2020/10/20 のログ
■ジーン・L・J > 刃筋をズラされる、致命傷となり得る一撃は刃先が傷口を作る程度に留められた。
ハイヒールが火花をあげるほどの速度で旋回すれば、相手は遠くビルの壁面。
「ほう。」
「痛いってことは、痛覚がある。血が出る、そして攻撃を防いだ。実はさっきの黒い液体が君の本来の姿で、斬っても殴っても平気、なんてことはなくて良かったよ。」
ダメージを与えられる、ならば勝てる。コンクリートを四肢の一振りで砕き、暴れ狂う"獣"なら何十匹も狩ってきた。
あるいは酷く擬態や嘘の上手い相手で、ダメージを受けたのも振りにすぎない可能性はあるが、ナイフに微かに付いた血の匂いの味でわかる、嘘の味はしない。
ならばすぐさま次の攻撃へ移る。ビルを作っているのは鉄筋コンクリート。電流を足に流し、磁力を使って"壁内の鉄筋を走る"。
「ッシィ!」
歯から漏れ出すような呼気とともに、回転しながらの長く重いナイフの重量に遠心力を載せた一撃が首を狙う!
■焔誼迦具楽 >
「さあ、どうかしらね」
黒い液体が本体、それは間違っていない。
ただ、この体は人間と同じ構造をしていて、同じ急所があるのだ。
だから、斬られれば痛むし、刺されれば死ぬ。
相手は壁を駆け上がり、再び首を狙ってきた。
しかし、今度は防げる。
左腕をナイフの前に翳して受け止めた。
服の布地が裂けるが、刃は肌と肉に沈み込むが――斬れない。
弾力で受け止め、鋼のような硬さで刃を止める。
ナイフを受け止めた事で、彼我は手が届く距離。
右手を伸ばして、相手を掴もうとする。
■ジーン・L・J > 「手札は伏せたまま?なら、開けさせてみることにしよう。」
ナイフの軌道上にかざされる腕、威力を殺す目論見か?ならばその腕をもらおう、軌道を微調整し、刃が肉に食い込…まない!
「っは!」
漏れた息は感嘆と驚愕。予想外の抵抗に攻撃はそこで止まる。
だが動きは止まらない、ナイフから手を離し、そのまま回転しつつ上体をそらして伸びる腕をギリギリで躱す。相手の指先にベストの切れ端が僅かに残るだろう。
「何をしたんだい?さっきとはまるで、別素材じゃないか。」
斬撃は対処されたと判断、ならばと一回転して、左足一本で鉄骨と体を磁力で繋ぎつつ、電流を纏った右足で回し蹴りを胴に食らわせようとする。
魔術で付与された高圧電流は効果があるか?
■焔誼迦具楽 >
「そうよ、別素材にしたんだもの」
宙に浮いたナイフを、左手で取る。
相手の回し蹴りはただの蹴りじゃない。
その右足には電流が流れていた。
しかし、電流なら迦具楽にとっては食事でしかない。
電気もまた熱エネルギーの一種。
回し蹴りをそのまま受け止めると、高圧電流を身体に吸収して無効化する。
「――ぐっ」
ただ、その蹴り自体も十分に鋭いモノだった。
脇腹に受けた衝撃はある程度、変性した体の弾力で受け流したものの。
その肺腑から空気が漏れる。
けれどそれに構わず、左手に取ったナイフを狙いもなく、力任せに相手に叩きつける。
同時に、右手から黒い流体が溢れ出して、右腕を、肘から先を覆っていく。
《創造》したのは、腕に纏うように一体化した、60㎝ほどの砲身を持つガトリングガンだ。
相手が距離を取るようなら、その退路に向けて、無数の鉛玉を乱射する事になるだろう。
■ジーン・L・J > 弾性に受け止められた蹴り、電流は流し込んでいるが、それはダメージとしてでなく相手に"食われている"のが伝わたる。
即座に足を引き餌になった電流を止める。鸚鵡返しに別素材になったとの言葉には
「それは面白っ!」
楽しそうに応じようとした言葉が途切れ、ずっと浮かべ続けていた薄ら笑いが苦痛に歪む。
拳の威力だけで内蔵を吐き出しそうになったのに、その上に脇腹に突き立てられたナイフ、アンバランスなほど長く捻じくれた二重の刀身が肉を切り刻む。
「げっほ。」
それでも笑う、獰猛に笑う、痛いということは生きていること、生きていれば戦える、あるいは逃げられる。
次に相手が持ち出してきたのはガトリングガン。こっちをなんだと思ってるんだ、装甲車とでも?
