2020/09/08 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
夏が終わり、久しぶりに黒色のクロークを羽織り警邏へと出かけた
せっかく抑止力として名前が通っているのなら、それを絶やす必要もないということ
それ自体は理解しているし、納得もするので、こうやって……
黒い灰被り姫<シンデレラ>再臨…と、なったわけである

「(自分で名乗らなきゃそんなに恥ずかしくないモンね)」

口元までをぐっと外套で隠しながら、深夜帯にしてもやや目立つ風貌で路地裏を歩く

その存在を眼にした住人はヒソヒソと遠巻きに何か言っている
こうやって歩くだkでも効果アリ、ということにしておこう

伊都波 凛霞 >  
さて、今夜の凛霞には、黒い外套以外にもうひとつ、普段とは違う様相が見られる

普段彼女はその身に帯びた無数の武器、火器を見せて歩くことはしない
しかし今日は、その腰元に一振りの太刀を帯びていた

古くからひっそりと表舞台の影で息づく退魔師の世界
それを更に影として戦国時代より続く伊都波の血筋
その家の蔵には、こういったやや珍しいモノも眠っている
一緒についていた文書、そして父様にも確認をとったので本物には相違ないだろう

『蜘蛛切』
土蜘蛛退治の伝説に連なる刀では"ない"
それに肖ってつけられた名なのかどうかは知らないが
霊的な糸…繋がりを断つことが出来る霊剣であるという

そんなものまで持ち出して、此処落第街に来る理由は彼女には一つしかない

伊都波 凛霞 >  
自身の異能、サイコメトリー
明晰夢による追跡も含めて、自身にかけられた"呪い"の出処はほぼ特定できていた

「……誰だか知らないけど、あんまり人のことを玩具にしないでよね…っと」

蜘蛛切を抜き放ち、自身へと繋がる呪いの線
それを断ち切るように、刀を振るう

限りなく呪いの大元に近い場所にて、経路を切断する
それは呪いをかけている相手にも伝わるだろう
そして…ルギウス先生の計らいでの結界内部での睡眠による呪いの阻害
これは、呪者にとっては『面白くないこと』の連続のはずだ

──これで引き下がるなら良し。再度経路を接続し、こちらを弄ぼうとするならば

刀剣を納め、制服の上着のポケットの中で、彼から託された手拭いをきゅっと握りしめる
その時は…心強き異界の味方と共に、そのオトシマエをつけてもらおう

伊都波 凛霞 >  
裏通りへとやってきた目的の一つを果たし、警邏へと戻ろうとする

普段の姿+刀剣を身に帯びたその様子を見て、住人の何人かはやや慌てたようにその場から逃げたようだった
ああ…効果出てるね、とっても効果出てる

小さくため息をつく

「…やましいことがなければ逃げなくていいのに」

黒い灰被り姫モードは見境なく破壊の権化と化しているわけでもない
噂には当然尾鰭がつくものだけど…まぁヒソヒソ話しつつ近づいたら逃げた連中は、
きっと何かやましいことがあったのだろう
顔はおぼえたぞ

伊都波 凛霞 >  
裏通りを歩く内、普段無意識で避けていた一角へとたどり着いた

無意識?本当にそうだろうか
意識して、避けていたのかもしれない

──…ちょうどこのあたりだろうか

雨が降ってる日だった

まだ風紀委員なんかじゃなかった頃のこと
どうして此処に来たんだったか……親切に雨を凌げる場所に案内された先で…

突然鼻と口を柔らかな布で覆われて、甘い香りの中で意識が遠くなっていった…ところまで、覚えている

伊都波 凛霞 >  
そして次に目が覚めたのは病院の真っ白なベッドの上
その間のことは全然記憶になくて、後から…凄く居た堪れない顔をした、風紀委員の女性に話をされたんだったかな

最初は何のことかもわからなかったのが、SNSに拡散してた画像や動画を見てようやく理解したのがその数週間後
まるで記憶にもない、正気ですらなさそうな自分がそこに映っていたことに、多分生まれて一番のショックを受けた

そんな、元凶の区画(エリア)

「──結局あの違反部活は摘発されたんだっけ……」

自分が風紀委員に入るよりも前のことだ
しかも違反部活の数は多く、小さいものは風紀委員のデータベースにも記録されていない、
もしくは記録されていたとしても些末なものは見つけることがほとんど不可能である

