2020/10/07 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に無貌さんが現れました。
■無貌 > ――彼の黒刀の使い手が再び現れたと聞いたのは、仕事の合間に聞いた他愛も無い噂話の一つ。
よりによって、その使い手が第一級監視対象という厄介な相手の一人というのは皮肉か。
(――■■ー■ー・■■■ラインに返して貰う約束は果たせず仕舞い、か)
仕事の合間にこんな雑念に支配されるのは珍しい。それだけ、心残りになっているのだろう。
少なくとも、普段の己ならそういう事は考えないであろうに…人の真似事のつもりか、私は。
入り組んだ迷路の如き路地裏も、10数年もそこで暮らしていれば必然的に慣れるものだ。
迷い無く、気配も足音一つも立てずにするり、と路地裏から路地裏へと淀みの無い影の如く移動する。
程なく目的地に到着――ありふれた違反組織の一つ。依頼は”皆殺し”。これ以上無いくらいに簡潔だ。無造作に、その影は違反組織のアジトに忍び込み――
■無貌 > ―――1時間後。
何故か”更地”となった、元違反組織のアジトの跡地へと佇みながら。緩やかに外套の下から改造された携帯電話を取り出し、何処かへと電話を掛ける。
「――私だ、依頼は滞りなく完了した。…ああ、報酬は指定の場所に」
通話を手短に済ませれば、証拠、とばかりに違反組織の長が持っていた特徴的なナイフ――既に折れているが――を、カメラ機能で撮影して依頼人へと送っておく。
「―――…。」
噂では、例の”異界”にどうやら面倒な怪異が現れたらしく、風紀を始めとして色々有名所が事に当たっているらしい。
中には、全く関係のない理由で迷い込み、遭遇した者達も居るらしいが――あの場所の性質を考えれば、さもありなん。
(――必然、そうなればこちら側の”視線が外れて”多少なり『活発化』するのは否めない…。)
だからこそ、自分のような殺し屋にも仕事が多めに回ってくるのだが。まぁ、せいぜい例の怪異には暴れて貰いたい所だ。
こちらは仕事がし易くなるし、面倒な連中との遭遇率も相応に減る。…まぁ、自分の情報はそもそもあまり出回っていないだろうが。
■無貌 > 何故、そんな情報を知っているのか――人の口に戸は立てられない。
それに、10数年もこんな仕事をやっていると、相応に色々と小耳に挟むし情報網も独自に構築出来る。
勿論、仕事に関係のない情報を積極的に仕入れる気は無い…そこまで物好きでも暇人でもない。
今回のそれは、相応に大規模な様子だったから、多少なりアンテナを張っていただけに過ぎない。
よって、殺し屋《無貌》のやる事は何時もとなんら変わり映えする事は無い。
――依頼を受けて、ただ殺して、そして報酬を貰う…それだけだ。
別に、この仕事に愛着も誇りも無い。ただ、淡々と続けているだけ…続ける理由は無いが止める理由も特に無い。
強いて理由を挙げるなら、関わりが最小限で済むという事だろうか。殺し屋には色々なスタイルがある。
自分の場合は特には無いが…強いて挙げるならば、仕事以外の殺生は避ける…くらいだろうか?
別に善意や良心の呵責、といったものはない。ただ仕事以外で殺す必要性を感じないだけに過ぎない。
更地と化した違反組織の跡地から再び路地裏に滑るように影と化して移動する。気配や音の遮断は何時もの事だ。
■無貌 > ――そして、影は影に。闇は闇に。その姿は路地裏の奥へと密やかに姿を消していく。
…そうして、また一つ。《無貌》と呼ばれる殺し屋の語るまでもない所業が積み上がっていくのだ。
ご案内:「落第街 路地裏」から無貌さんが去りました。