あんなものまともに喰らえばバラバラの肉片になるだろう、本体の禁書とて残るかわからない。完全な死だ。
「君さぁ、やりすぎって言葉知ってる?」
離れるわけには行かない、銃身より内側に居続けなければ蜂の巣だ。
だから、殴りつけるようにナイフを握る相手の左手を右腕で締め付ける。更に刃が食い込み激痛の信号を脳に絶え間なく送ってくる。
いくら硬くとも、いくら柔軟であろうとも、削り殺す武器を持っている。
魔力を固めて振り上げた左手の中に曲刀を作り出す、人間相手には大きすぎる63.5cmの鋸刃、刈り取りを。
素材が違うと言った、だが銃は硬くなければならない、柔軟にしなる銃など聞いたことがない。
ここは硬いだけと見て、右腕を覆うガトリングガンが動き出す前に刈り取りの鋸刃を振り下ろす。
■焔誼迦具楽 >
「手加減する気分じゃない――そう言ったでしょ」
ナイフが身体を抉っているというのに、こちらの左手を締め付けて動きを制限しようとしてくる。
それは間違いなく激痛を与えて、相手を苦しめている。
それを実感して、昏い悦びに口元が歪んだ。
相手の左手に現れるのは奇妙な曲刀。
狙いは右手に作ったばかりのガトリングガンだろう。
距離が近ければ、大火力の平気であっても、精々鈍器の代わりにしかならない。
使われる前に破壊する――曲刀の切れ味は知らないが、その意図くらいは読み取れる。
「――ふ、んっ」
締め付けられた左手を、力任せに振り上げようと。
散々目にしただろう怪力、それを手加減なしに振り上げ、相手の身体を空中に放り投げるために。
組み着いている以上、避ける事は困難だろう。
しかし、手を離せば迦具楽は上半身を反らす事で、右腕で砲撃を狙える。
手を離さなければ、ガトリングの砲身を切り落とす事は出来るだろうが、体を振り回され、ナイフがさらに肉を抉る事になるだろう。
手を離して砲撃に晒されるか、砲身を破壊し身体をさらに傷つけられるか。
それともそれ以外の手段を持っているのか――試すように嘲いながら、左腕に力が籠められる。
■ジーン・L・J > 「確かに。でも、ここまでって思わないじゃないか。」
体ごと腕が振り上げられる。ここで離せばガトリングの餌食。だから、離さない。
元々肉を刻み過剰なほどの痛みを与えるためのに作られたナイフの刃が体内で暴れまわる。
「あはっ、笑うと可愛いよ、君。」
放り投げられそうになる体を、筋肉に電流を流して限界以上の筋力でもって固定する。
深く、深く、ナイフが食い込む。
戦闘用に作られた精神と肉体は痛みを正確に認識しても動きは鈍らない。渾身の力で曲刀を振り下ろし、金属が擦れ削れる耳障りな音を立ててガトリングの砲身を切り飛ばした。
切り落とすと同時に左腕を放し、そのまま投げられることで距離を取る。夜空に赤黒い血が三日月のような軌跡を描く。
脇腹のナイフは柄の半分以上まで体内に埋まっており、着地の衝撃ですら脳が痺れるような激痛だった。
「はは、はぁっ。これは、流石に痛いな。」
左手でナイフを抜き取る。深く呼吸をすれば魔力が形作られた体の傷口はふさがり、出血も止まる。
「いやぁ、凄いね、本当に。君に挑んで良かった、凄く楽しい。」
そのまま、左手にナイフ、右手に曲刀を構える。
■焔誼迦具楽 >
「そりゃ、どうもっ!」
せっかく作った兵器を壊される代わりに、土産とばかりにしっかりと手首を捻ってナイフを抉りこみ。
相手の身体を大きく投げ飛ばした。
「それだけ痛めつけられて楽しいなんて、貴方、よっぽどの変態なのかしら」
以前も、そんな性癖の友人がいたが、変態度合いでは彼女といい勝負かもしれない。
相手の傷口が塞がっていくのを見ながら、こちらも足を引き抜いて地面に降りる。
右手の兵器だったものはもう役に立たない。
黒い流体に戻してから、体に取り込みなおした。
「それで、まだやるの?
