2020/06/29 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に日ノ岡 あかねさんが現れました。
■日ノ岡 あかね > 「あら、いいもの持ってるわね、ナナちゃん」
音もなく、その女は現れた。
セミロングのウェーブ。常世学園制服。
真っ黒なチョーカー。真っ黒な瞳。
張り付いた笑みを浮かべる女の名は……日ノ岡あかね。
「はい、御土産」
そういって、コンビニのレジ袋を渡す。
中身はおにぎりが数個と水。
「私の伝言、色々な人に伝えてくれたみたいね。ありがと」
ニコニコと、あかねは笑う。
■227番 > フードの少女は、声が聞こえた方に視線を向ける。
知っている声だ。久々に会う、というわけでもない。警戒も不要だ。
「……貰ったの……というか、返せなかった」
"お土産"はたいそう嬉しそうに受け取る。
おそらく彼女が居なくなる前から、恒例だったのだろう。
「……わたし、ちゃんと出来てた?」
正直伝えそこねることも多く、227はあまり自信はなかった。
フードの下から、青い瞳を覗かせ、見上げる。
■日ノ岡 あかね > 「ええ、ちゃんと出来てたわよ。お陰で色々な人が私の事を知ってくれたわ。ありがとね」
嬉しそうに笑って、遠慮なくフード越しに頭を撫でる。
路地裏に差し込む微かな月明りが、あかねの輪郭を照らした。
「実は今日ね、ナナちゃんにプレゼントがあるの」
青い瞳を黒い瞳で覗き込んで、あかねは笑う。
いつも通りに。
そして、鞄から取り出したのは。
「はい、これ」
風紀委員会元違反部活生威力運用試験部隊への参加申請書と筆記用具。
それを、そっと渡して。
「字の書き方は窓口で教わればいいし、私が此処で書いてもいいわ。よかったら、私と一緒に『ここ』に来ない? 毎日御飯も貰えるし、寝床もあるわよ」
そう、小首を傾げる。
ニコニコと笑いながら。
「まぁ、外に出る必要があるから……選ぶのはナナちゃんだけどね」
■227番 > 「……よかった」
撫でられれば目を細めて体を震わせる。いつも通りだ。
「……紙……」
受け取って不思議そうに眺める。
227は文字が読めないが、つい先日、紙には物が書けると教えてもらった。
227という数字も、不格好だが書ける。
知っている顔からの勧誘に、興味はある。あるのだが。
「……外に……」
まだ怖い気持ちもある。
だから、すぐに首肯はできなかった。
「ちょっと、考える……いい?」
■日ノ岡 あかね > 「勿論、構わないわよ。そこの書類に『安全に外に出る道』も簡単な地図と一緒に入ってるから……活用してね? 分からなければ、わかる人に聞いて。信頼できる人にね……今はいるんでしょ?」
嬉しそうに笑う。
あかねも人伝ではあるが、227番に知人が出来た事は知っている。
故にこそ、あっさりとそう告げて、頭から手を離した。
そして……あかねは、薄く微笑み。
「いい? ナナちゃん、その書類はね」
青い227番の瞳を、黒い瞳で覗き込んで。
「『自分の足で』風紀委員会庁舎にまで向かって出さなきゃダメよ」
……目を細めて、笑った。
楽しそうに。
「……アナタ自身の意志で『外』にでなければ、受理されない。アナタ自身が自分の力で誰かに関わらなければ、チャンスは来ない」
日ノ岡あかねは。
「『待ってるだけ』じゃ……ダメだからね?」
静かに……笑った。
■227番 > 「信頼できる、人……」
思い当たる人は確かに居る。
目の前の彼女も、どちらかといえば信頼している。
だから、疑いもせずに、話を聞いている。
「……自分の、意思……」
227からすると、難しい事を言っているように聞こえる。
難しいが、何となく分かる。
待っているだけじゃ、ダメ。向き合わければいけない。
「わかった……えっと」
返事をしようとして、詰まる。
