2022/09/26 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」にパラドックスさんが現れました。
パラドックス >  
夜空を赤く照らす炎の明かり。
煌々と燃える様は何も、此方側では珍しい事ではない。
とある違反部活組織がついに目を付けられ、風紀委員の"鎮圧"を受けている最中だ。
出る杭は打たれる。何れも道理に外れたものは、何時か秩序に狩られる宿命だ。
小規模な炎上の中、『風紀』の腕章をつけた正義の使徒が
暴徒の群像を押さえつけていた。その手首に手錠が掛けられ、まさに鎮圧は成功した。
見下ろす勝者は、つかの間の一息と共に汗を拭った。


──────そう、トラブルとは何時も突然やってくる。


炎を貫いた青い閃光が、無慈悲に風紀委員数名の胸を貫いた。
まさに一瞬の出来事。如何に優れた異能者と言えど
不死性を持たぬその体は、心の臓と全身から血をまき散らし倒れ伏す。

<クォンタムドライバー……!>

ただ一人残された大男の風紀委員が叫んだ名は、無機質な電子音にかき消される。

「丁度良かった」

怒号が炎をかき消し、そこに立つはスキンヘッドの細身の男。
その手に握られたのは、ケーブルがむき出し、硝煙を吹かす大型のレーザー銃。
デジタル時計を模したベルトが、ホログラムの数字を無数に映し出す。

「複数の異能者を捕える実力者。
 お前達が私の計画に"丁度良い"」

男は静かに、己の両腕をクロスする。
大男の震えた怒声が、"何者"と問いかける。

「答える必要無い。そこにいる連中と同様、死んでもらう」

「──────変身」


<クォンタムタイム!>


浮かび上がる数字が砂となり零れ落ち、男の体を包んだ。
大男は慟哭にも似た怒声を上げる。更にその肉体が膨れ上がり
更に巨大な"黒狼"へと姿を変え…──────。


<クォンタムウィズパラドクス……!>


はじけ飛んだ砂から現れたのは、全身に黒いケーブルを巻き付けた"人型の怪人"。
全身にデジタル時計を身に着けたような怪人と狼男が対峙する。

パラドックス >  
夜空を揺るがす程の咆哮。
アスファルトを抉り、黒狼が怪人へと飛び掛かる。

『フン……!』

衝突────……!
機械の諸手と獣の諸手が取っ組み合い、衝撃で大気が揺れる。
蛮力と剛力が互角にぶつかり合い、一歩を譲らない。
先に怪人がアスファルトを蹴り上げ、互いに体が夜空に陰る。
即座に黒狼が振りほどき、獣の拳が腹部にめり込み、装甲が火花を上げた。

『……!』

距離が離れを態勢を崩しかけるも大したダメージにもならない。
互いに作りかけ、鉄骨むき出しのビル屋上へと着地し、再び対峙する。
今度はにらみ合いは起きない。獣はしゃがれた声で『貴様を拘束する!』と怒声を上げた。
ごうごうと燃える怒りの炎とは対照的に、怪人は無機質で冷ややかだ。
「0:0」のデジタル時計を模したような鉄仮面の奥で、鼻で笑い飛ばした。

『お前には無理だ』

<スラッシュ!>

手に持っていたレーザー銃の銃身から青いレーザーブレードが迸る。
同時に鉄骨を蹴り上げ、踏み込む互いのデッドゾーン。
血を抉る獣の剛腕を鋼鉄の腕がいないし、冷酷な蒼刃を獣の反射神経が避ける。
一進一退。互いの攻撃は決定打に無く、金切り音と火花が月下に散る。

パラドックス >  
そんな拮抗を揺るがしたのは黒狼の一撃。
裏拳を受け止めた怪人の防御を崩す様に、蛮力を込めたハンマーパンチ!
鋼鉄の防御を以てしても嘲笑うような暴力に装甲がひしゃげ、火花を散らし
怪人の態勢がわずかに崩れて、足元がよろける。

