2020/08/29 のログ
神代理央 >  
「焼かれて死ぬなら本望、か。其処まで覚悟した上での火遊びならば、"貴様自身"の事にはもう何も言わぬさ。
しかして、その火遊びが他者を巻き込むというのなら。多少は自制したまえ。後始末が面倒だし、同僚に砲火を向ける事を、私はしたくないでな」

言葉は真面目だが、その表情は愉し気な笑みを形作っている。
彼女を本気で止めようとしている訳で無ければ、彼女に砲火を振るう事を躊躇っている素振りも無い。

「……ほう?得てしてそういう態度を心掛けているわけでなし。
元来の性格故、自覚もしていないところではあるが…。
過程を楽しむ、という点については同意しよう。何事も、達成するまでの道程を楽しむもの故な」

「…まあ、他者からの視点、評価というものも、得てして自らを形作るものにもなる。
そういった意味では、貴様が嗜虐性を持ち合わせていると見られる点については、私も否定しようがないしな」

可憐な少女の見栄えでありながら、他者を甚振る事に悦楽を覚える妹分の事を思い出しながら。
思い出し笑いの様な、含み笑いの様な。そんな笑みを彼女に向けるだろうか。

日下 葵 > 「やだなぁ、さっきも言ったじゃないですか。
 他人を巻き込んでいればとっくに豚箱に入ってるって。
 むしろ今この瞬間にお給料もらって風紀を守ってるんですから大丈夫ですって。
 そんなに私、節操ないように見えます?」

倫理観のタガが外れていたとしても、
ちゃんと自制して生活しているのだ。
もし歯止めが利かなくなって頭に浮かんだ欲求を追い求めていたら、
とっくに監視対象になっている。

「せっかくあなたからありがたいお言葉をいただいたので私からも一言。
 ”相手を選ばずに敬語を使う癖”はつけておいたほうがいいですよ。
 尊大な態度をとっているといつか虎になっちゃいますよ?」

別に彼が尊大な態度を取ったところでそれを矯正しようなんて思わないし、
矯正しようとしたところで無駄だろうし、”余計なお世話”だろうが、
これは”お返し”だから問題ない>

神代理央 >  
「…初対面故、一概には言えぬからこそ。私の中には『報告書』の先入観がある。"相手に与える印象は自分次第"と言ったのは貴様だろう?
つまりは、そう言う事だ」

節操がない様に見えてしまうのは、彼女の行動の結果故。
だから、行動には気を付けるべきだろうと締め括って、少年の小言は終わりを迎えて――

「……別に構いませんが。私は"敬語を使う相手を選んでいる"だけですので。先輩がそうあれと望むのなら、何時でも敬語で接して差し上げますよ?」

ニコリ、と浮かべる社交的な笑み。
その笑みの儘、体格差のない彼女へ一歩、二歩、と歩みを進める。
上質な革靴が薄汚れた路面を叩き、コツ、コツと音を立てる。

「別に敬語を使う私が先輩の好み、という訳では決してないのでしょうが。御忠告通りにするくらいには、良き後輩でいようと努力はしますよ?」

そうして彼女まであと一歩、という距離まで近づくと。
ニッコリと笑みを浮かべて、愉し気な声色で言葉を紡ぐ。

日下 葵 > 「おやおや、ならぜひ他の報告書も読んでいただきたいものです。
 評価は行動の積み重ね、一つの報告書に書かれている事柄は一つの出来事だけですよ」

私は報告書なんて読まなくていいなら読まない人間なので、
貴方のことはほとんど何も知りませんけど。
なんて。お互いに”いい性格”をしているが故の言葉の応酬である。

「いいじゃないですか!
 絶対そっちの方がいいですよ!
 あ、それ以上近づくとセクハラで報告しますからね?
 そういうところですよ女癖が悪いって言われる由縁」

わかりやすく”営業スマイル”と一緒に敬語で話す彼を、両手を叩いて歓迎する。
演じているのがわかりやすいのも虚勢を張っているようで可愛いと言わんばかりである。
そして近づいてくる彼をあと一歩のところで制止した。

「他人から見てこの状況どう思われるか想像してくださいよ。
 他の人に同じことをしているなら本気で気をつけたほうがいい。
 彼女がいるんでしょう?パーソナルスペースですよ」

