2022/12/28 のログ
ご案内:「灰の劇場/VIPサロン」にノーフェイスさんが現れました。
■ノーフェイス >
落第街の何処かにあるという『灰の劇場』。
――の、VIP専用サロン。
ひらたくいえば、悪だくみをするための場所。
そのため、如何な耳目もそこには届かない。
招かれた客のみぞ知る、ピカレスクの休憩所。
数人で寛ぐには広めの室内、柔らかな絨毯、
鼈甲の灯りが浮かび上がらせる、
バロック様式の内装は誰の好んだものだろう。
ご案内:「灰の劇場/VIPサロン」にシャンティさんが現れました。
■ノーフェイス >
応接用のソファセットに座る彼女の前に供されるのは、
ホットグラスに満たされる、層状に重ねられたコーヒーとクリームのカクテル。
コーヒーからモカクリーム、次第にクリームと、黒から白へのグラデーション。
最上層のクリームの天蓋の上にナイフでチョップされたチョコレートとオレンジピールが飾られていた。
その眼に見えずとも、提供した側がやりたくてやっただけのことだ。
「ハロ~、ひさしぶり、スシーラ。 元気してた?」
定例会とか、全員で顔を合わせるだとか、そういう活動はしない違反部活だ。
平然と数ヶ月単位の久々がありえる活動形態において、
そうした挨拶はさして珍しいものでもない。
「どぉだった、ホーンテッド・ハプニングス――ハロウィンは。 それとクリスマスは?
素敵な夜を過ごせたカナ?」
自分の分を手に、向かいのカウチにとさりと腰かけて脚を組む。
意匠の凝ったねじれくねった金属のマドラーをグラスに差し込み、
ゆっくりかき混ぜながらに、炎の双眸が彼女をみやる。
自分が呼び出したのだ。仕事を頼みたい、と。
■シャンティ > 女は物静かにソファに座り、置かれたグラスに『注目』する。
「……コーヒー……モカクリーム……」
小さくつぶやき、目の前のカクテルの内容を確認する。劇物の類は入っていない――などと、そんなことは実のところ女は気にしてはいない。ただ、やりたいようにやっている共犯者が、どんな趣向を凝らしたのか。それを確認しただけのことである。
「えぇ……おひさ、し……ぶり。元気……そう、ねぇ……変わ、らず……とい、った、とこ、ろ……かし、らぁ……?」
変わらずといえば変わらずの、気怠い口調で言葉が返ってくる。それだけでは健康状態は推し量れない、かもしれない。しかし、女にとってはいつものことであった。
「そう、ねぇ……そち、らも……ほど、ほど……に、は。ふふ。ま、あ……思った、より、は……騒ぎ、に……なら、なか、った……けれ、どぉ……あな、たの……方、は……?」
ハロウィンの"パーティー"で何が起こったのかは概ね把握はしていた。しかし、だからといって聞かない理由にはならない。
「ふふ――頼み……って、そこ、関連……だった、り……?」
小さく首をかしげた
■ノーフェイス >
「ストレートのほうが良かった?」
そうじゃないほうが好きなんだ、と笑ってのけた。
マーブル模様を描く甘やかなホットドリンクに口をつける。
「ボクはいつでも最新だよ、常に変わり続けてる。
とはいえキミがその対応に憂慮する必要はないぜ。
シンプルにいえば"絶好調(Smoking)!"――キミも?」
コメディ映画の決め台詞を拝借し、ぷらぷらと組んだ脚を揺らしながら笑った。
すこし遠回りな話をしたくなる相手だ。敬意と、油断で相手を誘うような。
「どぉかな――案外見えない影響が誰かに出てるかもしれないぜ。
未だにキミが喚んだカボチャの妖精連れ回してる物好きがいたりして。
あの夜の目的のうち、大きいほうはいい感じに推移してると思う。
もうひとつ、小さいほうは――想定してた結果じゃないけど、
ボクにとっては素晴らしい刺激になってる、キミにとってはどうだろうな」
問われると、まずは淀みなく一言を返した。
あの夜はそもより、多くの違反部活の合同活動であって、ノーフェイスを主役としたイベントではない。
――"主賓は誰か"を取り違えるように仕組んではいたけれど。
"あの夜、あの形で行う"ことが最善であり、そしてそれは確実に良い方向に動いている、と思う。
しかし後半は、細い顎先に指をあてて思案顔。
「そうといえば、そう。
――その話に行くまえに、キミの意見を聞いておきたい」
■シャンティ > 女は迷わずグラスを口にする。
「そう、ねぇ……いい、の……じゃ、ない、かし、らぁ……この、温度、差……も」
