2022/05/06 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に金狼《フォッケウルフ》さんが現れました。
金狼《フォッケウルフ》 >  
『逃げろ!早く───!!』

怒号が響く
命を脅かされた人間の、恐怖が入り混じった、必死な声

やりすぎなければ良かったのに
必死に、逃げ惑うほど命が惜しいのなら…
落第街の秩序を乱す程の"力"を、持たなければ良かった

『こっちだ!急g■■■───』

走りながら大声を上げていた少年の頭部を、黄金色の風が横切る

一瞬にして刈り取られた何かは耳障りの悪い音と共に床に落ち、周囲の人間が伝搬する恐怖に戦慄く

"月の明るい夜は人を狩る獣が現れるぞ"

眉唾のような話として落第街の一部の違反部活に囁かれる噂
そんな話、信じるような人間この街には一人もいない

そしてそれを事実として目の当たりにした人間も、一人残らず狩られてゆくのだ

金狼《フォッケウルフ》 >  
地下組織の一つ
数ヶ月前まではただの売春斡旋をするだけの末端の小さな違反部活だった
しかし幹部の一人が転移荒野で手に入れたとある"モノ"によって、一転、その勢力を強めはじめる
落第街、主に地下のパワーバランスを著しく崩すその物体は、一個人が所有するには過ぎたもの
喩えるならば、手にした者が例外なく富と名声を得ると言われるオーパーツのような、そんな代物だった

獣は知らない
その組織のどれだけの人間がその物体の存在を知るのか、その効能を知るのか
一人一人問い質し、正しく始末するなどという回りくどいことをする獣はいない
狩るならば、その全て───伸びた根の一つも残さずその荒ぶる爪牙の犠牲とする

獣はまず、地下施設の入り口を封鎖した
それは瓦礫を雑に積み重ねただけの簡素なものだった
しかし一瞬で排除できるようなものではない
立ち止まったその一瞬は獣にとっては命を喰い殺す十分な時間だった

金狼《フォッケウルフ》 >  
入り口とは別の方向に逃げる者がいた
その匂いを嗅ぎつけ、追い、殺す
哀れな命が向かったその先には、入り口とは別の脱出経路があるということ
地下に伸びる施設の都合上、いくつもあるわけはない

転移魔術を試みた者もいた
僅かなマナの乱れ、そして魔力の揺らぎを嗅ぎつけ、その者もまた刈り取られる
それを目の当たりにした者達の中には、逃げることを諦める者もいた
逃げることを諦め、命乞いをする者は軽々と噛み砕かれた
さらにそれを見た者達は──抗戦を選んだ


ある者は武器を構え
ある者は異能を行使し
ある者は魔術を獣へと向ける

緊迫した緊急の事態でなければ彼らの中には気づく者もいただろうか
獣が明らかに危険度の高い武器をもつ者から刈り取ってゆくこと
異能者を最優先に狙い、魔術に対しては瞬時にディスペルをカウンターマジックとして放っていたこと

この獣は暴虐に暴れているのではなく、理知的にこの組織を壊滅させようとしているのだということに

金狼《フォッケウルフ》 >  
床、壁、地下施設の至る所が朱に染まった頃

「───」

獣はその動きをゆっくりと止める
耳を済まし、鼻を鳴らす
静寂が訪れた、赤い地下施設
緩慢な動作で、巨躯の獣はゆらりを歩みを進める

嗅ぎ取ったのは、隠れている命の匂い
逃げても無駄、戦っても無駄と悟ったのか
それともただただ恐ろしくて動かないようにしていたのか
無造作におかれた木箱、その中に、少年が一人隠れていた
小さな箱だった
その身体を折り畳み、小さくくるまらなければ入ることもできなかっただろう

黄金色の獣は、小さな命の収められた、小さな箱の前へと現れる
狩りをする獣の嗅覚は、小さな命を逃すようなこともない

黄金色の体毛に覆われた、丸太よりも太い腕が振り上げられる
その一つ一つが鋭い大鉈のような、爪が伸びるその手を大きく開き──振り下ろした

金狼《フォッケウルフ》 >  
獣に慈悲はなく、最後のその小さな命もまた、刈り取られる
木箱は無惨に散乱し、中に隠れていたモノはそのカタチと色を変える

「───ルル…」

獣のが喉を鳴らす
嗅ぎ分けられる範囲に、もはや命の匂いは嗅ぎ取ることはできない

一人を逃すこともなく──この組織の構成員はすべて、『謎の怪物』の襲撃によって全滅した

金狼《フォッケウルフ》 >  
黄金色の毛並みを持つ巨躯の獣は天を仰ぐ
やがて、その巨躯は眩い光に包まれ──

光が収まると、そこには、生まれたままの姿の、金髪の少女がいた

「──終わったよぉ」

手品のようにその手にパッと虚空から取り出したゴートマスクで顔を覆い、呟く

「例のモノは見つかんなかったよ。
 様子を見るに外に持ち出された感じもあんまりしなかったけど、
 見つけにくいカタチしてるものなのかもね」

「…ん。じゃあ、誰かよこして~。
 ついでに何か服も持ってきてもらえると嬉しいな」

天を仰いだまま、誰かと会話をするように言葉を綴る
視線を床に戻したゴートマスクの奥の紅い瞳には、たった今自分が叩き潰した小さな命の、同じ色の残滓が映る

金狼《フォッケウルフ》 >  
「ふー」

赤く汚れていない壁に背を預け、仮面の位置を直す

随分と散らかしてしまったけど、仕方がない
ここはもう蛻の殻。生きている者はいない
後の調査方向は、後々来る仲間に任せよう

「無駄死ににはさせないから、安心してよね」

誰ともなしにそう呟き、部屋を仕切っていたボロボロのカーテンを引き剥がし、身体に纏う
仕事は厭じゃないけど…めっちゃ伸びるラバースーツみたいなの開発してもらえないかな

そんなことを考えながら、惨劇の場と化した地下施設で仲間の到着を待つのだった

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から金狼《フォッケウルフ》さんが去りました。