楽しそうな声色が一転、これは本気の忠告のようだ>

神代理央 >  
「そのたった一つの行動が、大きくイメージを変える事もある。
…とはいえ、貴様の言い分にも一理ある。偏見の目を持って接する事は、控えるべき事ではあるしな」

からからと笑いながらも、報告書を読んで欲しいという言葉には頷いてみせる。
それは特段、間違った事では無い。寧ろ正しい事ですらある。それに、彼女が己の事を知らない、という言葉にもさして気分を害した様子も無い。此方とて、彼女に対して知り得ている事など余り無いのだから。

「喜んで頂けた様なら何より。けれど、余り大袈裟な喜び方ははしたないですよ。流石に子供っぽいとまでは言いませんけど」

「…そして。意外と律義な所もあるのですね。別に意外とは言いませんが。結局、そういうものです。他者からの目というものは、事実と全く異なる事であっても誤認を呼ぶ。
貴女が先程揶揄った事も、此のあと一歩の距離を邪推した連中によるものであると、御理解頂けたでしょう?」

彼女に言われる迄も無く。その一歩の距離を詰める事も無く、歩みを進める事も無い。
自ら立ち止まれば、至極真っ当な忠告を告げるの言葉に頷きつつ、再度歩みを進めて――其の侭、彼女の横をすり抜けた。

「……ね?切り抜かれる事実等、所詮はこんなものですよ」

彼女から数歩遠ざかった所で振り返り、肩を竦めてみせる。

日下 葵 > 「あの一件で私のイメージ、どうなったんでしょうね?
 その辺は確かに気になるところですけど。
 おやおや、さすがに大げさに反応はしましたけど、皮肉に見えましたか?
 まぁ、ちょっと歳不相応で可愛げがないなぁとは思いますけど、
 それを差し引いても敬語使ってる方が物腰柔らかでいいとは思いますねえ」

「……これを律儀だと思うあたり、少し言動を顧みたほうがいいですよ。
 私もたいがいですがあなたも大概のようです。
 なんにせよ、これでも私も女ですし。
 あなたが私の倫理観を心配するのと同じくらい、
 私もあなたの女性との距離の取り方が心配です」

彼が私をどれだけ心配しているのかによって、
最後の一言は意味がだいぶ異なるが、その辺の感じ方は彼に任せることにしよう>

神代理央 >  
「私は比較的落第街に出る方だから、報告書にも目を通していたが…。
貴様のイメージそのものというものであれば、同僚諸氏は意外と変わらないのではないかね。風紀委員の皆が皆、全て現場に出る訳でもあるまいし」

「…敬語と社交性の関連性と有意義さは理解しているが、元来の気質と口調が私は此れ故な。努力はしてみるが」

結局、敬語は長く続かなかった。
肩肘張る様な言葉遣いは、嫌いでは無いが肩が凝る、と言わんばかり。

「女性からの忠告であれば、素直に受け取るさ。
余り自覚した事は無かったが、距離感の重要性は多少理解しているつもり故な。
……心配してくれている事には、同僚として素直に礼を言っておくとしよう」

己の場合は『距離感』というものを武器にしているところもある。
とはいえ、彼女の言にも納得も同意も出来るので、反論する事無く素直に頷くだろうか。
人と接するというのは難しいものだな、と内心溜息を吐き出しつつ。

日下 葵 > 「ならあんまり心配はいらないですねえ。
 私のこと知ってる人なら私がどういう人間なのかわかっているでしょうし」

少し本職を知っている人間なら普段どういう仕事をしているかも知っているだろうし、
ちょっと後ろ暗いこともしているのが知れているなら尚のこと。

「なんていうか、一生懸命取り繕ってるんだなぁって感じですね……」

長く続くことはなかった敬語。
その口から出てくる有意義とか、理解とか、
そういう言葉を聞くと今度はこちらが肩を落とした。
聴いてるだけで息が詰まりそうで、普段どんな人と話しているのか逆に気になる。

「逆に今まで誰にも言われなかったんです?
 女性とか上司とかその他諸々とか。
 大丈夫ですか?逆に貶められてませんか?」

彼の様子を見ると心配が深まるばかりだ。
もう虐めたいとか思わなくなるレベルで。
この風紀委員、だまされたりしないだろうか……>

神代理央 >  
「人は何時だって、何かしら自分を取り繕って生きているものさ。
寧ろ、取り繕わぬ者がいるとすればそれは、自分自身へ過剰な自信を抱いている者か、社会と秩序に反した者だろうさ。
『社会』に取り繕わぬ者等、荒野の獣と大差あるまい?」

