2022/08/17 のログ
ノア >  
「まぁ、難しい事なのは重々承知の上さ。
 バカバカしいと思うだろう?」

言葉を選ぶように、少し間をおいて述べられた言葉に肩を揺らして笑う。
殺すより殺さない方がよっぽど難しい。
暴れる男が居たとして、手段を選ばずに始末するのは容易だろう。
それを抑えろという。死なない程度に。

「まぁ、ごもっともだわな。
 警察組織――風紀委員だなんて奴らが偶にとはいえこんな吹き溜まりにも顔を出してる。
 本来そういうのはアイツらの役回りだろうさ」

無法の街に無言の圧で自制を強いる。
結局はその手段が暴力を伴うのだから、反発が生まれるのは当然であろう。
強い力で抑えつければ、それに応じた反発が帰って来るのだから。

「旗揚げしたのは紅龍って顔に傷のあるおっさんさ。
 こんな街にすら居場所のねぇ連中集めて、闘う術を教えて。
 そんでそんなゴロツキ共に理性を与えてる。
 こっちの街でしか生きられない奴らが生きていけるようにってな。
 それこそ初めは自治組織みたいなもんだろうけど、そっから広げていく予定さ」

まぁ、笑えるくらいの人手不足だが。
掲げ、語るのは理想論だ。
人を殺すのに飽いた、虚無感を抱いたプロフェッショナルの願い。
全てのヘイトが自分たちに向くなら、それも良し。
こちらが死なないように仕上げるのは、俺やおっさんの仕事だ。

「まぁ、殺し屋稼業なんかやってる奴らとは正面衝突なんだがな。
 いっそそういう奴らも一緒くたに飲みこめりゃあとは思うね」

サティヤ > 「バカバカしいとは思いませんよ。
バカであるかどうかは経過が判断します。本当にバカであるならば近くあなた方が滅ぶだけですから私が判ずることはありません。
ただそうですね、愚かだとは思いました」

どう違うのと思われるかもしれないが、違うのだ。
愚かにあることは…いわば普通にあることだ。
別に特別批難している訳ではないのだ。

「にしても、紅龍…聞いたことはある名です。
噂程度ではありますが、少し興味は湧きました。
ここに秩序を与えんとする…愚かを救おうとする、とでも言いますか…?
よくわかりませんが不思議な方ですね」

「殺し屋稼業の方に、殺し以外の仕事を与える事が可能なら取り込めると思いますが。
殺しを趣味とする方々には受け入れがたいでしょうね。
そのあたりを御せるからあなた方の力量次第でしょうね。
応援はさせていただきます。」

「さて、私はこの辺りでお暇させていただきましょうか。
私がいつまでもここに居ては物色もしづらいでしょうし、私にもまだやることがありますので…
ああ、それとですが、依頼ならいつでもお受けします。
ものによってはお受け出来ないかもしれませんが、受けた依頼はしっかり遂行致しますので。
サティヤの名で情報屋に問えば連絡が取れると思います」

一度仕舞った片手の短刀を再度取り出し、腰のあたりの鞘に両刀を刺し、青年に一礼する。
依頼主候補が増える事は喜ばしい事だし、彼はきっと私の力量をある程度推測している事だろう。
お眼鏡にかなったかどうかはいまいち自信が無いが、名前だけは売っておく。

ノア > 「愚かね」

言えてる、そう言ってクックッと喉奥で笑う。
ともすれば罵倒のようなそれは、女の無感情な声で聞くと違って聴こえた。
こうまで言われてはそうそうに滅んで死に絶えるわけにはいかない。
旗揚げ人のおっさんのケツを蹴り上げる用意でもするか。

「応援どーも。
 殺しは手段、そんな連中から話すなり何なりで広げていくさ」

「ん、サティヤな。
 俺は……そうだな、今ん所はノアとだけ。
 次に会う時にゃ名乗りも変わってるとは思うけどな。
 覚えておくさ、敵にならない事を祈りながらな」

ご丁寧に獲物を収めて一礼する姿に口の端を上げて。
腕が立つのは言うまでも無い、それでいて無益な殺し合いを仕掛けない。
そんな面白い女が居たと、我らが頭領に伝えよう。

去る背中に向けてゆるゆると手を振ろう。
その背が見えなくなった頃に、死臭の漂い始めたドアの向こうへ己も姿を消そう。

サティヤ > 「ノアさん、ですね。憶えておきましょう。
それではまた。」

出来るだけ愚かではない日々を…
と、心の中で呟いて背中を向け、その場を去っていった。

「話がまあまあ分かる方でしたね。
次会うときは出来れば殺しの依頼でない時だといいのですが」

そんな小さな独り言とともに、今日の依頼主の下へと向かうべく薄暗い路地裏へと姿を消した。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」からサティヤさんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」からノアさんが去りました。