2022/09/15 のログ
シャンティ > 『「――悪ふざけをします」その言葉は高らかに打ち出され、劇場に響いた』

女はそれだけ謳うように語ると、静かに言葉の波を受ける。
それは傾聴しているようにも、聞き流しているようにもどちらにも見えた
ただ、静かに女が佇んでいたことだけは間違いがなかった

そして――

「あ、は……」

女の口から声が漏れた


「あ、は、は……ふふ、ふ――あ、っは、ははは、ははは、はははは……」

声が高らかにどこまでも遠く劇場に響いた
狂ったような、熱のある笑い


「目的、も……目標も、すべ、て……うち、やって……あ、は。自分が、楽し、む……ため、だけ、に……あなた、が……好き、に……活動、する、のぉ……?」


けた けた けた けた
女の哄笑は止まらない


「ただ、ただ……自分、の……もと、めた……アート、を……体現、す、る……ふふ。えぇ、えぇ……好き、よぉ……そう、いう、の……あ、はぁ……」

ひとしきり笑った女は静かに、静かに言葉を紡ぐ


「いい、わ、よぉ……私、は……『スシーラ』……は。舞台、の……仕立て、屋。あなた、の……舞台、を……整え、れば……いい、のか、し、らぁ……?」

くすくすと忍び笑いを浮かべる

ノーフェイス >  
「"やりたいから、やる"に勝る動機なんて、どれだけあるんだよ? 
 だってここは学校で、ボクらは学生なんだぜ?」

消極に流されたモノではなく、気合の入った不良生徒は華を背負うものだろう。
熱を、パッションを浴びれば、それはとても心地よく、耳をそばだてて。
それが賞賛なのか、嘲弄なのかは、どうでもよかった。
自分の熱がだれかに火をつけられればそれで。

「ボクだけじゃない。
 秩序が窮屈でしょうがないやつ。
 裏でしか表現できないアウトロー。
 あるいは、"ただなんとなく、闇に憧れた"くらいの動機でもいいだろう。
 表舞台にはない、野蛮な美しさなんてのは、追及するのがとても楽しいジャンルだろ」

まっすぐ見下ろしている。
自分がだれのことを言っているのか、そんなの包み隠してもしょうがない。

「アーティスティックなやつがいい。
 最低限、ボクくらいには……技術じゃない、魂というか感性の話かな。
 そういうやつらを集めて、楽しいことをしたいんだよ。
 キミもだ、スシーラ。 ルールをこっそり破りたくてしょうがないエンターティナーをボクは探してた」

差し伸べたまま。

「ボクはキミの演出を求めよう、腕をふるえる舞台を創り上げよう。
 対して、ボクはキミを愉しませられる演者になるし、プロデュースもできないこともない。
 いろんなヤツを集めれば、相互にできることが広がってく――
 なんてのは気のハヤい話だけど、主役なんて多いほうが楽しいに決まってるから」

あくまでやるのは、部活動。
世界を救ったり壊したり、変えたりなんて求めていない。
まずは愉しむことだ。そして、

「格好良いのを目指していこう――ああ、そうだ。
 "はじめましてだったよね"? いつもそれが不安になるんだ、ひとにあうたび。
 ボクはノーフェイス。 いい名前はメンバーといっしょに募集中」

華は未だ咲かず未熟だ。咲く保証もない。
だからやるのだと笑うように。

シャンティ > 情熱とは人を動かす原動力であり、原初の力でもある。それは流されるままに、思いつきだけで、生きた死体のように生きていた女には、ついぞなかったものだった。しかし――


「あぁ――そう、そう、ねぇ……"原初"、の……欲求……本能、の……訴え……それ、は……美、でも……芸、でも……なん、でも……溢れ、体現、され、る……もの、は……至上、だ、わぁ……」


自分の表現したいものを表現したいままに それが 魂の現出、というものではないか
それがなんであろうと どんな結果をまねこうと


「あら、あら……誤解……い、え……解釈、違い……かし、らぁ……ふふ。私、は……ルールを、やぶ、りたい……の、じゃ、ない、わ? ただ――そう。」


差し出された手を取る

「やり、たい……こと、する、のに……たま、たま……ルールを、やぶ、る……必要、が……ある――くらい……の、おは、なし……よ? 破り、たい……わけ、じゃ、ない、わ? でも……仕方、ない、わよ、ねぇ……だって……やり、たい……の、だ、もの……ね?」


無邪気な子供のような笑みを浮かべた。

「ええ……"はじめまして"、ね。誰、でも、ない……あなた。ただ、あなた、が……歌い、踊る……だけ、で……混沌、を……撒き、そうな……あなた。いつ、だって……"はじめまして"、で……いい、わ、よぉ?」


くすくすと女は笑った

「さ、て……まず、は……なに、か、ら……?」

ノーフェイス >  
「もとから我慢してなかったクチ……? フフ、そう、仕方がないのさ」

そして、誰もそれを汲んではくれない。
だってそういう場所なのだ。
仕方ない、を免罪符にできるのは、表舞台だけ。
こちらがわで遊ぶというのはそういうことで、だからこそ――楽しみがあるのではないか。
そう考えたから、はじめたこと。