人は一人で生きている訳ではない。大なり小なり、何かしらの集団、組織に属して生きている。
であるならば、必ず何かしら取り繕って生きなければならない。我を通す事は『社会』においては獣に等しい行為。
そんな言葉を、彼女に告げるだろうか。

「…今一つ要領を得ぬが、距離感については特段言われた事は無い。そも、私の距離感は特段男女で差をつけている訳でも無し。
それで貶める様な輩は、精々ゴシップ記事を集める者くらいだろう?」

女性関係について己に告げてくる者はいるが、流石に距離感について言及された事は無い、と肩を竦める。
心配される様な事は無いさ、と小さく首を振るだろうか。

日下 葵 > 「それはわかるんですけど、あなたの場合は”ズレてる”様におもうんですよねえ。
 ”そこじゃないんだよなぁ”感があるんですよ。
 うまくは言えないんですけどね。
 社会についていろいろ語るくせに社会の中で暮らしたことの無い、
 そういう違和感みたいな」

彼がどんな社会で生きてきたのかは知らない。
争いが絶えない社会かもしれないし、権力の社会かもしれない。
何にせよ、一時的におかしな世界に飛び込んでいただけの私とは、
いろいろな物事への基準が相違しているように思えた。

「……男女で差をつけてないから変な噂が流れるんじゃないですか?
 考えてみてくださいよ。
 あなたが女の子みたいな扱い受けたらいろいろ思うものがあるでしょう?」

彼女さんとやらに同情する……と頭を抱えた。
あったこともない彼女に勝手に同情するのも厚かましい気がしたが。
その彼女が知っている風紀委員だなんて、今は知る由もないのだから>

神代理央 >  
「というよりも、子どもが大人ぶっているような様に、違和感を覚えているのではないのかね。
社会で暮らしたことが無いのではなく、そもそもの経験値が不足しているのに、それを悟ったかの様な言葉を選びたがる。
其処は、自覚しているところではあるよ」

結局、己は背伸びした子供でしかなく、それは自覚しているところでもある。
だから、彼女の言葉を自ら補足しながら苦笑いを浮かべるのだろうか。

「其処は別問題では無いのかね?私は、男女で距離感の差をつけぬとは言ったが、性別を疎かにする様な事はせぬよ。
女子の様な扱い、という意味では、残念ながら揶揄う言葉として投げかけられる事はあるがね。
…何にせよ、貴様が言いたいのは他者への距離感の問題なのだろう?其処はについては、少なくとも否定はせぬさ」

己の容姿から、女子に対して向ける様な言葉や態度を向けられる事はあるが、彼女が言いたい事はそう言う事ではないのだろう。
その上で、距離感の問題については変わらず肯定の意を示すのだろうか。

「……何にせよ、忠告は受け取っておくさ。少なくともその言葉に悪意は感じられぬ故な。
ではな、日下。雑談に耽っていては、互いに職務に差し支えるだろう。御互い、果たすべき役割をこなさねば、な?」

と、言葉を締め括ると。制服を翻して背を向けて、異形達と共に其の場を立ち去るのだろう。
地響きめいた異形達の足音が、ゆっくりと。彼女から離れていくのだろうか。

日下 葵 > 「あー、それはあるかもですねえ。
 何て言うか、そう、背伸びしてる感じ」

なんだ、自覚しているのか。
そんな顔をすればつまらなさそうにする。
心配したりつまらなさそうにしたりと忙しい奴である。

「なんていうか、性別をおろそかにしてなくてその距離感なら尚のこと……
 私もいろいろと距離感が”アレ”って言われますけど、
 あなたの場合はもう少しなんですか。
 羞恥心?乙女心?女心?うまくは言えないですけど」

