2020/09/23 のログ
真珠星《スピカ》 >  
「つまんない、つまんないって……遊びじゃないんですよ!」

力任せに振るった三節棍が何か固いものに阻まれた。
これは───氷だ。心なしか周りの気温も下がってきている気がする。
水だけでなく氷……冷気も操ることができる?

「……冷たっ!? でも、これくらい!」

思考を巡らせていると、金属部分がみるみるうちに冷えていくのが掌に伝わってくる。
持っていられなくなる前に連結を解いた。これで冷気の伝播が遅れて、武器を取り落とすこともない。
そのまま三つに分けた棍を不規則な動きで振り回して追撃を試みる。

アストロ >  
「あは、私からすれば遊びだけどねぇ?」

素早く連結を解いたのを見れば、判断力には感心する。

「いいねぇいいねぇ、でも、それは私には効かないよ?」

相手の得物がただの物理攻撃だとわかれば、防御もいらない。
少女の体に当たるかと思われた三節棍は、ぱしゃっと音を立ててすり抜けていく。
まさに水面に打ち付けたような手応え。

三節棍には意識もくれず、少女は一歩前に踏み出して、バイザーに人差し指を向ける。

「お顔、見せてよ」

《アイシクル》

指先からは短いつらら。
飛び退くのはまだ間に合うが、その先はすでに水浸しだ。

真珠星《スピカ》 >  
アストロは避けるそぶりを見せない。
鞭のようにしなる棍が彼女の体に命中した───そう思った直後。
水を叩くような音と共にすり抜けていくのを見て、流石に動揺を隠せなかった。

「なっ……!?」

まるでアストロ自身が"水そのもの"のような手応え。
並列思考を持ってしても理解が追い付くのに一拍かかってしまう。
その隙に彼女の指が私の、目元を覆う偏光バイザーに向いた。
まずい───

「きゃあっ!」

咄嗟に仰け反って直撃は避けたけれど、氷柱が掠めたバイザーにヒビが入る。
追撃を避けるため、効かないと分かった三節棍を手放して後ろに飛び退く。
ばしゃん、と水溜まりが大きく跳ねた。

アストロ >  
「筋はいいんだけどねぇ。相手の能力は測ったほうがいいよぉ」

避けられるのも想定内。そのまま少女は指を向ける。

《アクアスフィア》

足元の水が、跳ねた水が、壁から吹き出してた水が、何処からともなく現れた水が、
スピカの体を包み込むように集まり、大きな水の球を形づくる。
体を動かそうとすれば強い圧力を感じるだろう。
内側から外は光が反射して、おぼろげにしか視えない。

「さて、どうしてあげようかなぁ。殺すのは勿体ないなぁ」

くぐもった音ではあるが、少女の声は聞き取れることだろう。
少女はゆっくりと歩みを進めてくる。

真珠星《スピカ》 >  
「──────えっ?」

アストロの言葉に、気付いた時にはもう遅い。
四方から押し寄せた水が私の全身を包んできて、動きを封じられてしまった。

「がぼっ……!」

身動きすら封じられ、息苦しさに肺の中の空気を吐き出した。
罅割れたバイザーが水圧に耐えきれず、ぱきりと右側だけ割れる。
向こうから中が見えていれば片目を見られてしまう形になるだろう。
でも、今はそんな事を気にしている余裕はない。

息ができなくて、だんだんと意識が朦朧としてきた。
光の反射も相俟って外にいるアストロの姿もよく見えない。
考えなしに突っかかって、手も足も出ずいいように弄ばれて。
ああ、なんて情けない。こんなんじゃ、皆に笑われちゃうな……
ぼんやり映る小さな影と金色の瞳を霞む視界が捉える。

「ナナ、ちゃん……?」

ほとんど無意識にそう口にしていた。こんな場所にあの子がいるはずないのに。

アストロ >  
普通なら水中で発した声など外には聞こえないのだが、アストロはその性質上聞き取れる。
目前の相手は、自分の姿を見て、誰かの名前を呼んだ。

「……?」

先日会った誰かも誰かを思い出すような反応をした。かなり気になる。
すぐさまパチンと指を鳴らせば、水の球は弾ける。
水圧に拘束されていた手足は開放され、投げ出される形になる。

