2022/12/19 のログ
サティヤ > ここで焦るのも、このまま動けずにいるのもどちらも愚かである。
あちらに何か動きがないか見守り続けるのもいいが、暗殺者が差し向けられており後ろからやられてしまう可能性も無くはない。
とはいえ、その辺りは自分に対しては容易には結果を出せないだろうという客観的事実がある。
200年を超える旅の記憶と経験は、暗殺程度に屈するモノではない。
とはいえ、この建物ごと消し飛ばしてしまうような大魔法やら爆弾を放りこまれた場合は流石にどうしようもないのだが。

「このままで居ても仕方がないですがどうしましょうか…
キャスターの護衛もしっかりしていますし、下手に顔を出せばハチの巣でしょうね。
だからと言ってこのままでは…」

幸い、この窓の中が見える場所に敵は見受けられない。
隠れているだけの可能性もあるが、外からは死角になるように室内を移動し、事務室の入り口から出る。
敵を増やすのは愚かだが、既に騒ぎ始めてしまった『薄闇の霊廟』の彼らには自分の盾となってもらおう。
恨むなら、包囲している方を恨んでほしい。

事務室の扉を開けた瞬間、間近で驚いた顔でこちらを見て口を開けた中肉中背の男の喉を裂きそのまま首を回して寝かせる。
手に持っていた拳銃を奪い、懐の注射と小瓶を奪う。
ラベルを見るに、鎮静剤や魔力封印薬の混合薬のようだ。
使えそうだなと懐に仕舞い、一階への階段とは逆に、奥へと足音を殺して進み始める。

サティヤ > 『薄闇の霊廟』は、事前情報の通りであれば小さな違反組織である。
しかし、その割には恨みを買いやすい。
依頼主も、娘を喪った原因は全く別のところにある。のにも関わらずこの組織を仇とするのは、娘の遺体を奪い、バラし、売りさばかれたからである。
先日の怪異の遺体を思い出し、あの判断は正解だったななどと考えつつ、二階奥倉庫へと到達した。
事務室で長の遺体より入手した鍵で倉庫を開ける。

「情報通りであれば…これですね」

ここで籠城するのも良いか、などと考えてしまうぐらいの防御結界に守られた倉庫の中にあったのは、麻酔の入った煙玉。
一帯に麻酔をばら撒く非致死性の魔力性の毒である。
魔力の毒というのがさらに都合がいい、こういったものは

「私には効かないですからね」

厳密には効くのだが、その効きは非常に遅い。
コートの端々を縛り、倉庫内にあった対毒魔道具をポケットにしまう。
自分で魔力をチャージできない為、現時点のチャージが切れると終わりになるが、それでもないよりはましだろう。
その場で煙玉を叩き割り、4つほど懐に仕舞う。
さらに追加で1m弱のメスのような武器があったのでこれも持っていく。
短刀を左手に持ち替え、右手に巨大メス。
さらに麻酔玉と拳銃に元から持ち込んだ投げナイフ10本程度と代えの短剣、幻影を見せる魔道具と魔力爆弾複数。
これで、この陣形を突破することになる。

「さあ、行きましょうか」

事務室が爆破され、爆風が廊下に吹き荒れ、振動がここまで伝わってくる。
ここで死ぬような愚か者は私ではない。短刀を構え爆風の中駆けだした。

サティヤ > 爆破され消し飛んだ事務室の大穴から煙玉を一つ投げる。
狙うは勿論ローブの男の居た辺り。
爆破の影響でいまだに煙が視界を遮ってくれる。おかげ様で煙玉を投げてそのまま一階階段側へと走り抜ける事に成功した。
階段上から階段下を覗けば戦闘が発生しているのが見える。
『薄闇の霊廟』構成員と、襲撃者たちが罵声を浴びせ合いながら戦っている。

突如襲撃された構成員達は、二重で理解が追い付いていないだろう。
仲間が気づかないうちに殺されていた挙句、謎に爆破され、さらに武装した男たちが攻めてきているのだから。