見てるこっちがヒヤヒヤするんですよ。なんて。

「まま、お互い余計なお世話かもしれませんけどね。
 今更他人に言われて治るものでもないでしょうし」

少なくとも自分は今からこの性格を直せる自信はない。

「おっと、雑談に花を咲かせ過ぎました。
 給料分は働かないとクビになってしまいます」

それは困る。そういって、こちらも路地を進んでいく。
今度会ったときは彼のことをからかえるネタでも探しておくか。
そんなことを考えながら、職務に戻るのであった>

ご案内:「落第街 路地裏」から日下 葵さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に焔誼迦具楽さんが現れました。
焔誼迦具楽 >  
 落第街は迦具楽にとって古巣と言える場所だ。
 いや、もはや故郷と言っていいだろう。

 迦具楽はここで自我を得て、ここで死に、ここで生まれ変わった。
 だからこそ、この混沌とした街を愛していると言っていい。
 もちろん、今の住居がある異邦人街も第二の故郷と言えるくらいには愛しているが。

『──ひ、ひぃ、し、しにたくないぃ!』

 悲鳴を上げる男の頭を踏みつけて、頭蓋骨に罅が入る程度に加減しながら少しずつ力を込める。
 頭蓋がひび割れる音が聞こえるように、より恐怖を与えるように。
 そうしてたっぷりと情動を揺さぶってから。

「──ざーんねん。
 いただきまーす」

 男は迦具楽の足の下で藻掻きながら、体温を失い冷たくなっていく。
 そして十数秒と経たず、男はあっさりと絶命した。

焔誼迦具楽 >  
「ごちそうさま。
 んー、やっぱりイマイチ食べごたえがないなあ」

 男の体温と魂を喰らいつくし、しかし物足りなそうな表情を浮かべた。

 ──この場所には、すでに男女合わせて数人が死体となって転がっている。
 そのいずれもが、死んだばかりとは思えない程に冷たくなっていた。

 外傷も様々だ。
 手足が折られていたり、全身から血を流していたり、銃創のように穴が空いていたり。
 それでも一つとして致命傷はなく、熱だけが消え失せている。
 食べ物は無駄にしない──食物に対する最低限の礼儀だった。

「さて、と」

『ひっ──』

 迦具楽が顔を上げると、小さな声が漏れ聞こえた。
 目を向ければ、迦具楽の外見と大差ない年頃の少女が口を手で抑えて震えている。
 それを見て、がっくりと肩を落として少女の目の前にかがみ込んだ。

焔誼迦具楽 >  
「ねえー、アナタなんで逃げなかったの?
 もしかして、自分は助けてもらえるとか思ってたー?」

 そう言いながら、少女の額を指先でつつく。
 少女は顔色を真っ青にして、涙を溢れさせながら震えるように首を振った。

 この日迦具楽が潰したのは、落第街の人間を売りさばく人身売買の取引だ。
 人間はそれだけで金になる。
 玩具としても、労働力としても、パーツとしても。

「私ね、別に慈善事業でこういう事してるわけじゃないの。
 わかるよねー?
 アナタを助けに来たわけじゃないんだよ?」

『は、ひ──』

 ガクガクと頭を縦に振る少女は、すっかり怯え切っている。
 まあ、目の前で何人も蹂躙され殺されていればこうもなるだろう。
 扱いに困ったように、迦具楽は大きくため息を吐いた。

焔誼迦具楽 >  
「はーい、質問です。
 アナタ、読み書きは出来る?」

『ひ、い、で、できません』

「えー?
 それじゃあ、計算は?」

『わ、わから、ないです。
 ごめ、ごめんなさい』

 少女の反応に、迦具楽は残念そうに首を振った。

「あのねー、それじゃあ私、アナタを生かしておく理由ないんだ。
 だって利用価値がないんでしょ?
 そしたらさ、食べてあげるくらいしか使えないじゃない」

 どうしよっか? と、少女の前で首をかしげる。
 少女は腰も抜かしているんだろう、逃げる事も出来ずに涙を流して怯えるばかりだ。

ご案内:「落第街 路地裏」に刀々斬 鈴音さんが現れました。
刀々斬 鈴音 > 「てい!」

軽い声と共に少女の目の前に投げられたのはガラス玉。
今にも弾けそうなくらいに魔力の籠ったそれは地面に落ちるとともに爆発を起こす。

「こっちへ!早く!!」

さっきまで腰をぬかしていた少女は刀を持った…恐らく自分を助けに来た少女の方へと駆け寄ってくる。
それを刀で斬れば彼女は『なんで…』と呟いて麻痺して動かなくなった。

