し、悔いた時間はあっただろうか

…後悔先に立たず、そして覆水も盆に返らない

金狼《フォッケウルフ》 >  
半狂乱になった違反組織の残党が獣に銃を向ける
或いは、異能を、魔術の矛先を

大男すら見上げるだろう巨躯の人狼は撃ち込まれる銃弾など意に介さず
向けられる異能の力を、魔術の炎を、雷を弾き飛ばし、巨腕と共に鋭い爪を振るい、壁に血花を咲かせる
逃げる者を、目にも留まらぬ俊敏さで追いすがりその首を剣のような牙が捉え、食い千切る───

恐怖に駆られる者、意を決して挑みかかる者
別け隔てなくその爪と牙は振るわれ…

突如現れた一頭の怪物によって、一つの違反組織が今まさに壊滅されんとしていた

金狼《フォッケウルフ》 >  
あるいはそれがただの、何も考えず暴れまわるだけの怪物ならば
禁断の魔術触媒を手にし、カリスマを得た組織の長と
それに付き従う多くの異能者、魔術師達で十分に討伐し得たのかもしれなかった

しかしその金毛の怪物は思慮深く、計算高く逃げ道を塞ぎ、要所を見極め的確に潰す
人間と同等、或いは野性的な直感を含めればそれ以上の───

『───グルル』

唸り声を上げながら巨躯の人狼は間もなく一人残された男の前に立ち、大きな影を落とす
もはや戦意を喪失したらしい男は恐怖に身体を丸め、祈るように頭を抱え…怯えているようだった

"そんなに死ぬのが怖いなら───"

"もう少し、慎重に、周りを気にして、生きるべき"

"──だった、ねぇ"

突然その男の頭の中に鈴の音のような少女の声が響き、男は困惑の表情を浮かべる
その不可思議な現実に顔を上げた男の眼に映ったのは、己に最後を告げる──その巨腕を振り下ろす金狼の姿だった

金狼《フォッケウルフ》 >  
耳を塞ぎたくなるような音と、目を背けたくなる光景
その両方でいとも簡単にその場を染め上げ、──ものの十数分、地下は静寂に包まれる

点滅する薄暗い照明の下、金毛が蠢き獰猛な獣の息遣いが僅かに聞こる
その壁や床には多くの爪痕、数々の破壊劇の痕跡が残り──血の匂いに満たされていた

金狼《フォッケウルフ》 >  
やがて周囲から人の気配、敵意が感じられなくなると金毛の人狼はゆっくりとその身を屈める
淡い黄金の光に包まれるようにして、徐々に眩くなる魔力光の中、そのシルエットは姿形を変えて

「──月夜の晩はぁ」

光が収まるとその場に立っているのは巨躯の人狼、ではなく
一糸まとわぬ、金髪の少女の姿
幼さの残る小さな唇が歌うように動くと、光の粒がその手に集まり黒羊の仮面へと変わる
どこか気の抜けるような声色で呟くまま、仮面でその赤い瞳を遮って

「恐ろしい怪物に、注意しましょー」

金狼《フォッケウルフ》 >  
「つうしーん」

錆びたひやりとした鉄箱にぽんっと腰をおろして、耳元に指先を当てる
ゆっくりと指先を中心に朧気な光が回転するように走る──至極便利な通信魔術
通信機械に割り込むことも出来れば、少し式を練れば秘匿性の高い通信も出来て大変便利だ

「──件の組織?は一人残らず殺しといた。
 誰一人逃してないよ、だいじょーぶ。
 手強くは…なかったかな。ちょうど月も出てたし、魔術師さんじゃねー♪」

魔術師っていいにくい、気をつけないと、まじゅちゅし…みたいになっちゃう

「例の触媒は持ち帰る?黄泉の穴に捨ててきてもイイけど。…あ、はーい。じゃあ回収して帰るね♡」

凄惨な現場に似つかわしくない無邪気な声色を響かせ、通信が終わればよっと立ち上がり
なにもない虚空に指先で陣を描いてゆく
描く陣は、転送魔術
全裸に仮面なんてマニアックな格好で帰り道なんてわけにはさすがにいかないのだ

金狼《フォッケウルフ》 >  
転送した衣服に袖を通して、ポッケに入っていた飴を頬張る

「~♪」

鼻歌を口ずさみながら壁の染みとなった、元組織の長の元へ
しゃがみこめば足元の血溜まりの中に小さな、金色の二対のリングを見つける
美しい輝きを放ちながらもどこか禍々しい、呪具
情報では、黄泉の穴に由来するものという話だったけれど、それも眉唾
先程の通信ではその真偽が有耶無耶であった為、一旦持ち帰ることとなった

「ふんふん…これは、心の弱い人は喰われちゃうかもねえ…」

掌に乗せると伝わる、妙な感覚
これを身につければ何でも出来るというような、そんな気持ちが湧いてくる

「───」

鼻歌をやめ、小さな声で呪言を紡ぐ
簡易的な封印魔術、物理的な干渉を防ぐ効果こそないが…この呪具の影響を一時的に抑え込む程度のもの
持ち帰った後は、専門のヒトにお任せしよう

誰が悪かったとか
何のせいだったとか
道を踏み外す理由は無限にあるけれど、大本を辿ると、そう…大概は……

「運が悪かったんだねー」

どうにもならない理由、だったりする

金狼《フォッケウルフ》 >  
起点は、そんなもの
大体は運が悪いだけ

こうなったのは、ブレーキが踏めなかったから
周りに誰も止めるヒトがいなかったから
そういう仲間を作っておけなかったから
色々と理由はあったし、きっと彼も最後の瞬間に無限にそういうコトを考えたんだろう

「ぁむ」

飴2つめ
封印魔術は結構リソースを食っちゃうのである

「…さて」

やることはやったし、と辺りを眺めて…
凄惨な光景、自分のやった結果なのでそれがどうという感情は、ない

「今日もお仕事頑張ったよぉ、マスター」

くるんと踵を返し、階段へ向かう
あの人がいたら、褒めてくれたかなー、なんて思いつつ、軽いステップで階段を上り、少女は地下から姿を消す

──まるで怪物が殺戮の限りを尽くしたような
痕跡からはそうとしか言い様のない惨劇を残し、"落第街の秩序"を崩す危険性を孕んだ違反組織の一つが、この世から消えた

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から金狼《フォッケウルフ》さんが去りました。