2022/07/31 のログ
清水千里 >  
『風紀や公安の一部には、
 違反組織をいかなる理由かを拵えてとにかく叩き潰すべきと考えている連中もいる。
 私はその行為の善悪についてはあえて言及しないが、行為としては無意味だと主張しておこう。
 なぜなら資金源を断たない限り、表に見える組織を潰したとしても、
 新たな違反組織が雨後の筍のごとく生えてくるからだ。
 我々は風紀でも公安でもないが、この手の組織の対処には慣れている。

 我々は数年をかけで計画を実行した。まず組織の末端に工作員を送り込み、
 我々の支援の下エージェントに成果をあげさせて組織内で昇進させ、
 まず小さな裁量権を掌握して複数名の工作員をさらに送り込んだ。そしてそれを続けるんだ。
 最後には、この組織の二割の人員は我々の工作員で構成されるようになった。

 だから、君の問いに答えよう、イエスだ。私は彼らをコントロールしていた。
 また、その過程で不可欠な程度の”犠牲”を払ったことも認めよう』

狭間在処 > (…遠回しに”俺にも釘を刺している”ようにも感じるが…考え過ぎ、か)

実際、自分がやっている事も無意味と言えばそれまでだろうから。
ただの私怨、恨み憎しみという単純明快なもの。人身売買や人体実験を主とする組織を潰す。
”こんな体”になってしまった以上、ただの人間に戻る事は最早不可能――なら、どうすればいいか。
…自分は受け入れは出来たが、だからといって憎しみや恨みは消えなかった。
怨恨の感情は殊更に負の感情でも強いものの一つ――そうそう消え去る筈も無い。

(…そう、俺みたいな立場の者は別に”珍しくも無い”。それは十分に理解しているつもりだ)

己の矮小さなんてものは――己が一番理解しているのだから。
彼女の言葉に、僅かに眼を伏せるような仕草を一瞬だけ見せるがそれは本当に一瞬だ。
直ぐにまっすぐにそちらを見据える視線は淡々としていて感情を殺している。

『――そこは俺の知った事ではないな。俺の行動原理はただの”私怨”だ。
貴女がどんなに悪辣な手を使ったとしても、結果的に一つこういう組織が潰せたのは僥倖でしかない』

出来るなら自らの手できっちり潰しておきたかった…あぁ、心残りはその程度だ。
自分と同じ立場の者が犠牲になったとしても同情はしないー―してはいけない)

清水千里 >  
『君が知りたいなら、彼らの資金源を教えよう。
 もっとも、それを知ったときの君の身の安全は保障できないがな』

女は狭間に起きた刹那の感情のブレを見逃さなかった。
外見で判断したのではない。ただ彼と自分の間で繋がれた念話の導線から、
そのような僅かなノイズが一瞬走ったのを感じたのだ、

『私が思うに、君はこの仕事に向いていないよ。
 それはおそらく、なにより君自身が一番よく理解しているはずだ。
 キミは目の前の人間を何事もなかったかのように見殺しにできる人間ではない。
 ――"犠牲"を容認できているのは、それが君にとっては、
 私から伝え聞かされた過去の歴史に過ぎないからだ。
 もし君がもう一週間か早く来ていたら、
 君は私たちの活動の悪辣さの部分を黙認したと断言できるかね?』

狭間在処 > 『――聞かせて貰えるなら是非も無いが。そもそも身の安全、なんて保証されている場の方が少ないだろう。』

特にこの街においては。表側を束の間垣間見ただけだが、あそこに比べればこちらは命か軽すぎるのが当たり前だ。
もっとも、自分が知らないだけで表側にも”見えない犠牲”がおそらくあるのだろうが。
一瞬の”揺らぎ”を悟られた事に気付いたが、それでも何事も無かったかのように平静に戻りながら。

『――別に仕事でやっている訳ではないさ。言っただろう、ただの”私怨”だ。
…確かにそこは断言は出来無いが、だからといって助ける義理も無い。組織を潰すのが最優先だ。』

冷然と言い切る。――嗚呼、詰めが甘くて向いていないのはよく理解している。
何しろ自分自身の事だ。彼女に指摘されるでもなくだが、止める理由にはならない。

『――よって、貴女の忠言は気に留めておくが、それで思い留まるという事は無い。』

頑固、というよりそういう生き方でいいと既に定めてしまっているから。、

清水千里 >  
『生き方はいつでも変えられる。どんな時でも、諦めは敵だ。
 過去に向き合う方法は復讐だけではないさ。
 もっとも、それは君の心の声が指し示すことになるだろうがね』