「あなた!こんなに人を!!もう!人が来なくなっちゃたらどうするの!」

ぷんぷんと怒りながら冷たくなった男の死体に刀を突きさす。
そう、鈴音は主にこの場所で人を斬ったり刺したりして楽しんでいる。
ここに人が来なくなるのは大きな問題なのだ。

焔誼迦具楽 >  
「――うわっ」

 突然転がってきたガラス玉が爆発する。
 それは威力こそ大したことなかったが、驚いて数歩退く。
 少しして視界を取り戻せば、なぜか斬り倒されている先ほどの少女。

「びっくりした――ええ、いきなり現れて、なんで怒ってるの?」

 現れた少女は、刀を持っている。
 そして、死体にあっさり突き刺した様子を見れば。
 どうやら辻斬りか何かの類だろう。

「なによ、貴女。
 こんなところ、後ろめたい取引をするような連中ばかりなんだから、別にいいでしょ。
 今だって、こいつらが人身売買してたのを潰しただけなんだけど?」

 不満そうに怒っている少女に、言いがかりをつけられたとでも言うように眉をしかめて答えた。

刀々斬 鈴音 > 「よくないよ!!ここで悪い事しようとしたら死んじゃいました!とか噂が流れたら人来なくなっちゃうでしょ?
 最悪、自警団とか動くでしょ?鈴音がここで人斬りにくくなるじゃない!!」

言いがかりも言いがかり、完全に言いがかり。
獲物が取られたことに対する文句みたいなもの…。

「それに人は生かしておいたら何回でも血を取れるけど殺しちゃうとそこで終わりなんだよ!
 もったいない!!!」

刀を死体の胸部に突き刺す。
死体からは一瞬で血がなくなってすぐに干からびてしまった。

『鈴音……あまりこの相手と関わるのは良くない。』

「ちーちゃんは黙ってて!これは鈴音とこの子の問題なの!」

握った刀が横から熱くなってる持ち主を止めようとするがそれで止まる様子はない。

焔誼迦具楽 >  
「いや、私としてはそれが好ましいんだけど」

 完全に言いがかりだ、酷い。
 ただまあ。

「死なないように、半殺し――って言うのは同意出来るなー。
 私もそうやって繰り返せるのが理想的なんだよね。
 まー今回は殺しておいた方がよかったから殺したんだけど」

 死体が干からびるのを見れば――なるほど、血を吸う妖刀、魔剣の類かなとあたりを付ける。
 なんだか妙な声が聞こえたが、あの刀は喋るんだろか。

「別に問題でもなんでもないんだけどなあ。
 私はほら、もう目的も片付いたし、帰るだけなんだけど。
 血が欲しいならほら、どうぞ?」

 近くの死体を、少女の方に向けて蹴り飛ばす。
 男の死体は少女の目の前あたりに転がりながら落ちるだろう。

刀々斬 鈴音 > 「でしょ!!絶対使いまわしたほうが良いと思うの!!
 人は殺したら死んじゃうんだから!」

人は殺せば死ぬ…死ぬのだ。
鈴音が殺しをしていないのは所持した妖刀の力が大きい。
適切に血を止め、麻痺させる、殺さず使いまわすことに秀でた刀。

「もう!そういう態度嫌い!!」

転がって来た死体の胸部を一突き。
またも乾いた死体に変わる。

「ちょっと、痛い目を見せてもう近寄らないようにした方がいいかも…。」

『待て!鈴音!本当に待て!』

刀が必死に喋るが気にせず相手に刀を向ける。

焔誼迦具楽 >  
「うんうん、昨日もそれで、美味しい子を逃がしてあげたところなの。
 死なないように楽しめるのなら、それが一番」

 と、腕を組んでもっともだと頷く。
 しかし、癇癪気味に声を荒げる少女には、困った顔をする。

「もう、わがままだなあ。
 その上ヤル気なの?
 私もう、一仕事した後なんだけどなぁ」

 面倒くさそうに言うが、しかし。
 相手はどうやら辻斬り。
 人殺しはしていないようだが――。

「まあ、アナタも少し、懲らしめてもいい人間かしら。
 この街に『不適切』とは言わないけどね」

 右手の先から一本の刀を『創造』する。
 その刀の見た目は、寸分たがわずに少女の持つ刀と同じだろう。
 もちろん、同じなのは見た目だけだが。

刀々斬 鈴音 > 「鈴音は別にわがままじゃないよ!!」

どの口がいうのか……。
あまりにも自分勝手。

「……そんなボロボロの刀で鈴音に勝てるとでも思ってるの!」

相手が作り出したのは見た目はボロボロで赤黒く血に汚れた刀!!妖刀でなければそれはナマクラ!
走り近づき一気に距離を詰めて、思い切り刀を振るう。

「もらった!!」

狙うは右手!その刀を叩き落す!!