貴方に勝ち目はないと思うけど」
どうやら相手は損傷を治す能力もあるらしい。
けれど、スペックの差は明確に示したはずだ。
たしかに技術、スキルの面では多少相手が上手なのは認めるところだが。
相手を観察しながら、再び右手に流体を滲ませた。
左手のナイフは驚異じゃないが、右手の曲刀、アレは変性した身体の上からでも斬ってくるだろう。
同じ土俵で戯れる必要はないが、かと言って、この路地ごと焼き尽くしてしまうのも面白くない。
「――ま、私はどっちでもいいんだけど、さっ」
右手に《創造》したものを、軽い調子で投げる。
まるで投げ渡すように放り投げられたものは、強力な爆薬。
――ダイナマイトだ。
■ジーン・L・J > 「痛めつけられるのが楽しいんじゃあないよ、強い相手と戦えるのが楽しいのさ。今の所君は飛び切りだ。」
構えたのは相手の追撃に備えるため。物理攻撃は難しい、刈り取りならば戦えるが再び接近を許されるかどうか。
魔術も電流が吸収された、他の属性を試すには相手がいくらでも銃火器を作り出せると仮定すれば難しい。
いくつもの戦術が浮かぶが、どれも有効打になりえそうにない。
「そうだねぇ、このまま終わるにしても君の名前ぐらい聞きたいと思ってるんだけど。」
どうやらそれも許してくれないらしい。
赤い円筒の束に導火線、ああもまんまだと逆に偽物じゃないかと疑いたくなるが、火薬の匂いがそれを否定する。
右手の指先にカードを魔力で作り出し、相手の足元に刺さるように投げる。
そのまま足の筋肉を電流で操作して、一気に先程まで壁面が戦場になっていたビルの屋上へ飛び上がる。
そして爆発。
「今日の所はおさらばさせてもらうよ。また会いたいな、次は対策を練っておくから。」
煙の向こうから心底楽しそうな声が響くと、その気配もすぐに消えた。
刺さっているカードにはジーン・L・ジェットブラックという送り主の名前らしきものと連絡先が書かれている。なんのつもりかキスマーク付きで。
■焔誼迦具楽 >
爆風の向こうから、声が響く。
どうやら引き際を理解している――プロフェッショナルの手腕だ。
「対策を考えてくるような奴と、何度もやりたくはないんだけどな」
爆炎が晴れてその後に残されたのは、一枚のカード。
それを拾い上げて、キスマークを見ると笑いが漏れた。
なかなか、シャレの効いている相手だ。
「ジーン、ね。
ま、覚えておいてあげる」
力任せに暴れたからか、少しばかり気分がいい。
鬱屈した感情が晴れたかと言うと、そうではないが。
いずれまた、遊んでやってもいいかという気分にはなった。
カードをポケットに押し込むと、荒れた路地裏から歩き去っていくのだった。
ご案内:「落第街 路地裏」から焔誼迦具楽さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」からジーン・L・Jさんが去りました。