冷たい上層と温かい下層。上層の甘みと冷感を味わった後に後から流し込まれる、温かい液体。それは温度差と味のグラデーションをもって口の中で混じり、喉の奥に流し込まれていく。
「あら、あら……気弱、で……冴え、ない……若者、から……転身……? それ、は……確か、に……変わり、って、いって、いる……と、いえる、わ、ねぇ……ふふ。」
欠片もそうは思っていない調子で答えながら、女も笑う。ただの愚か者ではない。稀代の道化相手に女は興味と関心をもって臨んでいた。
「ふふ――世界は……回る。蝶の、羽ば、たき……で、すら……世を、変える……の、であれ……ば、ね。種を……蒔く、のは……悪い、こと、では……ない、わ、ね?」
一時の夢として放たれたモノが、どこかでまだ生きているのなら――それほど愉快なことはない。女は、そう思う。それが、いずれ何かに育つのなら、それもまた悪くない。
「そう、ねぇ……もう、少し……派手、さ……は、欲し、かった……けれ、どぉ……今、この、星巡、り……なら、あれだ、け……できれ、ば……上出来……と、いえる、か、しら……ね?」
人差し指を、薄い唇に当てて考えるようにして答える。何もないよりは、何かがあっただけでよい。それが、それなりに刺激になっていたのならもうそれだけでも十分以上と言える。ただ――予定したものと、別の刺激が起きたのも確かだろう。それは、女にも少々予定外な部分はあった。
「意見……? あなた、が……? ふぅ、ん……? なぁ、にぃ……?」
意外と言えば意外。想定内といえば想定内。その言葉に、女は薄く笑って答えた
■ノーフェイス >
「神話のトリックスターの祝福よりも眼が覚めるようなヤツを、小さいころに味わったからね」
現状維持を求めることは、少なくとも今はしなかった。
そこで、あれ?と首を傾げて。
「キミ、映画は――ああ、アレは原作のコミックがあったっけ」
他愛ない雑談の流れで、声を弾ませた。
何も知らなかった。互いのことを。深く知る必要もいまのところはないと思えた。
「ボクひとりで嵐を起こすつもりもないけどね。
はじまりの一羽、その翅の残照でイイ。ただ目の前が面白くなれば。
美しく輝ければそれで、だろう。 キミの期待には応えたいトコだけどな」
思わず視線をむける唇。
視えていない――筈だけどバレてるんだろう、と考えつつも。
それだけ美しいなら観ないほうが失礼だ。焼き菓子がわりにコーヒーのおともにさせてもらう。
「満足はしたくないね」
上出来。
――満たされればそこで止まる。飢えていた。
自分に至らぬところは沢山あった。しかし、同時にひとつに固執することも避けたかった。
「うん、いまのキミから"視た"所感でいいんだケド」
この言葉のチョイス、合ってるかな……と、グラスに口をつけながら視線が逸れた。
ほんの一瞬の思考。そのあと、ふたたび、自分より更に異国の刺激的な気配を纏う彼女に視線を向け。
「風紀委員会と公安委員会、どう思う」
問う語調は軽くとも、少しだけ真面目な風を装った。
この質問をどう受け取るかということも含めて、目の前の存在を試すように。
■シャンティ > 「あ、ら……映画、"見て"……いて、は……おか、しい……かし、らぁ? コメディ、だか、ら……?」
くすくすと女は面白そうに笑う。あくまでゆるいつながりの上での協力関係。互いに互いを深く知る必要性はない。ただ――相手が自分をどう見ているか、どう考えているか。単なる雑談でもその程度のことは知れるし、お互いに立ち入らない程度に触れるくらいは女は知りたがりではあった。
「ふふ……そう、ねぇ……私、も。別、に……舞台、に……立つ、つも、りは……ない、けれ、ど……盛り、上げ……に、は……力、を……貸す、し……それ、で……賑わ、え……ば、願った、り……かなった、り……という、やつ……ね。」
視線がどうあろうと、女は気にすることもない。人差し指を離し……再び、グラスを口にする。流れ込む、液体。舌を刺激する甘み。それらが、ほんのわずか。安らぎを与える。
「そう、ね……満足、する、ところ、では……ない、わ、ね」
肩透かし、想定外。失望、絶望。そういった類の経験は多い。比較問題として、あくまで『まだマシだった』という程度の話だ。けれど、上出来、は言いすぎだったか……と、女は少し考えた。
「"所感"……ね?」
どこか軽い相談のようにも聞こえる切り出しから、問われたのは……
「ふふ……面白、い……わ、ねぇ……それ、聞く……のぉ……? 私、に……?」