「ちょっと聞きたいことが出来たの。息を立て直す時間をあげるね」

目前に腕を組んで立ち、話せるようになるのを待つ。

真珠星《スピカ》 >  
水底に沈みかけていた意識が急速に引き上げられる。
どういうわけか、アストロが水球を解いて私を解放したようだった。
やや浮いた状態から地面に打ち付けられ、割れたバイザーが顔から外れて転がっていく。

「ぇほ、げほっ……!」

痛みに震えながら水を吐いて必死に息を吸う。
立ち上がって逃げるような体力はない。私の命は、未だに彼女の掌の上だ。
忘れかけていた、死にたくないという気持ちが湧き上がってくる。

「はぁ、はぁ……聞きたい、こと……?」

とにかく今は言う通りにするしかない。
まだ少し焦点の定まらない目をアストロに向けた。

アストロ >  
「……ナナって誰のこと?私に似ている誰かを思い出したんでしょ?」

しゃがみこんで視線をあわせる。
そこにあるのは真剣な表情。

「前にも似たような反応をした人が居たの」

どういうわけかすごく気になるのだ。
朱い髪ではなく、目を見た時にそういう反応をする人たち。

「教えてもらえる?教えてもらえないなら、自分で探すけど」

指先に水の球を作る。その時は勿論分かってるね、と言いたげに。

真珠星《スピカ》 >  
「っ……それ、は……」

いくら命が惜しいからって、おいそれと友達は売り渡せない。
それなのに、不思議とその金色の瞳から目が離せなかった。
さっきまでの余裕に満ちた表情から一変、どこか真剣さを感じさせる。
その目に射抜かれて、私は───

「……"パウラ"っていう子に似てると思ったんです。どういうわけか」

絞り出したのは、あの子の本名。
今はミドルネームに据えられていて、日常的に呼ばれることはほとんどない。
これなら簡単に足がつくことはないはずだ。

アストロ >  
「──は?」

その名を聞いた時、少女は目に見えて動揺する。

「パウラ?嘘?」

いや、まだだ、名前がたまたま被っているだけかも知れない。
別に珍しい名前ではない。これだけ人が居る島なのだから。
だからこそ、確かめずには居られなかった。

「その子、227番って名乗ってなかった?」

作っていた水の球は弾け。
スピカと名乗った少女の肩に両手を添え、続きを聞き出そうとする。

真珠星《スピカ》 >  
「227番……あの子のこと、知っているんですね」

肩を掴まれた。真剣どころか必死とも取れる反応。
名前を聞いて明らかに動揺してたし、ナナちゃんの関係者なのは確かなようだ。
だとすると、あの子の記憶を取り戻す大事な手掛かりになるかもしれない。

「それを聞いて、どうするつもりですか?
 もしあの子にまで危害を加えるようなら、私は……」

こっちも真剣な目で見つめ返した。
どれだけ相手が未知数でも、決して使うまいとしていた異能を、使わなきゃいけなくなる。

頭の中で耳鳴りのように反響する大人たちの声。
"認識番号046"───異能兵士としての力を。

アストロ >  
「――っ」

名前が、特徴が、一致する。
脳裏に浮かぶは一番の友達だった少女の姿。

「危害は……そうね。次の質問の答え次第」

手を離して、立ち上がって背を向ける。

「その子は、普通の暮らしをしているの?
 それとも道具として、玩具として今も使われているの?」

真珠星《スピカ》 >  
「道具……」

名前を聞いた時から薄々感じていた親近感。
まさか境遇まで似たようなものだったなんて……嫌な予感が的中しちゃったな。

「あの子は……ナナちゃんは今、その"普通"のために頑張ってるんです。
 本当の名前も思い出せたし、星とか色々なことを勉強してて……」

だけど、だからこそ、ナナちゃんには未来がある。
それを奪おうって言うのなら、私は全力で抗うつもりだ。
立ち上がる。体力の回復が早いのも異能兵士としての特徴の一つ。
もしもの時は───もう躊躇わない。