結局、目の前の彼女の名前が確定していない。
「あなたは……あかね?」
そして、ついでにもう一つ、気になっている事を聞いてみよう。
「……あかねは、ともだち?」
黒い瞳を覗き返した。
■日ノ岡 あかね > 「ええ、私はあかね……日ノ岡あかね」
にっこりと、あかねは嬉しそうに微笑む。
ちゃんと自分の顔を見る青い瞳。
その瞳に……黒い瞳で、夜の瞳で向き合って。
「アナタの友達よ」
そのまま、踵を返す。
いつかと同じように。
いつもと同じように。
音もなく、野良猫のように。
日ノ岡あかねは、背を向ける。
「次は『外』で会いましょうね、ナナちゃん」
それだけ告げて、去っていく。外へと。
もう、その先へ向かうための道は……示されている。
「『待っている時間』はおしまいよ。誰にとってもね」
あかねは、振り返らなかった。
■日ノ岡 あかね >
「チャンスは自分で掴むもの。たまに休んだり立ち止まったりはいいけれど……待つだけじゃあ……ダメ」
ご案内:「落第街 路地裏」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
■227番 > 「あかねは、ともだち」
頷いて、微笑みを見せる。
「うん、気を付けて、あかね」
すぐに見えなくなるだろう背中に、手を振る。
■227番 > 「ふーき……」
改めて紙を見る。
何が書いてあるかはさっぱりわからないが……名前を書く所はなんとなくわかる。
一応、聞いてみるべきだろう。信頼できる人に。
もしかしたら、やめておけと言われるかも知れないが。
その時はその時だ。
決めるのは、自分自身。
紙がぐしゃぐしゃにならないように気を付けながら、
直ぐ側の寝床へと帰っていった。
ご案内:「落第街 路地裏」から227番さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に日下 葵さんが現れました。
ご案内:「落第街 路地裏」にクゥティシスさんが現れました。
ご案内:「落第街 路地裏」からクゥティシスさんが去りました。
■日下 葵 > 「これから路地裏の見回りを始めますね。
ええ、今日見回るところはそこまで危険ではないので通常装備です。
次回の定時連絡は2230。はい、お願いします」
路地裏と、一般人が行き来する大通りのあいだ。
街灯の光がかろうじて届くほどの暗闇に、懐中電灯のあかりを向ける。
極々限られた場所が明るく照らされている状態で、耳につけたインカムから本部に連絡。
イヤホン越しに聞こえるオペレーターに報告を入れてから、路地裏に足を踏み入れた。
時刻は21時前。まだ夜更けというには早いが、
街灯が切れて仕事をしていないこの場所では、すでに十分すぎるほどの暗さだ>
■日下 葵 > 「さてさて、今日も治安の維持を目的にこの街を練り歩きますよぉ~」
とても間抜けなトーンで路地裏を歩いていく。
本来、自分は特別戦闘に秀でた能力があるわけではないので、
こんな風に単独で見回りを行うことは適切ではないのだが、
人手不足から見回りのシフトが回ってくることも少なくない。
何よりも、戦闘力こそ高くはないが、
先陣切って危険区域を見て回るにはうってつけの人材なのだろう。
つまらない戦闘で貴重な人員を失うのを嫌う組織としては、
大変使い勝手がいいことを自覚していた。
もし戦闘が起きたら、適当に本部に報告して応援を送ってもらえばいい。
自分は大抵のことで死んだり、復帰できなくなるようなことはないのだから。
そんなことを考えながら、鼻歌交じりに暗闇を闊歩していく。
比較的何度も担当した区域だからか、二級学生からの目もそこまで怪訝なものではない。
にこやかに手を振りながら、時々異常や、変わったことはないかと聞き込みをしていく。
「いやぁ、このまま何事もなく仕事が終わればいいですねえ」>