2019/02/06 のログ
一条茜 > 「…後ろ!?」

襲い掛かる時に咆哮のような声があったのは幸いだった。緊張もしているおかげかすぐさま反応ができた。
ゴロン、と横に転がってその牙から逃れる。
小さい体つきの通り、動きは小回りが利いて素早い。運動能力も人間の女性にしては高い方だ。

「っ…!」

だがあくまで人間の範囲を出ない身体能力だ。
左肩から、一筋の赤い液体。左腕から段々と感覚がなくなっていくのが分かる。
そこから距離を少し離して対峙

「悪党かと思ったら怪人?…面白い、あたしに不意打ちした事、後悔させてやる、殺してやる」

敵意をむき出しにして懐からゴテゴテしたモノ、所謂変身ベルトだろう。
それをガシャン、と腰に巻き付けて、ベルトのレバーを引き

「変・身!!!!」

左腕を腰に右腕を天に掲げてポーズを取れば、電撃のエフェクトと共に黒いスーツに紅い装甲を纏わせた姿に変身する。


「まずはお返しの一発!!」

接近して右拳を振るう。接近するスピードも100mを数秒で走り抜ける速度であり、放たれる右の拳も男性はおろか普通の人間を遥かに凌ぐパワーを誇る。
狙う先は顔面。牙は恐ろしいもののこの装甲した姿なら多少の攻撃は防げる。

とはいえ、左肩。
変身効果で毒が回るのを遅らせているが思うように動かない。

パンデミック(シャドウファング) > シャドウファングの強みは、その名の通りキバだ。
こいつのキバは、そんじょそこらの好物など発泡スチロールも同然。
人体は言ってしまえばこんにゃくか。
食らったら、キバに貫かれる事は間違いない。

間一髪、横転してその凶器から免れるが、シャドウファングのキバは、
完全に避けきられたというわけではない。
それは痺れ毒となり、一条茜の左腕にわずかながら効力を齎す。

そんな中でも、まるで変身ヒーローのような演出を伴い、スーツを身に纏う一条茜。
雷光に照らされるシャドウファングの全貌が一瞬だけ見える。
その正体はサメとワニを足したような真っ赤な怪物。全長はおよそ4.5メートル。
怪人ではない。怪物、そのものだ。

「―――ズガァァァアアァァッッッ?!?!!」

そのまま飛んでくる反撃を食らうシャドウファング。
なぐった感触から理解できるだろう事は2つ。
こいつは「見た目よりかなり柔らかい」という事。
そしてこいつは「影から上に全部出てきているわけではない」という事。

圧倒的な速度にて振り放たれる弾丸の様な拳に、シャドウファングはそのまま柔らかな体から赤い肉片を飛ばし、
向こうへと体をふっ飛ばされる!

「ズァッ……」

今の一撃は、相当効いたらしい。打撃を受けた顔の半分ほどが吹き飛んでいる。
ゾンビとなったパンデミックでありながら、怯みすらも見える。
シャドウファングは再び影に潜り込む。

捕捉されぬように影に擬態し、そして、
次は一条茜自身の影。彼女の真下から、その口を開き文字通り足元を掬おうと再び不意打ちで襲い掛かった!

ご案内:「路地裏」に竹村浩二さんが現れました。
竹村浩二 >  
パトロール中に轟音が聞こえ、タバコをくわえたまま現地に向かう。
そこで見たのは、以前倒した影の大狼よりも厄介そうな赤いの!

「お、おいおい……」

嘘だろ。いや、都市伝説じゃなかったんだ。
俺以外の変身ヒーロー。

「おい、大丈夫そうか!?」

異能でベルトを取り出し、様子を伺う。

一条茜 > 「っ……」

変身の際、発する雷光で姿が一瞬見えた。
デカい、予想以上にデカい。というのが茜の心の内だった。

だが、怯えることは無かった。何故ならば外見よりかは柔らかく拳一つで巨体を吹き飛ばし、顔半分を吹き飛ばし肉片と血しぶきを甲冑のような頭部に浴びる。

「私は……最強だ!手出しは不要だ!」

変身前の顔は見えず表情は不明だが恐らく怒っているのだろう、竹村浩二にそんな怒号を浴びせる。
己は最強だと自負する。故に引かないし負けるつもりもないし誰かの手を借りるつもりもない。

そして、この化け物は影に潜るという性質があると見抜き、影に潜ったのを見れば同じように奇襲してくるだろう、と呼んでいた。

「同じ手を…喰らうと思うかぁ!」

砂煙を上げる。結果としてシャドウファングの刃は空を切った。
茜は上空に。どうやらひとっ飛びで10m以上の高さをジャンプしたのだろう。砂煙は地面を蹴った時の衝撃だ。
破壊力もそうだが茜の体格からスピードや運動性能に優れているのだろう。
そのまま上空を落ちていきながら二転三転と空中で回転して威力を上げながら

