2022/09/20 のログ
ノーフェイス >  
「フフフ。
 尻尾を巻いて逃げる選択もあっただろうに――
 アリガトウ。 最高のショーになったよ、スティールバイソン」

ギブアップの宣言でしらけるものなどどこにもいない。
そもそも勝敗などどうでもよかった筈だ。
沸き立つギャラリーの上で飛び交う粗雑な通貨の配当がどう変わったか、の違いでしかない。

飲み比べでなにが変わるというのかと、誰もがわきまえながらも、
それをやらないという選択など存在しないのが熱狂というもの。

「リベンジ待ってる。
 ――ってのが、勝者の礼儀?
 ああ、ふつうに聴きにきてくれてももちろんイイぜ。
 デカい箱ならチケット取るケド。
 キミの健闘を讃えて――ほら、水持ってきてー、よく冷えたヤツ!」

テーブルから手を離し、こちらは直立して見せた。
不敵な笑みを浮かべると、更に観客が沸き立った――脳を揺らす大音声だ。



「う゛」

不意に口を手で抑え、白い顔がさっと青くなる。
場が、しん……と沈黙に包まれた次の瞬間、カウンター横の扉に駆け込んだ。
そこがレストルームなのは言うまでもなく、表現をためらうようなうめきが続いたのは言うまでもない。

撤収ムードを察して捌けていくオーディエンスは熱を宿したまま。
熱狂を共有した者として、飛び入りゲストはそれはもう丁重に、
とりあえず比較的安全に休めるところまでは運ばれる筈だ。

この夜何が起こっていたのかは、噂が噂を喚ぶばかりで、酒に酔ったユメのよう。
ノーフェイスは数日後にヤサを変え、ここで行われたショーは、これが最後となった。

良い区切りになったよ、とでも言うように。

スティールバイソン >  
「お前……ロックだよ…信じらんねぇくらいのな…」

生まれたのは勝者でも敗者でもない。
伝説だ。
デストロイヤーズ・フォウに女の身で殴り勝った。
そういう伝説。

「ったく……よく口が回るぜ…」
「俺は……もう…」

熱狂の渦の中心で。
昏倒寸前の記憶に、ノーフェイスの顔を刻み込もうとして。
 

「ヴ?」

思わず聞き返すと、色が抜けた紙のように白い顔が青ざめた。
そしてカウンター横に駆け込む姿。

「はぁ……お前は本当に…」

ロックだよなァ。
両脇を支えられながら、嘆息する。

それから。
テルミナスセブンの中で、デストロイヤーズ・フォウの配下は。
夜に吼えるものへ敬意を払うようになった。

それは伝説の目撃者から、伝説そのものへ支払われる正当な報酬だったからだ。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」からスティールバイソンさんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」からノーフェイスさんが去りました。
ご案内:「廃ビル屋上ー違反部活跡地ー」に笹貫流石さんが現れました。
笹貫流石 > 「あーー…ゴホン、こちら【死線】~…どっかの監視対象さんが”やらかした”検分と後始末は終了っす。
追跡はちと無理っぽいんで、そっちに後任せていいっすかねぇ?」

とある廃ビル…の、屋上にて。イヤホン越しにそんな報告を誰かに送る黒ずくめの少年一人。
何時もは固く閉じている瞳も、今はサングラスを掛けているからか半開き程度には開いており。

「――で、最近は落第街もちーっとばかりまた賑やかなってきてますけど…あー、現状維持で。
はいはい…で。俺は予定通りまた他の監視対象の監視、と。わーってますよ。」

うんざりしたような溜息は隠さずに零しながら、やれやれと頭を振る。一人で残りの監視対象カバー出来る訳がないだろうに、

「あと、2つほど。【悪運】さんが”保護”したアレについては?…了解、俺は動かない感じで。
あと、【化外殺し】がまーた派手にやらかしたんですけど…いや、俺が何とかしろってんな無茶な。死ねと?」