 女が狭間にそれ以上何か言うことはない。
 言っても無駄と諦めているのか、
 あるいはいつの日か分かるだろうと希望を繋いでいるのかは分からないが。

『――Code17。我々は彼らをそう呼んでいる。
 彼らは既存のどんな違反組織とも違う。確かなことは、
 奴らはスペインの異端審問官よりイカれた狂信者どもだということだ。
 私が君に言うのもなんだが、どんな相手も信用しないことだ。彼らはどこにでもいる。
 ……気を付けろ』

狭間在処 > 『諦めじゃなく自分への戒めだ。…私怨で動く男はそのくらいが丁度いい。』

彼女の言葉は…言いたい事は何となくだが理解は出来る。
だが、今の男にそれを素直に聞き入れる事は出来ない。
10年近く、不毛でも無意味でも淡々と独りで特定系列の組織を潰し続けてきた。
長命種からすれば瞬きの時間でも、元は人間だった男からすれば10年は十分に長い。
――別の生き方もそうだけれど、過去に向き合っても帰ってくるのは憎悪だけだ。

『――そもそも、スペインや異端審問に詳しくは無いんだが、言いたい事は理解した。
――情報提供に感謝する。…そして、信用しないのは言うまでも無い、”何時ものこと”だ。』

そう、だから彼女が提供してくれた情報に感謝はすれ、それを鵜呑みにはしないのだ。
【code17】…その単語を脳裏に刻む。少なくとも調べる価値はあるだろう。

清水千里 >  
『私が気を付けろといったのは、君はおそらく重大な勘違いをしているからだ』

と、女は狭間に釘を刺しておく。

『君たちは表の世界と裏の世界を比べて、裏の世界の方をより危険なものだと考えている。
 風紀委員の中には自らの職務を喩えて、
 "人々が光の中で暮らすため、暗闇の中で戦う"と言う人間がいる。
 だがCode17に限っては、実際には違う。その逆だ。
 我々は"人々が暗闇の中で暮らすため、光の中で戦って"いるんだ。
 君はまだその言葉の意味を理解できないかもしれないが、

 ――ともあれ、私はここらでお暇するとしよう。
 キミが私たちと同じものを負うのなら、またいつか会うことになるだろうな』

狭間在処 > 『――成程、確かに今の俺では貴女の言いたい事はよく分からないな…。』

そもそも、表側の事は殆ど分かっていない男の無知さにも原因があるだろう。
何せ、今までの人生の殆どをこちら側で過ごしてきたのだから無理も無い。
表側とは極力関わらない、という男なりの線引きもあるので尚更だ。

『――そもそも、光だとか闇だとか単純な区分けが無意味かもしれないが。』

口にしていて思わず苦笑を浮かべそうになる。表側と裏側を区切っている己が言えたものではない。
どのみち、調べてみるしかない――自分が手に負えないものなら、その時は潔く手を引くべきだろう。
その程度の理性や常識的判断は出来るつもりだ。ただの無謀な特攻野郎では無い。

『――俺が背負えるものなんて大したものじゃないし、誰かと共有する事もおそらくは無いと思うが…。』

呟くようにそう口にすれば、暇する彼女を見送るようにその場から動かない。
警戒は矢張り緩めていないのか、無防備に背中などを見せるつもりは無いようで。

清水千里 >  
『君が賢明な人間であることを祈ろう。
 念話の奇跡はじき切れる、心配するな』

 狭間の警戒を未だに感じ、やはり先ほどのような苦笑いで。

『その警戒心があれば大丈夫かもしれないな』

 そう言って、暗闇に姿を消すだろう。

狭間在処 > 『――賢明だったら、私怨でこんな無意味な事に年月を掛けて居ないと思うが…。』

賢明?むしろ愚者だろう、と自嘲気味に思うがそれを表情や態度に出す事は戒めて。
暗闇に姿を消す彼女の靴音などが完全に聞こえなくなった辺りで、漸くゆっくりと息を吐いた。

(……全く、これだからつくづく自分の未熟さを思い知るな…。)

警戒心は未だに保ったまま、周囲を念のために探るが…他に誰か居る様子は無さそうだ。
この場にはもうおそらく”何も無い”。ならば引き上げる頃合だろう。

男もやっと踵を返せば、そのまま靴音を立てずにその廃墟を独り、暗闇に紛れて後にする…後に残るは静寂のみ。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から狭間在処さんが去りました。
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