焔誼迦具楽 >  
「我儘だと思うけどなぁ。
 昨日の子と同じくらい」

 ――ちゃんと戦うのは久しぶりだ。
 左手でこめかみをトントンと叩き、剣術の経験を『検索』し『読込』。
 自分の体格と力に合わせて『最適化』――完了。

「ナマクラで丁度いいのよ」

 突進してきた少女に向けて左足を一歩踏み込んで、半身になりつつ。
 刀を振るった腕を抑えるように左手を添えて、そのまま踏み込みの勢いを利用してすれ違うように押し出そうとする。
 少女が対応しなければ、踏み込んだ勢いのまますれ違い、立ち位置が入れ替わるだろう。

刀々斬 鈴音 > 「昨日の子とかは知らないけど!絶対鈴音の方がわがままじゃないよ!!」

恐らくそれは事実。
鈴音の方がわがままでない…!

「何その動き!」

簡単な動きで、躱されてすれ違う。
だが、それだけだ!

切り返し、くるりと回って直ぐに後ろの相手に再び刀を振るう。
リーチの面ではこちらが勝ってる!

付け焼刃の相手には負けない!!

焔誼迦具楽 >  
 入れ替われば、反転して切り払いに来るだろう。
 それは、この直情的に見える少女の性格を考えれば手に取る様に読める。

 背後を切り払おうとする少女と共に、迦具楽もくるりと反転する。
 少女と背中合わせになる様に。
 その間に右手の刀を逆手に持ち替える。

 少女が刀を振り切ったとき、その背中合わせにぴったりと寄り添う形で背後に立ち。
 反転しての切り払い、その後の事を考えていなければ少女は対応できないだろう。
 そうなれば、逆手に持ったナマクラの刀が、少女の首に音もなく触れて錆びた感触を伝える事になる。

刀々斬 鈴音 > ……錆びた鉄の匂いがする。

気が付くと刀が…見慣れたものとよく似たそれが首に触れている。
久しぶりに感じた死の感覚が一気に頭の方まで上って来て一気に冷えていくのを感じる。

「っああああああ!!!!」

思い切り刀を振り回しその感覚をその感覚の元凶を遠ざけるようとする。
ガムシャラに。

『鈴音、落ち着け。』

……刀から無機質な声がして少しだけ落ち着く。

焔誼迦具楽 >  
「――はい、一回」

 我武者羅に刀を振り回す少女から、そのナマクラ刀で受け流しながら離れる。
 散歩するような気楽な歩調で五歩の距離を取り、振り返った。

「どうかしら、一回死んだ気分は」

 ナマクラ刀の刀身を、ぺしぺしと叩いて、

「本当におんぼろだなー。
 切れなくてよかったね」

 なんて言って、少女に笑いかけるだろう。

刀々斬 鈴音 > 錆た刀身が首を擦った跡がひりひりとする。
一歩間違えていたらそれが普通の真剣であれば鈴音の命はない。

「……斬れてたら鈴音、死んでたんだよ!人の命を何だと思ってるの!!」

未だに血を残した死体の心臓に刀を突き立て血を啜る。

「ちょっと鈴音に力を貸して!鈴音が生き残るために!」

血腐レ、その妖刀が纏っていた血が燃える。
炎と雷を操る吸血鬼の血を媒介にしたとっておきの技。
これが使えるのは一度だけ……もし再び使うのならまた同じ吸血鬼から血を取る必要があるが次はそう上手くはいかないだろう…。

血腐レ─炎血

炎の渦が相手を包む!並みの相手なら!普通の人間なら一瞬で消し炭にしてしまうほどの熱量!!
まさに一撃必殺ともいえるそれを叩き込んだ!!!

「…やった!多分直撃した!!」

恐らくこの狭い路地裏!回避は難しいだろう!!

『やったか!?』