2022/10/20 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に《吸血鬼/ヴラド》さんが現れました。
《吸血鬼/ヴラド》 >  
月は欠け始め、雲はまだらな層を描き、夜風が身を震わせる。
地上から吹き上がってくる風には日中の名残を感じるが、
冷気は、ゆっくりと手を伸ばす。
秋の紅葉。
華やかな世界に住めばこそ感じる美しい景観だろう。
 
―――朽ち堕ちた者たちからすれば自分たちを映した鏡のようだ。
 
美しく散ってこそ、この街では誰もが知る伝説となる。
散ったことすら知られぬ者たちは、妖かしと変わらぬ噂にしかならない。
 
「誰に彼にも正解なんてないようなもんだろ……」
 
旧時代の建築方式で作られ、異能と魔術の跋扈するこの世では耐久不足とも言えた窓ガラスが割られ存在しない雑居ビルの一室から街を――大通りを見下ろす青年がいた。
土汚れた作業着を隠すように襤褸の外套を羽織る。 顔は黒い狐を模した面をつけて隠しているが、覗く瞳は赤く煌めく。
大した風もないのに黒いマフラーは大きく揺れる。

《吸血鬼/ヴラド》 >  
落第街という場所にはこういう建築物が多い。
都市部に行けば、それこそ耐魔・耐異能な建築物が多いが……このあたりは常世学園の黎明期に取り急ぎ建てていたのでは?とか、
建築関係の異能持ちの実験として既存の建築方式で構築した建築物が多いんじゃないかとか囁かれたりするが、真偽は不明。
真実を知る当時の生徒なんて、大体もう島から出て行っている。
ここはそういう場所、出入り激しく人も出来事も流星のよう。
 
「逆説を訴える者も今を変えようと叫ぶ者も自らを破壊者と嘯く奴らも俺は『悪く』は思わない」
 
主張することを咎めるのは役目ではない。
それをやるべき連中はいる。
 
「咎め、裁くのは『正義』のやることだ」
 
我々は、正義ではない。
我々に、正義はない。
だが。
 
「個人個人にも思うことがあるのなら好きにしろ、とは俺は思うよ。
 俺に人を縛るつもりはないからな」
 
個人の思想に基づく正義を邪魔する『悪』も持ち合わせてはいない。

《吸血鬼/ヴラド》 >  
この街の、裏の世界を守るとは、個人やかつての時代におけるサマー・オブ・ラブのような社会現象を消し去ることではない。
マフィアのような連中が地域支配をするのを潰すことでもない。
 
―――それも秩序の破壊と認識する『悪』もいるだろうが。
 
「俺が『悪』とするのは―――、」
 
そういうモノではない。
 
「……収集した情報は、《拷悶の霧姫/ミストメイデン》に。
 彼女の判断が最も『俺たち』の悪としてまともだ」
 
懐から取り出した小型の記憶媒体を背後の闇の中へと投げれば、影に食われるようにしてそれは消える。
僅かに出現した気配さえも一瞬で消え去る。
 
《裏切りの黒/ネロ・ディ・トラディメント》において《吸血鬼/ヴラド》の名乗る青年は、眼下に広がる光景へと再び視線を戻す。
街明かりに照らされる青年の髪の一部が僅かに緑色に変色して見えたのは、陽気な明かりのせいか。
視線に気が付き大通りから誰かが雑居ビルを見上げるが、そのときには人影など存在しなかった。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から《吸血鬼/ヴラド》さんが去りました。