「ライトニングキック!!」

回転の勢いと落下のエネルギーを利用して足に雷を纏った踵落としをシャドウファングにお見舞いしようとする。
剣は左腕が痺れてあまり動かない。故に蹴りを必殺技として選択した

パンデミック(シャドウファング) > 光のほとばしる足の一撃。
それは足元から食いかかったシャドウファングにしてみれば最悪の一手だった。
このような影に潜む魔物は、光を嫌う。
当たり前だ。影がなければ、逃げ場がなくなるから。
雷光という光を纏ったキックに照らし出され、シャドウファングの全貌が影から引き摺り出される。
避けるどころではない。

強靭な四本の足、サメの様なクチ。ワニのような鱗。
おどろおどろしいよどんだ深紅色の眼球。

ライトニングキックは、シャドウファングの体に思い切り突き刺さる!

「グウウウオオオオオオオオーーーーーーッッッ!!!」

痺れる長大な魔獣。強烈な回転の一撃を浴びながら、しかしシャドウファングはまだ立ち上がる。
満身創痍。
だが、パンデミックは動ける限りは、より多く殺し、より多くの眷属を得る。
その行動理念を曲げることはない。
相手は不意打ちで手負い。
一度殺しかけた得物、のがしてなるものか。
また、傍らで誰かが見ているなら、この際それも巻き込んでしまえ。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオーーーッッッ!!!」

高鳴る怪物の咆哮。
身も凍るような音に乗せ、魔力があたりから集う。
それに伴い、あたりが暗く、冷たく閉ざされていく。

ボロボロに砕けながら、シャドウファングの口が開かれれば、そこに陰の魔力が集まる。
大きく口を開いた今が攻撃の好機。
だが、シャドウファング最期の一撃が放たれる。
やった側もただでは済まない、大きすぎる隙を晒す、捨て身の一撃。

今までと違う、範囲攻撃。
あたり一帯をかみ砕かんと現れるのは闇の魔力で作られた、20の氷の牙。
暗がりの路地裏はより暗く。寒空はより寒く。
地面からと、空から。ガチッ!と一条茜を真ん中に、下手をすればその付近にいる竹村浩二をも巻き込まんと、
…上下の刃を、噛み合わせた。

竹村浩二 >  
あの装甲、中身は女か!?
そして速く、力強い!! 雷を纏う蹴りも強力無比だ!

「うおお……!!」

相手は最強とか手を出すなとか言ってたが、寒くされるのは御免だ。

「変身!」

ベルトを腰に当て、自動的に装着されるとボタンを押す。
『Joint on!』という機械音声が流れると、
緑の装甲に赤いエネルギーラインが走るアーマードヒーロー『イレイス』が姿を現す。

「悪いが、俺は寒いのはお断りだ」

先客の黒き戦士の隣をすり抜けて走り、跳躍。
氷の牙を掻い潜りながら攻撃に移行。
横っ飛びにジャンプしながら、マフラーのエネルギーを燃やして推進力に変える。
……必殺キックを、放った。当たれば十字に衝撃が走るだろう。

一条茜 > 「な、なんなんだ?一体!?」

必殺技を叩き込んだ。雷を体内に流し込むように叩き込んだはずだ。
だが、まだ動いている。
力の残滓がまだ残っており、雷光でうっすらと全貌が見えた。人間のましてや女の茜の感性からしたらグロティスクで恐ろしいものだ。消さなければならないと心の中ではそう思った。

魔法というものはこの常世にいてもおとぎ話のようなもので魔力が集まっているのは理解できないが本能では不味い、と毒づいている。

「アンタも変身出来たのかよ!?」

変身した竹村浩二にはそんな驚きの声。ただ、変身ベルトといっても茜と同タイプではないだろう。
しかしそれでも変身するタイプは自分含め特殊なものだと思っている。アカネの異能自身も変身適性なものもあり

「ああ、もう!!」

もう手を出すなと言っている場合ではない。虚空から電撃が走り、空間を割るように剣を具現させてそれを右手でとる

「Zソードォ!!」

片腕のみで両手剣を振るう。
片腕だけでは威力が不足する、しかし、腰を使って体で振るい、雷撃を纏う事によって威力を補う。
そして嫌々ながらも竹村浩二の必殺技に合わせる

パンデミック(シャドウファング) > 作り出された氷の牙は、すべて空を切り、暗闇だけをその場に残す。
闇に潜む魔物の作り出す、光を消し去る魔法の力。路地裏は一気に暗がりに。

―――一転、この一角は闇だけ。全てが見えなくなる。

「グギャァァァアアアアアアぁぁぁぁぁ………」

闇の中、上がる魔獣の叫び声。
断末魔の悲鳴のような一声を最後に、魔獣の声は響かなくなる。
2人のヒーローが織り成す蹴りと剣。

雷撃を纏った剣が暗闇をぱっと照らし出す。
そこには、6つに切り裂かれたシャドウファングの骨格、十の字にひび割れた大地。

あの、巨体が…引き裂かれた。

シャドウファングはピクリともせず、なんだかんだとタイミングを合わせた2人のヒーローの手により、
再起不能に陥った。
真っ赤な肉片が、骨格が、電撃で焦げて消えていく…。