「フフフ」

温度覚はあるのだろうか。
その手を握り、引いた。舞台の上へ。
ギャラリーがいなくなった。今は、スタッフが、ショー・マンが密談をしているだけ。
同じ高さの立ち位置に。

「これで、キミも"夜に吼えるもの"だ」

それが部活の名前。
アートを手段であり目的とする、ただ娯楽を突き詰める集団。
手段は、戦いでも殺戮でもなく――暴走する自我の自己表現。

「おッ? やる気あるねぇ。
 そうだな、色々あるさ!やりたいこと。
 記念すべき第一号の新人歓迎会に――ここを今後も使っていいか、キミにお伺いも立てないと!」

身振り手振りを大きくして、埃の積もった舞台上を踊るように練り歩いた。
そうしてくるりと振り向くと、顔には笑顔の仮面がはめられていた。

「……それとも、さっそく悪いことがしたいのかい?」

シャンティ > 「そう、仕方、が……ない。私、が……なに、を……しよう、と……なにが、おこ、ろう、と……ふふ」

それが認められることか、認められないことか
そんなものは問題ではない
求めるものの先にある障害が、困難が
ただ、少しだけ違う程度の話

たのしいから やるだけ


「"夜に吼えるもの"……ね。そう……悪、くは……ない、わ……ね?」


寄る辺を失い、さまようだけだった女は新たな寄る辺に誘われる
ただ思うままに ただ求めるままに ただ本能のままに


「此処、を……?」

首を傾げる

「此処――は、誰、のもの、でも……ない、わ? 許可、なん、て……誰、に……とる、もの、で、も……ない、し。なに、より――」

笑う

「やり、たい、よう、に……する、の、で、しょう? 誰、憚る、必要……が、ある、のかし、らぁ……?」


笑う、どこか暗い どこか狂い どこか歪んだ どこか――美しい笑みで

「さし、あた……っては……そう、ねぇ……提案、が……なけ、れ、ば……」

女の手に二つのグラスが現れる。
そこにはナニカの液体が満たされていた

「乾杯……で、も……す、る?」

ノーフェイス >  
「だれかのものを奪うのは、ボクらの活動内容からは少し外れたところだケド……
 キミがそういうのなら、ここは誰のものでもなかったのだ、という文脈が生まれるわけだよね」

仮面を外す。"枠外"に放り投げた。
仮面が落ちる音は聞こえない。
熱を感じるほどの照明を浴びながら、無人の観客席に恭しく頭を垂れる。

「それでは、ありがたーく頂戴しよう、この巨大な劇場を。
 ここはボクらの劇場。悪い子が集う場所。名前は――まあいつかでいいな。
 ボクのアジトは、正直ショーをやるとなると手狭でね……そういう意味でもありがたい。
 とはいえ、ゲリラで市中で演るのも、だいぶ面白いことにはなりそうだ。
 喜劇を表現するなら、秩序側の視点も必要不可欠……そのときの賑やかしは早速お願いするかもだけどさ」

そんな折、手元に配されたグラス。
不思議そうな顔をして、ゆらりとくゆらせてみた。
水面を見下ろす。組成なんてわかりもしないし、わかっても覗かない。

"否、まさか"と。
そう考えても、否定しきれないスリルがある。
彼女は自分の部下でも友達でもない。
もしかしたらがいつでもつきまとう相手。
唇がむずりと笑みを浮かべて、両の眉毛をぴょんと跳ね上げた。

「では、グラスを拝借」

彼女に正対し、グラスをグラスを優しくふれさせる。
音は立たず。ずらすように動かせば、彼女に振動が伝わるだろう。

「今宵の記念すべき"はじめまして"と」

グラスが離れる。

「生誕を祝して……」

涼やかな音を立てて。
不敵な笑みを浮かべながら、女は迷わずグラスを煽った。

シャンティ > 「劇場、は……万人、に……開か、れ……来る、モノ……拒、まず……けれ、ど……誰、通う、わけ、でも……ない……うち、捨て……られ、たも、の……な、ら……使、わな、けれ、ば……損……だ、もの」

女はどこか遠くを見ながら、目の前のモノに語るようで、誰に話しかけているかもわからぬように、口にした。
熱に浮かさるようでもあり、夢から覚めたようでもあり、どこか虚ろにも聞こえる声

それでも、一度口を閉じれば嘘のようにもとに戻る

「本当、な、ら……お披露目……で、も……する、ところ……なの、だろう、けれ、どぉ……本筋、では……ない、わ、ねぇ。それ、は……おい、おい……考え、れば……いい、か、しら……」


唇に人差し指を当てて考え――


「ふふ……はじ、め、まして……そして……生まれ、変わり、へ……なん、て……ね?}

掲げたグラスの中身を煽る。
見た目は両者同じもの。ただし、本当に同じなのかは誰にもわからない


「あぁ……面白い、わぁ……ふふ」


くすくすと女の笑いが響いた

ご案内:「廃劇場」からノーフェイスさんが去りました。
ご案内:「廃劇場」からシャンティさんが去りました。