『クッ……!』

わざわざ日常の裏側に踏み込み、危険を冒しても平和を守る役割を担う。
自ら"前線"に赴く風紀委員なのだ。伊達ではない。
その一瞬の隙さえ逃さず、凶声の雄叫びと共に腹部に突き立てる手刀。
月明かりを乱反射する獣の爪は、鉄骨さえ容易く貫く暴威である。

『ぐぉぉ……!!』

鋼鉄の鎧を貫き、くぐもった苦悶の声が漏れた。
確かに確実なダメージを怪人に与えた。


然るに、惜しむべきは"自らも同じ"だと言う事。


黒狼の腹部を貫く青い光。生き物が焼ける悪臭と
獣の口から驚愕と吐血が鎧を汚した。

『惜しかったな。────それは、"読んでいた"』


<クォンタムバースト!スラッシュブレイク!!>


蒼刃がより一層、不気味に輝く。
月よりも明るい刃を素早く逆袈裟に引き裂き、蒼い軌跡が数度と黒狼の体を縫い上げる。
ずるりと鎧から鮮血と共に引き抜かれ、苦悶の声と後ずさる黒狼。
無念か慙愧か。黒狼は雄叫びを上げ、軌跡に込められたエネルギーが膨張し、爆炎と轟音なり、四散した。


<終局!>


無機質な音声だけが、誰が勝者かを告げている。

パラドックス >  
ベルトの数字部分をなぞれば、電光に包まれ鎧が消える。
姿を晒した男は、無機質に爆炎を眺めわき腹を抑える。
生暖かい血が溢れ、痛みが走るも男は表情一つ変えない。
出血量程、傷が深くはない。まさにコンマ、此方のが"早かった"。
向こうのが早ければただでは済まなかっただろう。
それほど身を差し出さねば勝てぬほどの相手だという事だ。

「…………」

胡乱な双眸は、足元に落ちているそれに気づいた。
『花咲里 十狼太』の名が記された学生証。
それを静かに拾い上げ……。

「フ……」

冷徹な笑みなと共に、握り潰した。
男は戦士ではない、"破壊者"だ。
互角の戦いを繰り広げた相手に敬意など、ましてや感慨さえ抱くわけもない。
広げた片手から砂が舞い上がり、まさしく命の如く、散っていった。

パラドックス >  
これで数名の風紀委員は殺害した。
男は再び、死体の残っている路地へと赴いた。
死体の他に転がっているのは、拘束された違反者数名。
男の顔を見るなり、表情が明るくなり声を張り上げる。
どうやら、"救世主"とでも思っているらしい。

「──────何を勘違いしている」

冷徹な声が、一蹴した。

「私は破壊者だ。何れこの常世島を歴史から抹消する。お前たちも例外ではない」

「変身──────。」


<クォンタムタイム!>


無慈悲な電子音性と悲鳴が、暗闇に木霊した。

パラドックス >  
──────……後日、違反部活「ランページ」を鎮圧しに行った4名の風紀委員が"行方不明"になった。


武器の密売や歓楽街への武器の横流しにより
危険視された為に鎮圧行動を移行した。
しかし、花咲里 十狼太率いる実行体は帰還することはなかった。
落第街にも、学生街にも、彼らの持ち物から痕跡まで"何一つ"不自然なほど残ってはいなかった。
「ランページ」はその拠点を完膚なきまで破壊され
構成員も同様に発見できず、壊滅扱いとなった。


「……これで、風紀の連中も黙ってはいまい」


夜明け前の暁を一瞥し、暗がりで独り言ち。
男の腕には、四つの腕時計。
血を零したような暁に背を向け、男はひたすら暗闇へと進んでいく。

「知るが良い。お前達自身の手で、常世の歴史は終わりを迎える」

進む先が一寸の光さえ闇だとしても、破壊者は歩みを止める事はなく
暗がりへと姿を消したのだった。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」からパラドックスさんが去りました。