アストロ >  
「そっか」

背中を向けたままうつむく。
名前を思い出せた――つまり、何も覚えていないのか。
だったら、私はあの子に会うことは出来ないな。
でも──

「よかった」

立ち上がった様子に気づいてはいるが、特に反応は見せず。

「今日のとこは見逃してあげる。
 226番だったものとして、あの子の友達だったものとして、嬉しい話だった。
 ……違反部活荒らしはまだ続けるから、どこかで会うかもね」

そのまま、そこから離れるように歩き出した。
数歩歩いたところでくるりと振り返り──

「あ、バイザー壊れてるんだから、早くその目立つマント脱いだほうが良いよぉ」

パチンと指を鳴らすと、貴方の濡れた服は元通り。

真珠星《スピカ》 >  
「226番……ひょっとして、あなたも……?」

返ってきたのは"良かった"という感想、そして友達という言葉。
そしてナナちゃんと1つ違いの番号。彼女もまた、あの子と同じだったんだ。

「待って、もう少し話を───あっ!?」

立ち去ろうとするアストロを呼び止めようとして、バイザーが外れているのを思い出す。
あっという間に服だけは元通りになった。ついでに直してくれたりは……しないよね。
当然ながら素顔も丸見えで、こんな状態じゃ大通りに出られない。
慌ててマントを脱いで丸める。

アストロ >  
「じゃあね」

その言葉には答えることもなく、またくるりとまわって歩き出す。
少女が水たまりを踏み抜くと、ぱしゃっと水が跳ねて。
その水滴が地面に落ちるタイミングで、少女の姿は見えなくなるだろう。

真珠星《スピカ》 >  
もたもたしている間にどんどん先を行ってしまうアストロ。
追いかけようとした時、水溜まりに足を踏み入れた彼女の姿が消えた。
水を操る力───瞬間移動みたいな事もできるなんて。

「アストロ……」

路地裏に一人ぽつんと取り残されて途方に暮れる。
今日のことは報告せずにおこう。彼女には聞きたいことが山ほどできたから。
丸めたマントを抱えて、水溜まりとは逆方向に立ち去った。

ご案内:「落第街 路地裏」から真珠星《スピカ》さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」からアストロさんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に黒いフードの少女さんが現れました。
黒いフードの少女 >  
あれから、表側では何事もなく日常が謳歌されていた。
新学期が始まってから一か月が過ぎ、『ディープブルー』の事件は早くも風化しつつある。
けが人のほとんどは退院し、死の淵の彷徨っていた人物も今ではこの付近を元気に警邏しているらしい。
実に腹立たしいところではあるが、それを止める理由はあっても方法が今のところないというのがもどかしいところだ。

一発頬を拳で殴りつけて「いい加減にしろ」と言うのは簡単だが、そんなことで解決するようなら問題はここまで大きくはなっていない。
いや、規模的に言うなら大きなものではないが、個人間の溝としては深まっていくという話だ。
少女のストレスは日に日に強まっていく、ストレスのはけ口、原因の根本的解消を足止めされてしまっている現在、こうしてスラム街で探し人をするぐらいしかすることが無かった。

「暴れるなって言われてもねぇ……。」

目的と手段を同時に見失ってしまった身としては、果たしてどうしたらいいのかもわからない。
例の少年との約束を破ってしまうのは簡単だが、それは少々躊躇われた。
しかしそれも限界に近付きつつあり、例の組織を探して今日もこの裏路地を練り歩いている。

ご案内:「落第街 路地裏」に殺音さんが現れました。
殺音 > そんなフードの少女を遠巻きに覗き見る…
いや、監視する影が一つ。
何者かはわからないあんな時代錯誤も甚だしい怪しいやつだ。

急に落第街に生えてきた人物の中でも特別に怪しい。
情報を得ておくにこしたことはないだろう。

シルエットからして少女。
しかし、あんな格好をしている理由は?
顔を見られたくない?正体を知られたくない?まぁ、しったことではないが…
あれが何もしないのであれば捨て置いても問題はないだろう。

