2019/02/03 のログ
ご案内:「路地裏」にパンデミック(シャドウイーター)さんが現れました。
ご案内:「路地裏」に竹村浩二さんが現れました。
■竹村浩二 >
ポケットに手を突っ込んで路地裏を歩く。
ああ、寒い。なんて寒さだ。
でもこの辺も物騒だし、パトロールするに越したことはない。
異能でタバコを取り出し、ライターで火をつける。
メンソール系の紫煙を深く吐き出した。
最近は例のゾンビが増えているらしい。
あいつらとの戦いも、長くなってきた。
そして……しんどくもなってきている。強い連中ばかり残ったからか?
■パンデミック(シャドウイーター) > 真冬の夜空。
ひんやりとした空気があたりを撫でる。
シャドウイーター。
そいつは闇に潜み、非力な人間だけを狙い、殺す狡猾な魔物。
何よりも、こいつは生前はかなり悪賢く、それでいて強力な猛獣であるがゆえに、
この魔物がいる場所では、夜中にうろつく事がこいつのせいで恐れられることもあるくらい。
寒空の下、パンデミックと化した魔物は真っ黒な影に潜伏、擬態し、今日の獲物を狙っている。
路地裏に1人で入り込む、見るからに武器もなさそうな一人の男。
シャドウイーターの目には、彼が格好の獲物に見えたらしい。
「―――ッズァァァアッ!!!」
気配もなく、にじり寄る影が突如真っ赤に染まり、そこから飛び出る血色のキバ。
一瞬、影がそんな真っ赤な中でも赤いと分かるほどにパンデミックと化したバケモノの瞳が紅く瞬いた。
タバコの火の明かりに、わずかにシャドウイーターの全貌が影の中、水の中に潜むように体をうずめているのがみえるかもしれない。
影からあがったキバ…それはとても大きなギザギザのハサミを思わせ、
口だけでも人間ほどのサイズがあるようだ。
ほとばしる暗黒の魔力と、塗られた痺れ毒。
普通の人間なら、この牙に食われるどころか触れられたとたんアウト。
物陰に引きずり込まれ、パンデミックの仲間入り。
シャドウイーターにとっては、そうなるはずだった。しかし……
■竹村浩二 >
寒気がした。
夜空の中に、邪悪な存在が潜んでいる。
そんな妄想に駆られた。
「……っ!!」
影に浮かび上がる、怪物の姿。
妄想ではない、確かに存在する脅威。
思考より先に体が動き、後方に宙返り。
見よ、26歳にしてこの動き。鍛えててよかった!
そのまま着地と同時にベルト型変身アイテムを異空間から取り出し、腰に当てる。
自動的に装着された変身アイテムのスイッチを押し込む。
「変身!」
Joint on!という機械音声が響き、緑の装甲を身に纏う。
赤いエネルギーラインが全身を走り、アーマード・ヒーローが姿を見せる。
「なんだこの化け物は!!」
次元圧縮された銃弾を撃ち込む、次元銃イレイスバレットを取り出して撃つ。
でも……この手の怪物に銃が効いたタメシがねぇ!!
それでも近づくリスクよりはと銃を連射。
■パンデミック(シャドウイーター) > 「ズアアァァァッッ!!!」
パンデミックの深紅色のキバは、ブオンッ!と大きく宙を薙ぎ払い、そのハサまれたはずの男は、
丁度その上で半弧を描いた宙返り。
その一撃は見事に空振りだ。
「ズアッ…グググゥ…ガルル…ッ」
竹村浩二が変身をすると、パンデミックの瞳がぎらついた。
それと同時に、放たれるイレイスバレット!
だが、パンデミックの深紅色は影に溶け込むようにその場から忽然と消え失せ、
銃撃を避ける。
「ガァッ!!!」
影を身をひそめる水面の様にしながら、パンデミックは黒から赤色に体の色を変え、
緑の装甲を纏うヒーローへとにらみを効かせる。
さっきまで、銃撃する遠距離にいたというのに、一瞬で距離を詰め、
そして―――
口元に冷気の魔力をため込み、吐き出す。
ずるがしこい魔物というのは、総じて厄介な魔法も持ち合わせるもの。
寒さが拍車をかけ、冷気があたりに満ち溢れる。
狙いは竹村浩二の足元…タバコが落ちた場所。
あたりの街灯。
それから、逃げ道となる通路。
変身してなお、彼を食うのは逃げられなければ容易い。
とばかり、竹村浩二から狙いを外し、
辺りの光を奪わんとしていく。
■竹村浩二 >
こ、これは!?
