2022/07/30 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に狭間在処さんが現れました。
狭間在処 > 「――……。」

暗闇と静寂の中、小さく掠れるような吐息が一つ静かに漏れる。
情報を得て、人体実験を中心に”手広く”活動している組織のアジト――を、襲撃したつもりだったのだが。

(――先客…既に誰かが叩き潰した後、か。後手に回ってしまったな…。)

情報料とかも含めて徒労となってしまったのは確定――とはいえ、何か残っているかもしれない。
無論、人体実験、あるいは人身売買に携わる組織の繋がりの証拠品でもあれば儲け者、だが。
そんなものはとっくに処分されているか”先客”が回収しているだろうと期待はしていない。

靴音を立てず、常に周囲への警戒を怠らずにアジト”跡”と化した廃墟の中を歩き回る。
――人の気配は無い、人ならざる者の気配も同じく、もっとも、自分の感覚を誤魔化す相手が潜んでいる可能性も十分に。

(――”中堅”規模の組織は横の繋がりが割と手広いからな…芋づる式に潰せると思ったんだが。)

喋れない身の上なのもあり、独り言は自然と心中で呟きながら一階から順に探索を続けて。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」に清水千里さんが現れました。
清水千里 >  
闇夜の中に女が一人、地に杖を突き足を組んで立っている。
窓から漏れた月の光は逆光となり彼女のシルエットを照らし、顔は向こうを向いていた。

女は狭間の気配を感じながらも、なお振り返らずに呟いた。

「良い夜だ、そうだろう?」

あくまで落ち着いた声色、しかしその声は冷たさよりむしろ温かさを湛えているように思えた。

狭間在処 > (――…!…音からして杖か何か…反響具合からして単独、か。ここを潰した先客かどうか…。)

幾ら”偽物”とはいえ、怪異に改造された身は五感や気配の感知がかなり鋭い。
ゆっくりと忍び足に近い緩やかな歩みで開けた通路に出る。割れた窓から月明かりが差し込んでいる。
――居た。向こう側を向いているので顔は見えないが、一人…女性のようだ。

「………。」

女の問い掛けに、しかし男は答える『声』を持ち合わせていない。
なので、ただ沈黙を返答として一定の距離を置いて足を止めながら相手の出方を静かに窺う。

(…さて、”どういう手合い”なのかでこっちの対応も色々変わるが…。)

清水千里 >  
気配を察して足を止めた狭間に女は振り返り、その顔を見せ、クスリと笑った。

「警戒しなくともいい。私は君の敵ではない。」

女は持っている杖で、女の斜め前に無造作に置かれたパイプ椅子を指し。

「そこに座っていいぞ、もし疲れているのならな。
――ゆっくり『話そう』じゃないか?」

女は手を回して魔力の渦を形作る。

(これは私のお気に入りの奇跡だ)

狭間は頭の中に声が響いてくるのに気づくだろう。それは目の前の女が伝えてくる”声”だ。

(今、キミと私との間で導線が繋がった。キミが強く念じれば、それは私に伝わるようになっている。
――まあ、あくまで無言を貫いたとしても、それはそれで構わないがね。
しかし君も私に聞きたいことがあるだろうから。)

狭間在処 > (…この街で、ついでにこういう場所でその言葉は一番信用ならないのだが…。)

記憶に齟齬が無ければ、20年近くこの街で暮らしている身だ。
警戒心は常に持ち合わせるのは当然だし、初見の、ましてや得体の知れない相手となれば尚更に。
彼女が杖で指し示したパイプ椅子は一瞥するも、直ぐに視線は女へと戻す。
常に意識は相手の些細な身振り手振りを見逃さず、さりとて緊張感で身が固まらぬように。
一定のリラックスは保つ自然体で緩やかにジェスチャーで椅子に座る事は拒否する。

「……!(念話の魔術か)」

そして、女の解説からして導線(パス)が繋がっているらしい。こちらは思考するだけでいいようだ。

『――わざわざ手間を掛けてくれた事には礼を。…俺が聞きたい事は一つだけだ。
…貴女がここをアジトにしていた組織を潰したのかどうか。もしくはその関係者か。』

他にも幾つか気になる事はあるが、最優先の問い掛けはこれだ。

清水千里 >  
『随分警戒しているようだな。もっとも、こんな場所にいるならば当然の事か』

自分の身振り手振りの仔細に至るまで見つめられ、女の笑いには若干の苦みが含まれたようだった。

『君が座らないのであれば、それもまた選択だ。
――それで、質問に答えようか。答えはイエスだ。
と言っても、潰したわけじゃない。畳んだだけだ、つまるところ、店じまいさ。』

狭間在処 > (――”そっち”側か。そうなると尚更に気は抜けないな)

終始落ち着いた様子の女に比べ、男は表面上はこちらも落ち着いているように見えるだろう。
少なくとも、表情は無表情で不自然な仕草も無い。無意識レベルで癖を殺しているのだ。
とはいえ、内心は流石にそうも行かない。生憎と単独で活動している身の上だ…信頼出来るのは自分自身。
…もっとも、後遺症の事を考えれば矢張り自分の肉体そのものもある意味信用ならないか。