「…ただのイカレ女なら…誰も情報なんていらねーだろーし」

黒いフードの少女 >  
「……今日は無粋なお客さんでもいるのかな。」
 
認識阻害のついた黒いローブのフード部分を目深に被る。
少なくとも、これを被っている状態であれば自分がだれかという事を知人さへも見ただけで認識することは出来ない。
しかし、そんな状態でもこちらを見ているらしき気配が一つ。

早々に襲ってこない事からして様子見しているのだろうか。
この姿でも恨みつらみを買いそうなことはしているから、ある程度の襲撃を覚悟はしていたが、ただ見られているだけというのも気持ちが悪い。
少なくとも、単独行動の時点で例の組織とは別の何かだろう。
彼らは往々にして集団で行動することが多い筈だ。
であるならば、公安の狗という可能性もあるが、此方に気取られるような尾行の仕方をするだろうかとも首をかしげる。

「……。」

無言のまま、ゆっくりと視線のする方向へ振り向いた。

殺音 > おっと、こちらを向いた。
べつに構いはしないのだが。
フードなどという頼りないものなのにどうも中身がよくわからない。
見えているのによくわからない。
なんとも気持ちの悪い話だ。
とはいえ、こちらを向いたということはバレている。
身を隠したところでどうということもないだろう。

ハァイと手でも振ってやろう。

「無粋とはいってくれるもんだぁ、怪しいねーちゃん」

黒いフードの少女 >  
「散歩の最中にじっと見られれば気分もそがれるというもの、何か用?」

見えるのは褐色肌の少女、見るからに異邦人という立ち姿ではある。
手を振ってくる豪胆さはこの街の住まうもの特有のそれだろうか。
背は小さく、どう見ても10代かそれ以下と言った容姿。
しかし、異邦人となればその姿と年齢は比例しない。
つまるところ、見た目で油断はできないという事だ。

何も知らない人物が、此方の事を邪魔するとは考えにくい。
とりあえずは目的を聞いてみるのが妥当だろうか。

殺音 > 「えー?そりゃー?まぁ?
あーしも一応事情通で通ってるんでぇ?
自分の住んでる街で見知らぬ怪しいカッコのやつがうろついてると気分が削がれるってもんじゃねーの?」

相手の言葉を返すように笑って答える。
会話ができるだけまだまともと考えるべきか。
かといって、あの格好は流石に怪しすぎる。
風紀だったら職質モノだろう。

「それにあれっしょー?
風紀の新しい殺し屋だったら情報集めときゃ高く売れそうだし」

黒いフードの少女 >  
「情報通? あぁ、裏の情報屋。
 そんなところか。
 知らないことがあるのが気に入らないし、それを金にしようと目論んでると。
 なるほど、この街らしいと言えばらしいのか。」

要するに、自分が何者なのかを知るために監視していたという事だろうか。
だとしたら骨折り損もいいところだろう、このところは大した行動もしていない。
少し前は違反部活の構成員を細々と捻ってきてはいたが、そう目立っていたつもりもない。
問題なのは、此方に興味を持たれたという一点程度のもので、興味を失ってさえくれれば早々に去るのだろうが。
さて、そううまく行ってくれるかどうか。

「風紀の殺し屋……ねぇ?
 私が風紀委員だとしたらこんな格好しないわ。
 風紀ってわかりやすい旗印でもつけてるものでしょう?
 あいつらは。
 悪いけど、くれてやれるようなものは無いわよ。」

殺音 > 『この街らしいと言えばらしいのか。』

この街の内情を知っているような口ぶり。
しかも住んでいたわけじゃない。外からみたような言い草。
新しく流れ着いた異邦人…という線はこれで消えた。

「そそ、そういうことー。
まぁ、あんたがナニモンでもないってならべつに?
お好きにどーぞって感じなんだけどねー」

とはいえ、そうでない人間がなぜあんな格好をしているのか。
風紀であればこんな格好しないと明言している。
つまり、怪しげな格好であるという自覚がある。
ならばなぜ。答えは明白。