まもなく、影に潜む魔物の織り成した闇は全てこの場から晴れることだろう―――。

竹村浩二 >  
肉片になった真紅の魔獣を横目で見て。

「氷なんか出さなきゃ俺は手を出さなかったのによォー」

そんなことを言いながら変身解除。
闇が消える頃には月明かりで顔が浮かび上がる。

「それにしても……赤いのは進化しているのか?」

首を鳴らして黒い戦士に軽く手を振り、タバコに火をつける。

「横殴り失礼? 最強さん」

一条茜 > 「はぁはぁ……」

肩で息を整える。右腕の剣をガラン、と重い金属音立てて落とせばその腕で左肩を抑える。


「手を出すなと言っただろう…?私一人でなんとか出来たのに…」

息を荒げながら竹村浩二にそんな恨み言を言う。
しかし彼の手を借りなければ喰われていたのは事実であり、その事実を口に出すのはプライドが許さなかった。

「うっさい、私をその名で呼ぶな。…一条茜、それが私の名だ」

変身を解除する。
変身解除すればジト目で不貞腐れた様な目で男を睨む。
女の姿は女子高生姿、背が小さい事を除けばどこにでもいるような風貌だ。

「進化…?どういうことだそれは?」

消えていく肉片などを左肩を抑えながら眺めて

ご案内:「路地裏」からパンデミック(シャドウファング)さんが去りました。
竹村浩二 >  
「プライドが高いのは大いに結構、だが街に被害が出るようなら俺は何度だって横槍を入れる」

そんなことを言いながらも生気のない瞳で紫煙を虚空に吐いて。

「竹村だ。竹村浩二、常世用務員の竹村さんですよお」

肉片をつま先で蹴り転がして。
月光に薄煙を上げるそれを踏み潰した。

「こいつらとは何度も戦ってきたが、最初はデカいドリルモグラとかだったんだよ」
「それが厄介な攻撃性能を持つようになってきて最近は手がつけられねぇ」

ふと、相手の負傷に気づいてタバコを持つ手を下ろし。

「怪我してんのか。大丈夫かよ? ちゃんと帰れるか?」

一条茜 > 「はん…」

不機嫌そうに鼻を鳴らす。
あまり納得は行かない様子だったが勝手にやるのならば、こちらに過度に干渉しないならばそこまで噛みつかないようだ。

「用務員さんがこんなところでお散歩?仕事はちゃんとした方がいいんじゃない?」

男が踏み潰した先を見届けた後、踵を返し。

「ドリルモグラ…?」
首をかしげて

「そう…つまり段々パワーアップしているって事ね。…なんだってこんな化け物が街中に生息してるのよ…。やっぱこの裏路地に爆弾落として消滅した方がいいんじゃない?」
と過激な言葉をさも普通の事のように述べて

「大丈夫、手助けはいらない。」
拗ねた様に。腕を抱えて歩き出す。

「近くにバイク止めてあるから。それで帰るわ」
出血はそこまででもない。だが身体が痺れてくる。その前にバイクを止めているところまでノロノロと歩いていく

竹村浩二 >  
肩を竦めて苦笑した。

「ぐうの音も出ないな」

用務員としての仕事は昼間にしているからいいじゃないか。
とは言い返せない不真面目な勤務態度だった。

「バカいうな、ここにだって生きてる人間はいる。それを守るのがヒーローのお仕事だ」

相手が歩いていくのを見て。

「ああ、そうかよ。勝手にしろい」

そう言って自分のバイクに歩いていく。
強がり、以上にプライドの高さが気になった。
子供だからか、あるいは……

バイクを起動させ、その場から去っていった。

ご案内:「路地裏」から竹村浩二さんが去りました。
一条茜 > 「ま、仕事しっかりしてんなら文句はないよ。…ただ私の邪魔はするなって事だよ」

少なくとも彼は茜が裁きを加える対象ではない。用務員をしているうちは
用務員としての彼なら別段嫌ってはいない。ただ、ちょっと煙草臭いのは…と内心思っているだけで

「私の邪魔をしたら攻撃を加える…!」
目を輝かせてそう言い放つ。
例え同じ変身者だとしてもだ。彼女は手を組むことは無いだろう。今は

「………」

バイクを見送る。

「やっぱり…」
いなくなってから呟く

「お兄さんの言った通り…変身ヒーローにはバイクが付き物だったんだ…」
変な常識を兄に教え込まれていた。
感心したように見送って、だがだからと言って彼と手を組むことは無いのだろうが

「帰ろう…っ、い、たい…なぁ」
左腕を抑えながらバイクを止めているところまで歩く、そしてそのままバイクを走らせて自宅へと。
その後は倒れるようにベッドに寝っ転がった。

ご案内:「路地裏」から一条茜さんが去りました。