くすくすと笑う。今更日和ってそんなことを問うようなたまではないだろう、と思う。もし、そうなら――いや、それはその時の話、と女は思考を切る。
「所感、で……いい、の……よ、ね? そう、ねぇ――」
女の見えない目線が虚空を巡る。そこに何を見るのか、見ないのか。
「風紀……は、昔……は、骨、が……あった、けれ、どぉ……今は、なんとも、ね。マシ、な……子、も……いる、けれ、どぉ……"Than goes forward the way a ray of justice, we have no one, not to encounter salvation." ……で、すら、ない……かも、しれない、わ、ねぇ……?」
まずは一つ。そこについては、女も思うところが幾つもあった。しかし語るのはあくまで、所感である。
「公安……は、いい、意味で、も……悪い、意味……で、も……変わ、らない……か、しら……ね。安定、と……いえ、ば……聞こえ、は……いい、かも……しれ、ない、けれ、どぉ……」
そこまで口にしてから言葉を切る。
「……さて、所感、な、ら……この程度、だけれ、どぉ……参考、に……なる、の、かし、ら……? それ、に……なん、の……参考、に……する、の……かし、ら?」
くすくすと女は笑った
■ノーフェイス >
「観劇(ライヴ)のほうがお好きだったかな、ってね」
観るんだなぁ、と興味深そうに彼女を探る。
「サイコ・スリラーとかのほうを好んでそうな印象は、確かにあるケド……」
Chick-Chicky Boom!なんて口ずさみそうにはない――口ずさむのかもしれない。
想像してみると可愛らしいかもしれない。含み笑いも"聴こえて"いるのか。
であれば、含み笑いで隠そうとした、ことも伝わればよい。
「興味ある、キミの視点に――"視点"。
さっきから言葉選びを間違え続けてる気がするけど、このままでイイかな」
おべっかなんて使わないだろう、どちらに対しても。
そういう信頼もあったうえで、グラスをコースターに乗せると、カウチから背を剥がして身を乗り出した。
果たして好奇心に眼を輝かせ、耳をかたむけた。
そこから読み取れる懐古と落胆、僅かな期待――そして若干の無関心。
成る程、と、彼女が言い終えたあと、数秒の思案の間があった。
「ありがと」
指と指をあわせて、拍手のかわりに幾度かぷにぷにと突き合わせた。
「遊び相手としては、少し歩調が合わない?」
手を軽く振ってみて、問いを重ねてみる。
少なくとも表に見える範囲で、両委員会が正しく、確かに機能しているのは自明である。
それらは表だけならず、落第街の住人の多くのモラルにも依存したものではあろうとも、
島内秩序、治安の維持に対しては口を挟むつもりもなかった。
ありがたいことに、よくやっているのだろう。ごく一部の委員がそれを阻んでいるとしても。
「ボクの首ってそんなに魅力的かな……注目してくれるのはありがたいんだけど。
追いかけたいし、追いかけて欲しいってのは――
まだまだボクがショー・マンとして至らないがゆえの、これは失敗だな」
恐れるわけでもないのだが、襟を引っ張って白い喉を晒し、指で横一文字になぞってみた。
"そういうことだ"。血に飢えた兵隊とは遊べない。
いま戦争ごっこをしたとしても、そこで得る勝利に、意味を見いだせないのも確か。
「オーケー、ありがとう。
とりあえず、現状の優先順位を整理しておきたかった。
そのうえで、話しておきたいのはみっつ」
手首を返して、指をみっつ。
「新しいメンバーがふたり。彼らのことを伝えておきたいってのと――もうひとつ。
風紀と公安と、とりあえず直接コトを構えるのは保留するとしても、
ひとつ、彼らのために偽造して欲しいものがある。
そこに"大道具"の力を借りたい――ってのがふたつめ」
指のふたつを折った。
「さいごのひとつは、次の遊び相手のアテがあるから、その相談かな」
■シャンティ > 「そう、ねぇ……ライヴ、も……嫌い、では……ない、けれ、どぉ……と、あら。ひどぉ、い……まる、で……私、が……血が、好き……みた、い……な、言われ、よう、ねぇ……?」
くすくすと笑う。もちろん、実際はサイコ・スリラー……どころか、スプラッタのような直接的なものも女は好むところではあったが。そんなことはおくびにも出さない。といっても、相手には悟られているかもしれない。しかし、そこは別にどうでもいいことであった。