「風紀じゃなくても、好んで顔隠そうってやつはなんか後ろ暗いもんもってんじゃね?
風紀じゃないにしてもやべーやつの情報はもっとくにこしたこたーないし」

黒いフードの少女 >  
「やべーやつ、ねぇ。
 貴方の言うヤバいやつがそう言った基準のもとに設定されてるのかは知らないけど、やばいかもしれない奴に話しかけるなんて随分度胸があるのね。
 関心はしないけど。
 私が本当に『危ない』やつなら、あんたとっくに襲われてるんじゃない?」
 
 
危険な奴、凶悪な犯罪者という意味ならば、少女が話しかけている時点でそれに片足を突っ込んでいることに他ならない。
暗に関わらないほうが良いぞという念押しをするが、おそらくは効果は無いだろう。
その程度の言葉で追及を止める人間ならこんな風に話しかけてはこない。

面倒だな、という感想こそ覚えるが、かといって蹴散らすほどかというほどでもない。
もちろん、正体を暴こうとか、出来るだけ情報をむしり取ろうというのなら態度も変わるだろうが、深入りされないのであれば手を出す理由もない。
 

「ちょっとした理由で人探しをしているだけ。
 人に見られるのも好きじゃなくてね、あんたみたいのに纏わりつかれるのも。
 できればご遠慮いただきたいのだけど?」

殺音 > 「ご心配なく。
あーし逃げ足には自信あるんでー?」

襲ってきたら襲ってきたでそれはそれ。
言うまでもなく危険な存在であるということになる。
情報を聞き出すまでもなく。
実際そうなってたら、異能でさっさと逃げる。

正直、その異能でフードを取っ払ってやってもいいのだが
あえてこちらから藪をつつく必要もないだろう。

「ふーん、人探しぃ?
よそ者で?そんな格好で?
一人でウロウロしてりゃ見つかるもんなのー?
あーし人探しとかもたまにやるんだけど、そんなんで見つかるってならよっぽど派手なやつなんだろーねぇ?」

廃ビルの壁に手をついてニヤニヤと笑って

「あーしみたいな?
便利屋でもご利用にならなけりゃーね」

黒いフードの少女 >  
「遠回しな言い方ね。
 悪いけどあんたみたいに素性の知れない奴を使う趣味は無いの。
 それに、確かにあのバカは随分と目立つしね。
 いや、目立つように動くっていうべきか。
 この街の自治厨みたいなやつだし、そのうち会うこともあるでしょう。」

あの特徴的な緑の少年は、きっと騒ぎの渦中に飛び込みさえすれば出会うことは容易だろう。
何かと理不尽を嫌う少年だ。
いや、自分の中で定まっているルールを侵されるのが嫌いなタイプだろうか?
まぁ、どちらも大して変わりはしない。

「悪いことは言わないから、暇つぶしやら情報探しなら他をあたったほうが良いんじゃない?
 それこそ、今落第街の大通りに行けば大物が見られるんじゃない?」

鉄火の支配者はちょうど警邏中だろう。
あのワーカーホリックの情報位は持っているだろうが、復帰したという事まではおそらくまだ知らない筈だ。

殺音 > 「はーん、残念。
素性の知れないやつはお互い様だってのによく言うよ。
自分のことは棚上げ、まるで風紀だねぇ」

おおこわいこわいと肩をすくめてくるりと体を翻す。
彼女から大通りの話を振られれば、ハッと鼻で笑う。

「大物ぉ?オーバータイラント?鉄火巻野郎?それとも黒の灰かぶり姫?
それとも……」

退院の報は聞いていない。
だが、あえてこの流れでの大物といえば
そういう連中だろう。

「水無月沙羅?」

こいつは二つ名は存在しないが、多くの違反部活つぶしに貢献している…
いわゆる大物と言える。
だが、異能が再生能力と地味なため、どうも呼び名がつけづらいとは知り合いの違反部活部員の話だ。