2020/07/16 のログ
■羽月 柊 >
「まぁ、こちらもそうそう良くは知らん。知っていたとしてどうにか出来るモノでもない。
どうにか出来れば《大変容》そのモノがどうにか出来てしまうからな。
それにしても、情報が多くて先ほど逃したが、
魔術自体は判別できるのに君自身魔術が使えないというのは興味深いな。
魔力の質が合わない話に類するのか、変換機等は試したのか?」
そう話す柊自身の魔力は少々歪だった。
魔力を持ってはいるが、それは手に集中している。
人体が元来から持ち合わせている魔力というのはこの男からは一切感じられなかった。
裏の世界ながら、話すことは物騒ではない。
ほんの少しだけ切り取ったこの場所は、今は平和だ。
それも少し経ち、自分たちが居なくなればまた、夜の闇に呑まれることだろうが。
柊の煙草は徐々に短くなっていく。
膜自体もそれに合わせて有限なモノだ。
あると便利な代物ではあるが、万能ではない。
「そうだな、この子らは俺の護衛に合わせて少々弄ってあるが…。
……怒らないのだな、君も、金龍も。
苦労に見合う成果が出ればよし、出ないならそれも経験だ。
伊達に人間として歳を喰っちゃいない…。」
伝言は伝えておこう、あの子も喜ぶだろうと頷く。
■黒龍 > 「『大変容』ねぇ。こっちの世界での歴史の転換点みたいなものだったっけかな。
――どの世界でも似たようなモノはあるんだな」
ぽつり、と呟きながら一度目を伏せたが直ぐに何事も無かったかのように瞳を開いて。
「あぁ?いや、変換機?とかそういう類のは試してねーな。
現状は自分自身で封印処置をして余計な魔力の消費を食い止めてるっつー感じにしてるし。
そもそも、その手の方面はあんまし詳しくねーんだよ俺」
と、肩を竦めてみせる。こちらの世界の機械とかマジックアイテムの類は未だにあまり分かっていない。
それよりも、「シュウこそ独特っつーか、手に魔力が集中してんのな」と。魔力感知の精度はかなりのものであり。
「あぁ?何で怒る理由があんだよ。そいつらが嫌々お前に付き従ってるようには見えないし洗脳とか脅迫の類でもない。
セイルとフェリアの意志なら、そいつを尊重してやるのが同族の誼ってやつだろーが」
お前は何を言ってるんだ?という真顔で首を傾げて。
そもそも、そんな事でいちいち目くじらを立てたり激昂するほど狭量ではないつもりで。
「ま、お前らに信頼関係とかそういうのがちゃんとあんだろーよ。
そんなの俺じゃなくても龍じゃなくても分かるってもんだろ。
ま、そんな訳で伝言は頼んだぜシュウ。俺ぁそろそろ引き揚げる。――”切れる頃合”だしな?」
と、彼の煙草を指差してニヤリ、と笑えばゆっくりと歩きして。軽く彼の肩をポンッ、と叩いてから横を通り過ぎて歩き出そうか。
「んじゃ、またそのうちな。フェリアとセイルもまたな」
と、振り返らずに右手を軽く揚げてから一足先に立ち去ろうと。
■羽月 柊 >
「龍としてのプライドが許さないやもなどと思ったのだ。
この子らが生まれた時から一緒に行動しているが、
そういった妙な拘りやプライドは…もしかしたら人間の方が厄介なのかもしれんな。」
人間は人間に特別意識を抱きすぎる。そう口の中で呟いた。
魔術学会ではセイルやフェリア、その他の子たちに対する偏見の眼は強い。
魔力の無い自分への偏見も。
そういった偏見無く、今の2匹を見て言ってくれる龍たちの方が、
どれほどありがたいか。
「俺はそういった変換機やらの外付けに頼ってる側でね。
興味があるなら気が向けばうちへ来ると良い。
多少の解析や変換の手伝いぐらいは出来るかもしれないからな。」
とはいうが、黒龍が気が向くかどうかは分からない。
今までもこうして互いに知らずにいたのだから。
最後のひと吸いをしようかと手に持った煙草に口を付ける瞬間、
相手から声をかけられる。
「……あぁ、これでこの一本は終わりだとも。
俺も、また逢える事を楽しみにしている。」
■黒龍 > そうして一足先に。彼が煙草を吸い終える頃には男の姿も気配も、靴音も路地裏の向こうへと消えている事だろう。
後に残るのは龍の気配――”終焉”の気配。それも直ぐに霧散して闇に混じり、この世界の一部となって消えていく――。
――その日、終焉龍と竜と共に歩む者は出会った。
ご案内:「落第街 路地裏」から黒龍さんが去りました。
■羽月 柊 >
最後に煙を吐き出し、手元の煙草が手持ち花火の残滓のように散っていく。
黒龍が去った方向を一瞥し、それもすぐに視線を戻すと外していた仮面を付け直す。
「…本当に、君たち竜や龍を相手している方が、よっぽど分かりやすいな。」
セイルやフェリアは"終焉"の気配を感じ取ったが、
それは柊に知らされることは無かった。
膜が晴れる。
切り取られた場所が元に戻る。
闇夜の落第街の喧騒が、この場に戻って来る。
遠くで聞こえるのは、怒号か、哀しみか。
そんなモノには興味が無いとばかりに、黒龍が去った方とは別に、
柊は真っすぐ歩いていく。
――竜と共に歩む者の運命は、未だこの夜闇のように、先が見えない。
ご案内:「落第街 路地裏」から羽月 柊さんが去りました。