「ふふ……言葉、選び……なん、て……結局。伝わ、れば……いい、の、よぉ……結局、ね?」
相手が何を見、何を考えているか、何を感じ取っているか。それが伝われば十分。そして、ただ一言のそれは雄弁に様々なことを女に伝えていた。なるほど、と――女は考えた。
「そう、ねぇ……"遊び"……が、何、か……に、よる、けれ、どぉ……」
自分の所感に対する答え。おそらくは相手もナニカ考えるところがあったのだろう、というのは予想の通り。だから、それに答えるのにも若干の間。何事か、頭の中を巡っているのだろうか。
「すく、なく、とも……一部、は……あなた、の……思う、"遊び"、には……付き、あって、くれな、い……かも、しれ、ない、わ、ねぇ……?人、を……選べ、る、なら……か、しらぁ?」
これも所感といえば所感。自分であればまだしも。眼の前の相手の思考パターンでは、望みたくもない結果になりうることは十分に予測できた。事実、そういう流れができつつあるのも"見て"いる。
「ま、あ……そう、ね……失敗、という、より……は。相手、が……悪かっ、た……と、しか……ね?」
慰めるつもりでもないし、相手もそれを望んでいるわけでもない、というのは女もわかってはいた。しかし、思うところがあるのも事実なので意味もない言葉をあえて口にする。
「ふ、ぅん……」
提示された3つの話。1つ目は……それなりに大事なことだろう。といっても、女自身がどれだけ関わるかはまた別の話。それはおいおい考えればいいだろう。そして、2つ目。自分の仕事。これは流石に重大だろう。それにしても――偽造。何を作るのか、実に興味が湧く。
「1つ目……は。顔、合わせ、という、わけ……で、は……なさ、そう、ねぇ……それ、なら……まあ、ゆっくり、と……それ、と……2つ、め……偽造……ね? 何を……企んで、いる、の、かしら、ぁ?」
くすくすと笑う。それだけでも、組んだ価値はあった。なにか、面白いことが転がってくる予感がする。そして――
「あ、ら……風紀、に……公安……で、は……なさ、そう……ね、ぇ?それ、以外……と、なる、と……さて、なに……かし、らぁ?」
心当たりは幾つか浮かばないこともない。しかし、それを当て推量するのはいかにも無粋だ、と女は思った。
■ノーフェイス >
「まァ――いますぐに摘まなくても、そこはイイかなってね」
選ぶ、と言った。自分にそういう権利があるかは兎も角として――
差し迫っていないなら、今、"誰か"を体制側から探すのは避けたかった。
消極的な妥協をするくらいなら、ショウを延期する決断にこそ重きを起きたいところはある。
あのハロウィンに参じてくれた、表裏関わらず大事なゲストたちに敬意を払わばこそ。
「ボクが、心のそこから――"こわい"と思えるようなヒトが出てきたら。
そのときはボクのほうからふっかけにいくさ」
ひらひらと振った手を、掌を天に向けて返し、指で彼女を指す。
"こわい"、とそう告げた瞬間に、とても楽しそうに笑ったことも、隠すつもりはなかった。
「心当たりはいるんだけど、どれも体制側のニンゲンじゃない。
今は種蒔き。いろんな意味で。 寒いと人肌恋しくなるしな。フフフ」
とりあえず、体制側との方針は、明示しておく。
「とはいえ、キミがヤりたいって思う相手がでてきたら、いつでも声はかけてくれよ。
バックバンドのご用命はいつでも。作詞作曲、座組までなんでもござれだ」
今日、こちらがあなたを喚んだように。
面白そうなら、いくらでも付き合うぜ、という意思を表明する。
この部活において、「面白くなさそう」ならいくらでも部員の意向を蹴ってよい、ということでもあった。
「待って待って。 ひとつずついこっか。
――そうだな、まず……ふたり、男のコに声かけた。色良い返事がもらえたよ」
端末を操作して、瞬時にジジ、とホログラムから生成される写真を彼女にむけた。
視えずとも視えるなら、それでいいだろう。視覚でない感覚器官に任せる。
「ひとりはこちら、溢れんばかりにエネルギッシュなナイスガイ。
名前(ヴィラン・コード)はオジー……パン屋さん。会ったことない?」
とんとん、と写真を指で叩いて。
「カレは挑戦者だ。
犯罪者じゃないから、すすんで悪いコトはしないヒト。
ただ、カレが意図せずに犯罪を犯すことはあるヒト。
……"こわい"ものに、"怒り"を覚え、超克しようとするニンゲン。
キミならカレにどういう試練を与えてみる?