ここで雨宿りをした、そんな朧気な記憶
そっと建物の壁に手を触れて、目を閉じる

伊都波 凛霞 >  
甲高い、金属質な音が脳の中へと響く
同時に再生される記憶の断片
──此処最近では、この建物への出入りは全くないのだろう

やがて再生される映像はボヤけ、ノイズが混じりはじめる
たまに建物の前を人影が過る程度の、そんなメモリーしか再生されない
遡る記憶の残滓、そのデータが劣化…古くなっている証拠だ
やがて、雨の降りしきる中
違反部活の構成員に促されるようにして建物に入っていく過去の自分の姿が、ノイズ越しに見えた
そしてその後について入っていく、更に二人の男の姿も

「………」

そっと、壁に触れていた手を離す
あの日に記憶はもう、その残滓としても掠れ、失われつつあった
自分の中でももう遠いことのように感じられる
あんなこと、本当はなかったんじゃないか…そんな気持ちになることもある

伊都波 凛霞 >  
ドアに手をかけると、建物には鍵がかけられ封鎖されていた
風紀委員が封鎖をしたわけでもないようだったけれど…もしかしたら最近ではなく、
自分が事件にあった直後くらいには、もう手が入っていたのかも知れない

だったら、それはそれでいい。自分が裁く必要なんてない
自分みたいな目に遭う生徒が少しでも減ってほしいと、風紀委員になったのだから
既に摘発されていた、なら。その事実は喜ぶべきだ

踵を返し、黒いクロークを秋風にはためかせながら…再び歩きはじめる

伊都波 凛霞 >  
ひそひそを話し声が聞こえる
どうせ黒い灰被り姫の話をしてるんだろう、ということはわかる
むしろそれで良い
恥ずかしい以外にやらない理由がないなら、やるべきだ
仕事として抑止力にもなるのだから、むしろもっと広まるべきだ──

伊都波 凛霞 >  
…とわかった上でも、納得の上でも

少女、凛霞は
遠巻きにヒソヒソと自分のことを噂される
それ自体が、やや苦手だった

──以前のような、学園内を歩くたびに、ヒソヒソと言葉が聞こえてきた頃を思い出すから

思えば常にトップクラスの成績で神童だなんだと呼ばれた頃から、好きではなかった
遠巻きに話のネタにされるよりも、直接話しかけて、親しくなりたかったから
自分から近い距離へいって、たくさん話をして…友達を作ったり、した

件をきっかけに、それが真逆の悪意に変わった時に、それは明確に『イヤなもの』になった

優等生ぶってあんなことしてるなんて
大人しそうな顔して、人は見かけによらない
憧れてたのに

汚い、汚らわしい、尻軽、ヤリマン女、スキモノ、誰にでも股を開くだの、幻滅しただの──

皆好き勝手なことを言って
人一倍、常人より遥かに聴覚の優れた自分には、全部全部、すべて聞こえてた
チヤホヤしてくれるだけの友達は、そのときに一人もいなくなった

伊都波 凛霞 >  
イヤだイヤだって耳を塞いでいても、結果は同じこと
苦手を払拭するために開き直りが必要ならそうする必要がある

なぜなら今の自分はあの頃の、ただの一般生徒ではなく
風紀委員という仕事を任された生徒だからだ

ヒソヒソ話が気に入らない?なら、自分から近づいて直接話をしてもらえばいい

「ねえ──貴方達…」

視線を向け、声をかけ、距離を詰めて
そう、あの頃のように、自分からその距離を縮めていけばいい──

『うわあ!やっぱ黒い灰被り姫だ!!』
『逃げろ!!』

……あれ?

イヤ、これでいいのか…そうだよね、きっとそう…

伊都波 凛霞 >  
声をかける際に掲げた手が行き場を失ったようにスッ…と降ろされる

………

そうだね
女性として不名誉な言葉で噂されるよりはよっぽど良いっていうか…
鉄火の支配者、のような抑止力としての名前として機能してるんだから、これが正常反応…

逃げられてちょっと傷ついたとか、そういうのは、多分、気のせい……

伊都波 凛霞 >  
「…普通の警邏の時はもうコレ着てこないようにしよ…」

防弾・防刃用の特殊素材のクローク
こっそり愛用品にしてた良性能の防具

黒い灰被り姫、が出てくるのは…そう、月イチくらいにしておこう

ご案内:「落第街 路地裏」から伊都波 凛霞さんが去りました。