『――店仕舞い、という事は…貴女は組織を運営していた側、という認識でいいのだろうか?』

問い掛けを重ねる。そうであるなら明確に『敵』でしかなくなるが。
基本的に、男が狙うのは特定の違反組織や部活のみ。それ以外に手は出さない。
…裏を返せば、その特定組織や部活に関係する者なら基本的に敵認定だ。

――まぁ、自分のやっている事は陳腐な八つ当たりで復讐で、結局終わりが来ないのも分かってはいるのだけど。
…元、が付くが人間だから理解と感情の行き場は擦れ違うものだから。

清水千里 >  
『まあ、そう結論を急ぐこともあるまいて、少年?
 私が幼子だったころに比べて、世の中はずいぶん複雑になった。』

女は狭間から視線を逸らし、窓に近づく。
この場所は高層階だ。窓には夜の街の燦燦たる光が美しく映し出されている。

『ある一つの行動が、同時に相反する二つの役割を持つこともある。
 ここはそういう場所だったのさ。』

女は狭間の問いに明確に答えず、否定も肯定もしない、曖昧な返事に終始する。

『――私は君と戦いたくはないのだよ、少年。席についてはくれまいか?』

狭間在処 > (――さて、どうするか…。)

とはいえ、完全に気を抜くという選択肢だけは無い。
”表側”ならまだしも、ここは落第街だ――気を抜く事が死に直結する事もある。
矢張り、彼女の一挙手一投足をそれとなく観察と警戒を半々といった感じで眼で追う。
とはいえ、あくまで表面上は沈着冷静なままで足を止めた場所から一歩も動かない。

『―-生憎と、学に通じている訳では無いし言葉遊びをするつもりもないのだが…。』

彼女の曖昧な言い回しに苛々とする事は無いが、はぐらかされるのは勘弁だ。
せっかちでは無いつもりだが、曖昧なやり取りは得るものが殆ど無い。
少なくとも男はそう思っている――何しろ周囲との交流は極小なのだ。

『――一先ず、敵意が無いのは理解した。俺も別に荒事に進んで踏み入るつもりは無い。
…が、悪いが俺はここでいい。貴女の立場や素性、この場に居る理由など不透明要素が多過ぎる。』

戦闘行為に進むつもりは無いが、それはそれとして無防備に椅子に座る事は矢張り拒否する。
戦闘は行わず、対話に終始する事がこちらの現時点での最大譲歩だ。

(…彼女には悪いが、このくらいの用心は当然だろう。)

後ろ盾も何も無いのだから、自分の身は自分で護るを徹底するしかない。

清水千里 >  
『では、君の疑念をいくつか晴らそう。少し長い話になるがな』

と、女は穏やかな口調で語り始める。

『――かつてここにある組織があった。違反組織だ。といっても、当時はまだ小さな規模のものだった。
落第街で下層の人間を攫い、生物兵器を用いた人体実験に利用していたんだ。
構成員はいわゆるオタク気質の人間で、研究員たちは完全なる好奇心から違法行為に手を染めていた。

しかしながら風紀も公安も、この組織に目を付けなかった。人攫いは数も少なく、
したがって大した注目も集めない。特に落第街という場所では。
ついでに言えば、被験者の取り扱い要件もよいものだった。毎日食事と娯楽を与えられ――
野垂れ死に掛けていた連中は組織に感謝さえしただろう。その時が来るまではな。

しかしながらこの組織は、いくらか不審な点があった。
どんな研究でも、資金源が存在しなければそれを続けることは不可能だが、
ここには高額な研究用の実験機材が山ほどあった。とても組織の規模に見合わないほどの』

私たちの組織はこの点に着目した。資金がどこから流れているか知る必要があった。
彼らの資金用口座は複数に分かれ、ついでにBIDIという名の厄介な、悪名高い銀行を経由していたため、
資金源を外部から調査することは難しかった。そこで我々は、内部からそれを確かめることにしたのだ』

なぜ私がこの組織に関係があるか分かったかね? と、狭間に問いかける。

狭間在処 > 「………。」

一先ず、その場から動かぬままに――また、何時でも動けるようにはしながら沈黙のままに彼女の語りを聞く。

(下層の人間を攫う…人体実験…程度の差はあれ、そこは同じようなものか)

過去の拷問を飛び越えた地獄の日々を思い出すも、それを態度には出さずに。
彼女の話を聞く限りでは、公安も風紀も目を付けない程度の規模で人を攫い集め――そして食事と娯楽で懐柔、といった所か。
そして、研究資金――自分が実験されていた研究機関はかなり潤沢な財源があったようだが。
確かに、研究を続ける以上、金――スポンサーは必須だろう。
その金の流れを探る為に、といった所だろうか。

『――つまり、貴女は表側の人間で…貴女か別の誰かが、この組織に潜入して資金源の洗い出しをしていたと?』