ある観点においては、凄まじく"美しい"男だぜ、コイツ」
だからこそ、共に歩みたかったと。
強烈な刺激、鮮烈な羨望を与えてくれる存在。
「んで、こちらはデミウルゴス。
ちょっと真面目なカンジだな、表でも裏でも直し屋さんやってた。
カレもけっこう有名人かもな」
もういっぽうの写真を指でなぞる。
「こっちのカレは創造主(クリエイター)……
このまえのお菓子の家を三日三晩で完成させてたよ。
材料と人足はボクがココの収益で用意したんだケド、
下手な魔法より魔法じみたことをやれるコだ。
でも、まだ頭に殻が残ってる、なんなら足が生えた卵かもな。
属性的にはキミの後輩っていってもイイんじゃない?
いろいろ仕込んでみるのも、誘ってみるのも」
どっちも興味深いでしょ、と顔をあげて、伺ってみる。
「キミも面白いヒトみっけたら、誘ってみて。
面白いことをやろう、って意志があるヤツなら歓迎するから」
■シャンティ > 「"こわい"……ね、ぇ……ふふ。なに、なら……あなた、を……"こわい"、と……思わ、せる、の……かし、ら……ね、え?」
くすくすと笑う。額面通り、言葉通りの意味だけではないことは明白だ。それなら、何が目の前の相手に認められるものなのか。興味は尽きない。そして、そんな状況が起きればどうなっていくのか――ぞくぞくと、した感覚を覚えた。
「ま、ぁ……美味、しい……もの、は……すぐ、では……ない、わ、ねぇ……ふふ。それ、に、して、も……そう。体制、側……では、ない……の、ね」
悪はいずれ何かによって裁かれる。とはいっても、今の活動が悪かと言われれば……解釈次第ではあるが、少なくとも女にとっては違う。それなら、至極当然の帰結なのかもしれない……と、一瞬だけの落胆を取り戻す。
それから、紹介される新しい仲間のことに耳を傾ける。
「オジー……そう、ね。彼、は……一種、の……特異、点……その、"在り方"……は、確か、に……"美しい"、と……いえる、かも……しれ、ない、わ、ねぇ……デミウルゴス。彼、を……私、の……属性、という、なら……ある種、彼、は……あなた、の……属性、と……いって、も……いい、かもしれ、ない……わ、ねぇ?」
己の思うまま、赴くまま。しかし、彼自身の中ではある種の善性を元に行動を起こしている。それが時に、一般的なルールを破ったとしても。それがオジーという男。この集いに入らなかったとしても、己が道を自由に生きていたであろう。逆に言えば
「試練、ね、ぇ……それ、自体、が……余計、かも……しれ、ない、けれど、ぉ……そう、ね。おそ、らく……は。日常、的な……ことを……与え、た方、が……逆、に……いい、かも……しれ、ない、わ……ね?」
破天荒だからこそ。奔放だからこそ。日常、という型であり、枠に当てはめた時に、何を起こすのか。そちらのほうがより面白くなるのではないか、と女は考えた。
「デミウルゴス……彼、は。そう、ね……あなた、の……言う、通り……殻、ね。それ、が……邪魔。むし、ろ……よく、誘え、た……わ、ね?そこ、が……興味、深い、わぁ……?」
実際にあったことはない。あくまで自分の知る……というより、"見た"彼は、こんな怪しい集まりに参加するような人物だっただろうか。いや……思い起こせば、一部の闇の組織とつながりもあったか。"そういうもの"、に好かれる性質でもあるのだろうか。
「そう……ね。属性……が、似てる、かは……とも、かく……興味は、わく、わ……ね。機会が、あれば……ふふ。遊んで、あげる、のも……いい、かも……ね?」
くすくすと女は笑った。
「それ、と……そう、ねぇ……なに、か……面白い、子が……いれ、ば……ね? その時、は……誘って、みる、わぁ」
■ノーフェイス >
「ボクというニンゲンがどういうヤツかを考えれば、ずばりわかりやすいのが解答さ」
まっすぐに、彼女を見つめながら、アルカイックスマイル。
そう、まっすぐに――見つめながら。
「でも、興味を持ってくれるってんなら、いま言うのは良くないかもな。