頭が痛い、とばかりにこめかみを軽く片手で押さえながら盛大にまた溜息が漏れる。
ともあれ、報告はそのくらいだ。適当に報告は打ち切って通話を切る。

「中間管理職っぽくて嫌になるよなぁ…癒しがほしいわぁ。」

屋上で一人寂しく嘆くオレ。ちょっとセンチメンタル気分になりそう。もうなってる。

笹貫流石 > 「…【化外殺し】はアレだ、追影の旦那か廬山の旦那辺りに任せたいんだけど、あの人たち無茶苦茶だからなぁ…。」

あの人たちに比べたら俺なんて路傍の石ころみたいなものである。間違いない。
ふと、メール着信に気付いて仕舞い掛けた携帯画面を確認する。



1件目【電子殲戦】

『笹貫~~ちょっと幾つかパーツ買ってきて~~代金はアンタ持ちでよろしく。大至急。』


俺はパシリじゃねーの!迷わずぽちっと削除。次。



2件目【神便鬼毒】

『そろそろ良い返事を貰いたい。私の毒薬の実験台になってくれないだろうか?』

嫌に決まってんでしょ…他当たれ他を。削除っと。次。



3件目『凶刃』

『おい、暇だから今度ちょっと斬り合い付き合え』

アンタと斬り合いとか秒で死ぬわ。削除。次。



4件目『■■■■■』

『………パシリ。』


……………。

笹貫流石 > 「いやいやいやいや、特級の管理もっとしっかりしろよ…!!
あと、パシリ言うな悲しくなるから!嫌がらせか!?」

思わず携帯落としそうになったわ。二度見したわ!!つーか何で俺のアドレス知ってんだアイツ!

「…と、いうか煽られてんの?からかわれてんの?流石に地味にイラッと来たんだけど…。」

特級監視対象――こう書くと仰々しいが、その実態は…よそう、あまり思い出したくない。俺は無関係無関係。

「…俺の周り、ロクな奴がいねーんだけど……いや、人様の事は言えねーけどさぁ…。」

何か気が抜けてしまったというか、脱力したようにがっくり項垂れて一度座り込んだ。精神ストレスマッハだろこれ。
とどめに、何か廬山の旦那から「仕事代わりによろしく☆」とメールが来た。……そろそろ俺は泣きたい。

笹貫流石 > 「…取り敢えず、”アイツ”は何時か直接会って一度説教しないとな…ったく。」

厳重に隔離されて厳しい監視下に置かれている以上、面会すら相当の手間と時間が掛かるが。
アレと因縁があるのは追影の旦那とかあと数人くらいで十分だ。俺は関係ない。

「……で、廬山の旦那の仕事を代わりにやって…パーツの買出しと毒薬の実験台と…斬り合い相手…ねぇ。
…で、おまけに【化外殺し】を止めろと……無理ゲー過ぎる。」

他の監視対象連中から連絡が来て無いだけまだマシか。酷い時はほぼ全員から来るのだ。
なまじ、自分の『役割』を把握されているだけに便利に扱き使われているに等しい。
あの連中、オレを何だと思っているのだろうか?二級最弱(自称)を舐めるな!

…はい、全く持って弱者なので立つ瀬がありませんとも。
立ち上がる気力が失せてしまったので、座り込んだままぼんやり屋上からの景色を眺めて。

「……我ながら、なーんでこんな立場に甘んじてまで学生やってんかねぇ、俺は。」

笹貫流石 > 「…と、いうか労災とかなったら保証されんだろうか…あと、そろそろ特別手当とか貰いたいんだが。」

しみじみとぼやきながら、懐をごそごそ…取り出したるは煙草!!…ではなく――ココアシガレットである。
うん、未成年だからね、仕方ないね。と、いう訳でココアシガレットを口に咥える。
ついでに、携帯をぽちぽち操作してお気に入りの曲リストを引っ張り出して音楽スタート。

「……こうやってぼんやり音楽聞いてる時が一番落ち着くよなぁ。」

ジャンル問わず、琴線に触れる音楽があれば雑多に何でも聞くタイプだ。
よって、具体的な好みというものはない…こう、ビビっと来たら即お気に入りに放り込む。