正面からの脱走は難しそうだと考え、事務室斜め正面の部屋に侵入する。
先ほどまでは誰かいたようだが、襲撃者に対して出払ったようで誰もいない。
卓上に放置されたコインを数枚回収し、懐から取り出した魔力爆弾と煙玉を窓から外へと投げる。
即座に銃声が鳴り響き、魔力爆弾が爆発する。
魔力爆弾が周辺に強い魔力波を放ち、その余波がこちらまで伝わる。
この魔力爆弾は、破壊性能は皆無だが、周辺の魔力を滅茶苦茶にする優れもので、これをまともに喰らった魔法使いは三半規管を狂わされたがごとく平衡感覚を失う。
さらに追い打ちの如く投げ込まれた煙玉は、魔力波の影響を受けて広く、薄く毒を散布する。
本来の性能より薄まってはいるが、まともに動けなくするには十分な程の毒が建物の半面を覆う。

爆弾と煙玉の投擲と同時に、部屋を出て倉庫側まで駆ける。
まだ残る煙に隠れ倉庫前まで戻れば、先ほど居た部屋が消し飛ぶ。
先ほどもそうだったが、破壊の規模が小さい。
四肢欠損程度なら問わずとも、一応生け捕りする気なのだろう。
こちらがある程度タフであるという情報もしっかり掌握済みかつそのうえでこの容赦のなさは中々にしっかりと準備してきたのだろう。
さて、どう逃げようか。

サティヤ > 階段から上がってくる何者かの気配を感じる。
残る煙玉は2個。魔力爆弾の影響下で動けているという事は今来ているのは恐らく武装兵。
先ほどから罵声が弱まっているし、『薄闇の霊廟』は全滅したとみるのが妥当だろう。
本気で籠城する考えが脳裏に浮かぶがまだ早い。
流石にあの数を相手に持ちこたえる自信はない。
壁から手のみを出し、投げナイフで先頭の二人を仕留め、更に拳銃で他を仕留める。
そして幻影を見せる魔道具を用い、自身の幻影を廊下の倉庫と反対側に投影する。
手足を狙った銃撃が幻影に浴びせられるが、兵もそれが偽物であるとすぐに気づく。
だが、一瞬で十分。
メスを振りかぶり、銃撃をしていた兵数人の腹を切り裂く。

「武器であるのにも関わらずメス型をただ象る意味がないですからね」

こういった武器は、大抵の場合制約を持っているものだ。
このメスの場合、手術に用いる道具であることから”切開”と言ったところか。
予想通り、先頭の兵達の腹を一撃の元に切り開き、そのままメスを捨て、拳銃と短刀を振るいながら兵の間を駆け抜ける。
狭く、崩れかけた廊下を大人数で攻めれば、こうもなるものだろう。
おそらく、この状態では爆破もためらう。
残り2個の煙玉を階段上で一つ破裂させると同時に拳銃でこちらに狙いを定めた兵達の脳天を撃ち抜く。
一発わき腹にもらったが、顔をしかめるだけで済んだ。後で摘出しなければ。

わき腹を撃ち抜いた兵の頭に拳銃の持ち手の部分を叩きつけ、拳銃を放棄する。
魔力爆弾を入り口の外へと放り投げ、さらに煙玉も投げ込む。
投げナイフを3本指の間に挟み込み、集中力を高めて外へと飛び出す。
こちらに向けて杖を向けてなんとか立っているローブ姿の首へとナイフを投擲し、煙を吸い込み今にも倒れそうになっている兵達の首をかっ捌きながら裏路地目指して走り抜ける。
弾ける銃弾は可能な限り弾くも、数発肩や足にもらってしまった。
もし左腕か関節に当たっていたら危なかったが、なんとか裏路地へと抜ける。
後から罵倒と指示を出す声が聞こえるが、それを無視し出来る限り入り組む方へ、ジグザグで駆けていく。
何とか逃げ切る事には成功したが、しばらくは仕事は無理そうだ。
情報屋をどうするか、依頼主にはどう報告するか、狙ってきた組織への対策、銃弾の摘出、しばらく身を隠す場所etc
しばらく、頭を抱えることになりそうだ。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」からサティヤさんが去りました。