たまには意地悪に焦らしてみよう、キミがボクのことを考える、その領域をちょっと増やすためにも」
あるいは、彼女の思推がどうにもきになるのか。
その頭脳が如何なるプロファイリングを魅せるのか、こちらもまた興味がつきない。
「ボクは恐怖を楽しむタイプだケド――そう、どこか近いものを感じたんだ。
その近い、と感じた部分から視てみると、カレがひどく遠く感じて。
……それが無性にムカついたんだよ。 悔しかった。 だから、ちょっと火がついたとこはある」
対抗意識を持てる相手をみつけたとき、世界は格段に広がった。
精力的に動こう、という意識は、ひとえに恥じたくない相手がいるからだと。
「どんなものでも乗り越えられそうな――その"推進力"のほどが視たいってのはボクもある。
なにか仕掛けるの? だったら期待してる」
自分と同じ――そして興味を持たれている。期待。ならば応えねばなるまい。
彼も応えるだろう、そうで在らねばと考えているニンゲンとして。
「ン? ああ、欲しがってそうなモノを示しただけ。
デミウルゴスにはとっくに火がついてたから、ボクは薪を投げ込んだの。
その火をつけたのは誰か知らない。カレのように"創るモノ"の先駆者かもね。
そのあたりは――実際に遭ってきいたみたらどう?
ボクは、カレが現在(いま)、なにを考えて、なにを作りたいかを重視したから」
"物語"までひっくるめての興味は、動いている時にしかそそられない。
その点、彼女のように"読み解ける"なら――どうだろう。
「て、カンジ。 面白いふたりさ。
キミと彼らでどんなケミストリーが起きるか、てのも興味深いトコ……たのしみにしてる。
――で、だ」
グラスが空になった。
ことり、と軽い音を立ててコースターに戻すと、カウチに深く背を預けた。
「……偽造して欲しい"大道具"がある。 部員として仕事をお願いしたい。
キミを見込んでつくってほしい作品(もの)は――」
■ノーフェイス >
「人間だ」
■シャンティ > 「あら、あら……そん、な……秘密、だ、なんて……いけず、ねぇ……あなた、が……"こわい"相手……会いたい、よう、な……会いたく、ない、ような、ね? あぁ、こわい。こわい……ふふ」
くすくすと女は笑う。見据える視線を感じても。浮かぶ笑顔を読み取ってはいても。そこに何を感じ取ったのかも語ることはなく。何事もないように、ただただ、面白そうに笑う。
「ふふ……そう。そう、ねぇ……たし、かに……あなた、なら……嫉妬、に……似た、なにか、を……いだく、のも……ある、か、しらぁ……?」
おそらくは、一番火をつけられたのではないだろうか、と女は思う。他にも様々に思うことはあるだろうけれど、同属なりの思うところ、というのは大きな刺激だろう。
「正直、に……いえ、ば――オジー。彼、に……仕掛、る……の、は……無粋、に……思え、る……わ、ねぇ?会う、こと、が……あれ、ば……ま、ぁ……なにか、ある、かも……しれ、ない、けれ、どぉ……ああいう、の……は、放って、おく……のが、一番……"美しい"……気も、する……わ、ね」
天然自然に手を加えることによって作り上げる芸術は確かにある。だが、手を加えることで台無しになる、ということもある。あれは、どちらかといえば後者にあたるように女は思う。
「"創る"……ね? ふふ。いえ、いえ……いい、わ。そこ、は……ね。けれ、ど……そう、ね。彼、の……求める、モノ……は、少し、興味……ある、わ、ね……うふ、ふ……」
ああ、なるほど。こうして、彼に興味を惹かれる闇のものが出てくるのだろうか、となんとなく女は思った。それが、その先どういう作用になるかは……その時次第だろう。
「あ、は――」
依頼の品を聞いて、女の口から笑いが漏れる。
「ふふ……あは、は……それ……どう、する……のぉ……?あなた、の……人形、でも……つくって……偽装、死……でも、する……?ふふ。派手、に……死ぬ、の……あは。」
そういう目的か。それとも全く別か。しかし、女は女として面白く思う手段の一つを提示する。それを相手がどう思うかはまた別の話である。