そうか、こいつは影に潜む!!
だったら影から引きずり出して、必殺……あれ?
仕掛けてこない!?
こいつ…邪悪な知性を持っているクチか!!
その思考通りというかなんというか。
周囲に冷気が満ち、足元のタバコが凍り付いて砕けた。
「うおお、寒いだろこの野郎!?」
イレイスバレットを構えたまま周囲を見渡す。
次々と消えていく灯り。
街灯は凍って砕け、後方の退路は獄氷に閉ざされた。
「ま、まずい! 夜はこいつの世界だ、勝ち目がなくなるッ!!」
暗闇に赤いエネルギーラインが薄ぼんやりと光るが、その程度の灯りに怯む怪物でもない。
どうする、こいつをどうやって倒す!?
■パンデミック(シャドウイーター) > そう。
シャドウイーターのもっとも厄介な性質。
それは「影に潜る」能力だろう。
それに合わせて、影に潜り、不意打ちするという知識を得ているがゆえに、
野生動物の悪賢い…良く言えば生存の為に獲物を狩るための方法も知っている。
逆に言えば。影がなければ、光があればこいつを引きずり出すことは可能だ。
けれど、パンデミックはそのわずかな道しるべを破壊していく。
タバコの火、街灯でさえも。
ただでさえ真っ暗な路地裏。果たして彼に勝ち目はあるのか。
「……ズァァァアアァァァッ!!!」
そして、唯一残るイレイスの赤い光、それを消さんと、シャドウイーターは再び影に潜み、
イレイスの影―――つまり、イレイスのすぐ真下、足元からキバを剥いて、
奈落へ引きずり込まんとその巨大な口を開き、緑の鎧ごと、中の竹村浩二を貫かんと襲い掛かった!
■竹村浩二 >
影に潜られたら手も足も出ない。
しかし仕掛けるタイミングは相手が握っている。
どうしたことか、絶望的じゃねーか。
「!?」
真下から牙を剥き、襲い掛かる怪物。
寸前で回避したものの、イレイスの重厚な装甲がバターのように切り裂かれている。
「嘘だろ!? これ、ミスリル合金なんだけどな…!!」
ぱっくりと開いた緑の装甲の淵にぬめる毒液。
これは……いよいよもってやばい。
コストの関係でとっておきにしたかった強化フォーム……ディザスターフォームでいくしかない!
腕時計型強化アイテムを腕に巻き、ボタンを押す。
『Disaster on!』という機械音声に、自分で設定しておきながら舌打ちした。
「うおおおおおおおおおおぉ!! ディザスターフォームで勝負だ!!」
歪んだ光が収束すると、黒緑のメタリック装甲に身を包んだイレイスが現れる。
最近になって完成した、オリハルコン製の装甲に強化人口筋肉を組み合わせた鎧。
これが通用しなかったら、本当の本当にどうしようもねぇ!!
慎重に周囲を見渡す。
そして追加装備である、大型の剣……歪光剣バスターソードを抜く。
ネーミング? 俺の趣味だ気にすんな。
■パンデミック(シャドウイーター) > 解き放たれる、ディザスターフォームへの変形の光。
歪んだ光の放射は、しかしシャドウイーターの潜んでいる影を消し、
そいつの全貌を引きずり出すことに成功する―――!
「ガァァァアア…ッッ?!」
それはつまり、噛み殺そうとしたところで、思い切りはじき出されて失敗するという事。
あと一歩まで来ていたところで、殺し損ねたという事。
確かに鎧を貫いたハズなのに、殺せずじまいで今に至る。
それどころか、普段は影に身を潜めるシャドウイーターの姿が、
今は露わになっているではないか。
4mほどもある真っ赤な大狼。それがシャドウイーターの全貌だ。
「グルルルルルル……」
何はともあれ、もう一度安全な場所に隠れようとシャドウイーターは後ずさりを始める。
傍らで、シャドウイーターは再び冷たく暗い魔力をその身に宿し、
ディザスターフォームと化し、大型の剣を握るイレイスと対峙する。
■竹村浩二 >
ついに姿を現した影の魔物。
巨大だ。そして、その想像していたものよりずっと動物的な姿。
「……! これが化け物の全貌か…!」
また影に逃げ込まれたらどうしようもない。
今がチャンスと大型の剣を大上段に構える。
「……チェストォォォォ!!」
やべぇ、剣を振る時の掛け声なんて知らないから変な感じになった。
でも、気迫にして十分。
真紅の大狼に迫りながらバスターソードを振り下ろす。
■パンデミック(シャドウイーター) > シャドウイーターは悟る。
獣の本能とも言えるだろう。
…この一瞬で食うか、食われるか、その半分が決まる。
もう半分は、どちらの気力が上か。それだけだ。
パンデミックと化したシャドウイーターの行動理念はやはり、殺し、増やすこと。
であれば、この賭けをしない理由はない。
何せ、お互いに万全の力をぶつけ合うのが今なのだから!
