2020/10/02 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に九重 九十九さんが現れました。
■九重 九十九 > 廃病院で失敗し、廃ビルで失敗し、こうも続くと何かやり方が不味いのかな?と考える。
首が真横になるほど傾いて、わたしが舞首であったならごとりと落ちて舞飛ぶところ。
けれども違くてわたしの姿はただの悩む姿の誰かさん。
場所が落第街とか呼ばれる場所で、昼でも薄暗い路地の裏でなければだけど。
そういう所だからすこうし不審者かもしれない。
「やり方をちょっと変えてみよう。そう、新しいやり方を……なんだっけ、イノベーション?
するといいとか言うし……」
悩みながらもその姿は物陰で、窺う視線の先には二人組の男性が居たんだ。
顔に入れ墨を入れた黒髪の人と、オレンジ色の鮮やかな長髪の人。
二人とも中々どうして厳つくて、ちょっぴり近寄りたくはない感じ。
わたしの位置からでは聞き取れないけど、何だかお話をしているのが判る。
■九重 九十九 > 「……そーれそれ……」
会話する二人の傍にはお誂えにマンホールの蓋があり、その蓋が突然と揺れる。
恰も内側から何かが叩き鳴らすかのようで、その実わたしの異能たる白い手の群が鳴らしているぞ。
会話をしていた男性が音に気付いて周囲を見回すようなら音を止め、会話が始まるなら音を出す。
そうした事を暫し繰り返すと、彼らは漸くと音源であるマンホールに気付いた様子を見せてくれた。
いいぞ、順調だ。つづらちゃんポイント+1。
『『…………』』
マンホールを見る二人。顔を見合わせる二人。物陰から見守るわたし。
その内にオレンジ色の髪の人がゆっくりとマンホールに近づき、蓋に触れようとして──
その直前に蓋が跳ね飛び、内から無数の白い手が現われて男性の手、足、胴。彼処を幾重にも掴み今にも引き込まんとする。
『うおわあああああ!?』
路地裏に響く悲鳴。
落第街ならざりき恐怖の形を目にした黒髪の男性の方は、そうした様子を見て慌てて逃げ出してしまった。
それを見届けてガッツポーズをするわたし。いいぞ、怪談としてどうか広めてほしい。そんな祈りが籠る。
■九重 九十九 > 残るオレンジ色の髪の男性は、哀れ地下に引きずり込まれ──とはならない。
暴れる彼に合わせて程よく抵抗し、程良く振り払われ、程よく取り逃がす。
脱出し地面に転がる彼の元へ白い手の群は伸びるけれど、悲しいかなぎりぎりの所で届かない。
そうした様子を見る彼の目線は怯えを含み、そうした様子を見るわたしの視線は喜悦を含む。
なんともぞくぞくしてきちゃうぞう。
「こういうのもアリかもしれないなあ……ふふ、悪所に満ちる怪談話か」
白い手の群を程々に引っ込める。
傍目には恰も、獲物を取り逃がし諦めたかのように未練がましく揺らめいてマンホールに消えていく風。
それが済んだら、わたしは鼻歌混じりで危ない所を後にするんだ。
ご案内:「落第街 路地裏」から九重 九十九さんが去りました。