シャドウイーターは光が失せぬその間、彼の斬撃を全貌をさらしたまま迎え撃つ。
パンデミックと化してなお衰えぬ強靭な肉体。
巨人をも凌駕するような腕力。
そして強大な跳躍力を以って、叶うならば一撃を浴びながら、そのキバで刺し違えんと、
影に逃れず駆け―――
刺し違える。
ディザスターフォーム、その重厚な装甲に、
暗い氷の魔力の宿るキバを全力で突き立て、中の竹村浩二に一矢報いる。
オリハルコンをも刻む、闇の住人のキバの力を魅せながら。
痺れ、凍らせ、闇に引きずり込む、影の一撃。
そして。
シャドウイーターはそのバスターソードをその身に受ける。
駆け、飛び上がる最も強靭な右前足をごっそりと切断されるという代償を以って。
もうこの獣が駆けることは出来ない。
シャドウイーターは牙を入れた得物を殺そうと、魔力を再充填を始める。
冷える空気。
拮抗した真冬の夜空の下、がっちりとつかみ合う刃とキバ。
トドメの一撃を入れるのは、どちらが、先か―――。
■竹村浩二 >
「!!」
大狼は逃げない。
そして、パンデミックの前足を切り裂きながらも牙は確かに自分に食い込んだ。
その魂の一噛みはオリハルコンを貫き、氷の魔力を中に流し込んできた。
「う、あああ……!!」
寒い。寒い寒い寒い寒い寒い寒い。寒い。
どうしてこんなに寒いんだ?
意識が遠くなる。
……レッド………あいつの彼女だった女と付き合うようになって…
俺は自己満足と最低な劣等感に苛まれて……
寒い。寒い。
そんな俺の寒さを和らげてくれる女を。あのメイドを。
俺は傷つけた………
歯を食いしばる。
このまま死ねるわけがねぇ!!
一言、メイジーに詫びいれなきゃ……死ねるはずがねぇんだよ!!
「うおおおおおおおぉぉ!!」
大剣を捨て、狼の口に手を突っ込む。
引き剥がすように全霊の力を込め、相手を上空に蹴り飛ばした。
夜にも、光はある。
あの空に月はある!!
■パンデミック(シャドウイーター) > 「アアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッッッ!!!!!!!!」
光。
それが、シャドウイーターの弱点である。
夜にしか動かない魔物。
昼間は暗がりでひっそりと隠れて潜む魔物。
夜になれば、それでもひっそりと獲物を食らう魔物。
月明かりに照らされるシャドウイーターの深紅色は、
その蹴りの力か、月光のせいか、
まるで燃えてなくなるように自然に姿が小さくなっていく。
その場に転がったシャドウイーターの右前足が、
けれどパンデミックの殺意の執念を示すように、
イレイスの影に潜み、貫いたオリハルコンの穴をめがけて動いた。
それが、大した効果を生み出すとは思えないけれど。
改めて、パンデミックに憑りつかれた死体の哀れさを見ることになろうか。
……冬の夜は長い。
まだ、この寒空は続きそうだ。
■竹村浩二 >
斬り飛ばしたはずの右前肢が、牙の食い込んでいた部分からイレイスを、竹村浩二を刺し貫く。
それでも装甲の下でニィ、と笑って。
上空に向かって蹴りを放つ。
負傷のせいで必殺の蹴りとは言いがたいが。
それでも、小さく萎れた怪物の体を二つに蹴り折った。
「光に潰えろ!!」
そう叫ぶと、地面に着地すると同時に変身を解除した。
体には、確かな傷跡が残る。
前足が貫いた、深い傷が。
「死ねない……絶対、絶対だ…」
よろよろと、魔の死と共に氷が砕けた道路へと歩みだす。
入院コースだろう。しかし、俺は死なない。
何があっても。償うまで死んではならない。
ご案内:「路地裏」から竹村浩二さんが去りました。
ご案内:「路地裏」からパンデミック(シャドウイーター)さんが去りました。